このページは若手ヴァイオリニスト樫本大進さんの非公式ページです。
さらに最近Sony Classicalの公式ページが出来ました。
上記3ページ、いずれも掲示板が(樫本大進FAN PAGEにはチャットも)設置してありますのでファンの方は書き込みをされたらいかがでしょうか。
川崎清人さんがご自身のHPで1999年3月16日の入善コスモホールでのコンサート評を公開されています。
a Vita Musicaleにも樫本大進さんのページがあります。
まずこのコンサートは私がいままで聴いたヴァイオリン、オーケストラ、オペラ等全ての中で最高であった、ということを記しておく。
第1曲ブラームス。かなり遅いテンポに驚かされた。持ち前の深さをたたえた美音で弾かれていくがとにかく暗い。ブラームスのイタリアへのあこがれなど微塵もなく、ブラームスが住んでいた北ドイツ、中央ヨーロッパのうっそうとした森、といった雰囲気を感じた。
次のモーツァルトではその雰囲気を振り払ってくれることを期待した。しかしその期待は見事に裏切られた。ある死期の近づいたヨーロッパの聖職者はショパンなどは何ともないがモーツァルトはとても聴けないともらしたという。あまりに彼岸を連想させるからである。モーツァルトの曲は明るいメロディーが続く中にハッと暗い楽想が出てきてその対比が深い芸術性を感じさせる。悲しみをたたえながら明るくふるまっているのである。しかし樫本の演奏はやはり遅いテンポでモーツァルトの曲のダークサイドだけを感じさせた。聴いていてこんなに疲れたのははじめてであり、ついには恐怖感にとらわれた。これは休憩中まで続いた。
それでいて両曲とも内輪で自己完結しているのではない。
そして休憩後のフランク。こちらはかなり速いテンポで明らかに樫本がノッているのが分かる。終楽章での祈り、浄福。これで私ははじめて救済された。心から感動した。1999年の20歳バースデイ・リサイタルでの同曲の演奏をはるかに超えていた。
アンコールでのエルガー:愛の挨拶も良かった。続くブラームス、パガニーニも同様に歌いまわしがチャーミングで小品も聴かせてくれることを実感した。小品アルバムのCD発売を強く望む。
ロン・ティボー・コンクール優勝後、技術的には未完成ながらその音色と音楽性に注目し、幾度となくコンサートに足を運んだ。技術も完成し安定するようになり、その音色美にひたることを喜びとしてきた。だがここまでの芸術家になることは想像できなかった。もう一度書く。このコンサートは私がレコード、実演で耳にした全ジャンルの音楽での最高の一つである。