第四十二話:語るネタは108式まであるぞ

Back  Next  Top  Home

【今回の登場人物】

オレ:『テニプリ』で一番好きなダブルスは柳生&仁王。『テニプリ』という作品を一言で表すと、「大人の事情」だと思っている。

カム:一番好きなダブルスは桃城&海堂。『テニプリ』という作品を一言で表すと、「ギャグエンターテイメント」だと思っている。

トシ:一番好きなダブルスはバカ澤&金田。『テニプリ』という作品を一言で表すと、「新しい宗教のマンガ」だと思っている。

フクタ:一番好きなダブルスは、オレと同じく柳生&仁王。『テニプリ』という作品を一言で表すと、「ネタ」だと思っている。

  ――― ■■■ ―――



オレ「『テニプリ』ってさ……やっぱネタマンガなんだよな?」

フクタ「そんなの当然だろ」

トシ「少なくとも、俺はそう思って読んでるけど」

カム「ただ、一番最初はこんなんじゃなかったよ。普通のスポーツマンガだった」

トシ「それはね。ツイストサーブとかスネークも実際にある技を元にしてたみたいだし、きちんと説明もされてたから」

オレ「つばめ返しなんかは、やっぱマンガ的な技なんだろうけど…。それでも、なんつーか《マトモ》ではあったからな」

カム「むしろ俺は、あの頃の『テニプリ』の方が好きだったよ。今も単行本は集めてるけど、昔みたいな熱意はない」

オレ「まぁカムなんかは、連載初期の頃は《一番好きなマンガが『テニプリ』だ》って言ってたくらいだからな」

カム「あの頃は本当に好きだったからね」

トシ「俺も『テニプリ』は好きだけど…でも、そこまですごいファンってわけでもないかな」

フクタ「むしろおれ達は、ゲームの影響がかなり大きいだろ。『テニプリ』のファンになったのは」

オレ「だな。あのゲームにハマったからこそ、マンガ自体にも愛着がある…ってのは確かだ」

カム「それはそうだな。俺はもうマンガはそこまでじゃないけど、ゲームの方はかなり好きだし。今でも」

オレ「まぁ要するに、マンガの『テニプリ』はある程度の《一般ファン》を切り捨てる方向に動いたってことだよな」

フクタ「無難にやろうと思えば、別に無難な風にも描けただろうしね」

トシ「世間の需要を考えたってことか?」

オレ「そこはどうだろうな。やっぱカムみたいに、《普通のスポーツマンガの方が良かった》って思う人は少なからずいるだろ」

トシ「思えば、マークもそんなこと言ってたしね」

オレ「アイツも初期の『テニプリ』はけっこう好きで、単行本買ってるくらいだったんだよ。今はやめたらしいが(笑)」

フクタ「少なくとも、あのノリを許せるようにならないと無理だろうね。中盤以降の『テニプリ』を買うのは」

オレ「マークなんかは、マンガを《ネタとして読む》ことが嫌いっていうし。そういう意味じゃ、確かに難しいだろ」

トシ「ネタとして読むのが嫌い…って? 具体的にどういう意味?」

オレ「なんつーか…例えば『テニプリ』はネタマンガだってオレ達は言うけど、別にそう思ってない人もいるわけじゃん」

フクタ「普通に楽しんでる人も……まぁ、やっぱりいるんだろうね」

オレ「だからつまり、《ネタマンガ》っていう区分自体が、オレ達読者の勝手な決め付けみたいなモンってことで」

トシ「確かに、作者が自分から《これはネタマンガです》とか言うわけないもんな。ギャグマンガだったら別だけど」

オレ「だからこそ、そうやって確定してないモノを《ネタとして読む》のは、マーク的に好きじゃないらしい。作者に悪い気がするというか」

トシ「ふぅん…。まぁ、言ってることは解るけどね」



  ―― ◆ ――



トシ「だけど、いつから『テニプリ』は壊れ始めたんだろうね?」

フクタ「そんなの、菊丸が分身したからに決まってるだろ」

オレ「少なくとも、アレが第一のターニングポイントになったのは間違いないな」

カム「じゃあ、次のターニングポイントは?」

フクタ「仁王のマスカレードかな。おれ的には」

オレ「それじゃ、最後のターニングポイントが石田銀か」

トシ「石田銀のアレは、既に軌道修正が終わった後じゃね?」

オレ「いや違うよ、きっとアレで軌道修正が完了したんだよ」

カム「アレはテニスを超えてるというか、もはやそれ以前の問題だからね」

フクタ「それ以前じゃなくて、《それ以上の領域》でしょ」

オレ「どっちも似たようなモンだろ。ともかく108式は伊達じゃないから。フリーザ様の53万に匹敵するインパクトだったから」

トシ「下手なバトルマンガより、よっぽど迫力あるからね」

カム「というか出血の量が半端じゃないだろ。最近のジャンプマンガで一番血を描いたのが、あの話じゃないの?」

フクタ「スポーツマンガのハズなのにな」

オレ「たださ…とりあえず石田銀とか分身とかは、正直なところやっぱ《読んでて面白かった》んだよ。オレは」

カム「まぁナツキは、今でもずっと『テニプリ』ファンだしね。それは、そういう部分を面白いと思えるからこそファンなんでしょ」

オレ「ああ、それは自分でもそう思う。《ネタマンガ》とか言いつつ、そのネタを《心から楽しんでる》のが自分で解るからこれだけ好きなんだし」

トシ「今の『テニプリ』が好きだって人は、きっとナツキみたいなヤツが多いんだろ」

カム「あとはキャラ人気の影響でしょ。不二とか跡部のファンが」

フクタ「読者の半分くらいがキャラ人気で読んでるんだろ」

トシ「いや、もっと多いんじゃない?」

カム「そこまでじゃないと思うよ、一応ジャンプで連載してるんだし。…ジャンプだからどうなのか知らないけどさ」

オレ「ただオレが一番納得できなかったのは、分身でもマスカレードでもなく、何よりリョーマ対真田の対決だな」

フクタ「むしろリョーマと魔王の対決は、ここにいる全員が納得してないだろ」

カム「つーか、あそこでリョーマが勝つ意味が解らないよね。実力的にも、ストーリー的にも」

フクタ「そもそも相手がリョーマじゃなくても、人間外生物の真田が誰かに敗北すること自体があり得ないね」

オレ「《火》が顔面に当たったら、人を殺せそうだもんなアレ」

トシ「もはや真田は、何かの悪魔の実を食ったとしか思えない」

カム「卍解くらいはできそうだしね」

オレ「それに話としても、あそこでリョーマが勝ってどうすんだよって感じじゃん。リョーマというか、青学が立海に勝ってどうすんだよ…って」

フクタ「立海は前回優勝校だよね? 関東大会の時点でそこを倒しちゃったら、もはや全国とか全く燃えないだろ。格下が相手ってことじゃん」

トシ「大体さ、関東大会は準優勝でも全国に進めるんだから、無理して青学を勝たせる必要もなかったのに」

オレ「むしろあそこで負けてれば、《ちくしょう! 全国で絶対リベンジしてやる!》ってノリにもなれたのにな」

フクタ「県大会の時点で、湘北が山王を倒しちゃうみたいなもんだよな。もし同じ県だったらの話だけど」

オレ「そりゃ確かに、あの展開にゃ予想を裏切られたが…同時に期待も裏切られたぞアレは!」

フクタ「失敗した『刃牙』みたいなもんか」

トシ「あそこは安直でもいいから、立海が勝った方が盛り上がったと俺も思う。それなら魔王も負けないで済むし」

オレ「そこは大きいね。真田の品格が下がらずに済むっていうのは」

フクタ「そもそも真田を倒したリョーマのクセに、それがタニシに苦戦するなと言いたい」

オレ「だよな(笑) アレこそ、間接的に真田のオーラが低下する!」

カム「まぁアレはリョーマだったから苦戦したみたいなもので、真田がタニシと戦ったら絶望と共に散らしてただろ」

オレ「《絶望と共に散る》っていう単語が、テニスの話に出てくるのはおかしいけどな(笑)」



  ―― ◆ ――



フクタ「でもさ…やっぱおれ達って、絶対《好きなキャラ》が何か間違ってるよね。全員が」

トシ「ゲームの影響なんかもあると思うけど、それでも何かおかしいとは思う」

オレ「とりあえず、一番マトモなのはカムかな」

カム「俺は、桃ちゃんと乾とブン太だからね。昔は桃ちゃんだけだったけど、立海が出てきてブン太のファンになった」

トシ「俺はタッチーと石田鉄と、紳士かな。あとは真田ね」

オレ「オレは宍戸と仁王と、あとは真田だ」

フクタ「おれはバカ澤と室町と福士とハゲ。あと真田」

カム「真田多すぎだから!」

オレ「というより、フクタの好きキャラはブッ飛びすぎだろ! マトモなキャラが一人もいねぇじゃん!!」

トシ「むしろそのメンツだと、真田が一番マトモに思えてくる」

オレ「フクタは原作読む前にゲームから入ったから、余計メチャクチャなんだろ(笑)」

カム「でもさ、今ここにいる俺達とナツキの姉ちゃんとの5人で、『テニプリ』のファンブック作ったじゃん」

オレ「ああ。制作に7ヶ月くらい掛かったヤツね」

カム「あの本でさ、俺達は『最強チーム』に出てくる53キャラに対して、クロスレビューみたいなことやったじゃん?」

オレ「クロスレビューというか、そのキャラに対する《好き度》を1〜5まで5段階に分けて全員で投票して、その合計得点で総合順位を決めたんでしょ」

カム「ああ、うん。ともかくアレで決まった、俺達5人を総合した《トップ10》は、意外とマトモなメンツじゃなかった?」

フクタ「いや、そうでもなかったでしょ」

トシ「でも俺達って、それぞれの好きキャラはあんまり被ってないから、全員を平均すると案外マトモになったかもね。覚えてないけど」

オレ「じゃあ具体的に調べてみるか? ええっと、あのノートはこの辺に……おお、あったあった」

カム「10位は誰だっけ?」

オレ「その前に、主要キャラの順位を見返してみるか。ええと、まず最下位の53位が六角の樹だな(笑)」

フクタ「あんな《なのね星人》なんて、最下位で当然だろ!」

オレ「言い草がヒデェよ! ああ…でもこりゃヤバイな。5人の得点が《1・1・1・2・1》で、合計6ポイントだぞ(笑)」

トシ「全員1ポイントで最低点にならなかっただけ、まだマシか」

オレ「ええと、そんで手塚が《4・2・3・3・2》の14ポイントで42位……リョーマが《3・4・2・4・3》の16ポイントで32位……」

カム「主人公なのに、全体の半分より上にも入ってなかったっけ」

トシ「あの主人公パワーは、けっこう引くレベルだからね。キラ・ヤマトに匹敵するレベルでしょ」

オレ「むしろ考え方によってはキラより上だ。キラは元々がスーパーコーディネイターでフリーダムだから、誰を倒してもある意味《普通》だろ?」

フクタ「まぁキラだからね。でもリョーマはスーパーコーディネイターでもないのに、真田を倒しちゃったからね」

トシ「確かにそういう意味の《主人公パワー》だったら、リョーマの方がヤバイか。理不尽なノリってことでは」

オレ「ともかく……そんでカムが最高の5ポイントを投じた桃ちゃんも、計17ポイントで29位止まり。フクタが5ポイント入れた室町は、27位」

トシ「むしろ、桃ちゃんより室町が上って時点で何かおかしいだろ」

フクタ「それなら、桃ちゃんだけじゃなくてリョーマや手塚よりも室町が上なんだぞ」

オレ「不二周助も同着27位」

カム「不二と室町が同じか」

フクタ「案外順位高かったよね。…不二が」

オレ「不二は、オレ達の中じゃ昔から人気なかった割にはな(笑) でもこれは、姉ちゃんが5ポイント入れた影響だろ」

トシ「あの人は不二厨だからね」

オレ「そんで弟の裕太は23位。福士ミチルは21位。カムがファンのブン太は17位。榊太郎が《3・4・4・4・4》の19ポイントで16位」

フクタ「榊は大人気すぎるだろ!」

オレ「で、12位にテツ石田。11位がバカ澤だ。惜しいなこの2人は(笑)」

トシ「むしろ、その順位にコイツらがいる時点で十分だろ」

オレ「そんで、ここから上だけど……まず10位が忍足だな。《4・5・3・4・4》で20ポイントだ」

トシ「あれ、忍足がそんな順位だったっけ? …確かに、なんか普通だね。俺達にしては」

カム「まぁ、俺はかなり好きだからねアイツ。このときも、俺が5ポイント入れてたみたいだし」

オレ「そんで9位が乾。8位はハゲだな」

フクタ「ハゲは奮闘しすぎだろ」

オレ「7位が、オレが5ポイント入れた宍戸。6位が柳生で5位は仁王だ」

カム「そこらへんも、案外普通の顔ぶれだよね」

オレ「いや、次がもっと普通だぞ。4位はあとべ〜だ。《5・4・4・4・5》で22ポイント」

トシ「あとべ〜がそんなに高かったっけ? 全然印象になかった」

オレ「オレも自分で集計してて驚いたよ。世間で大人気なヤツが、オレ達の上位にも食い込んでくるなんてな(笑)」

フクタ「リョーマとか不二の順位は低かったからね」

オレ「で、3位が亜久津だ」

カム「これは順当だろ」

トシ「あえて《好きなキャラ》って言わなくても、全員が好きって判るしね」

オレ「そんで、2位が魔王」

フクタ「あのときは、真田が1位じゃなかったことに驚いたね」

オレ「まぁな。実は更に上がいたというか……結局1位はタッチーだからね(笑)」

カム「《4・5・5・5・4》で23ポイントか…。コレってもう、ほとんど限界得点じゃん!」



  ―― ◆ ――



オレ「アンケートを採る前のノリとしては、とりあえずトップは真田で間違いないと思ってたからな。そこは確定事項みたいな雰囲気で」

カム「そんで集計してみたら、実は合計だとタッチーのが上だった…ってことか(笑)」

トシ「だからこそ、イレギュラーで面白かったんだよね」




――ともかく、そんなファンブックまで作るくらいなのだから…やっぱりオレ達は、なんだかんだで全員が『テニプリ』のファンなんだろう。

Back  Next  Top  Home