第59回 グローバル化社会の教育研究会のご案内
桜の便りが各地から届く季節です。 皆様 いかがお過ごしでしょうか。

  さて、第59回グローバル化社会の教育研究会(EGS) は、長年 海外子女教育・国際理解教育実践の先頭に立ってこられた 多田 孝志先生に 話題提供をお願いしました。 多田先生は、昨年3月に目白大学を退職され、現在は 金沢学院大学で 新学部設立準備に当たられています。
  多様な考え方や文化が日常生活に押し寄せ、急激なグローバル化が進む中で、教育現場は若者たちに何を育めばよいのでしょう。 既に 「先生の言うことを聞きなさい」 という教育が限界にきており、答えが一つの時代は終わりました。 たくさんある解決法の中から自分の答えを見出す力が望まれているのです。
  「21世紀型教育」が流行語になっているようですが、多田先生は、欧米にはない日本人独特の「相互扶助の精神」や「感性の豊かさ」 を活かした教育の展開を、身をもって示して来られてもいます。 「学びの方法をしっかり確立すれば、誰でも力を出せる」 という手応えを 一緒に体感しましょう。
開催日時 :  2017年 4月28日(金)  午後2時〜4時半
開催場所 : 波 多 野 フ ァ ミ リ ス ク ー ル
(東京都新宿区下落合2−14−22 Tel.03-3954-3211)  地図
       * JR山の手線「目白駅」より徒歩5分
研修テーマ: グローバル時代の学びを考える---
            対話型授業のエッセンス と可能性
(仮題)
 (1) 話題提供: 多 田 孝 志  (金沢学院大学 教授/目白大学 名誉教授
              /日本学校教育学会 会長)
東京学芸大学教育学部を卒業後、東京都の小学校教員に。 1976年からクウェート日本人学校、1979年からベロオリゾンテ補習授業校に赴任。 1992年 目白学園中学・高等学校教諭。 1995年 カナダ西バンクーバー中等学校に研修留学。 1998年から目白大学で研究の傍ら教鞭を執る。 2009年 児童教育学科長、2011年 人間学部長。 2016年から目白大学名誉教授、金沢学院大学教授。 日本グローバル教育学会理事、学習スキル研究会代表。 著書に 『「地球時代」の教育とは?』(岩波書店)、『共に創る対話力グローバル時代の対話指導の考え方と方法』(教育出版) ほか多数。
 (2) 自由協議: 話題提供の後、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。
参 加 費: 1,000円(運営費)
申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   

『小山の教育通信』 2017年 5月
  長年、海外子女教育・帰国子女教育の現場をリードしてこられた 多田 孝志 先生 (日本学校教育学会 会長) が 昨年、『グローバル時代の対話型授業の研究』 という博士論文を まとめられました。
  グローバル時代の教育の基本も、健全な批判精神と柔軟性を育てることにあります。 アクティブ・ラーニング等は、子どもが “深い学び+学ぶ喜び” にまで至ってこそ、それが有効に機能したといえます。 学力の 「世界標準化」 への疑義が生じる一方で、教師も生徒も疲れてしまっている現状は、悲しい事態です。 理念や先例のみに囚われ、目の前の生徒への 「具体的な手立て」 や 「実践から生起する理論」 が疎かになっている例が 多いようです。
  多田先生は、異なる存在との 「動的な境界への眼差し」 を持ち、相互浸透の “場” を創ることの大切さを話されました。 日常的に 様々な対話機会を創ることで、自分自身が深まったり 変わったりする… そして 他者と協同して何かを創り出す… という原点を、しっかり見つめましょう。 最近は 『教師も楽しむアクティブ・ラーニング! 』 といった講習も開かれるようになっていますが、“生徒も先生も元気になれる授業の作り方” には、伝統的な教育技術が たくさん含まれています。 要は それらを、どういう視点で構築し直すかです。


『月刊 海外子女教育』 2017年 6月号ニュース欄
  4月28日、59回目となる 「グローバル化社会の教育研究会」 が波多野ファミリスクール(東京都新宿区)で開かれ、「二十一世紀の教育を考える」 をテーマに、金沢学院大学教授・目白大学名誉教授で日本学校教育学会の会長でもある多田孝志氏が話題提供を行い、来場者が意見を交換し合った。 教育関係者や帰国生の保護者などを中心に約20人の参加があった。
  多田氏は 東京都の公立小学校に勤務していた時代、クウェート日本人学校やベロオリゾンテ補習授業校に派遣教員として赴任し、その後、目白学園中学校・高等学校の教諭も務めた。カナダの中等学校に研修留学した経験もある。
  氏ははじめに、日本の教育改革は遅れていると指摘し、22世紀に持続可能な社会の担い手を育む必要性を訴えた。
  人工知能やバイオテクノロジーなどが飛躍的に発展し、世界のグローバル化が急速に進むなか、これまでの記憶力に頼る学力ではなく、創造的・協働的な活動を創発し 「想定外と向き合い、乗り越えられる力」 をつけることが求められていると述べた。
  また、PISA等、学力の 「世界標準化」 の動きに対し 「計測できる狭い面だけを強調して、道徳的、市民的、芸術的発達は測定されていない」 との疑義について触れた。 理念や先例のみにとらわれ、教師も子どもも疲れている、教師は目の前の子どもに向き合う余裕がなく、子どもは考える習慣や個性が剥奪されているのではないかと、その現状を紹介した。
  そして、教育は 「教える」 ものではなく、学ぶ喜びに出会わせるものとし、異なる存在との 「動的な境界への眼差し」 を持ち、相互浸透の 「場」 をつくることの重要性について語った。
  さらに、教師は企画者・支援者・競走者・先導者・学習者の顔を持ち、子どもの 「いま」 を見取り、先を見据える力を持つことが大切であると述べた。
  講演の最中には、「考える子どもに育てるためにはどうしたらよいのか」 自分の考えを書いたり、参加者同士で討論したりするひとときがあったりと、来場者が主体性を持って参加する時間もあり、会場は終始一体感ある温かい雰囲気に包まれた。
  質疑応答では 「子どもだけで高みを目指すことは可能か」「日本の教育学部の教員養成カリキュラム等は変わってきているのか」 等の質問があったほか、「異文化の人への理解を深めるには いっしょに生活することが大切」「教師は子どもの伴奏者、コーチングのような姿勢が今後はますます求められるのではないか」「教員がいちばん大切にしないといけないのは教材研究。 ほかのことでいそがしくて発問の研究などができない現状は改善しないといけない」 等の感想が聞かれた。

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