第十話:お前は今までに知った台詞の個数を覚えているのか

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【今回の登場人物】

オレ:『ジョジョ』は周りの影響から読み始めた。現在6部まで読んだ中では、大の5部ファン。

カム:オレに、初めて『ジョジョ』単行本を貸してくれたのがカム。3部が好きだがナランチャのファン。

フクタ:古くからの『ジョジョ』ファン。若かりし頃のジョセフも、老いてからのジョセフも変わらず好きという。

マーク:『ジョジョ』では4部のファン。狭い空間の中で繰り広げられる、独特の雰囲気に惹かれたのがその所以らしい。

  ――― ■■■ ―――



オレ「2ちゃんとかネットだとさ、ジョジョ厨・刃牙厨・カイジ厨の三強が手に負えなくてタチ悪いらしいね」

マーク「SEED厨はどうなんだよ、ナツキみたいなよォ?」

オレ「死ね! …いや、『SEED』はもともと批判が多いから、逆に大したことないんだろ」

マーク「ああ、『ジョジョ』とかはもとが人気だから?」

オレ「多分ね。だから厨が騒いでても、数が多すぎて対抗できないんでしょ」

フクタ「でも『ジョジョ』だって、実はけっこうマイナーみたいだよ」

カム「え、そうなの?」

フクタ「好きなヤツは好きだけど、『ドラゴンボール』みたいにメチャクチャ広まってるわけじゃないからね」

マーク「結局『ジョジョ』も、コアなファンだけが支えてるんでしょ?」

オレ「まぁ…そうだよな。『刃牙』とか『カイジ』にしろ、絶対に万人向けじゃないし」

フクタ「全部に言えることは、絵が濃いってことだな」

オレ「それは言えてる(笑) っていうか、だから人を選ぶんだろ」

マーク「おれも昔は、『ジョジョ』の面白さが全然解んなかったもん。小学生の頃は」

オレ「でもあの頃、学校でも一応流行ってなかったか?」

マーク「いや、それこそメチャクチャ狭い範囲でしか流行ってなかったよ」

オレ「オレは、チンがチャリオッツの真似してポーズ取ってたシーンばかりを思い出すんだが(笑)」

カム「俺もそれは覚えてる。鬼ごっこで、アイツが鬼のときでしょ?」

オレ「でもマークが面白さ解んなかったってのも、やっぱ絵が嫌いだったから?」

マーク「いや、絵はそこまでじゃなかったけど、やっぱり解り辛かったし。話とかも」

カム「『ジョジョ』は年取ってから読まないと、あんまり面白くないでしょ」

オレ「まぁ、テーマが深いからね。正直、ノリだけで楽しんでる人も多いんだろうけど」

フクタ「ただノリだけでも楽しいってのは、やっぱり『ジョジョ』の凄いところだと思うね」

オレ「かもな。…ああ、そういえば『ジョジョ』に関して、この前面白い話を聞いたんだよ。ネットで」

マーク「それがジョジョ厨の話?」

オレ「いや、また別の話。ほら、《だが断る!》ってあるじゃん? 露伴の」

マーク「あるけど、それが?」

オレ「ポルナレフのありのまま話すぜ! …ってのもそうだけど、露伴の台詞もかなり有名でしょ」

マーク「まぁ、むしろ『ジョジョ』を読んだこと無い人でも台詞は知ってるかもな」

オレ「そう、それだよ。台詞だけが一人歩きしてるっていうか、『ジョジョ』を知らない人も、台詞はネタとして使ったりするじゃん」

カム「それがムカつくって話?」

オレ「いやオレが言ってるんじゃなくて、ブログに書いてあった話ね(笑) …あと別に、使うこと自体がムカつくってことじゃなくてな」

マーク「どういうこと?」

オレ「要するに台詞のイントネーションっつーか断片的な情報しか持ってないから、そもそも使い方が間違ってるっていうわけよ」

カム「台詞の使い方を?」

オレ「そう。例えばさ、ブログにバトンが回ってきたりしたとき、他人に回さない人もいるわけじゃん」

マーク「うん」

オレ「そんで、このバトンを5人に回してください…とかいう質問に対して、だが断る! って答える人もいるとか。『ジョジョ』知らない人が」

マーク「ノリで答えてるってことでしょ?」

オレ「ああ。答えてる方はそんな難しいこと考えてなくて、ただノリで書いてると思うんだよ。だけどその人は、その状況に一言いいたいらしくて」

カム「なんて?」

オレ「つまり《だが断る!》っていう露伴の名台詞は、ただ否定の意味で使うだけの言葉じゃないってことね」

マーク「ん?」

オレ「ほら、あのシーンはギリギリまで、露伴が相手の言い分に従った方が賢い選択だってことを説明してたでしょ」

フクタ「ああ、うん」

オレ「そんでもって、そのうえで《だが》断る! って言い放つからこそあのシーンは名シーンだし、名台詞だっていうわけよ」

マーク「なんか熱いな、ソレ(笑)」

カム「普通に断るってときには、その台詞使うなってことか」

オレ「要約すると、まずは断らない素振りというか、これは断る理由ないだろっていう態度を最初に見せるべきだ…ってこと」

マーク「だけど、それでもあえて断る! …ってときだけに使えと」

オレ「多分、言いたいことはそういうニュアンスなんだと思う」

マーク「へぇ…」

オレ「どう思うよ?」

マーク「そうだな…ちょっとこだわりすぎじゃね?」

フクタ「それくらいは、放っときゃいいと思う」

オレ「まぁな。オレも基本的にはそう思う。そういう押し付けは、ファンのエゴみたいに感じることもあるし」

マーク「そりゃまぁ、言ってることは解らなくもないんだけどね」

オレ「いや、オレも正直、気持ちは凄く解るんだよ。ファンのエゴって言ったけどさ、そういうエゴも時には必要というか」

カム「大して知らないヤツが、好き勝手言ってるのを見るとやっぱり腹立つけどね。俺なんかは」

オレ「まぁ、カムは基本的にそういう性格だからな(笑) でもオレにしたって、例えば『テイルズ』のファンじゃん」

マーク「うん」

オレ「だからある程度のファンならともかく、完全な《にわか》が知ったようなことを言ってるのを聞くと癇に障る」

カム「それは誰だってムカつくだろ」

オレ「いや、そうでもないっしょ。そりゃまぁ、子どもならそうだろうけど…やっぱコレは、オレとかカムが特別こだわってる部分だと思うよ」

フクタ「つまり、アンタが大将機かよ? 大した腕も無いクセに!! …ってことだろ」

オレ「なんかアレだが…まぁ、基本的にはそんなトコロなのかもな(笑)」



  ―― ◆ ――



オレ「でもさっきの《だが断る》もそうだけど、『ジョジョ』の台詞って基本的に使い易いよね。日常生活で」

フクタ「どうとでも取れる台詞も多いしな」

オレ「どういう意味?」

フクタ「ノリで誤魔化せるってこと」

オレ「それはそれでズルイ気もするが(笑) だが言いたいことは解る。『刃牙』の台詞なんかもそうだし」

フクタ「でも『刃牙』のはけっこう直球だろ」

オレ「え、例えば?」

フクタ「ワケわかんねぇ…とか、怖ぇ〜…とか、キャオラッ! …とか」

オレ「それを直球っつったら全部直球じゃねーか!」

マーク「でもネットとかじゃ、パロディで使われることも多いしね。『ジョジョ』台詞は」

カム「有名だからじゃん?」

マーク「それは、もちろんあるんだろうけど」

オレ「例えば…マークは犬が好きだよな?」

マーク「キリンさんが好きです。でもコーギーはもっと好きです」

カム「なんか言い出したぞコイツ」

オレ「じゃあ猫は嫌いなの?」

マーク「猫…? 猫はウザイね。死ねばいいのに」

フクタ「超極端じゃねーか!」

マーク「今のは冗談だけど。でも別に、猫には興味無い」

オレ「じゃあ、その猫が嫌いな気持ちを『ジョジョ』風に表現してよ」

マーク「いや、そのフリはキツイだろ! …ええと、何をするだぁーーーっ! みたいな感じで?」

オレ「違う、そうじゃねーんだよ!!」

マーク「は?」

オレ「今のは、こう返して欲しかったんだよ。…僕は猫が嫌いだッ! 怖いんじゃあないッ! 人間にへーこらする態度に虫唾が走るのだ!!」

マーク「知るかよ! 今のフリじゃ無理だろソレ!」

フクタ「あとその台詞って、犬じゃないと成立しないよね」

オレ「そこはマークのアドリブに賭けた。でも期待外れだった」

フクタ「確かに今のは期待外れだったな」

マーク「お前ら……死ねばいいのに」

オレ「マーク、死ねって言葉は使っちゃいけないってプロシュートの兄貴に習わなかったのかよ!」

フクタ「それだとマークはマンモーニだね」

カム「死ねじゃなくて殺すでしょ?」

オレ「カム、そこはツッコまない方向で」



  ―― ◆ ――



カム「ところで、ナツキは何か『ジョジョ』ネタの見本あったの?」

マーク「へえ、あるならやって見せてくれよ〜?」

オレ「わかってないな、マーク。こういうときは、この台詞を使うんだぜ」

マーク「は?」

オレ「だが断る」

マーク「お前、さっきの話はなんだったんだ!」




――奇妙な冒険とはほど遠い、いつもの平和な日常風景であった。

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