自伝発売中。『ロシアから西欧へ―ミルスタイン回想録』
ナタン・ミルスタイン
(著)、ソロモン・ヴォルコフ (著)、春秋社
ミルシテイン(1903-1992)のホームページでは既に海外に素晴らしいページがあります。Nathan Milsteinです。詳細な作曲家別ディスコグラフィとバイオグラフィ、サウンド・ファイルがあります。
ここのディスコグラフィを補足したものを掲載します。
私のページでは、現役盤CDを紹介しながら彼の芸風を探っていきます。
本文はもうしばらくお待ちくださいm(__)m
1956年のザルツブルク音楽祭のライヴ録音(オルフェオ)について NEW!
第3期の本文を少し書きました。
まず、私がレコードで聴いた印象から彼の録音を便宜的に3つの時期に分類する。第1期は1930年代〜1940年代のSP時代、第2期は1950年代〜1960年代、第3期は1970年頃以降である。それでは、それぞれの時期の録音と芸風について具体的に触れていく。
- ブルッフ:協奏曲第1番 バルビローリ/ニューヨークpo. 1942年4月(Biddulph LAB096;Pearl 9259;Dante)★★☆
- ラロ:スペイン交響曲 オーマンディ/フィラデルフィアo. 1942年(Pearl 9259;Dante)★★☆
- メンデルスゾーン:協奏曲 ワルター/ニューヨークpo. 1945年5月(Sony;Pearl 9259;Dante)★★★
- メンデルスゾーン:協奏曲 ブラット(pf) 1946年10月ライヴ(Bridge 9064)★★☆
- ゴルトマルク:協奏曲第1番 ワルター/ニューヨークpo. 1942年11月ライヴ(M&A 972;Dante)★★☆
- シュターミッツ:協奏曲 バルサム(pf) 1940年11月(Biddulph LAB063;One-Eleven)★★
- チャイコフスキー:協奏曲 ストック/シカゴso. 1940年3月(Biddulph LAB063;Dante)★★☆
- バッハ:無伴奏ソナタ第1番 1946年10月ライヴ(Bridge 9064)★★
- バッハ:無伴奏パルティータ第2番 1935年12月(Biddulph LAB055;M&A 972;Pearl)★★☆
- ベートーヴェン:ソナタ第8番 バルサム 1939年5月(Biddulph LAB063;Dante)★☆
- モーツァルト:ソナタ ハ長調K.296バルサム 1939年5月(Biddulph LAB063)★★
- タルティーニ/クライスラー:悪魔のトリル ミットマン 1938年2月(Biddulph LAB055;Pearl;One-Eleven)★★☆
- ヴィターリ:シャコンヌ ミットマン 1935年12月(Biddulph LAB055;Pearl)★★☆
- ヴィターリ:シャコンヌ ブラット 1946年10月ライヴ(Bridge 9064)★★
- ヴィヴァルディ、ペルゴレージ他:ソナタ 1936-38年(Biddulph LAB055;Pearl;One-Eleven)★★☆
- ミルシテイン:パガニニアーナ ブラット 1946年10月ライヴ(Bridge 9064)★★★
- 小品(9曲) ムーア、ミットマン 1932年-1937年(apr)★★★
- 小品(14曲) ミットマン 1935-38年(Biddulph LAB096)★★★
- 小品(12曲) バルサム、ミットマン 1935-44年(One-Eleven)★★★
- 小品(2曲) ブラット 1946年10月ライヴ(Bridge 9064)★★★
- バッハ:協奏曲(3曲) モリーニ(Vn)/ミルシテイン/室内o. 1964,65年(EMI "Gramophone")☆
- ベートーヴェン:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1955年1月(米EMI FDS)★★
- ベートーヴェン:協奏曲 マゼール/フランス国立放送o. 1959年6月ライヴ(M&A 972)★★★☆
- ベートーヴェン:協奏曲 ラインスドルフ/フィルハーモニアo. 1961年6月(東芝EMI)★
- ブラームス:協奏曲 デ・サバタ/ニューヨークpo. 1950年3月ライヴ(Arkadia;Melodram 18008)★★★☆
- ブラームス:協奏曲 モントゥー/コンセルトヘボウo. 1950年10月ライヴ(M&A 972;Tahra)★★★
- ブラームス:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1953年11月(米EMI FDS)★★★★
- ブラームス:協奏曲 フィストゥラーリ/フィルハーモニアo. 1960年6月(EMI Seraphim;東芝EMI)☆
- ブラームス:二重協奏曲 ピアティゴルスキー/ライナー/フィラデルフィアo. 1951年6月(RCA Legendary Performers)★★★☆
- ブルッフ:協奏曲第1番 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1953年11月(米EMI FDS)★
- ブルッフ:協奏曲第1番 バージン/フィルハーモニアo. 1959年10月(EMI CFP;東芝EMI)★★★
- ドヴォルザーク:協奏曲 クレツキ/ケルン・ギュルツェニッヒo. 1956年9月ライヴ(M&A 972)★★★
- ドヴォルザーク:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1957年4月(東芝EMI)★
- グラズノフ:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1957年4月(東芝EMI)★★☆
- ゴルトマルク:協奏曲第1番 ブレック/フィルハーモニアo. 1957年7月(Testament)★★★★☆
- ラロ:スペイン交響曲 ゴルシュマン/セントルイスso. 1954年12月(Testament;米EMI FDS)★★★★
- メンデルスゾーン:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1953年11月(米EMI FDS)★
- メンデルスゾーン:協奏曲 バージン/フィルハーモニアo. 1959年10月(EMI CFP;東芝EMI)☆
- モーツァルト:協奏曲第4番 シューリヒト/スイス-イタリア放送o. 1960年代ライヴ(M&A 972)★★
- モーツァルト:協奏曲第5番 アンセルメ/スイス・ロマンドo. 1960年10月ライヴ(M&A 972)★★☆
- プロコフィエフ:協奏曲第1番 ゴルシュマン/セントルイスso. 1954年1月(米EMI FDS)★★★★
- プロコフィエフ:協奏曲第1番 アンセルメ/スイス・ロマンドo. 1960年10月ライヴ(M&A 972)★★★★☆
- サン・サーンス:協奏曲第3番 フィストゥラーリ/フィルハーモニアo. 1964年(東芝EMI)★★☆
- チャイコフスキー:協奏曲 スタインバーグ/ピッツバーグso. 1959年4月(EMI Seraphim;東芝EMI)★★
- バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ全曲 1954,56年(EMI)★★〜★★★
- バッハ:無伴奏ソナタ第1,3番&パルティータ第2番 1957年8月ライヴ(Orfeo)★☆
- バッハ:無伴奏パルティータ第2番 1953年3月ライヴ(Bridge 9066)★★☆
- バッハ:シャコンヌ 1957年10月ライヴ(Ermitage 107)★★
- バッハ:無伴奏パルティータ第3番〜プレリュード 1958年9月ライヴ(Ermitage 152S "BiS")★☆
- バッハ:2つのヴァイオリンのためのソナタ モリーニ/B.フィッシャー 1964年3月(EMI "Gramophone")☆
- ベートーヴェン:ソナタ第5番「春」 バルサム 1953年3月ライヴ(Bridge 9066)★
- ベートーヴェン:ソナタ第5番「春」 バルサム 1957年10月ライヴ(Ermitage 107)★★
- ベートーヴェン:ソナタ第5番「春」 フィルクスニー 1958年12月(米EMI FDS)★★★
- ベートーヴェン:ソナタ第8番 バルサム 1957年12月(米EMI FDS)★★★☆
- ベートーヴェン:ソナタ第9番「クロイツェル」 バルサム 1957年(米EMI FDS)★★★☆
- ブラームス:ソナタ第3番 ホロヴィッツ 1950年6月(RCA "Horowitz -Scarlatti・Bach-Busoni・Haydn・Beethoven・Brahms")★
- ブラームス:ソナタ第3番 バルサム 1953年3月ライヴ(Bridge 9066)★★☆
- ドビュッシー:ソナタ フィルクスニー 1960年3月(米EMI FDS "NATHAN MILSTEIN: ENCORES")★★★
- タルティーニ/クライスラー:悪魔のトリル ポマーズ 1959年1月(米EMI FDS;東芝EMI Seraphim)★★
- コレルリ:ラ・フォリア ポマーズ 1958年1月(米EMI FDS;東芝EMI Seraphim)★★★
- ショーソン:詩曲 フィストゥラーリ/フィルハーモニアo. 1964年(東芝EMI)★★
- ヴィターリ:シャコンヌ バルサム 1955年1月(米EMI FDS;東芝EMI Seraphim)★★★☆
- 小品4曲 ジュスキント/コンサート・アーツo. ポマーズ ステレオ(東芝EMI Seraphim)★★★
- 小品7曲 バルサム 1957年10月ライヴ(Ermitage 107)★★
38.は米EMI FDSのCDが初出。最近再発された12枚組の「ナタン・ミルシテインの芸術」(米キャピトル録音の室内楽と小品の全集、東芝EMI)にも収録されていない。
- ブラームス:協奏曲 ヨッフム/ウィーンpo. 1974年12月(DG 2CD;Belart)★★★☆
- ブルッフ:協奏曲第1番 アルビン/ストラスブール放送so. 1969年6月(M&A 972)★★★★
- メンデルスゾーン:協奏曲 アバド/ウィーンpo. 1972年(DG 2CD)★★★
- モーツァルト:協奏曲第4番 アルビン/ストラスブール放送so. 1969年6月(M&A 972)★★★
- チャイコフスキー:協奏曲 アバド/ウィーンpo. 1972年(DG 2CD)★★★★
- バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ全曲 1973年9月(DG The Originals)★★★★★
- バッハ:シャコンヌ 1986年6月ライヴ(Teldec "The Last Recital")★★
- ベートーヴェン:ソナタ第9番「クロイツェル」 ブルデルマッシュ 1986年6月ライヴ(Teldec "The Last Recital")★★★☆
- ヘンデル:ソナタイ長調Op.1-3 1986年6月ライヴ(Teldec "The Last Recital")★★☆
- ジェミニアーニ/ミルシテイン:ソナタイ長調 ブルデルマッシュ 1975年(DG "Violin Recital")★★★
- シューベルト:華麗なるロンド ブルデルマッシュ 1975年(DG "Violin Recital")★★★☆
- ミルシテイン:パガニニアーナ ブルデルマッシュ 1975年(DG "Violin Recital")★★★☆
- 小品4曲 ブルデルマッシュ 1975年(DG "Violin Recital")★★★☆
- 小品6曲 ブルデルマッシュ 1986年6月ライヴ(Teldec "The Last Recital")★★★
私はこの時期のミルシテインが一番好き。昔の情熱をひめた冷たさ(それはそれで魅力的)がよりいっそうの気品(これはこの時期以前にもあった)に変わり、ミルシテインに対してよく言われる「貴族的」といった言葉がますます似合うようになった。
ローベルト・バッハマンの『大演奏家との対話』(村上紀子訳、白水社、1976年、巻末のミルシテインの年表は1966年まで載っている−本文中では1970年代のDG録音についてもふれられている。)でミルシテインは「私のような年のヴァイオリニストが、まだかなり弾けるなどということは、ヴァイオリン演奏の歴史に、いまだかつてなかったことでしょう。私の演奏をいろいろに批評することはできるでしょうが、いまだに大変良い演奏であることは確かです。困難だと感ずることは、ほとんどありません。様々な曲を弾きますが、メカニック、技巧の面からみると、それどころか二十五年前より今のほうが良いくらいです。それに解釈の面では、私のレパートリー中、昔より良くなっていない曲は、一つもありません。経験を積んだおかげです。技術的な問題を克服するのは、現在のほうがたやすくできます。(後略)」と語っている。
バッハの無伴奏パルティータとソナタの全曲録音については同書で「私はロンドンの録音のほうが、一九五〇年代の録音より、すぐれていると思います。」と、マーガレット・キャンベルの『名ヴァイオリニストたち』(岡部宏之訳、東京創元社、1980年)では「わたしは二十年昔にバッハのソナタを弾いた・・・・・しかし、そのアプローチはより即興性が少なく、きまった音符を弾くという方に重点がおかれていた。バッハはつねに即興的なものです。」と述べている。
この時期にベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を録音しなかったのがまことに残念である。前述のキャンベルの本の地の文には「演奏家としては、ミルシテインは相変わらず精力的で、元気一杯で、新しい録音をいくつもやりたいと考えている−ブラームス、ベートーヴェン、セザール・フランクなどを。最近は、ベートーヴェンの協奏曲のための新作のカデンツァを発表した。パリとロンドンで半々に暮らし、スイスにマスター・クラスを持っている。七十代でありながら、信じられぬほど元気に溢れている。」と書かれているのだが。ある方から1980年代のエアチェック・テープをお借りして聴いたことがあるが、予想通りの名演で第2楽章が特に感動的だった。DGの小品集もたしか遅れて発売されたのだが、ベートーヴェンの協奏曲もスタジオ録音されていて、いつか日の目を見る、ということを祈りつつ...
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