都電・荒川線沿線の散歩

始発駅の早稲田
久しぶりにチンチン電車に乗ってみた。今や都内でもこの手の路面電車はここだけになっている。レトロな懐かしい乗り物であるが、今はこの車両も近代化されている。外観で一番違うのはパンタグラフである。昔はポール式のもので先端に小さな車が付いていた。しかし、発進の時には昔懐かしいチンチンというベルを鳴らす。

新宿区の早稲田から荒川区の三ノ輪まで約13キロの行程で時間にして一時間足らず、この間30ほどの停留所がある。
乗ってみて感じたことは、日中なのに意外に混んでいることで、買い物の主婦や子供、中学生らしい生徒、我々のようなシルバー世代の人、が頻繁に乗り降りし、結構利用者は多いようだ。
庶民の足として定着しているな‥と思った。
雰囲気は庶民的でざっくばらん。庶民の生活の息吹を感ずることができる。ヘンに急いだり、ぎすぎすしたところがなくのんびりムードがよい。
出発点の早稲田はやや不便なので自宅に近い東池袋から乗車した。
ロールオーバー効果
古色蒼然とした拝殿
画面をポイントしますと「ススキミミズク」が現れます。


明法寺山門
閑静、桜の季節は素晴らしいだろう。
雑司が谷の鬼子母神
詳細地図へのリンク

池袋の東口から10分ほど歩くか、都電の鬼子母神前で下車する。
この神社のパンフレットはなかなかよくできている。冒頭にこの神社を紹介しているが、その出だしは「ビッグターミナル池袋駅から最先端のファッションで彩られた街並みを抜け雑司が谷界隈へ、緑濃い参道から境内へ入るとそこはもう別世界です‥」とある。そのまま拝借。

ここに祭られている神様のルーツはコワイ。インドの女神で、自分は沢山子宝に恵まれたにもかかわらず他人の子供をさらい片っ端から食べてしまったのだ云う。その後釈迦に諭され改心し「安産の守り神」になったのだというが‥  

神社の境内はかなり広く快適。しばし石段に腰かけぼんやりと時を過ごす。敬意を表そうと木でできた拝殿を上る。拝礼をして社務所をのぞくとなかなか味のある絵馬を売っていた。
また、この辺だけしか売っていない郷土玩具がある。「すすきみみずく」というものでススキで作ったミミズクである。これは素朴で面白い。
近くの店で手作りし、売っている。
すぐ近くに本家本元の明法寺という古いお寺があり、帰りがけにそこに立ち寄るのも一興である。桜の季節は素晴らしい景観だろう。


とげ抜き地蔵 正式名称は高岩寺

商店街
とげめき地蔵
数駅先の庚申塚で降りて10分ほど歩くと「おばあちゃんの原宿」といわれている巣鴨地蔵商店街に着く。いつでも混雑しているが、「4の日」の縁日の日となると、じぃちゃん、ばぁちゃんが大挙して押しかける。「とげ抜き地蔵」はその中心にある。
今でも境内左手の「身代わり地蔵」に、自分の体の悪い所と同じ場所に水を掛け、擦ってあげると自分の悪い場所が良くなるという言い伝えを信じ、病気を治そうと祈る人が絶えず訪れている。
ご本尊もさることながら近くの商店街には元気でチャーミング?なおばあちゃんが盛んにショッピングを楽しんでいる。活気があって面白い。商品はいずれも安く豊富である。ここには「昔の美女??」が大勢いらっしゃる。
「昔はきっときれいだったのだろうなぁ」などと思いながら、同年代の愛すべき「ばあちゃん」の顔を覗き込んでしまう。

原宿といえばかつて勤務先が青山にあり、帰りがけなどに時々竹下通りからぶらぶらしたことがあるが、ここは勤め人がうろつくところではなく、若者というより異星人が跋扈している街であるとの印象を持った。とにかくヒドイ違和感を抱いたが、巣鴨のハラジュクは真に我々向きで楽しい。
この商店街には何でもある。食べ物では自家製のせんべいを売っている店が多い。名物は塩大福だそうだ。
古奈屋という『日本一カレーうどんがうまい店」もある。店内はカウンター席だけで行列は覚悟のこと。味はまろやかでコクがあり美味い。
但し、私の食べたのは最近東武デパートのグルメ街に進出した支店の味である。

帰りがけに境内の前の屋台で七味唐辛子を調合してもらい土産に買ったが、柚子の粉が入っており、なかなか風味がある。

北区飛鳥山公園の広場




かつての荒川線の都電


飛鳥山公園
下車すると目の前に小高い丘がある。桜の木が沢山あり、東京の花見の名所の一つである。
明治の初期に開設された歴史のある公園だが、この地を桜の名所に仕立て上げたのは、八代将軍徳川吉宗で、約280年前、吉宗が享保の改革の施策のひとつとして、江戸っ子たちの行楽の地とするため、飛鳥山を桜の名所にしたといわれている。当時、桜の名所地では禁止されていた「酒宴」や「仮装」が容認されていたため、江戸っ子たちは様々な趣向を凝らして楽しんだらしい。なかなか話のわかる殿様だ。
公園としてはごくありふれたものだが、木々の緑が美しく余り人工的でないのがよいと思った。つつじやアジサイなども豊富だ。

ここでの見所は北区が建てた三つの博物館である。
まだ新しいモダンな建物が連続して建っている。ハコ物ブームのときに区が税金で建てたものらしいがなかなかしゃれたものである。
しかし、大きな財政負担になったのではないかと勘ぐってしまう。ここを訪問したら一見の価値はある。
特に興味があったのは「渋沢栄一史料館」である。彼が生前住んでいたことがある旧邸宅があり、それを記念して建てられたものである。
彼の人となりや業績については今更云うまでもないが、明治、大正、昭和初期を通して、日本の近代経済社会の発展に寄与したとされる。
彼は官から民へと転進し、銀行まで創設したが今生きていたら銀行危機の現状をどのように見るのだろうかと想像してしまう。
史料は数が多く興味深い。疲れたら旧渋沢邸の庭園が一望できるコーナーで休むと別天地に来たような気分になる。入館料は300円。
公園の片隅に蒸気機関車D51と、かつての都電が昔の姿をとどめ保存されていたが懐かしく感じた。
今回は手始めに3か所だけを巡ってみた。いずれも見所が多いため半日はかかる。急ぎ足で二箇所が限度。
この沿線には他にも面白そうなところがあり、又別の機会に探索してみたい。
先日、土曜日の10時半ごろ6チャンネルを見ていたら、「ぶらり途中下車のたび」という番組が放映されていた。
リポーターは俳優の目黒氏で、やはりこの沿線の旅であった。
下車駅は、荒川の尾久、北区滝野川、などであったが、いずれも面白そうなところだった。 もどる