「回遊美術館」とは聞いたことがない美術館だ。一体なんだろう?

私が住んでいる池袋西口一帯、40に上る街角で、3月下旬に、こじんまりした美術展が開かれた。
今をさかのぼること70年前1940年頃、「池袋モンパルナス」という画家を中心とした芸術家の集まりがこの界隈にあったという。これ等集落は「パルテノン」と呼ばれていたらしい。

その文化的な意義をを回顧し、がさつな池袋を少しでも、レベルアップしようとする意図で豊島区が中心となって開催された街角展覧会だ。
私は豊島区の住民だが、3日間かけてその一部を回ってみた。午後から2〜3時間かけての散策だ。老人の?暇つぶしにはもってこいだ。いろいろ面白い発見をすることができた。



関連記事はこの絵をクリック

第一日目 3月23日木曜日 午後
まず資料を集めるためにアトリエ村資料室(西部区民事務所)へ向かった。自宅から近い。
ここで展示場のマップを貰い記念の絵葉書などを購入した。
いくつかの資料を見て知識を得ることが出来た。

後は会場を効率よく回るだけだが、いくら閑人でも、40箇所は回れない。
モンパルナスに直接関係がありそうな展示場、数箇所に絞ることにした。
期間中1時間おきにマイクロバスが運行されていたが、勿論総てテクシーだ。乗り物で回っても意味がない。

最初に城西大付属高校での展示を見た。
この近くには当時「さくらが丘パルテノン」と呼ばれていたアトリエ村があったところだ。何点かの油絵が展示されていた。
全体的に暗い感じの絵が多かった。

  ギャラリーいがらし
旧アトリエ村の近くにある画廊
ここで「池袋モンパルナス展Y」が
開かれ、数点の絵が展示されていた

アトリエ村といわれる住居は、当時この界隈に数箇所あり、それぞれが集落を形成していたようだが、居住者は延べ500名近くに達していた。規模の大きい特殊な集団だった。

その中に一人知っている人が居た。鶴田吾郎画伯だ。
戦場絵が多いといわれている画伯だが別の面を知ることが出来た。

二日目  3月24日 金曜日 
二日目は豊島区の「郷土資料館」と「立教大学」の展示を見た。

資料館の展示物は流石に興味深いものがいくつかあった。油絵を中心に展示品も10数点あったが、興味をそそられたのは当時の写真だ。
数は少なかったが、眺めていると当時の売れない芸術家の貧乏な生活だが、ある反面、デカダンスで自由気ままな生活ぶりを垣間見ることが出来た。



立教大学内にある11号館での展示と太刀川記念館の展示を観て回った

この日は立教大学の卒業式を翌日に控えてチャペルで卒業礼拝が行われていた。
校内を見渡すと、学生の姿はまばらだったが、3時過ぎごろ校歌斉唱が、どこからともなく聴こえてきた。
礼拝が終ったのかもしれない。しばし青春の懐かしい想いに耽った。

私はこの学園に中学から大学まで10年間を過しているので、隅からすみまで良く知っている。久し振りに校内をブラブラ歩いてみた。

赤レンガの建物は保存状態も良く50年前と殆ど変わっていないように思えた。

三日目  3月25日 土曜日
この日は西口の噴水広場で記念バザールが開かれていた。土曜日で春の陽気に誘われたように多くの人々が集まっていた。似顔絵コーナーなどがあり大学の漫画クラブの学生が似顔絵描きに精を出していた。
結構にぎわっていた。覗き見してみたが流石になかな手馴れており、うまいものだ。
メンバーは女子学生が多かったが、スケッチは私よりはるかに達者だと感じた。

東武百貨店で「モンパルナスの継承展」を観る
6階にある美術画廊で終生豊島区にアトリエを構えて創作を続けた2人の巨匠の作品を観た。
油絵の吉井忠展と熊谷守一書画展である。吉井氏の作品は油絵だが中には100号を超える大作も展示されており非常に見ごたえがあった。力強く、インパクトがある作風であるように感じた。


熊谷守一氏は絵画で有名だが、ここでは書画が展示されていた。氏の美術館が家の近くなので代表的な作品については観た事があるが書画はめずらしかった。

左は展覧会場の美術画廊入り口付近
右の絵は東京芸術劇場のロビーに
今回の展覧会を主催した高野区長が
出展していた作品の一つ



モンパルナス・アトリエ村の散策コースへのリンク
Netで発見したものだが、残念ながら今はアトリエ村の痕跡はどこにも見当たらない。
訪問してみる価値があるのは、自由学園明日館、熊谷守一美術館、江戸川乱歩邸などだと思われる。


レンガ造りの校舎はそのままで一幅の絵になる。
しばし見とれていた。
左は当時「学食」といわれていた食堂であり
上の写真はクラス単位で授業を受けた教室だ。
紅梅が美しく咲いていた。

これはテーマとは関係ないことだが…
★郷土資料館に掲載されていたアトリエ村の写真
売れないゲージュツ家達は、毎晩のように酒を飲み、中には例の「♪ よーかチンチン、よか○○… 見れば見るほどヨカ××…♪」などと、「ヨカチン節」と共にハダカ踊まで飛び出す大賑わい。貧乏ながら愉快だったらしい。

製作中の写真

アトリエ村(明り取りの天窓が見える)