21.ゲーマー

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以前にも「オタクとは何か」という話題なら持ち出した。というわけで今回は、その話の枠をもう少し狭めて「ゲーマーとは何か」について論じていく。
最初は「ゲーマー」だけに留まらず、アニメやらマンガやら…もちろんGAC以外の趣味を持つ人も含め、一般的な話をしたかったのだが…。しかしどうにも「ゲーマー」以外に適した言葉(例えばアニメだったら「アニマー」など)が見付からなかったので、今回は「ゲーマー」を全体の一例として取り上げる形で 話を進めていく。

さて。そもそも現在のオレはゲーマーを筆頭とする「ゲームに関わる人」に対する用語として、以下の分類法を用いている。

・時々はゲームで遊ぶ→ゲームプレイヤー
・ゲームが好きで、ひとつの趣味として親しんでいる→ゲームファン
・ゲームが相当に好きで、自分の中で一番の(あるいはそれに準じる)趣味である→ゲーマー

また、これは先に作り出した造語「アニマー」等に関しても、仮にそういった用語が存在する場合には同じような分類ができると考えている。
つまりは、ここで適当に「ボーリング」を例に取った場合、

・時々はボーリングで遊ぶ→ボーリングプレイヤー
・ボーリングが好きで、ひとつの趣味として親しんでいる→ボーリングファン
・ボーリングが相当に好きで、自分の中で一番の(あるいはそれに準じる)趣味である→ボウラー

となる。もちろん、あくまでオレの分類法に拠ればの話だが。
(余談だがオレはこの分類法を生み出した頃からずっと、アニメとマンガに関する「ゲーマー」「ボウラー」等に位置する言葉を考え続けている。先に述べた「アニマー」もそのひとつなのだが、少々語呂が悪いので、代案は無いかと思案中である)

ともあれ、ここまではあくまでオレ個人の考え方を述べたに過ぎない。
しかし、あるモノが好きな人……今は「ゲーム」を取り上げるが、ともかくオレが「ゲームが一番の趣味である人=ゲーマー」という公式を心に抱いている…そこには、なかなか複雑な事情と心情が絡んでいるのだ。よってここでは、そう考えるに至った経緯を絡めつつ、ゲーマーとは何かという話にも踏み込んでいく。


そもそも前提として…というか「ゲーマーとは何か」が議論として成り立つことが、既にその事実を表しているわけだが…。ともあれ「ゲーマーの定義」なんてモノは、それこそ人によって千差万別だろう。オレのように「趣味としての程度」によってソレを判別する人もいれば、知識や技量が高いことをゲーマーの条件に据える人もいる。だがそんな中でもオレは、ひとつ「考え直して欲しい定義」があるんだ。ソレが間違っているとは言わないが、少しばかり考え直して欲しい…というものが。それはすなわち「少しでもゲームをやったことがあるなら、それはもうゲーマーなんだ!」という分類法である。

確かにこの分類法は、なるほど万人に平等であり、万人に優しく、ゲームの腕や知識を問うわけでもなく…なんとも平和的で理想的に見える。だからこそ、この方法を採ろうと考える人の気持ちならオレも理解できるんだ。というのも実は、オレがガキの時分…高校1年生の頃まで信じ、己が信念として抱いていたものが、何を隠そうこの分類法だったからである。

今だって、そりゃ基本的な性格は変わっていない。だが当時のオレは今以上にプライドが高く、ゆえにこの分類法は、そんな薄っぺらいプライドを満たしてくれる何よりの活力剤になっていた。なにしろその頃は今以上に暇な人間だったため、ゲームのプレイ時間だけなら今より破格…もちろんソレに対する愛着も破格であり、要は(今現在の分類法に従うならば)既に「ゲーマー」と名乗って差し支えないレベルだったと言っていい。そして「だからこそ」先に述べた理屈…つまり「少しでもゲームをやれば、それは誰だってゲーマーなんだ!」という言葉がチカラを発揮するわけだ。

なにしろ(少なくとも、あまりゲームをやらない人から見たら)相当なゲーマーであるオレが、

「いやいや、知識や技量なんて関係ないさ! ゲームをちょっとでもプレイしていれば、それはみんなゲーマーという仲間じゃないか!」

と美しい台詞を言って、太鼓判を押してくれるのだ。程度は違えど、それは偉い大僧正様が「神を信じる気持ちさえあれば、人類皆兄弟です」という有難い言葉をくれるのと同じこと。つまり「けっこうなゲーマー」であるオレだからこそ「ゲームをやれば皆ゲーマーさ!」という言葉を発することに意味があるのだと、当時のオレは考えたのだ。(逆に、大してゲームをやらない人が「少しでもゲームをやれば、それはもうゲーマーなんだよ!」なんて言ったところで、きっと負け惜しみにしか聞こえないだろうから)

もちろん最初にも述べたように、その考えが必ずしも「間違っている」とは思わない。だが少しだけ、考え直すことも必要だと思うんだ。
そして、その理由は大きく分けて3つある。


まず一つ目の理由。
そもそも「ゲーマー」とは、ソレを名乗ったところで何かの特典が得られるわけじゃない。選挙に有利になるからと、実際には存在しない博士号を取得したと偽って、世間から糾弾を浴びたどこかの政治家とは違うのだ。「ゲーマー」という称号があろうがなかろうが、何に影響するわけでもない。
しかしだからこそ、これは単に「ゲームをやる人」を指す代名詞ではなく、一種の名誉称号と位置付けられる。それは例えば「アーティスト(芸術家)」という職業称号とも通じるものがあるだろう。公共の壁に、品性のカケラも無いラクガキを塗りたくった挙げ句「これは芸術作品だ」「俺はアーティストさ」と名乗る輩が現れたら、そりゃ本当のアーティストが怒るというものだ。「ゲーマー」も、種類は違えどソレと似たようなものである。

「少しでもゲームをやったら、それはゲーマー」というのはすなわち、「ピアノで『猫踏んじゃった』を弾けたら、それはミュージシャンだ」という理屈と同じこと。もちろん厳密な定義で言うならば、少しでも楽器を扱えれば「ミュージシャン」と言えるのかもしれない。だからソレが明らかに間違っているとは思わないが、そういった安易な定義付けは、場合によって見直す必要性があることを思考の隅に入れておかねばならない。


次に二つ目の理由。
「少しでもゲームをやったらゲーマー」という理屈は、極めて単純明快に見えるだろう。
だがソレはつまり「5年前に一度ゲームをやったことがあるけど、それからは一切やってない」という人も「ゲーマー」と扱う…ということだろうか?
そういう理屈なら、このオレだって「スポーツマン」であり「ミュージシャン」であり「アーティスト」だろうな。
なにせ体育・音楽・美術の授業を、これまできちんと受けてきたのだから。おお、それこそ日本国民全員がアーティストということかもしれん!(笑)

…冗談はさておき、「ゲームを少しでもやれば〜〜」という考えの人とて、さすがに「5年前に一度だけプレイした人」をゲーマーとは呼ばんだろう。だがそうなると、今度は別の問題が生まれる。「5年前に1回」が駄目なら、「2年前に10回」プレイした人はどうだろう? これはゲーマーだろうか?
また「1年間に1回はプレイしてないと駄目」のような指標があったとしたら、仮に「364日に1回だけ、30分ゲームを触る人」がいればそれは瞬時にゲーマーと判断されるのだろうか?

もちろんコレは、単に意地悪く揚げ足を取っているだけだ。言っていることは詭弁に近い。
だが、その理屈は時に矛盾をはらむことを忘れてはならないのだ。


最後に三つ目の理由。
「少しでもゲームをやったらゲーマー」という台詞は、確かに「自分の知識や技量に自信を持てないゲームファン」にとっては、天啓の如き言葉だろう。なにしろ、それまで己の未熟さを過度に意識するがゆえに「ヘタレゲーマー」等しか名乗れなかった人々に、「君達もゲーマーなんだよ!」と言ってあげるのだから。そしてそういう意味だったら、オレも同意したいと思う。「ゲーマー」とは名誉称号ではあっても、特権階級を指すわけではない。
しかし問題は、それが必ずしも「良い面だけ」を生むわけじゃないってことだろう。

繰り返すようで悪いしクドいが、オレは「その考え方」が絶対悪だとは思っていない。ただ一元的な見方は、場合によって問題だと考えている。
つまりゲーマーとは一種の「名誉称号」であると同時に、その称号に興味を持たぬ人々にとっては全く価値が無い…それどころか、むしろ疎まれるモノだということである。要するに「オタク」と呼ばれるのを過剰に嫌がる人がいるように、「ゲーマー」と呼ばれるのを嫌がる人もいるということだ。

例えば学校なんかで、何かの折にゲームの話になったとき、やはり「俺も時々ゲームやったりするぜ」「僕も1ヵ月に何回かはやるよ」という人はいるだろう。しかしそれに対して「なるほど、君達はゲーマーなんだね」とでも言おうものなら「馬鹿野郎! 別にゲーマーじゃねぇよ!」と否定されることもあるんじゃないか。というより「昔のオレは、そういう考え方(少しでもゲームをやったら〜〜)をしていた」とも話した通り、実際にそういうやり取りが発生したことがあるわけだよ(笑) …そしてそれから、オレは段々と自分の考え方に疑問を持つようになったのである。


確かに「少しでもゲームをやったらゲーマー」というのも、ひとつの考え方だとは思う。そして同時に、言葉の問題に過ぎないとも思う。
だが少なくとも、ソレを良しとしない人がいる限り、どこかで考え方を見返す機会は必要だと思うわけだ。
たとえ面と向かって「君はゲーマーなのか」なんて台詞を吐かずとも、心の中でそう思っていれば「実質」は同じこと。もちろんその考え方は良くない・やめろというわけじゃなく、そういう観点もあることを意識して欲しい…それが最も言いたいことなんだ。
何より傍目に単純なことほど、人は頭を働かせることを放棄するものだから。単純だからこそ、きちんと考えることが重要だと思う。

んで結果としてオレは、現在の「ゲームプレイヤー」「ゲームファン」「ゲーマー」という3段分類に落ち着いた…というワケさ(笑)

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