13.批評

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これはGACに限らない話ではあるが、映画にしろ音楽にしろ何らかの「作品批評」が好き…という人は多い。そして今でこそオレも「ランキング」等の(若干特殊な)書き物を好んではいるが、中学生の頃には「ゲームレビューブック」を執筆した経験もあり、何かを批評することが面白いと思う感性なら理解しているつもりだ。そしてまた、「批評」が悪いことであるとも思わない。それこそオレ個人が(今では)なんとなく好きじゃないだけで、オレとしても「批評の意義」というモノは自分なりに解っている。

だからオレがここで議題として挙げたいのは、なにも「批評という行為そのもの」ではない。
言うなればそう…「批評における心構え」とでもいうか。


例えばここでは例として、「RPGの批評」を考える。もちろんソレを批評する上でも、各人各様の「批評ポイント」があり、どのような部分を重視するかはそれこそ人それぞれだ。よって更に例として、オレが以前使っていた「評価基準」を挙げるとしよう。それが以下に紹介する「3・5・7法」だ。
これは批評をやらなくなった現在においても、ひとつの指標として用いている基準なのだが…オレはRPGに関して「何か語る必要ができた」ときに、次のような3種類の観点を軸として思考回路を働かせる。

ひとつ目の観点は「3点法」だ。これは作品を大まかに・アバウトに眺める際に使う指標で、「シナリオ・システム・キャラクター」を支柱としている。
これら3要素はどんな作品であれほぼ例外なく備わっているもので、作品について簡潔に触れたり、いくつかの作品を並列して語る際にも重宝する。

ふたつ目の観点は「5点法」だ。ある程度詳細に、ひとつの作品を深めていく際に用いる指標で、先の3要素へ更に2つの要素を加えたものになる。
「シナリオ・システム・キャラクター・グラフィック・ミュージック」がその支柱だ。
見て解る通り「視覚」「聴覚」というふたつの感覚に直結する要素を加えたことで、多方面からの見方を念頭に置いた評価基準になっている。

最後の観点は「7点法」だ。これまた先の5要素に、1要素2項目を追加したものである。
具体的には「シナリオ・システム・キャラクター・グラフィック・ミュージック・ユーザビリティ(操作性・視認性)」だ。
ユーザビリティは厳密には「システム」の一種ではあるが、単純なゲームシステムではなく製品としての使い易さ・遊び易さという方面に特化した要素となる。これによって「ただ面白いだけ」のソフトと「面白い・かつユーザーフレンドリー」なソフトの間に明確な差異が生まれ、更に深まった見方が可能になるわけだ。

さて。長々と書いたはいいが、最初に述べたようにここまではただの例だ。
「こうやって批評するのが正しい」と言っているわけじゃなく、あくまで「オレはこうやっています」と紹介しただけのこと。よって本題はこの先になる。
そもそもオレの「3・5・7法」を聞いて、貴方は何を思ったろう。「自分と似てる」「いや全然違う」…それも色々だろうが。
ただ少なくとも「シナリオ」や「システム」、そして「キャラ」。そこらへんの要素は大変メジャーなため、やはり指標のひとつとして用いる人は多い。ただ当然のことではあるが…それらは全て「主観による指標」に過ぎないことを、我々は忘れてはならないだろう。

もちろん「このキャラが好き」「このシナリオが好き」といった思考が、主観ではないと考えている人などいまい。しかし当然グラフィックやミュージックといったファクターも、同じく全て「主観による判断」しかできないのだ。何よりそこが、失念しがちな部分である。

例えば「グラフィック」なら、FCのドット絵とXBOXの実写と見紛うかのような映像。
「ミュージック」なら、GBの単音からなる音源と、PS3のオーケストラ録音の音源。

仮にそういったものを比べた場合、前者は後者に「誰がどう見ても劣っている」のだろうか?
…いや、違う。確かに「技術が凄い」「手間をかけている」「金が掛かっている」のは後者で間違いないだろう。だがその事実が、そのまま両者の優劣に直結するわけではないのだ。XBOXのグラフィックがFCに勝っていると思うこと…その気持ち自体が、すなわち主観の権化であることを意識せねばならない。
「FC<XBOX」と感じる気持ちが問題じゃない。問題なのは「FC<XBOX」という定理が、この世の変わらぬ理…ただひとつの真実であると思い込んでしまうことだ。「誰が見ても○○」なんてものはこの世にあり得ない…人によって考え方が違うのは当たり前…そんなことはあえて言うまでもない、至極当然の話ではある。しかし当たり前すぎるからこそ、また忘れ易いことも事実なんだ。


これは例えるならば、「難易度」が持つ構図に似る。
あるゲームの難易度を、最も簡単な「E」から最も難しい「A」までの5段階で表したとする。その場合、評価上の最大値である「A評価」が最も優れたゲームであり、最低の「E評価」が最も劣ったゲームであると言えるだろうか? もちろん答えはノーだ。A評価のゲームは、ただ「難しいゲーム」というだけであり、またE評価は「簡単なゲーム」というだけ。どれが「最も面白いゲーム」かといえば、当然それは「人それぞれ」に依存する。高難易度を好む人にとっては「A」のゲームが一番面白く、逆にライトユーザーにとっては「E」が最適かもしれない。もちろん中には、「C」が一番という人だっているだろう。

批評することの面白さは、オレにもよくわかっている。だが、それら全ては等しく「主観」のうえに成り立っている。
その大前提を忘れることがあってはならないと思うんだ。「当然」であるそれを、きちんと意識することが大事なのだろう。

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