そもそもが、オレ達のような趣味…すなわちゲームやらアニメやらという趣味は、基本的に馬鹿にされる傾向にある。
今でこそ、二十歳を過ぎた大人でもゲームをやったり、マンガを読んだり…という趣味は段々と一般化してきていることは確かだ。だがそれでも、まだこれらの趣味が(少なくとも世間的には)大っぴらに認められているとはいえず、未だ「いい大人があんな趣味を」という台詞が横行している。
だから我々は一人のゲームファン・アニメファン・マンガファンとして、「ゲーム」や「アニメ」といった趣味を「釣り」「読書」「サッカー」といった一般的な趣味と同列に引き上げる努力をせねばならない。世間に対し「ゲームをやらない、ゲームを知らないクセして、勝手に批判するなよ!」と叫ぶことは簡単だし、またその理屈も間違ってはいないだろう。だがそうやって「世間の見方」ばかりを非難するだけでは、根本的な部分の先入観を取り除くことはできまい。むしろ我々のような「愛好者」自身が、世間の風潮を変えていく働きかけをしなければならない。待っているだけでは、何も変わらないのだ。
だがそうはいっても、具体的に何をどうすれば良いのか…それを示すことは、なかなか難しいと言わざるを得ない。
もともとが疎まれている存在であるだけに、下手な口出しは逆効果になる場合も多く、ゲームやアニメの地位を向上させたいという気持ちのあまりに強引な擁護をすれば、返ってくる言葉は「オタク必死だな」だ。それ自体が壮絶なジレンマを形成しているわけで、結果として「何を行なうのが、ゲームやアニメファン全体にとって一番大切なのか」はオレにも分からない。だがしかし、少なくとも逆に「やってはいけないこと」なら理解しているつもりだ。
そう。我々の趣味は現在、どうしようもなく疎まれる存在であることは確かだ。もちろん「本来はそうなるべきではない」のも同様にして確かだが、それはこれから徐々に改善されていく部分であり、今は騒いでも仕方あるまい。しかし大事なのは、我々自身が「逆差別」を行なわないことである。
というのも我々の同類(ゲーム・アニメ・マンガファン)にはなぜか…本当に「なぜか」、他人の趣味を馬鹿にしたがる行為が目立つんだ。もちろんこれは人に拠り、ゲームファンだからって万人がそういう性格を持っているわけではない。だが少なくとも、そのような悪い風潮がしばしば見られることは事実である。
曰く「スポーツなんて、ただ疲れるだけ! やる価値あんのかよ!」
曰く「釣りとかドライブなんて、時間の無駄だろ!」
場合によってはそんな風に「過度の批判」を行ない、要するに「自分達の趣味(ゲームやらアニメやら)が世界最高である」ことを宣言したがっているわけだ。そしてオレも一人のGACファンである以上、その気持ちが全く理解できないわけじゃない。だが理解はできても、納得できないことはある!
そもそも、根本的な部分が大事なんだ。つまり誰だって「自分の趣味」が(趣味として)世界で一番好きなのは間違いない。金銭的・時間的な理由でもない限り、なんだかちょっと遠慮しちゃって、世界で5番目くらいに好きなモノを趣味にしている人などいない。だから誰しも、自らの趣味を誇りたい気持ちはあるのだろう。
だがそれは同時に、自分以外の他人全てにも同じことが当てはまる。つまり無感情に結論を述べてしまえば、万人共通の心理がこういうモノなんだ。「自分の趣味ではない…つまり自分が興味無い全ての趣味は、正直言ってどうでもいい」
と。
例えばオレにしたって、ゲーム・アニメ・マンガのファンでその3点を趣味としている以上、逆にいえば「それ以外の全て」は万物が興味の対象外だ。もちろん「こういう趣味もあるのか」と感心したり、興味をそそられることこそ皆無ではないが、基本的な心理は「オレには関係ない」である。程度の差こそあるにせよ、それは趣味だけでなくあらゆる物事における共通現象だ。
南米の子ども達が飢えに苦しんでいる。だから募金をお願いします!
病院の血液ストックのために、献血をお願いします!
道端でそういう声を聞き、積極的に募金・献血に勤しむ人もいれば、その周囲にはその何倍もの「無視して通り過ぎる人々」がいる。しかし、なぜ彼らは無視するのか? たかだか数百円や3分という時間が、そんなにも惜しいのか? …違う、単に彼らは「自分には関係ない」と思っているだけだ。世界のどこか…見知らぬ土地でどこの誰が苦しもうと、結局自分には関係ない話だと。そしてそれが良い悪いではなく、もともと人間とはそういう生き物なのである。
ここで話を戻す。そもそもゲームやアニメという趣味が世間で疎まれるのは何故だろうか。…いや理由がどうというより、ゲームやアニメを「疎む人」はどういう種類の人々だろうか。…そんなの簡単だ。大人がゲームを趣味とすることを馬鹿にする人間…その9割9分9厘が、「自分はゲームを趣味としていない」のである。だから彼らは軽々しくゲームやアニメを馬鹿にできる。なぜなら、それは「自分達とは関係ないから」だ。
だがしかし、実のところ、それはこちらも同様なんだ。例えば正直に言うと、オレはスポーツに「全く興味が無い」。スポーツゲームだったら遊びもするが、自分で運動をするなど言語道断。それこそ凄まじい理由でもない限り、自ら運動に勤しむことなど考えただけでも吐き気と胸焼けがする。ゆえにオレは心の中で「運動なんてなんの意味があんの? 時間の無駄じゃね?」と…あるいは「思っている」のかもしれない。
だがオレは、決してそれを「口にはしない」。なぜならそれを口にすることは、すなわち理由も無くゲームやアニメを馬鹿にする…そのような輩と同じ行為を、己がすることになるからだ。そしてまた、我々がそのような言葉(GAC以外の趣味を馬鹿にする言葉)を口にすることはつまり、過剰な特別意識を我々自身が抱いてしまい、その趣味を他の趣味と同列に扱おうとしない偏った態度を形成することになる。それは何より避けるべき事態だ。
ゲームやアニメを趣味として愛するなら、同様に他の趣味を馬鹿にしないことが重要だ。
たとえ自分達が馬鹿にされようとも、相手の趣味を非難してはならないのである。
そう。もともとが、他人の趣味を大した理由も無く非難する……その行為だけで、その者が底の知れた人間であることは言うまでもないのだから。
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