第三十五話:ニンニクラーメンからはチャーシューを抜け

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【今回の登場人物】

オレ:放送当時は『エヴァ』を観ておらず、その後しばらく経ってからビデオで視聴しファンになったクチ。リツコさんのファン。

カム:視聴したのはオレよりも早く、その頃からの『エヴァ』ファン。好きなキャラはレイと日向さん。

トシ:『エヴァ』を一度も視聴していない、珍しいタイプ。だから「ゼロ号機」を「(レイが乗るから)レイ号機」だと思っていたくらい、素人だ(笑)

  ――― ■■■ ―――



オレ「思えば、オレが生まれて初めてハマったアニメってのが『エヴァ』なんだよな」

トシ「初めて観たアニメ、ってことじゃないんでしょ?」

オレ「そりゃそうだ。あくまで《初めてハマった》だな。それ以前にも《かなり好きになった》くらいのアニメはあったけど」

カム「『レッツ&ゴー』とか?」

オレ「いやカム、なんでそこで『レッツ&ゴー』が出てくるんだよ(笑) そうだな…例えば『スレイヤーズ』とか」

カム「なるほど。思えばあの頃は、『ロストユニバース』のブームもあったな。学校で」

オレ「ああ。男子も女子も、ケイン・ブルーリバー! って単語を無闇に連呼してたからな(笑)」

トシ「でもなんで、主人公の名前を叫ぶ必要があったんだろう?」

オレ「そりゃまぁ…やっぱり、厨だったからじゃねぇか?」

カム「あとは『レイアース』も人気あったね」

オレ「だな。オレのイメージだと小学校3,4年くらいが『レイアース』のブームで、5,6年で『ポケモン』。中学入って『ロスユニ』だったか」

トシ「『ポケモン』のアニメって、そんな昔から放送されてたっけ?」

オレ「詳しくは忘れたけど…まぁ、少なくともゲームのブームはあっただろ」

カム「給食の時間に、《ポケモン言えるかな》をみんなで1匹ずつ歌ってって、ミスしたヤツが牛乳を奪われるゲームとかあったよな」

オレ「アレのおかげで、オレは今でも歌えるぞ。少なくとも2番までは完璧。3番のラップっぽいのも、まだイケるかな…?」

カム「イェ〜〜、オニスズメ! サンド! パラセクト! …ってヤツね。俺も多分、そこまでは覚えてるよ」

トシ「ところでイマクニってどこ行ったの? まだいるの?」

オレ「いやまぁ…どこかで生きてはいるんじゃねぇか?」

カム「俺達が知らないだけで、まだどっかで『ポケモン』の活動してるんじゃね?」

トシ「そうかなぁ…」

オレ「でも中学も3年になってくると、やっぱ『エヴァ』ブームはあったな。そりゃ、オレもその一人だけど」

カム「みんな、かなりその話ばっかしてたよね」

オレ「それこそ中二病なんだが、なんか《エヴァの良さが解らないようじゃ、アニメファンとして三流》みたいな風潮もあったからな(笑)」

カム「実際、かなりのヤツが《知った気でいた》だけだろ」

オレ「第一、今の年になってようやく理解でき始めたこともあるんだから…あのときに解るハズもねぇんだよな」

トシ「ナツキは最近でも、『エヴァ』について考えることがあるのかよ?」

オレ「ああ。むしろ大学で心理学を勉強してると、意味不明だと思ってたシーンとかが、実は理に適ってることが解ってきた」

カム「最終話のアレとかも?」

オレ「アレも含めてだね。そりゃ解ったといっても、自分なりの解釈ができるようになった…って意味だけどさ」

カム「つーかあの当時なら、後半の『エヴァ』は意味不明って感じる方がむしろ普通だよな」

オレ「それは絶対にそうだと思う。中学生なんかで《解ってるよ》的なヤツは、99%がシッタカだと思って間違いない」

カム「でもネットなんかじゃ、後半は手抜きだなとか、作画時間が無かったんだろ…みたいな意見も多いけど」

オレ「それもまぁ、オレ的には一種のシッタカというか、《オレはアニメのこと解ってるんだぜ》的な臭いを感じるんだが」

カム「ナツキはどう思うの?」

オレ「いや、確かにそういう意見も理解はできるんだよ。製作サイドは《アレは狙ってやった》って言うけど、それが嘘か本当かは判らんわけだし」

カム「うん」

オレ「でも今も言った通り、心理学の基礎とかを理解してから観ると、後半の展開も普通に面白いんだよ。解ったフリじゃなくて、普通に面白い」

カム「ああ、なるほど…」

トシ「俺は『エヴァ』観てないから、イメージしかわかんないけど…。でもそんなんじゃ、ホントに子どもとかは絶対無理だよね。理解が」

カム「それは確定だろ」

オレ「むしろ中学生の頃は作品の理解がどうこうっていうより、ただ色々な用語を記憶してるヤツが偉い…って感じだったからね(笑)」

カム「サキエルとかラミエルとか?」

オレ「使徒の名前ってのが一番メジャーだったけど、もはやソレを記憶してるのは常識って感じで、覚えてないヤツがバカにされるくらいだった」

カム「あのヒモ使徒が覚え辛いんだよね。アルミサエルだっけ?」

オレ「オレはイロウルとアラエルの判別に苦労した記憶がある。どっちも特徴が無い名前で、オマケに響きが似てたから」

カム「どの使徒だっけ、ソレ」

オレ「イロウルが、侵食してきてリツコさんパワーで倒すヤツ。アラエルが、アスカにハレルヤ攻撃するヤツ」

カム「ああ、アレか」

オレ「覚え方としては、五十音順で先の《ア》ラエルの方が後に出てきて、《イ》ロウルの方が先に出てくるって感じかな」

トシ「知らない俺が聞くと、メチャクチャ混乱するんだけど…」

オレ「そこは慣れだ。…あとは、地味キャラの名前なんかも覚えるのが常識みたいになってたよな」

カム「シロー・アマダとか?」

オレ「時田シロウね(笑) 他にも惣流・キョウコ・ツェペリンとか。コダマとノゾミとか」

カム「そういえばアスカの父親役が、関さんだったよね。俊彦の方」

オレ「だったな。あと、ネルフのみんなが地下鉄乗ってるシーンで、冬月先生の読んでた新聞は何か? とか…もうクイズ番組みたいだった(笑)」

トシ「答えは何なんだよソレ」

オレ「いや、普通に日経だ。新聞の名前に著作権は無いのか知らんが…《日本経済新聞》って書いてある。そりゃ、小さい文字なんだけど」

カム「でも中学時代にそういうのが流行ったから、『エヴァ』の知識がこれだけ溜まった…ってのはあるよね」

オレ「まぁ、それはね。全盛期なんかは、ネルフのセキュリティカードに書いてあるシンジのID番号までソラで言えたくらいだし(笑)」

トシ「でも、そこまでいくと知識勝負っていうか、ほとんど記憶力勝負だよね」

オレ「確かにな。そういう意味じゃオレは記憶力良い方だから、けっこう有利だった可能性はある」

トシ「有利不利って問題かよ(笑)」

オレ「少なくとも当時は、そういう問題だったぞ」

カム「結局、使徒の名前くらいは誰でも覚えてたからね。『エヴァ』ファンを自認してるヤツならさ」

オレ「だからこそ、その他の部分をどれだけ覚えてるか…ってのが一番のステータスだったよ。オレなんかは最終的に、台詞にも手を出したしな」

トシ「台詞なんて、一番基本なんじゃないの?」

オレ「そりゃ《逃げちゃ駄目だ》とか《あなたは死なないわ》とか…そういう名台詞的なヤツは誰だって覚えてるけどさ。だからオレは、他を目指した」

トシ「名台詞じゃない、地味な台詞を覚えたってこと?」

オレ「というより、1話の台詞を丸々覚えたってことだ。劇の台本を、丸覚えするみたいな感じで。出演者全員の台詞を」

トシ「なるほど…」

オレ「つまり第1話だったら、《本日、12時30分。東海地方を中心とした、関東中部全域に、特別非常事態宣言が発令されました》から始まる」

カム「そういうナレーションみたいなヤツも覚えたのかよ」

オレ「むしろ、あの頃はそっちのが重要だったんだよ。だってキャラの台詞とかは、コアなファンなら普通に覚えてるだろうからさ」

トシ「逆に、特定のキャラの台詞だけ覚えるってのもかなり難しいっぽいけどね」

オレ「それはな(笑) でもナレーションはナレーションで、なかなか楽しかったぞ。覚えるのが」

トシ「ホントに楽しかったのかよ!」

オレ「いやホラ、慣れてくると音量ゼロの状態でビデオを再生しながら、《一人アフレコ》みたいなマネもできるようになるから(笑)」

トシ「アホだろソレは!!」

オレ「ちなみにナレーションじゃない台詞だと、第一声はミサトさんの《よりによってこんなときに見失うだなんて…参ったわね》だ」

トシ「いや聞いてないから」

カム「そもそも今でもまだ、全部覚えてんのソレ?」

オレ「いやいや。そりゃ当時は第1話を丸ごと覚えてたけど、今は忘れてるよ。だけど最初のナレーションと台詞くらいは、印象的だから覚えてる」

カム「なるほどな」



  ―― ◆ ――



オレ「でも《使徒の名前くらい覚えてるのは常識》って言ったけど…中には全然ってヤツもいたなぁ…」

トシ「そりゃそうでしょ。俺だって『エヴァ』は観てないし、あんまり詳しくないヤツとかもいるよ」

オレ「いや、ソレだったら解るよオレも。だけど《オレは学年で1番のエヴァマニアだ!》とか騒いでるヤツに限って、酷いのが多かったぞ」

トシ「むしろ《学年で1番》ってのが2人も3人もいたのか」

オレ「だって自称だからな。もはや言ったモン勝ちだ(笑)」

カム「そういえば、そんなヤツもいたな…」

オレ「だからこそ、あんな事件が起こったんだよね。修学旅行か何かのとき」

トシ「事件って、何かあったの?」

オレ「まぁ、事件ってのは言い過ぎだけどさ。とりあえず修学旅行の夜とかは、みんな寝ないで夜中まで雑談してるじゃん」

トシ「俺なんかは、大抵すぐに飽きて寝ちゃったけどね」

オレ「まぁオレも、そのときは眠かったから会話に参加しないで、布団で横になりながら聞き耳だけ立ててたんだけどさ」

カム「うん」

オレ「そしたらしばらくして、やっぱりというか『エヴァ』の話題になったわけよ。同じ班に《自称・学年トップのエヴァマニア》もいたから」

トシ「なるほど」

オレ「だから当然、お互いの知識自慢が始まるところだけど…やっぱ中学生のノリだから、クイズ大会になるんだよね。最終的に」

カム「この問題わかる? みたいな感じか」

オレ「ああ。そんで誰もわからないと、《マジかよお前ら、こんなの常識以下だろ!》とか言いながら、ちっぽけな優越感を噛み締めるゲームさ(笑)」

トシ「お前も昔は、そういうことやってただろうが!」

オレ「ともかくそんなこんなしているうちに、その《エヴァマニア》の番が来てさ」

トシ「そいつがクイズを出す番ってこと?」

オレ「ああ、そうだ。ソレで《お前ら、けっこうムズイけど、コレわかるか!?》とか言いながら、ふざけた問題を出しやがった」

カム「何よ?」

オレ「いわく、《アスカのフルネームを答えよ》って(笑)」

カム「は? なんだよソレ! つーか、ソレってもはやクイズじゃないだろ!!」

オレ「オレも意味が解らなかった。だって時田シロウじゃあるまいし、メインキャラだぜ? しかも大人気のアスカだぜ!?」

トシ「俺は観てないから、わかんないけど…」

オレ「お前にも解り易いように説明すれば、自分を《ドラえもんマニア》とか名乗ってるヤツが、《しずかちゃんの本名を答えろ》って言ってるのと同じ」

トシ「普通に《源》だよね?」

オレ「そうだよ。だからつまり、そういうレベルだってことだ(笑)」



  ―― ◆ ――



オレ「でも思い返してみれば…その問題を出されても即答したヤツはいなくて、答えるまでにしばらく間があった気もするな…」

トシ「結局中学生のレベルなんて、その程度ってことなんじゃないの?」

オレ「いや、でもさ…。小学生だって、しずかちゃんとかジャイアンの本名くらい知ってるだろうが!」




――そりゃまぁ、「碇シンジ」「綾波レイ」よりは若干複雑な名前なのかもしれないけど。

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