9位:ヴァンパイア十字界 (C)
そうだな、まずは経緯から順に話しておこうか。そもそもオレは、本作以前にガンガンで連載していた『スパイラル』の大ファンだったんだよ。
また『スパイラル』のファンであると同時に、オレはその影響で原作者である城平さんのファンにもなった。そのため彼の書く小説版スパイラルや、マンガとは関係ない彼の著書(推理小説)も読んだりした。そしてその結果、オレはますます彼に惹かれるようにもなったわけだ。
だがそんな折、オレの心に多大な衝撃を与える…というのは大袈裟だが、ともかくひとつの事件が起こった。要するに、『スパイラル』が最終回を迎え、連載終了になってしまったんだ。そりゃマンガがいつか終わるのは当然で、特にガンガンなら尚更だが…しかしながら、やはり好きだった作品の終了に対しては悲しい思いを抱いていた。エンディングを体感した満足感と、終了を実感した空虚感が、心の内で同居しているような状態だったんだと思う。
オレはそれからしばらく、その脱力した心を埋めることができる「何か」をずっと探していたんだが…ついに、それを見つけたんだ!
そうとも…それこそが本作『ヴァンパイア』だったという話さ!! 『スパイラル』と同じガンガンで、城平さん原作の新連載が開始する。その噂を聞きつけた瞬間から、オレの心は期待と不安で満杯になった。それほどまでにオレは、真に「飢えていた」んだと思う。
ともかく漫画家さんこそ違えど、やはり城平さんが原作ということで、期待が膨らんだ本作。だがオレは元来、「そういった部分だけ」で作品を評価することを好まないタチだ。要は「鳥山明さんが描いたから面白い」だとか、「FFシリーズの新作だから面白い」だとか、そうやって作品の内面をよく吟味しないまま「外面の先入観のみによる判断」を行なうことは、正しい選作眼を曇らせるという考えのためである。同様にして「○○だからつまらない」といった薄っぺらな批判もしかり。やはり何事に関しても、きちんと「中身で評価する」ことが大事というのはオレの持論だ。
ゆえにオレも、「城平さんが原作なんだ!」というだけで盲目的に本作の信者になろうとは思わなかった。むしろ好きな作家さんだからこそ、普段よりも慎重に読んでいこうとさえ考えた。もちろん、その思考が平等性に欠ける逆差別的なものであるとも理解した上でだ。
だが結局、そんな小賢しい脳内理論などもはや杞憂…無用の勘ぐりだったと言っていい! 原作者が誰だとか、そんなことは関係なく…本作は本当に面白かったんだよ! だからこそ今では、『スパイラル』に勝るとも劣らないレベルの大好きマンガになっているのだから!!
なにより本作の魅力は、決して『スパイラル』の二番煎じというか、似通った作品ではなかったということ! それでいてプロットの綿密さや、伏線の巧みな配置方法、精巧に組まれた美しいシナリオ等…そういった部分に関しては両作ともに高水準で、それこそ流石は同じ原作者さんとでも言うべきか! 読んでいて感動・感銘・感嘆の限りを尽くす作風には、やはり心の底から魅せられた。そもそも「SF」と「ミステリー」という、本来は相容れないハズの要素を同時に詰め込んである本作は、まさに一粒で二度美味しいマンガ! エンディングの美しさにも、見惚れずにはいられなかったな……。