第三十七話:どんなゲームも、ハメゲーになる因子は持ってる
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【今回の登場人物】 オレ:バグ技やハメ技の類は、基本的に好きじゃないので使わない。ただRPGの4周目5周目なんかになると、興味本位で使ったりもする。 トシ:オレと同じく、基本的にバグ技は使わないタチ。ただし圧倒的な時間短縮を狙えたりする技は、欲望に負けて使ったりしている。 プッチ:3人の中では、最もバグ技に寛容。ただしハメ技はやっぱり嫌いらしい。色んな意味で。 ――― ■■■ ―――
トシ「俺達ってさ、小学生の頃は『ファイヤープロレスリング』にハマってたよね。スーファミの」 オレ「ああ、あのブームは相当長かったな。むしろオレ達が初めてハマった《多人数ゲー》ってのがアレじゃねぇか?」 トシ「だったかもね。スーファミのマルチタップ買ったのも、アレが原因だった気がするし」 オレ「ああ…かもな。思えばアレをプレイするために、オレんちにみんなが集まって来たのが、オレ達グループの原点かもしれない」 プッチ「でも『ファイプロ』って、ナツキのソフトじゃなかったよね。確か」 オレ「だな(笑) アレは…カムのだったかな?」 トシ「だけど今から考えたら、相当バランス悪いよね。あのゲーム」 オレ「バランス悪いというか、バランスって要素を考慮に入れてないの間違いだろ(笑)」 トシ「っていうかアレさ、形式上は4人のバトルロイヤルでも、相手にちょっとグルになられたりすると一瞬でハメ殺されるよね」 プッチ「むしろ、一番最初に倒れたヤツが酷い目に逢うんだよ」 オレ「ああ(笑) つーか倒れたやつに1人が締め技かまして、それが解かれると同時に次のヤツがまた締めて、それも解かれると3人目がまた…って」 トシ「そんで3人目の技が解かれる頃には最初のヤツが自由に動けるようになってるから、それで無限ループの完成だよ」 プッチ「見た目が大縄の《八の字跳び》みたいになってたよね(笑)」 オレ「むしろオレ達も小学生だったから、マジで厨行動を《面白い》と思ってたわけだしな。だけどソレが、始末に悪い」 プッチ「チュウっていうか、ショウ行動だよね」 オレ「消防車の消か? まぁ、厳密にはそうなるな(笑)」 トシ「3人がグルになって1人をハメ殺したり…っていうのが、普通に笑えて楽しいと思ってたからね。最初にハメられるヤツ以外は」 オレ「だからあのゲームは、とりあえず《いかにして最初に倒れないようにするか》ってのが戦略の基本だっただろ(笑)」 プッチ「だよね。小学生なりに、かなり《倒れないテクニック》とか磨いたもんな」 オレ「最初に倒れちまったヤツが負けるんだから、ソイツは試合終了までの残り30分くらいを《見てるだけ》だからな。そりゃ必死にもなるぜ」 トシ「でもさ、そう考えると今じゃ逆にプレイできないゲームだよね。色々考えちゃうから」 オレ「ツケコミ戦法をか?」 トシ「いや、そういうことじゃなくて」 オレ「まぁ、解るよ。つまりあのゲームは、本当に《プロレス》を楽しまなきゃいけないってことだろ?」 プッチ「どういう意味?」 オレ「要するに…単純に勝てばいいだけじゃなく、ショーとしての《魅せるバトル》をしなきゃなんねぇって話さ(笑) プレイヤーの一人一人が」 プッチ「確かにそうしないと、バランスは取れないかもね」 トシ「だけどそれは絶対、プレイする4人が全員プロレスファンってのが前提だろ…」 オレ「それはそうかもしんないけどさ。でもよ、あのゲームを買うってことは、やっぱそれなりにプロレス好きって理屈じゃん?」 トシ「だけど少なくとも、小学生にそのノリっていうかプロレスの感性は解んねぇだろ!」 オレ「まぁ、それには100パーセント同意するぜ(笑)」
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プッチ「だけど『ファイヤープロレスリング』じゃなくても、ハメゲーってのはけっこう多いよね」 オレ「そりゃな。ただ面白いのは、ハメゲーだからって必ずしもクソゲーじゃないってことだろう」 トシ「そういう意味じゃ、俺達も《ハメゲー》の『プロレス』にハマってたわけだし」 オレ「それにハメゲーったって、ハウスルールでどうにかなる場合も多いしな。例えば今オレ達が『ファイプロ』やっても、そんなハメはしないだろうし」 トシ「あと、どんなゲームだって全部が全部ハメなんてモンはないでしょ」 プッチ「全部が全部って?」 トシ「ハメゲーって言われてても、結局《ハメ》なのは一部だけで、全体としてはバランス良くて面白いゲームもあるじゃん」 オレ「それがオレの言った、《ハメゲーすなわちクソゲーじゃない》ってことだろうな。例えば『ガーヒー』なんかにも、そういう面はあるし」 プッチ「ハメとかがあるってこと? 確かに、天上神で空中からファイアーボール乱射とかもできるしね」 オレ「いや、真面目にプレイしてそこまでやったらただの厨だろ。ただそういう意味のハメじゃなくても、やろうと思えばいくらでもセコイことできるから」 トシ「隠しキャラとかまで全員含めると、キャラ性能とかバランス考えてないからね、あのゲームは」 プッチ「でもそれは、仕方ないんじゃない?」 オレ「まぁな…だけど酷いのはホント酷いからな。例えば《アクド戦法》って用語を覚えてないか?」 トシ「いや…知らない」 プッチ「おれも」 オレ「でも《アクド》ってヤツは覚えてるでしょ? 中学んときの同級生で」 トシ「ああ、そいつなら覚えてるけど」 オレ「そいつが1回、ウチに遊びに来てな…。当時はオレ達も『ガーヒー』にハマってたし、アクドも好きなゲームだっていうからさ」 プッチ「それで、一緒にプレイしたの?」 オレ「むしろあのときはこの場に6人いたハズなんだが、トシもプッチもいなかったんだっけ…?」 トシ「少なくとも、俺はアクドがナツキんち来たっていう記憶が無い」 オレ「そうか…まぁいいや。ともかくオレ達は、どのキャラでもバランス良く使えるようにって、キャラとレベルの対応表とか作ってたじゃん」 プッチ「ああ、あったねソレ! 天上神が20レベルで、市民が198レベルで…とかそういうヤツでしょ?」 トシ「メインの主人公達を100レベルにして、そこを基準にしたんだっけ?」 オレ「そうだな。もちろん当時は小学生とか中学生だから認識も甘かったが、アレのおかげでそれなりにバランス取れただろ。どのキャラ使っても」 トシ「それなりにはね。結局はちょっとくらいレベル高くても、ゴブリンとかじゃ勝てなかったけど。キャラ性能の差で」 オレ「まぁ、それはいいとして…アクドはそんな中でどのキャラ使うのかと思ったら、市民選んだんだよ。それも迷わず」 プッチ「やっぱ肥満市民とか?」 オレ「だったかな? …だけどアレじゃ、どの市民でも関係なかったよ。だって例の市民専用移動で、ずっと画面の奥に張り付いてるだけだったからな」 トシ「え? あの無敵ゾーンに…ってこと?」 オレ「そう。そりゃオレ達だって、ネタとして《ここは無敵だぜ!》とかはやるけどさ…アクドは試合開始から、延々とそこに隠れてやがった」 プッチ「もしかして、それで最後は勝っちゃったの?」 オレ「まさか! 大体、いくらそういうマネして他のプレイヤーの負けを狙っても、結局最後の1人は残るわけじゃん」 トシ「それは、そうだよね。アクド以外の5人が戦って、最後まで勝ち残った1人ってことでしょ?」 オレ「ああ。だけどいくらダメージ負ってたとしても、最後市民と1対1になったら負けるわけないし」 トシ「市民なんて、相手に真面目に戦われたら勝つのとか不可能だしね」 プッチ「じゃあアクドは、最初から2位狙いだったってこと?」 オレ「知らねぇけど、多分そういうことなんだろ。つーかその試合だけじゃなくて、次の試合からもずっとその戦法だったからなアイツは」 トシ「一回きりのネタとかじゃなかったってことか…」 オレ「アレは完全に素だったね。しかも《やりぃ、オレ無敵!》とか言って、笑ってるのは本人だけっていう…」 プッチ「それは痛ぇわ(笑)」 オレ「結局オレ達全員から《いい加減にしろよボケ! くだらねぇんだよ!!》って言われるまで、延々とやってやがった」 プッチ「だから、ソレが《アクド戦法》って呼ばれるようになったってことか」 オレ「もはや伝説として語り継ぎたいレベルだよ。あの完璧な厨っぷりは!」 トシ「ああ…だけど『ガーヒー』で厨といえば、ムラタの話を思い出すね。俺は」 プッチ「なんだ、他にも何かあんのか(笑)」 トシ「アクドと同じで、ムラタってヤツもいたじゃん。中学の頃に」 オレ「ああ、いたな」 トシ「俺はナツキんちじゃないトコで、一度だけ『ガーヒー』やったことあるんだけどさ。そのときに、ムラタがいたんだよね」 プッチ「うん」 トシ「で、そのとき俺達は4人だったんだけど、人間4人プラスコンピューター1人でやってたんだよ」 オレ「ああ」 トシ「そんでもって、不死英雄戦士っているだろ? ムラタは最初からずっと、アレ使っててさ」 オレ「あの強キャラをか。そりゃまぁ、単純に強さだけで計るなら不死英雄は相当なもんだけどよ…」 トシ「ただやっぱりそんなのばっか使っててもつまらないから、俺とか他の3人は色んなネタキャラ使い回してたんだよ。魔導兵器とか」 オレ「アプサラスじゃなくて帝国魔導兵器の方なら、オレも好きだったな(笑)」 トシ「まぁともかく、キャラがそんな感じだったから、やっぱムラタがかなり連勝してたんだよね」 プッチ「そりゃ、不死英雄だもんな」 トシ「そんでムラタも調子乗ってて、《うわ、俺って強ぇ〜〜!》みたいな状態でさ」 オレ「アクドに続いて、またも痛い台詞が出たな(笑)」 トシ「でもそんな感じで何試合かやってたら、コンピューターのキャラがニコラになったんだよね」 プッチ「なったって?」 トシ「コンピューターはランダムにしてたから、偶然ニコラになったわけ。でもニコラには、ヒーリングあるでしょ?」 オレ「ああ、なるほど。それなら不死英雄の天敵だな(笑)」 トシ「だからムラタも、とにかく最初にニコラ殺そうとして焦りまくったんだよ」 プッチ「それは確かに、焦るよね(笑)」 トシ「でも俺達もムラタにムカついてたから、《ヒーリング使うまでコンピューターを守れ!》って言いながら、3人でムラタの邪魔に走った」 オレ「3人でファイアーボール撃ったりして?」 トシ「そんな感じで。それで時間稼ぎしてたら、狙い通りニコラがヒーリングして、ムラタの不死が蒸発した(笑)」 オレ「それは気持ち良いな(笑)」 トシ「でも、そしたらムラタが怒り出してさ。《俺もう帰る!》って言って、ホントに帰っちゃった」 オレ「いや、ソレはマジでか!? いやむしろ、それまで連勝してたのに、一回くらい変な負け方したからって帰るのかよ!」 プッチ「むしろおれは《もう帰る!》って台詞で本当に帰る厨っぷりが笑えるんだけど(笑)」 トシ「アレは引いたね、マジで」 オレ「確かに…そりゃリアル中学生つっても、そこまでの厨だったらさすがにキツイよな(笑)」
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オレ「でもよ…ハメとはちょっと話がズレるけど、《ふざけた裏技》があるRPGなんかには、思うところがないでもない」 プッチ「ふざけた裏技って?」 オレ「例えば『FF』だったら《バニシュ・デス》とか。『ドラクエ』なら《マヌーサ・ザキ》とか、《ハッサンはハムい》とかな」 トシ「《ハッサンはハムい》って何? 『6』の裏技だっけ」 オレ「いや違う、『4』のカジノだ。838861のこと」 トシ「ああ、例のアレか…」 オレ「特に酷いと思うのは、《ひとしこのみ》とか…。とにかく『ドラクエ』や『FF』でさえ、そういう裏技だかバグ技だか解らんモノがあるじゃん」 トシ「確かに《ひとしこのみ》は酷いね。真面目に仲間集めするのがバカらしくなってくる」 オレ「問題点を挙げたらキリねぇよ。例えば真面目にやって、はぐメタ3匹仲間にしても、人によっては《裏技だろ》って思うかもしれないし」 トシ「むしろ、普通はそう思っちゃうよね。しかも、証明も不可能ってのが痛い」 オレ「《ズルするのがイヤなら、使わなければいいじゃん》とか言うけど、まず《そういう裏技の存在を知っちゃってる》こと自体が気分悪いだろ」 プッチ「真面目にキラーマシンとか狙おうとしてても、無性にムカムカしてくるんだろ(笑)」 オレ「ソレだよ。そういう裏技使って楽してるヤツもどっかにいるんだよな…とか考え始めると、脳内がカオスに陥る」 プッチ「ウゼェよソイツら! って?」 オレ「いや、厳密には違うな。裏技を使ってる人がどうの…ってより、むしろ裏技の存在自体に吐き気がしてくる。吐き気をもよおす邪悪を感じる!」 トシ「まぁ、言いたいことは解るけどね」 オレ「なんて言うのが一番適切なのか…そこは言葉に迷うんだけど、とりあえずアレだ。少なくとも、《そこを誇る》のは間違ってると思うんだよ」 プッチ「誇るって?」 オレ「例えばコレは裏技だけじゃなくて、アクションリプレイみたいなPARにも関わる話なんだけどさ」 トシ「うん」 オレ「酷い裏技とかPARを使ってゲームやっても、それで本人が楽しい、満足だっていうんならソレはソレでいいと思うんだよ。オレは」 トシ「そういう意味じゃ確かに、裏技を使わない人の理由はなぜかってことを考えると、単純に《使ったら楽しくないから》だしね」 オレ「そうだな。つまり人によっては《卑怯だ!》とか言うと思うけど、結局使ってる方は《ソレが面白いと思ってる》からやってるわけであって」 プッチ「ラクしたいから…っていう理由も、やっぱり《面白いから》と同じようなモンか」 オレ「色々話を聞くと、《最初からレベルMAXになる裏技は面白くないから使わないけど、金をMAXにする裏技は稼ぐのが面倒だから使う》とかさ」 プッチ「ああ、なるほど」 オレ「そういう人はけっこういるみたいだけど…ともかく誰にしたって《自分が面白いと思う範囲》ってのがあって、その範囲で楽しんでるわけじゃん」 トシ「確かにアクションリプレイとか持ってても、全員が同じような使い方してるわけじゃないだろうし」 オレ「だから、ソレはいいんだよ。裏技だろうが改造だろうが、個人の範疇でやるならさ。そりゃ改造は、法律違反なのかもしれんけど」 トシ「ああ、うん」 オレ「でもそういうことをやった挙げ句に、それを他人に誇ったりするのは間違いだと思う」 プッチ「むしろソレは、ナツキじゃなくてもそう思うんじゃん?」 オレ「それはそうかもしれんが…少なくとも、そういう輩が存在することは確かだよ。ネットなんかじゃ特に」 トシ「ネットだったら、そんなの腐るほどいるだろ」 オレ「でもソレが、いちいち癇に障るったらない。ハメ技とか裏技使っときながら、《あのボス弱ぇ!》《勝てないヤツは下手すぎ!》とか、もう…ね」 プッチ「確かに、ソレは痛いな」 トシ「でもさ、ナツキ。結局ネットなんかじゃ、そいつがアクションリプレイ使ってたとしても、相手が隠してれば判らなくない?」 オレ「重要なのはそれだよ。というか実際、改造して作ったスーパープレイ動画・最速クリア動画…なんてのも、飽きるほど出回ってるわけで」 トシ「でもバレバレなのはともかく、やっぱり自己申告だけじゃ判別できないのもあるじゃん。ソレはどうやって判断するの?」 オレ「それは、無理だ」 プッチ「無理なんだ(笑)」 オレ「だからこそ…だよ。見た目じゃ判らないからこそ、タチが悪いというか…。まぁ結論としちゃ、マナーは守りましょう! ってことだろうな」 プッチ「なるほど…でも、すんげー普通の結論だね(笑)」
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プッチ「ところで全然関係ないんだけどさ…。『ガーヒー』って何ゲーっていうの?」 オレ「ナニゲーって…なんだ?」 プッチ「つまり、アクションとかRPGとか…そういう言葉で」 オレ「ああ、ジャンルのことか? そうだな…オレ的な分類だと、一応《アクション格闘》ってことにしてるが。公式なのは知らん」 プッチ「なるほど」 オレ「そういえばジャンルの話題だったら、ちょっと面白い話があるぞ」 プッチ「面白い話って?」 オレ「これは『ガーヒー』じゃなくて、『スマブラ』の話なんだけどさ…。とりあえず、イメージ的には似てるでしょ? あの2作は」 プッチ「ああ、うん。なんとなくね」 オレ「まぁ似てる似てないは関係ないんだけど、チンが『スマブラ』プレイしたときの話でさ」 プッチ「うん」 オレ「とりあえずチンもそこそこ『スマブラ』経験者だったんだけど、そこまで上手くもなくてな。だからオレとかカムとかには全然勝てなくて」 プッチ「それはまぁ…ちょっとやったくらいじゃ、ナツキ達には勝てないだろ」 オレ「ただチンのヤツも、相当な負けず嫌いだからさ。だからオレ達に負けまくった結果、面白いことを叫びだした」 プッチ「なに?」 オレ「《『スマブラ』はアクション格闘とかナツキは言ってるけど、コレ絶対格ゲーじゃねぇよ! だってオレが上手くできないもん!》って(笑)」 プッチ「はい? どういうこと?」 オレ「だから、チンは格ゲーに自信持ってたからさ。つまり自分ができないゲーム、イコール格ゲーじゃない! って理屈を言いたかったらしい」 プッチ「いや、それは痛いだろ!」
――あの台詞は「パズルゲーム一回」と並ぶ、若気の至りが生んだチンの迷台詞として語り継がれている(笑)
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