ドカポン・ヘル
つづき。
オレ、F志、Bっち、F田。接戦の3人も、そうじゃないひとりも、ここに至ってはもう関係無かった。夏休みの数週間、オレたちは延々とこのゲームに没頭してきたのだ。
そこに至る過程は、もはやひとつの物語のようでさえあった。既に悔いなどない。3人のうち誰が勝つのか、オレたちはただそれだけに意識を集中させていた。
各々100万ほどの差しかなく、資産3000万前後で並ぶ3人。発表されていくスペシャルボーナス。
「一番宝を取ったで賞」・・・Bっち、200万G。「一番ボスを倒したで賞」・・・F田、400万G。次々と発表されていくボーナス。オレたちにも、今誰が1位なのか全くわからなかった。
きっと、3500万ほどでまたも全員横並びだろう……
オレ以外の3人も、胸中では恐らくそう思っていたことだろう。
……そんな折、ついに最後のボーナス発表の時が来た。そのタイトルは、「一番死んだで賞」。
皆が、最下位だったひとりの方に微笑みながら首を傾けた。「あ、お前にも取れるボーナスがあったじゃん。良かったな」と、笑顔で言う3人。「はは、これで2000万Gとか貰って皆と並んだりしてな」と、冗談を飛ばす最下位のひとり。
もちろんそれは冗談だし、最下位のヤツ当人にとっても自分の勝敗などもはや眼中には無かった。ただ3人のうち誰がこの戦いを制するのか。皆がその答えだけを求めていたんだ。
ともかく、それが最後のボーナス発表だった。後は結果を待つだけだ。そういえば、結局「一番死んだで賞」の報酬は何Gだったんだ? むしろペナルティでマイナスGだったりするのかな?
そんな何気ない気持ちで、オレたち4人は画面を見た。
「一番死んだで賞」・・・70000000G。
なんだ、700万か。思ったより高いじゃん、良かったな。
……いや待て。
ひとりの表情が凍りついた。「これ……7000万Gだよ」
………。
ふっ……ざけるなあああああっっ!!!
結果発表! 4位:3400万G! 3位:3500万G! 2位:3600万G! 1位:7000万G!!!!
2位と2倍差、ダントツ優勝はそれまで最下位だったその男ッ!!
……。優勝した者も含め、思わず放心する男4人。テレビの中では優勝を喜ぶキャラクターの笑顔。カーテンコール。
「このゲーム……。もしかして死んだもの勝ち……?」……誰かのそんな呟きが聴こえた。そして、オレはゆっくりとプレステの電源を消した。
あの瞬間にオレたちは誓ったよ。
もう二度と、このゲームは起動しないということを。……完。
ええと、これは完全実話です。その回りまわった憎悪にも近い愛着が頭から離れないので、このゲームはこんな順位にいるわけですね。
まあ、一応本編のプレイ中は楽しかったわけだし……(遠い目)。
まあベタベタなオチとしてお分かりかと思いますが、その最下位……もとい優勝した男というのはオレです。
ああ、う〜ん、なんというか、その……。オレたちの中では良い意味でも悪い意味でも、このゲームは(真の意味で)伝説ってことですよ。