愛知万博見聞録

6月の6〜7日にかけて奥方と「愛・地球博」に出かけた。これはそのときの率直な感想だ。お世辞にも快適な見物だったとは云えない。私に言わせれば我慢、忍従の2日間だった。

そもそも何で見物に出かけたかだが、その一つの訳は今まで一度も見物したことがないということと、もう一つは、かつて転勤で、万博会場に比較的近いところに住んでいたことがあり、懐かしさもあったからだ。
連休も過ぎたし、6月初旬は気候もまあまあ、多分夏休み前で一番空いているだろうと思っていた。

5月20日過ぎに、、ホテルや交通機関のの予約をしようと、いつも利用しているTトラベルに出向いたが、名古屋市内で駅周辺から栄にかけての有名ホテルはいずれも予約で満杯との事、勿論、ウイークディを指定したが、いずれもダメだった。
四方八方探してくれた担当者の話では、シングル2部屋なら空いてるところもあるが…という。もともと名古屋市内のホテルはツインルームの絶対数が少ないのだそうだ。
結局便利な駅周辺はあきらめ、名古屋港に近い、笠寺のワシントンホテルにやっと予約することが出来た。
当日着いてみるとホテルは宿泊客で混んでいた。
万博会場は「長九手」と「瀬戸」の2ヶ所に分かれているが、見物したのは規模の大きい長九手会場だった。

最寄の駅は?
名古屋から会場までのアクセスは豊富だ。JR、地下鉄、高速バスと何でもござれだ。私は3年間在住していたので土地勘は十分ある。

旅行社で予め往復の乗車券をセットしてあったので第一日目は、それに従い、JR中央線で万博八草駅まで行き、「リニモ」に乗り換え二駅で万博会場駅に到着。このリニモは新設された交通機関で総てコンピューター制御による自動運転である。東京の新橋からビッグサイトへ通じている「ゆりかもめ」とほぼ同じだと思えばよい。いつも混み合っているがなかなか快適だ。





(注・以下の写真はサムネイル)


JR八草駅ホーム

改札付近


リニモに乗り換え

北ゲート

北ゲート内部

入場するまでが一仕事

ゲートは北と西の2ヶ所にあったが、西はバスターミナル専用で、主として観光バスで乗り付ける人々が出入りするケーとであった。我々のような公的交通機関利用の見物客は北ゲートから会場に入ることになる。

初日は午後からの入場だったので、持物などのセキュリティチェックも比較的短時間で済んだが、翌朝開門を待たず、朝から出かけたときには中に入るまでに小一時間かかった。入り口は結構多いが、朝一でお目当てのパビリオンに入るため押しかけるお客さんの数は多く、長蛇の列だった。まずここでジーと我慢の子だ。とにかく蒸し暑い。くたびれる、いらいらする。早くしてくれぇー!と叫びたくなった。
やっとゲートが近づいてきた。突然すぐ後ろのほうからオッサンの野太い怒鳴り声が聞こえてきた。
係員が各自持参の飲料の入ったペットボトルの持ち込みはダメ!…と注意したのに対しての言い争いだった。オヤジは引き下がらなかった。大声で理由をはっきり言え!と怒りまくっていた。係員はダメな理由を「ペットボトルの中身はガソリンかも知れないから…」と反論していたが、言い争いはなかなか収まらなかった。
周りの人々はニヤニヤ笑っていたが、炎天下の見物にはペットボトルの水分は必需品だ。私たちは前日このことを知っていたので事前に準備せず、会場内で買うことにしていた。知らない人の怒りはよくわかる。
入場した途端にもう会場を一回りしたような疲労感を感じたよ。
確かにどこで何が起きるか判らない物騒な世の中だから厳重警備もわからないではないが、チト行き過ぎじゃねえのか。日本人には会場で爆発させたりするワルはいねぇよ。ペットボトルの水を
「ガソリンじゃねえか…」などというのは全くおかしなイチャモンのつけ方だよな。
大体会場内のモノは総てが高くて不味いので有名ではないのかね?首相の鶴の一声で「メシ」だけは持ち込んでもいいんだってな!!

押し寄せる人の列
この頃一日の来場者数は、おおよそ日に15万人〜17万人と云われていた。

夏休みに入るともっと増えるだろう。
お目当てのところを確実に見物するには
予約制度を利用するのも一つの方法だと思う。


企業パビリオンゾーンは長蛇の列
結局何一つ入らずじまい。待ち時間が150分から250分もあるのではね。如何に閑人でも付き合いきれないよなぁ。

到着早々「グローバルコモン6」の人ごみを見てイヤになりゲート近くの企業グループのゾーンへ引き返したが、一番混雑していたのはHグループのパビリオン。中に入るまでナント280分待ちだとさ。すぐにあきらめた。整理ががりの女の子が申し訳なさそうに「実は今日システムトラブルがありまして…」と言い訳していた。ウソだろう。この日にわが国の「エライサンの面々ご一行様が、ご視察あそばした」ので我々一般客が割り食っただけだ。
最初から人気のパビリオンは無理だと思っていたがその通りだった。「冷凍マンモス」などは元々興味がなかったからどうでもよいが、何かわが国企業のパビリオンに入ってみたかった。残念!(以下写真はサムネイル)


オセアニア各国

電力館

超伝導リニア館

夢見る山

トヨタグループ館

日立グループ

入場待ちの行列


目の前に開けるセンターゾーン(お粗末なパノラマですが…)
右奥がグローバルハウス、この近くに有名な冷凍マンモスラボがある。眺めは大変よろしく吹き渡る風も心地よかった。北駅からゴンドラに乗ると10分足らずで南駅に到着する。全会場を俯瞰できるので万博の全体像がよくわかる。実に広大なものだと改めて感心した。


見物した外国のパビリオン
<インド館>
館内は広く、インドの物産品が展示された、薄暗い、らせん状の通路を登ってゆくと、最上階は物産店が所狭しと出店し、みやげ物の売り込みに懸命。
大体1000円程度から。特に木彫りの象が目についた。民族衣装のサリーをまとった現地スタッフの女性はスラリとして美人ぞろいだった。


その他見物したところ
主としてグローバルコモン1(アジア)と4(ヨーロッパ).であり、数カ国のパビリオンに入った。入口で少し待たされたのはインド館だけで後はスムーズに入ることが出来た。もう一つゆっくり見たのはポーランド、館内で20分程度のパノラマ映画を映写し自国を紹介していた。これは分かりやすくて面白かった。
いずれも一度旅行してみたかったが果たせなかった国々だ。特にピアノの詩人、ショパンを生み、片やナチスドイツによる100万人もの罪なき人のガス室送りという、身の毛のよだつような、戦慄すべき殺戮を受けた悲劇の国、ポーランドには深い関心を持っていた。この国で岩塩が生産されていることを初めて知った。その他は中に入ってもざっと一巡しただけで何ら印象に残っていない。(以下写真はサムネイル)

本来ならこの万博のコンセプトは日本館の中にあると思われるが中は見物できなかった。竹で編まれたかごのようなものですっぽり包まれており、これによって内部温度は2〜3度は下がるのだそうだが、先進メーカーのロボットによる吹奏楽とか未来の夢の乗り物とかのパフォーマンスと共に、地球未来へのメッセージだと感じた。

イラン館

イエメン館

グローバルコモン4

ウクライナ館

西ゲート



日本館

色々な乗り物
広い会場なので移動のための乗り物がいくつかある。主たる交通手段は以下のようなものだが、これ以外にも「自転車タクシー」がある。
自転車は別として、これらの移動手段は一通り試してみた。面白く本格的な乗り物だと思ったのはトヨタが開発したIMTS(インテリジェント・マルチモード・トランジット・システム)である。これは会場中心部をぐるりと回るグローバルループという環状軌道を運行している大型低公害バスだ。
燃料は圧縮された天然ガスで総てITによる自動運転、乗り心地もよく、万博の諸料金がいずれも高い中にあって、めずらしく料金も200円と安い。
会場内の女性のガイドさんが、親切に「これが一番安いのでお得ですよ」と勧め、乗り場まで丁寧に教えてくれた。老夫婦の懐具合を心配してくれた??のだ。


キッコロゴンドラ乗場

グローバルトラム

IMTS
万博の帰り道で
二日目の午前中に見物を切り上げ、今度はリニモで反対側の終点、藤が丘へ向かった。
ここは名古屋地下鉄、東山線の終点でもある。途中左下に西ゲートの広大な観光バスターミナルが見えた。バスが一杯並んでいた。多分深夜か早朝のバスで来場し、日中見物をしてまた夜行バスで帰るのだろう。

かつて3年間ではあるが、勤務の関係でここから名古屋方面に向かって3駅目の「一社」というところに住んでいたことがある。ここは新興住宅地だったが、久し振りに立ち寄ってみた感じでは余り大きく変わった様子はなかった。発展性には乏しいように感じたが落ち着いた街の様子に懐かしさを覚えた。駅は薄暗く汚れた印象を持ったが当時のままで、3年間毎日のように、名古屋駅の一つ手前の「伏見」というところまで通っていたのだ。あれからもう30年以上経ってしまった。居住していた小さなマンション付近をぶらぶら散歩したがこの日はひどく蒸し暑かった。
これから夏休みなどの見物は混むし、暑くてさぞかし.大変だろうなぁ!と思った。

愛知万博も余すところ2ヶ月、多くの反対を押し切って開発した長久手や瀬戸会場の自然豊かな跡地は、今後どんな利用がされるのだろうかとちょっぴり気になった。
久し振りに名古屋駅に降り立ち、昔懐かしい「きしめん」なども口にしたが、コンコースはすっかり近代化されていた。各店舗の造りや雰囲気も東京のコピーで、キレイになり、名古屋らしい個性が消えて面白みがなくなったように感じた。
今は名古屋に限らず、どこも彼処も画一的な「駅ビル」とやらが建ち、同じスタイルで同じような品物を売っており土産などは買って帰る気は起こらない。
(05/07/31作成)