エピローグ





















「♪ハッピバースデー、トゥ〜ユ〜〜! ハッピバースデー、トゥ〜ユ〜〜」

宿屋の大部屋を借り切っての誕生日パーティーは、なかなかの盛り上がりを見せていた。

大部屋とはいえ八人はちょっときついけど、みんなの顔は笑顔だった。もちろん、あたしも。


「はい、ロイド! ボクからの誕生日プレゼント」

「お、すっげーっ! このケーキ、お前が作ったのかよ!?」

「まぁね〜。リーガルとの共同作業だったけど」

そう言いながら差し出したジーニアスのバースデーケーキは、さすがに大層な出来栄えだった。


「一日遅れの誕生日パーティーというのも、たまにはいいかしらね。……はい、ロイド。おめでとう」

そう言ってリフィルもプレゼントを渡す。その顔は、やっぱり嬉しそうだ。

おっと、そろそろあたしもお祝いしないとね。


「はい、ロイド。あたしからはコレだよ。ミズホに伝わる守り札さ」

「おっ、ありがとな、しいな! 俺さ、前からしいなのお札に興味あったんだぜ!?」

そう言って喜ぶロイドの笑顔も、本当に幸せそう。


一通りプレゼントを渡し終わったら、お待ちかねの会食タイムだ。

ジーニアスとリーガルが腕を振るったという料理は、お世辞じゃなくて美味しかった。


「なぁ、しいな。それでさ……結局昨日のことはなんだったんだ?」

しばらくすると、ロイドがあたしに尋ねてきた。料理を口に詰め込みながらだったけど。

なんだ、あんたはまだ知らなかったのかい。


「もういいでしょう。話してあげればいいんじゃなくて?」

リフィルもそう言うもんだから、あたしは事の起こりを語り始めた。











「俺様さ……ロイドに決闘を申し込もうと思うんだけど」


そうアホ神子に言われたときは、驚いたというよりそりゃもう焦ったね。

アホだアホだとは思ってたけど、まさかここまでアホだとは思ってなかったからさ。


「け、決闘ってあんた……なんで、じゃなくてどうして、いや、そうでもなくて、その、ええと……」

「おいおい、落ち着けって。決闘っていっても本気じゃねえよ。そうだな……言うなれば慈善事業ってやつだ」

「じ、慈善事業だって? 一体どういう意味………」

「まあ、とりあえず聞けって。……おっと、ちょうどいいや。おいガキんちょ、お前も協力してくれ」

そう言ってジーニアスも引っ張り込んでから、ゼロスは話し始めたのさ。


「なあ、しいな。お前も最近のロイドくんを見て、もどかしいというか、じれったいというか……ともかくそんな風に感じねえか?」

「そ、そりゃあ……。ちょっとロイドが積極性に欠けるかな、くらいは思ってたけど……」

正直な感想を言ってみたところ、アホ神子はあろうことか、頭を抱えながら首を振りやがった。


「ああ〜、これだからダメなんだよな〜。男女のなんたるかってことが全然わかってない! やっぱしいなが立派なのはむ」

「胸だけだ、なんて言ったら張り倒すからね」

「あ、いや……。と、とにかくだ」

ゴホン、とひとつ咳払いをしてから、ゼロスは自分の考えを披露しだした。




「………というわけで、ロイドくんはコレットちゃんに対してバカなりに負い目を感じてるわけよ」

そこまで話して、ゼロスがロイドたちの方をちらりと見る。

「おおかた、『俺にはコレットを守る資格が無い』とでも思ってんだろうぜ」

今のあいつを見ていたら、眉間にシワも寄っちまう。そう言いながら、ゼロスは不機嫌そうな顔を作ってみせた。


「あのロイドが、そんな小難しいこと考えるかなあ? ボクには全然、そんな風に見えなかったけど」

「ま、ガキんちょにゃまだ早いだろーな。といっても、その顔を見る限りしいなも同レベルってとこだろうが」

「う、うるさいね! それよりそんな行き当たりばったりの計画が、ホントに成功するのかい!?」

「まあ見ておきなさいって。それより、あとはさっき話した通りに頼むぜ」

手をひらひらさせながらあたしたちに背を向けたゼロスは、ゆっくりとロイドたちの方へ歩いていった。


「ロイド、単刀直入に言うぜ。……俺は、お前に決闘を申し込む!」











「そこから先が、また大変だったよ。最初の試練は、アホ神子の臭すぎる演技に、ジーニアスと二人で笑いを堪えなきゃいけないことだったね」

「そうそう。あのときは、ボクたち二人とも相当変な表情してたんじゃない?」

「だろうねぇ。それにそのあとも、アホ神子に頼まれたことが色々あってさ」

一本一本指を折りながら、あたしは自らの苦労を語った。


「まずはロイドとコレットに気付かれないように、みんなに『計画』のことを伝え回ること」

「最初にその話を聞いたときは、私もさすがに驚いたわ」

リフィルが合いの手を入れる。


「事前に、隠れてアホ神子から決闘場所を聞いておくこと。その場所に、それとなくコレットを連れ出す必要だってあったんだよ」

「そんなこと言ったら、やっぱ俺様が一番大変だったでしょーが」

ここぞとばかりに、ゼロスが割って入った。


「本気で決闘してるふりをしながら、ロイドくんをそれとなく誘導しなきゃいけなかったんだぜ?」

「あんたはいいんだよ。自分が言い出したことなんだから」

そう言いながらも、あたしはゼロスの頑張りを確かに認めていたんだ。

そもそも今回の計画は、「ロイドにコレットのことを好きと言わせる」のが一番の目的で、アホ神子の狙いでもあった。

いじいじしているロイドの態度を、矯正させてやりたかったんだね。

戦いながらも言葉を選んで挑発したり、焚きつけたり。あたしが考えている以上に、あいつも大変だったんだと思うよ。


「だけどゼロスもお節介だよな〜。三日もかけて演技して、本当に決闘までしちゃうなんてさ」

「おっ、言ってくれるね〜ロイドくん! この愛の伝道師ゼロス様に対して、その言い方はないんでないの〜?」

いつも通りの掛け合いを見せる二人に対して、アハハと部屋中のみんなが笑いだす。



そして笑いながらも、あたしは考えていたんだ。

そこのアホ神子は、確かにいつもアホな行動ばかりだけど。

だけどたまにはいいこともするんだなって、あたしも今回ばかりは認めてあげるよ。



肩を寄せ合いながら、テーブルの下で手を繋ぎ合うロイドとコレットを見て。

あたしは、そんな風に考えていた。




〜Fin.





































あとがき

と、いうわけで! 生まれて初めて執筆したこの小説も、ようやく書き上げることができました!
もともとSさんへの「お祝い返し」として、ちゃちゃっと書くつもりのモノだったけど……。
いつの間にこんな大作になってしまったんでしょうね?(知るか)

しかし大作といっても、言葉を変えれば「長いだけ」とも言う。
しかも慣れない小説&文章力の問題というダブルパンチまで加わって……。
それでもここまで読んでくれた方には、感謝し尽くしても足りませんっ!!

しかしまあ……結局ロイコレ小説と銘打っておきながら、ロイドとコレットがラブラブしてる場面をほとんど書けてないオレ。
それでいいのか? むしろ、この小説の主人公がゼロスに見えるのはオレだけか?

なんというか……。やっぱり色んな意味でごめんなさいっ!!!
ああ、なんだか謝りグセがつきそうだ(笑)。

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