第四十一話:久しぶりにドバーッと『TS』がやりてぇ

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【今回の登場人物】

オレ:『ティアリングサーガ』の対戦データでは、シゲンを中心とした剣士・歩兵軍団を編成。チーム名は「ゾーアの傭兵部隊」。

トシ:対戦データでは、ナロンを中心とした騎兵軍団を編成。チーム名は「乗馬クラブ」。固有BGMは、プラムの踊りのテーマだった。

フクタ:対戦データでは、メルヘンをキャプテンに据えた変則部隊を編成。チーム名はそのまんま「メルヘン隊」だ。

  ――― ■■■ ―――



オレ「思えばオレ達って、相当やり込んだよな。『ティアサガ』を。死ぬほど苦しかったけど」

フクタ「パラメータMAXとかランダム宝箱狙いとか、かなり色々やったからね。死ぬほど苦しかったけど」

オレ「でもさ、そもそもオレ達3人が『ティアサガ』のやり込みを始めたのって、何が原因だったんだろうな?」

フクタ「だろうな?」

トシ「あれ? お前ら覚えてないの?」

オレ「って、んなわけねーだろうが! これはテメェに対するイヤミだよ!!」

フクタ「トシがあんなこと言い出さなければ、おれとかナツキがこんなに苦労させられることもなかったしね」

トシ「オイオイ、何を言ってるんだ。苦労なら俺もしたぞ」

オレ「それは当然だろうがボケ! 自分で計画したヤツが苦労しなくてどうすんだよ!」

フクタ「つーか計画したら計画したで、自分一人でやれば良かっただろ」

オレ「その通り。オレ達を巻き込む必要はなかった!」

トシ「それこそ何言ってるんだよ。2人以上いなきゃ、対戦できないだろ」

オレ「トシが2人分のデータ用意してくれたら、対戦のとき操作くらいはしてやったぞ」

トシ「はぁ? これだから厨理論は困るぜ」

オレ「テメェが一番の厨だろうが!」

フクタ「そもそもああいう気の遠くなる系のやり込みは、自分一人で頑張るもので、人を巻き込むのは何か間違ってるよね」

オレ「もちろん同意する」

トシ「お前らもつくづく、昔の話にこだわるヤツらだなぁ〜」

フクタ「そこまで昔の話でもないだろ」

オレ「それにテメェから『ティアサガ』の話が持ち上がったとき、オレは期末テストの真っ最中だったんだぞ、解ってんのか!」

トシ「それなら俺だって同じ条件だろ。つーかお前は、期末でも受験でも絶対ゲームはやめないじゃん」

オレ「そんなの当然だろうが! ただ、それとこれとは話が別だろ!」

フクタ「別に期末試験の勉強はしなくたって、だからって『ティアサガ』がやりたいわけじゃないよね」

オレ「それにお前が厨だって理由には、もっと大きいモノがある」

トシ「なんだよ」

オレ「このやり込みにオレを誘っといて、人に500時間くらいプレイさせておきながら、自分は途中で《飽きた》とか言いやがったことだよ!」

トシ「だって俺は、お前らより更にやることがいっぱいあったんだよ。ルナの剣を3本回収するとか」

フクタ「でもルナの剣って、おれ達が決めたルールだと対戦じゃ《1本制限》だったよね?」

オレ「ああ。だからオレとかフクタは、ホームズのイベントで貰える1本を使わず保存しときゃ十分だった。対戦データ用には」

トシ「だからお前らは甘いんだよ。ダークナイトを倒せば、200分の1の確率で落とすだろ? ルナの剣は」

オレ「そんなことは知ってるんだよ! そうじゃなくて、そこまで苦労して取る意味ねーだろって言ってんの。1本しか使用禁止ルールなんだから」

トシ「いやどんな武器でも、入手する方法がある限りは最低3本必要だろ」

フクタ「なんで3本なんだよ」

トシ「そんなの普通に《そのまま》のヤツと、《白い星付き》のヤツと、《黒い星付き》のヤツっていう3種類を作るからに決まってるじゃん」

オレ「決まってねぇよ! むしろお前はアレか!? 保存用・観賞用・布教用って、同じマンガを3冊買うタチか!?」

トシ「とにかく200分の1をずっと狙って毎日戦ってたら、なんか疲れちゃった」

オレ「いや《疲れちゃった》じゃねぇから! それが厨だって言ってんだろ!!」

フクタ「自分で余計なこと考えといて、無駄にそれをやろうとしたから疲れたってのはおかしいよね」

トシ「いいだろ、最終的には俺もきちんとやったんだから」

オレ「むしろ企画立案したヤツが最初にやらない時点でおかしいだろ。というか、お前がプレイを再開したのはオレの《脅し》があったからじゃん」

フクタ「ナツキがなんかやったの?」

オレ「いや、トシのプレイがあまりにも停滞してる…というか、もうほとんどやる気ナシみたいな状態だったからさ」

フクタ「うん」

オレ「だから、オレがフクタに焚き付けたんだろ? 《お前もこのゲームやり込んで、オレと2人で対戦しない?》って」

フクタ「ああ、そういえばそうだったね。俺を『ティアサガ』に誘ったのはトシじゃなくてナツキか」

オレ「一応《オレとトシでやろうとしてる企画》ってことにはなってたけど。でも、直接フクタを誘ったのはオレだな」

フクタ「でもおれが始めたら、トシもプレイ再開したんでしょ?」

オレ「そうだ。《あ、フクタもやるの? 3人になったら面白そうだし、やっぱ俺もやろう!》とか言ってさ! 厨過ぎるだろそれ!!」

トシ「いや、そんなこと言ってねぇよ!」

オレ「言葉通りには言ってなくても、意味的にはそういうことだろうが。1ヶ月くらい停滞してたのに、フクタも参加した瞬間お前も再開ってのは」

トシ「ああ…つまり、俺はフクタが始めるのを待ってたんだよ。新しく3人目が参加するのに、俺だけ急いでも仕方ないだろ?」

オレ「テメェはもう、星に帰れ!!」



  ―― ◆ ――



フクタ「結局『ティアサガ』って、おれ達3人でどれくらいやったんだ? 合計時間は」

オレ「少なくともオレは1000時間超えてる。トシは余計なことやってるバカだから、どうせ1200くらいだろ。となればフクタは800ってトコか?」

トシ「フクタは不正やってるからね。対戦で使う16人は全キャラパラメータMAXが条件だったのに、フクタだけ魔力を上げるのサボりやがったし」

フクタ「だって、お前ら2人とも術師使わないってことは判ってたんだから、魔力上げる意味ないじゃん。それにメルヘンはちゃんと上げたし」

オレ「メルヘンだけ上げても意味ないだろ! それに魔力が一番成長率悪いから、そこのMAXを放棄するだけで相当ラクになるだろ。レベル上げが」

トシ「しかも魔法はないって言っても、サンダーソードはあるし」

フクタ「でも結局、サンダーソードなんてほとんど使わなかったじゃん。誰も」

オレ「それこそ結果論だろ!」

トシ「ただ3人ともが1000時間くらいやったっていっても、メモカーのデータ画面じゃ映ってないからね。その時間が」

フクタ「だって実際プレイしてる時間より、リセットしてる時間の方が長いだろ。あのゲームは」

オレ「いやさすがに、消してる時間の方が長いってことはないと思うが」

トシ「とりあえず、パラメータMAX狙いのレベル上げだけならまだマシだからね。どんなに最悪でも、2時間に1レベルは上がるし」

オレ「むしろオレは、その時間そのものがどうの…っていうより、アレは失敗しても《ステージをやり直す》だけでOKって部分が救いだと思う」

トシ「どういう意味?」

オレ「つまり2時間リタマラを続けても、一応内部時間は進んでるから、きちんとデータ上のプレイ時間は《2時間進んでる》だろ?」

トシ「ああ、その気持ちなら俺も解るわ。ちゃんと記録には残る…ってだけで、少しは気が楽になるね」

フクタ「リタイア地獄も、完全な無駄じゃなかったとは思えるよな」

オレ「だからオレが、本当に極限の苦しみを味わったのは《1%宝箱》狙いのときだよ。つまり、例の中身確定システムがあったせいだ!」

トシ「アレは確かに不便だよね。確率で宝箱の中身が決まってるハズなのに、一度タイトル画面まで戻らないとテーブルが変動しないってのは」

オレ「だからアレは、マップ開始して5分くらいかけて宝箱を開けてもハズレだったら、その場でソフトリセットしなきゃなんねぇだろ?」

トシ「だね。しかも《ハズレ》が99%で《アタリ》が1%なのに、あの手間はかなり痛い」

フクタ「それに1%のアイテムが、最終的に30個くらい必要になるからな」

オレ「あんなの、『モンハン』の紅玉なんかが可愛く見えるだろ! 運が最悪だと、1個取るのに10時間近くかかることもあるんだぞアレ!」

トシ「なのにいちいちタイトル画面に戻るせいで、データ上のプレイ時間は1秒も進まない…ってのは確かに萎えるね」

オレ「ゲームの記録上は、《1回目の挑戦で1%を引き当てた》ことになってるから、時計は5分しか進んでないんだろ? 実際の100分の1じゃねぇか!」

トシ「だからこそ、メモカーのデータだと全員3桁表示なんだろ。プレイ時間900とか800とか」

フクタ「実際は、その1.3倍くらいやってる計算か…」

オレ「だからオレにとっても『ティアサガ』は、人生初の《4桁時間を超えたRPG》になったんだよな……思えば」

トシ「RPGといっても、シミュレーションRPGだけどね」

オレ「どっちでもいいよ。ともかくそれまで1000時間を超えたのは、全部が多人数用ゲームだったからな」



  ―― ◆ ――



トシ「ただランダム宝箱も確かにキツかったけど、パラメータMAXもキャラによっては地獄だよね」

フクタ「そんなの、あえて話す必要もないだろ」

オレ「オレは昼の1時から夜の9時くらいまでザカリアのレベル上げに費やして、結局2レベルしか上がらなかったことがあるぞ」

トシ「8時間で2レベルは、さすがに運悪すぎだろ。しかもザカリアって、まだマシな方じゃん」

オレ「マシっつっても、一応《最悪四天王》の一人だろ。まぁ確かに、アレはオレも呪われてると思ったが」

トシ「ロファールも相当キツイよ。成長率もそうだけど、キングスナイトだから限界パラメータが高いのが痛い」

フクタ「でもロファールは、まだ育てると強いからやる気も出るだろ。おれなんてメルヘン育てるのにメチャクチャ苦労したのに、結局ザコだったし」

オレ「全員がパラMAXなんだから、どんなに育てても相対的にはやっぱ弱いんだよな。メルヘンとかガロは(笑)」

トシ「アーキス・クライスもね。上級職はコマンドナイトだけどさ、ソレってラフィンの下級職じゃん!」

オレ「そういう意味じゃ、パラMAXだと勇者のアトロムやゼノも使いもんになんなかったぞ。能力が地味すぎて」

フクタ「剣士だったら、結局はソードマスターがいるからね。5人も」

オレ「思えば前の3人は楽だったが、クリシーヌとヨーダのパラMAXも吐き気するレベルだったな。特にヨーダ」

トシ「むしろヨーダは、MAXにするのにラックアップとかのドーピングは必須でしょ?」

オレ「ああ。だって初期レベルが30であと10レベルしか余裕ないのに、ラックはMAXまで20くらいあるんだぜ(笑)」

トシ「じゃあ、やっぱパラMAXが厳しい《最悪四天王》はメルヘン・ロファール・ザカリア・ヨーダか」

オレ「うん……そうだな、きっと」

フクタ「少なくともおれ達が実際に苦労したレベルで計ったら、そうなるだろ」

オレ「でも当然というか、やっぱメルヘン以外はオヤジだらけなんだな。育てるのキツイキャラは(笑)」



  ―― ◆ ――



オレ「だけどよ…オレのメンバーは全員剣士とかの歩兵部隊で、トシは全員が騎馬部隊だっただろ?」

トシ「ああ。そんでフクタが、両方が混ざった感じだよね」

オレ「でも正直言って……剣士じゃ、ナロンとロファールに勝てる気しないんだけど! というか無理だろアレ!」

フクタ「力・技・速さが全部25だからね。バケモンだろあの2人は」

オレ「最初は《結局ソードマスターが一番強いだろ》とかタカをくくってたけど、実際やってみると全然だったからな…」

トシ「ソードマスターに比べると、槍が使えて守備も高くて、大盾と再移動もあるからね。あとは女神の盾を持たせればもう無敵だろ」

オレ「アレは運が悪かったのかもしんねぇが…それでもヴェガとジュリアとヨーダの3人で斬りかかって、3対1なのにこっちが負けたのは引いたぞ!」




――だから結局、対戦で一番勝率が良かったのは、ナロン・ロファールの2強を擁するトシの騎馬軍団だった。

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