さ〜て皆さんご注目! 私はオラクル騎士団所属の導師守護役フォンマスターガーディアン、絶対無敵のアニスちゃん!

頭脳明晰、容姿端麗、将来有望の究極美少女なんだけど、近頃悩みができちゃって………もう大変っ!

しかもこれがまた手の付けられない厄介な相手で、私もどうにかこの状況を打破したいんだよね。

むしろそうしないと私……いつかストレスで確実に死ぬ!


そうそう、それでね。その悩みっていうのが………

「ん? なに部屋の真ん中で突っ立ってるんだよ、アニス」


ムカッ!

そんなこと考えてるうちに、早速悩みの種の第一号……ルークが出現しやがりましたぁ!


「ちょっと、ルーク。アニスは考え事をしているのよ。邪魔しちゃ悪いわ」


ムカムカッ!

続いて第二号、ティアまで出現する有様ですぅ! アニスちゃんいきなり大ピンチ!!


「な、なんだよティア。邪魔なんかしてねーだろ!? 俺はただ、アニスが何してるのかなって……」

「それが邪魔だって言ってるのよ。まったく、いつまでたっても子どもなんだから」

「こ……子どもって、なんでそうなるんだよ! ティアだってまだ16歳だろ!?」

「年齢のことを言っているのではないわ。ルークの態度が子どもなのよ。今もそうやって、ちょっとのことでムキになって……」

「うるさいなぁ! そんなのティアには関係ないだろ!?」


ケッ、うるさいのはそっちだっつの!

口には出さずに毒づいたけど、私のストレスは溜まる一方。


そう、そうなのだ! 現在のアニスちゃん最大の悩みは、この二人……ルークとティアとのうざったい――じゃなくて、ぎこちないこの関係のこと!!

二人とも、互いに互いを意識し合っているのは見え見えだっていうのに、ああそれなのにっ!

これがとてつもない「子ども」に「鈍感」という究極の二人組なんですよう!

ルークもティアも意地を張り合ってるのか、はたまた自分の気持ちに気が付いてさえいないのか……

ともかく一向に、そう、一向に関係が進展する兆しさえ見せないんですっ!


傍から見ている私にとって、これほどストレスが溜まることはない。

ともあれ今は、そんな鈍感アホカップルがダブルで揃ったこの超危険区域を抜け出すのが先っ!

私は未だ言い争っているルークたちを尻目に、さっさと部屋の入り口へ向かった。そしてドアのノブに手を伸ばし………


ガチャ。

と、私がノブに触れるより先に向こうからドアが開いた。見ると、目の前にガイの長身が立っている。


「お、アニスか。どうしたんだ? そんなに頬を膨らましてたら、可愛い顔が台無しだぞ?」

ドアを開けたらいきなり私が立っていたためか、女性恐怖症のガイは少し後ずさった。

しかし後ずさりながらも、素でキザな台詞を吐いてくるところがガイらしい。


「ちょっとガイ〜〜、ガイはルークの保護者でしょ? アレ・・、どうにかしてよ!」

後ろの二人を視線で示しながら、私。


「アレって……。ル、ルークがまた何かやったのか!? すまないアニス、あとで俺から良く言っておくから……」

「ああもうっ! そうじゃなくてぇ〜!」


途端にオロオロし始めたガイを見ていたら、さすがの私も泣きたくなった。このザマじゃあ、ガイも役には立ちそうにない。

だけどこのままじゃ、私がストレス死するのも時間の問題っ! 即急に手を打たなくちゃ、いつか本気でルークの頭をブン殴りそうだよ。トクナガで。


だけど手を打つと言ったって、こればっかりはお金で解決できる問題でもないし……

いや、そもそもあの二人のために、私が自分の大切なガルドを使うなんていうのも馬鹿げた話で。むしろもってのほか。

そうだよ、だったらルークたちが、自分たちの為に自分たちのお金を使えばいいだけじゃない。

大体ルークなんて、苦労知らずなお金持ちのお坊ちゃまなんだから………


と。

なんだか思わぬ方向へと思考がズレかけたとき、私の頭にパッと閃いたものがあった。

途端に紡がれる、アニスちゃんの思考の網。

(明日は………もしかして、あの日? 旅続きですっかり忘れてたけど、多分間違いない……。しかもここは……。だとすると、これが、こうなって……)


ハッとした。

いける。いけるかもしれない。

ルークとティアの仲を、人為的に進展させること。


「なあ、アニス? 一体どうしたんだ、急に黙り込んで」

少し心配そうな表情で、私の顔をガイが覗き込んでくる。しかし今は、そんなことにいちいち構っているヒマは無い。とにかく時間が惜しいっ!


「ちょっとガイ! 他のみんなはどこにいるの!?」

「うえ!? あ、ああ……。ダンナとナタリアなら、別室で休んでるが……」

「じゃあその部屋へ連れてって! 今すぐ!!」

いきなり豹変した私の態度にガイはしどろもどろになったけど、それ以上に、どうやら迫力に圧倒されたらしい。

ガイはくるりと向きを変え、慌てて私の前を走っていくのだった―――












アニスちゃんのラブラブ大作戦1 〜作戦計画!〜





















「――と、いうわけで! これからアニスちゃんによる、『ルークとティアをくっつけろ大作戦』を発動します! みんなも全力で協力すること。以上っ!」


ここはバチカル。私たちは旅の途中、身体を休めるためにファブレ公爵のお屋敷に滞在することになった。

だからしばらくは戦いの日々から離れて、私たち全員ヒマ〜な毎日なんだ。……でもだからこそ、余計に始末が悪いんだけど。


「い、いきなり何事ですの!?」

「それがその……俺にも良くわからないんだが……」

「おや、また面白そうなことが始まりそうですねえ」


ナタリア、ガイ、大佐と、3人がそれぞれ私の方を振り返ってそれぞれの感想を漏らした。

ちっ、さすがに何ひとつ説明しないでみんなの協力を得られるほど、甘くはなかったか。


「だからぁ! お互いに好き合ってるクセして進展する気配すら見せないルークとティアの仲を、私たちで近づけてあげようって言ってるの!!」

息継ぎもせずに一気にまくしたてる。


「まあ! ルークとティアはそんな仲でしたの!?」

「いや……さすがにそれくらいは、キミも気付いた方がいいんじゃ……」

「ははは、ナタリアはルークたちと同じくらい鈍感ですからねえ〜」

またも、勝手なことを言い合う3人。


「もう〜〜、みんなっ! アニスちゃんは本気なんだからねっ! もっと真面目に考えてよ!」

たまらず私は叫び声をあげる。そうだよ、これは私にとって死活問題なんだからっ!


「いや、ハハ……。とは言ってもな、アニス。あのルークとティアをくっつけるなんて、そう簡単には無理なんじゃないか?」

苦笑いを浮かべながら、ガイ。

まあ確かに、それは言えてるよ。だから私だって、そんな大袈裟なことを望んでるわけじゃないんだ。


「ううん、別に『くっつける』とか、そういうことじゃないよ。だけど、このままじゃ私………ストレスで死んじゃうんだよ!?」

「ああ、それは私も同感ですね」

大佐が合いの手を入れる。


「だからね。要するに、ルークとティアの仲を今よりもう少しだけ進展させられればそれでいいの」

「進展って……具体的にはどうするんだ?」

「それは、これからアニスちゃんの計画を話すよ。ともかくそれには、みんなの協力が不可欠なの。だからぁ………協力してくれるよねっ!?」

ずいと、私は3人に詰め寄った。


「ですが……男女の仲は犬も食べないとも言いますし……。わたくしたちが二人の間に介入するというのも……」

「ナタリアったら、何わけわかんないこと言ってんのっ! ナタリアは仲間として、キムラスカの王女として、ルークたちを応援する義務があるでしょっ!?」

私の説得も、十分に意味不明だったけど。


「う……。そ、そうですわね! 王女が何に関係するのかは良くわかりませんけれど、仲間としてルークとティアを放っておくことはできませんものね!」

これで納得するナタリアもナタリアだよ。もちろん私にとっては、こうなることも予想通りっ!


「おやおや、うま〜く言いくるめましたねえ。アニス」

不穏にニコニコしながら、大佐が視線を投げかけてくる。


「むう〜! 大佐は協力してくれないんですかぁ〜?」

「いえいえ、とんでもない。ぜひ協力させていただきますよ」

「あれ? ダンナにしては珍しく、素直なんだな」

ガイが不思議そうに尋ねると、大佐は笑顔のまま答えた。


「だって、面白そうじゃないですか?」

「………そんなことだろうと思ったよ……」

「それよりさ、ガイも当〜然っ、協力してくれるんだよね?」


私はそう問い詰める。だけど、ガイはまたもやオドオドしながら、

「いや……でも俺は、やっぱり自然の流れに任せた方が……。いやこれは、その、ルークの保護者役としてだな……」

「ガイ」

半眼で、ドスの効いた声を発する私。


「これ以上逆らったら………抱きつくよ・・・・・?」

ビクッ! とガイの肩が震え、口を半開きにしたまま言葉の先を飲み込んだ。


「は、はは……。………本気?」

「本気」

「うっ……。ううっ、すまないルーク……俺は悪魔の囁きに魂を売ってしまうのか……っ!」

「ガイったら、何をブツブツ言ってるのっ!? やるの、やらないの、どっち!?」

「は、はいっ!! ぜひやらせていただきますっ!!」

あっさり落ちた。


ふっ、大佐の協力を取り付けた今、ナタリアとガイを懐柔するなんて容易いものねっ!

きゃわ〜〜ん! アニスちゃんって怖い女〜〜っ!!


「それで、怖い女のアニスちゃん。そろそろ具体的な計画というのを聞かせていただきたいのですが?」

「はうあ! もう、大佐ったら〜! 何を変こと言ってるんですかぁ〜っ? 人の心を勝手に読まないでくださいよぅ〜」

ともかくコホン、とひとつ咳払いを入れて。



「じゃあみんな、良く聞いててねっ。これからこの作戦の内容を、ひとつひとつ説明していくよ!」





































あとがき

さぁて、と……。
3ヶ月ぶりに書き始めてみた「小説」というモノですが、いやはや……。やっぱり難しいですね(笑)

というかアレですよ。アニスちゃんって、思ってた以上に動かし辛いキャラなんですがっ!
しかしそれなのにタイトルは、「アニスちゃんのラブラブ大作戦」……。どうしろと言うんじゃっ!! (←自分で付けたタイトルのクセに)

ともかく前回桜さんへのお礼として制作した小説は、桜さんの好きな「ロイコレ」で書きました。
だから今回は、蒼羽さんの好きな「ルクティア」でいくことにしましたよ。わお、オレって単純だぁ!

しかしそんなこと言いながら、肝心のルクティアに出番が全然無いって?

……。

それはもう、オレの小説の恒例みたいなもんですから!(爆) お気になさらずっ! というか気にしないで下さいっ!!

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