アニスちゃんのラブラブ大作戦2 〜作戦会議!〜





















「なるほど。最終的にはルークとティアを、二人っきりのいい雰囲気にさせてあげるのが目的か」

とりあえず概要を話し終えたところで、ガイが腕を組みながら納得の声を発した。


「そういうこと! そうすれば、少しはルークたちの仲も進展するでしょ?」

「確かにそうかもしれませんねえ。だけどあの二人を『いい雰囲気』にすること自体が難しいんじゃありませんか?」

「はうあ! さっすが大佐、着眼点が違いますぅ!」

「はは、そうですか、照れますねぇ。あの二人を知っている者からすれば、そこが一番の問題というのは自明の理という気もしますが」

「またまたぁ! 謙遜は無しですよぅ、大佐!

ともかく、確かにあの二人をいい雰囲気にするのは大変な作業なんですけど……」


だけどさすがのアニスちゃん! そのへんは、きちんと対策済みなのですっ!!


「あら、なんですの? アニスが自信満々の顔をしていますわ」

「ふふふ〜ん! だからねっ、明日が年に一度の『あの日』だってことを利用するのっ!」

ナタリアの顔をまじまじと見つめながら、私は自信に満ちた台詞を放った。

だけどその意味を即座に理解した人間が、私を除いて一人しかいなかったことには少し拍子抜けだよね。

大佐はともかくとして、ナタリアでさえも気付かないだなんてっ! それでも女の子なの!?


と、いうわけで。唯一それに気付いた人間―――ガイが、私の心を代弁してくれた。


「ああ、明日が誕生日か」

そう言って、ナタリアに視線を投げかける。


「えっ? …ああ、そういえばそうでしたわ! わたくしとしたことが、ここのところ旅が忙しくて……すっかり忘れていました!」

「おや、そうだったんですか? それは初耳ですねえ」

「はは、ダンナはマルクトの軍人さんだからな。自国の情報を管理するだけで精一杯か」

「いえいえ。たとえマルクトの人間であっても、誕生日なんていちいち覚えていませんよ? そんなものに興味は無いですからねえ。

その証拠に、ピオニー陛下の誕生日さえ覚えていません」

「いや……それくらいは覚えておけよ……」


またもや、勝手なやり取りを始める3人。ああもうっ! どうしてこう、すぐにわき道へ逸れるかなぁ!


「とにかくっ! この計画のために、色々と確かめたいことがあるの!」

そう言って皆の注意をこちらに向けた。

そうだよ。場合によっては、計画の遂行に支障をきたす可能性だってあるんだからっ。


「とりあえず……。まずはひとつ目の質問っ!

ナタリアの誕生日には、毎年どんな催しがあるの? ここはキムラスカの首都なんだし、王女様の誕生日に何も無いなんてことはないんでしょ?」


一瞬顔を見合わせたものの、その質問には当のナタリアではなく、ガイが代わりに答えてくれた。


「そうだなぁ……。今は一応戦争状態ではあるし、去年も大掛かりな催し物は無かったんだけどな。

だけど毎年必ず、ナタリアの肖像画を店先に並べる店が何軒か出てくるよ。

それに、城下町中の店が大々的なセールをするんだ。その日は客のカキ入れ時だからな」

「おや、キムラスカ王国も案外ケチですねぇ。王女の誕生日だというのに、その程度のモノですか」

「し、失礼ですわねっ! だったらマルクトはどうなんですのっ!?」

「いや〜、マルクトは凄いですよ?

この前は陛下の溺愛しているブウサギの誕生日だということで、戦時中にも関わらず盛大なパレードが行なわれたものです」

「そ、それは別の意味で凄いな………」


そんな会話は右から左へ聞き流しつつ。私は思考を巡らせていた。

(そういうことなら、かなり都合が……。それに、ルークが最初に向かうとしたら……? それなら、ナタリアに協力してもらって……)


「アニス。それで、今の話が何か関係あったのですか?」

「はい、大佐! 関係ありありでしたよぉ!! …ともかく次は、ふたつ目の質問ですっ!!」

とりあえず今は、大事なことを確かめるのが先だ。

「そのナタリアの誕生日だけど……。ルークは、その日にちを覚えてると思う?」


今度の質問に対しては、ナタリア本人が答えてくれた。


「そうですわね……。ルークがバチカル――つまりこの屋敷の中で生活していた頃は、城下町に出してさえもらえなかったわけですし……。

あの頃も、私自身の口からルークに教えて、初めてその日が誕生日だと気付いていたくらいですわ」

「そうだったな……。まあ、さっき話した城下町の様子くらいは、ルークに話して聞かせたりしたもんだよ。ちょっと誇張気味に、ね」

「ほほう、誇張気味とはどういう意味ですか?」

「いや、屋敷から出られないルークのために、少しでもワクワクできる話をしてやろうと思ってな。

ナタリアの誕生日には、国中の店が半額セールをやるんだぞ〜〜! とか」

「ガイ……。それは、そこまでワクワクできる話とは思えませんわ……」


またも漫才を始める3人。だけどこれでわかった。ルークはまず間違いなく、ナタリアの誕生日を覚えていない。

つまりは明日という日にちも、全くわかっていないということだ。

そもそも、女の子の誕生日を律儀に覚えているようなタイプじゃないし。


「うん、それで大体わかったよ。

ここのところ旅も忙しかったし、ルークはもちろん……もしかしたらティアだって、誕生日のことを忘れているかもしれない。

……ま、アッシュだったらまだしもね」

「ああ、彼なら律儀に覚えていそうですねえ」

「まあ! どうしてここでアッシュの名前が出てくるんですの!?」

「はは、まあいいじゃないか」


そうだよ。そんなところは、ガイの言う通りどうでもいい話。

それよりも、アニスちゃんプロデュースによるこの計画……その基盤が徐々に固まってきたことが、私にとっては何よりいい感じっ!!

そうっ! あとはこれから取るべきみんなの役割を、それぞれ指示していけば全て上手くいく……ハズっ!


「ところで、アニス。結局我々は、今回の具体的な計画を何ひとつ聞かされていないのですが?」

私の心を見透かしたように、すかさず大佐がナイスな質問を挟んだ。


「そうですわね……。誕生日のことを尋ねたところを見ると、計画を実行するのはいきなり明日なのでしょう?

まずはどこでどうやって、二人を『いい雰囲気』にするんですの?」

「は〜い! いい質問だよ、ナタリア。まずは作戦の一番最初、『ルークとティアを二人っきりにする』ところから話すね。

要するに、まずは二人が一緒になって、この屋敷から外に出るよう仕向ければいいんですよぅ!

そうすれば、必然的にルークたちは二人っきりになります!」

私は胸を張って答えた。


「それはそうかもしれないが……。

だけどアニス。そのためには、ルークとティアが二人で一緒に外に出るっていうまっとうな理由が必要になってくるんじゃないか?

まさか、何の理由も無く二人だけを追い出すというわけにもいかんだろうし……」

「うん、それはそうだよ。第一私たちが強引にルークたちを追い出したとしても、それは不自然だし怪しまれちゃう。

でもね、だったら逆にルークたちが………自分らの意思で外に出て行けば・・・・・・・・・・・・・・いいんじゃない?」

ガイが、きょとんとした顔になる。


「自分の、意思だって?」

「ほほう。何か策があるようですねえ、アニス?」

大佐が話の先を促すのに任せて、私は言葉を続けた。


「あとで、ちょっとナタリアの協力も必要になってくるんだけどね。ともかく最初に利用するのは………そう、ポテチだよ!」

「はぁ?」

「ほう」

「まあっ!

アニス、ポテチとは一体……何なんですの!?」

がくっ!

3人ともが驚いた表情をしたものの、ナタリアだけその意味するところが違ったらしい。まったく、これだから世間知らずの王女様はっ!

私の心中を察したのか、ガイが横から言葉を挟む。


「ポテトチョップ。庶民の食べる駄菓子だよ、ナタリア。これがなかなかウマイんだ。

この前ルークにも薦めてみたら、あいつも途端にハマっちまってな。身体に悪いから、食いすぎるなと言い聞かせてはいるんだが………」

「そう、そこだよそこっ!!」

ダンッ! と机を叩き、私はガイを指差し立ち上がった。そうだよ! そこが、今回の作戦におけるキモのひとつなんだからっ!


わたくしの誕生日に、ポテトチョップ……。まったく、わけがわかりませんわね」

手の平を左右に広げながら、ナタリアが嘆息した。

そうだね。そろそろ本格的に、具体的な作戦の詳細を話していかなくっちゃ。


「それじゃあ、とりあえず最初のキーポイントを言うよっ! 重要なのは………」

皆の顔をぐるりと見渡してから、私はゆっくりと言葉を続けた。




「重要なのは………。

『ルークがコンソメ味のポテチしか食べないこと』、だよ!」





































あとがき

というわけで、ルクティア小説(←力説)第2話です!

え? 前回の話から、ストーリーの展開が全然進んでないって?
これではまるで、30分かけて10秒ほどしか進まないという、昔のスポ根アニメを見ているようだって?

………。

うるさいうるさいうるさ〜〜いっ!! オレは悪くねえ! オレは悪くねえ!


って……あ、いや、その………。

ご、ごめんなさいっ!(笑)

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