第十三話:オレたちがやり取りしてるのは、プライドなんだよ……!

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【今回の登場人物】

オレ:オレ達の中じゃ、麻雀歴が一番長い。『天』『アカギ』共に単行本で所持しているのもオレだけ。好きな役は混一・清一。

マーク:麻雀歴は2番手。『天』『アカギ』共に総集編を所持。好きな役はトイトイ。自称・闇に降り立った天才。

トシ:麻雀歴は一番短く、まだ拙い部分もある。好きな役はチートイ。他称・ひろゆきポジション。(オレとマークが命名)

プッチ:麻雀歴は3番手と短く、トシ寄りな位置。好きな役はタンヤオ(喰いタン)。自他共に認める黒服ポジション(笑)

  ――― ■■■ ―――



トシ「ええと…ちょっと待って。今大事なトコだから」

マーク「お前はいつも大事なトコだな!」

トシ「いや、今が多分一番大事なトコロだよ」

オレ「そうやって口を動かすヒマがあったら、手を動かせや!」

トシ「待てって! …う〜ん、ならコレだ! リーチ!!」

オレ「おっと悪いな…それでロンだ。混一・東・ドラ1で満貫。子だから8000点」

トシ「えっ、マジかよ!!」

プッチ「お前、悩んだ意味ないじゃん」

マーク「良かったな、トシ。リーチ代の1000点棒が得したぜ」

トシ「全然嬉しくねぇから!」

オレ「ふっ……。本気で喧嘩したら、トシが僕に敵うはずないだろ?」

トシ「うるせぇよ! さっさと次に行こうぜ、次!」



 ジャラジャラジャラ……カチャカチャカチャ……



トシ「次はおれが親だよね」

マーク「ああ。お前は8000点で親を買ってきたんだよ」

トシ「うるせぇし」

オレ「いいから、第一打くらいは早く切れや」

トシ「待って…はい、じゃあコレ」

マーク「ん、9満?」

オレ「おい、それドラじゃん」

トシ「あっ! ……いや、知ってて切ったから」

マーク「絶対に嘘だろ今の!」

プッチ「まぁ、いいんじゃん? ソレがあるとタンヤオにならないし」

トシ「そうだよ、さすがはプッチさん。俺もそれが言いたかった」

マーク「御託はいいから、さっさと切ってくんないかなぁ〜?」

トシ「ハァ? 今切ったばっかだろ……って、アレ?」

オレ「いや、今の会話の間に一周してるから」

トシ「おいおい、お前らマジセコイよ〜。会話で俺の集中力を途切れさせないと勝てないからってよ〜」

オレ「いいから早く切れっつーの!」



 ジャラジャラジャラ……



プッチ「おっ! よし…これでリーチだ」

マーク「何? …まぁプッチなら振っても安いからいいか。どうせタンヤオだろ?」

オレ「プッチはタンヤオ厨だからな(笑) …っと、待った。オレもリーチ」

トシ「おい、お前もかよ!」

マーク「くうっ、2人かよ! ざわっ……! ざわっ……!」

プッチ「ざわざわ言ってないで、早く切れよ(笑)」

オレ「アイツ、『アカギ』ネタを持ってくればなんでも解決すると思ってるからなぁ〜」

マーク「はぁ、何言ってんの? 今の《ざわ》は『天』のネタだから。勘違いしないでよねっ!」

オレ「同じじゃねーか! しかもどこのツンデレだよ!!」

マーク「まぁ…とにかく一発はヤダからな。安牌切るか……ハイ」

オレ「チッ、このチキン野郎が!」

プッチ「ほら、次はトシだぞ」

トシ「待って。……ヤベェよ、安牌ねぇよ!」

オレ「なら振っちゃえ振っちゃえ! オレに」

マーク「どっちの安牌も無いのか?」

トシ「いや、1人ずつのならある。でも2人のは無い」

マーク「なら、とりあえずナツキの安牌切っときゃいいんだよ!」

オレ「おい、変なこと言うんじゃねーよ!」

マーク「どうせお前は、高い手狙ってんだろ? それにプッチは、リーチ・タンヤオで2600とかそんくらいだから」

プッチ「おれの役が勝手に決められたし(笑)」

トシ「そうだよなぁ…。ああ、でも怖ぇよコレ! 振ったら一発じゃんか!! そしたら2600じゃないじゃん!!」

オレ「メンタン一発だったら5200だな。ホラ、トシ! きっとオレの方が安いぜ〜」

トシ「どっちにしろ、お前に振っても一発なんだよ!」

プッチ「もういいから、さっさと切ろうぜ」

トシ「クソッ! 覚悟とはっ、暗闇の荒野にっ、進むべき道を切り開くことだァァーーーッ!!」

プッチ「あ、それだ。ロン」

マーク「マジ空気読めてるね、トシは(笑)」

オレ「はぁ…だから、プッチの安牌切ってりゃ良かったのによぉ…」

マーク「で、役は何?」

プッチ「ええと…。リーチ……タンヤオ……ドラ1………」

オレ「……それだけ?」

プッチ「ちょっと待って。…あ、そうだ裏ドラ確認しないと! …駄目か、付かなかった」

マーク「……じゃあ、リーチ・タンヤオ・ドラ1ね?」

プッチ「うん」

オレ「……わかった、それなら5200……」

プッチ「あ、待って! そうだ一発じゃん、おれ!!」

マーク「なんだ、気付いたか(笑)」

オレ「やれやれ、それならメンタン一発ドラ1で満貫ね。ほらトシ、8000点だ」

トシ「また8000かよ! もう点棒が無ぇよ!!」

プッチ「ふぅ、危ねぇ危ねぇ……満貫を貰い損ねるところだった」

マーク「でも役を自己申告制にするようになってから、トシもプッチもちょっとは上達してきたんじゃない?」

オレ「緊張感があるしな(笑) それに、自分で自分の役を意識した方がなにかと良いだろ」

プッチ「だけど、今みたいなミスがあると怖ぇよ」

オレ「それも修行だ。…まぁ、あとはある程度の点数計算ができるようになれば完璧だな。今は満貫からしか判んないでしょ?」

プッチ「低い方も、なんとなくは判るんだけどね」

トシ「俺は4翻以上しか狙わないから、そんなの関係ないね」

マーク「どこの2人麻雀だよソレ!」

オレ「…ああ、なんのことだと思ったら『天』のネタか(笑)」



  ―― ◆ ――



オレ「そういや、オレ達はこうやって手積みでやってるけどさ…。最近は自動雀卓とか、ゲーセンでしか麻雀やってない人も多いんだろ?」

マーク「あとはネットとかね。でも、だから点数計算とかできない人が多いんじゃない?」

オレ「そういやこの前、最近はボーリングファンを名乗っていてもボーリングの計算ができない人がいるって話を聞いたな……」

トシ「アレなんか完全に全自動だしね」

オレ「まぁ別に、麻雀でも点数計算ができないのはまだ良いんだよ。プッチとかもできないし、オレとかマークが代わりに計算してやるから」

トシ「でもナツキとかに任せてると、どっかで点数安くされてんじゃないの〜?」

プッチ「やってもらってるクセに、偉そうだなトシは(笑)」

マーク「でもさ、わざとじゃなくてもどっかでミスはあるよね。絶対」

オレ「それはな。だからお前らも、ある程度はできるようになれって話だ。まぁそれは良いとしてさ……」

プッチ「何?」

オレ「いや、ゲームばっかで麻雀やってると、トシキみたいなヤツが出てくるだろ(笑)」

マーク「中学の頃の話だっけ?」

オレ「そう。フリテン事件ね(笑)」

プッチ「ああ、あの話か」

オレ「そりゃさ、トシとかプッチもフリテンは時々やってたじゃん。でもソレは大抵、3面待ちの1つを見逃してた…とか、まだ理解できるヤツでしょ?」

マーク「混一気味で2,5,8筒待ちのとき、8筒が出たからロンしたけど、実は最初の方に2筒切ってたとかな」

オレ「あとは人が鳴いた自分の捨て牌を見逃してた…とか。フリテンはフリテンだけど、なんつーか《高級なミス》なんだよ」

プッチ「でもトシキは、そのまんまのミスだからな(笑)」

オレ「完璧だからね。8満の間チャン待ちなのに、既に8満切ってたってなんだよ!」

マーク「それってさ、ただ単にアイツが初心者だったんじゃないの?」

オレ「いや、もしアイツが初心者だったら、オレだってそれくらい見逃したよ」

プッチ「だけどアイツ、麻雀やろうとしてたら俺も混ぜて〜とか来てさ……」

オレ「オレが、お前打てるのかよ? って聞いたら、かなりの経験者・上級者だよって言いやがったからね」

マーク「それなのに、そんなフリテンやったのか」

オレ「後で聞いたら、経験者といってもゲームでしかやったことないらしくて。しかもゲームだと、フリテンとかは自動で教えてくれるらしい」

プッチ「だからナツキにそれフリテンだよって言われたときも、え、なにソレ? …って顔してたからな(笑)」

マーク「フリテンを知らない上級者ってか…」

オレ「アイツがハナから初心者と名乗ってたら、オレも許したけどね。だけどそのときは、キッチリと8000点払わせてやったよ」

マーク「社会の厳しさを教えてやったのか(笑)」



  ―― ◆ ――



トシ「ちょっと待って…ええと……ハイ、コレ」

マーク「待った、それポン…じゃなくてカンだ。ふっ、星が降りたかな?」

オレ「なるほど、ここでカンか……テンパってんなコイツ」

マーク「おい、ナツキ」

オレ「ん?」

マーク「事前に確認しておこう…。大明槓の責任払いは一人払いで…いや、一人が責任を取る…じゃなくて…」

オレ「マーク、いくら『天』のネタを使いたくても、そんなにカミカミじゃカッコ悪いから!」




――麻雀というのは、オレ達にとって数少ないアナログ・ゲームだ。

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