Tale.2 入学式の喜怒哀楽 中編


アホ2人のアホ談義とは裏腹、入学式はどんどん進む。


ロニ「……で、だ。俺達は結局、今年新入生として入ってくる女の子達のうち、誰か1人をターゲットとして絞ることになるんだな?」

ゼロス「まあ、別に1人にこだわる必要も無いだろうけどな。だけどまあ、最終的に1人しか残らないってことはあるかもしれないぜ?」

ロニ「おいおい、考えたくもねえよ……。ともかく、とっとと始めようぜ」

ゼロス「りょ〜かい。
 さてと……さっき今年の新入生――もちろん野郎は抜かすとして――は、全部で10人って言ったけどな。
 それはもう、考える対象とすべき子が1人減って9人になっちまった」

ロニ「シャーリィちゃんがダメになったからか……」

ゼロス「ああ。さっきのアレを見るまでも無く、セネルくんの『兄バカ』ぶりは有名だったからな。
 ちょっとした聞き込みをしただけで、これはもう既に分かってたことだ」

ロニ「なるほど……だったら、リアラもダメってことになるだろうな……」

ゼロス「リアラ……? ああ、お前んとこの孤児院で一緒に住んでる、あの子のことか」

ロニ「さすがに良く覚えてるな。リアラも今年、学園に入学するんだよ」

ゼロス「ああ、それは名簿で知ってたが……でもリアラちゃんには、兄弟なんていなかっただろ?」

ロニ「確かに兄弟はいないさ。だけどな、この前冗談で、リアラに『俺とデートしないか?』って誘ってみたんだよ」

ゼロス「なるほど。それで?」

ロニ「そしたらな………。
 ……………………ううう」

ゼロス「おい、ロニ?」

ロニ「あ、いや……。俺はもう、二度とあんなカイルを見たくねえんだよ!!」

ゼロス「ああ、そういうこと。迂闊にバラに近付いちゃって、カイルくんにこっぴどく怒られたわけだな? それとも殴られでもしたか?」

ロニ「は? いや、そうじゃなくて……。
 俺はもう、瞳にあんな涙を溜めたカイルの顔なんて見たくねえんだっ!!」

ゼロス「…………」

ロニ「…って、どうしたゼロス? 俺、なんか変なこと言ったか?」

ゼロス「いいや、別に。
 まったく。カイルくんが、リアラちゃんにとってのセネルくんになってるのかと思ったら……。
 どうやら、セネルくんは俺の目の前にいる男だったみたいだな……」

ロニ「ど、どういう意味だよ?」

ゼロス「別に。
 …ともかくこれで、リアラちゃんも除外か……」

ロニ「他に、特定の恋人やら何やらがいるって子はいないのか?」

ゼロス「恋人じゃねえけどよ……。例えばチェルシーちゃんは、ウッドロウのことしか見えてないみたいだぜ。
 そもそもウッドロウは、チェルシーちゃんの家に居候してるらしいし……。知ってるだろ? 俺達と同学年のウッドロウ」

ロニ「ウッドロウさんか……ああ、良く知ってるよ。ともかくそれじゃ、チェルシーには手を出せないな。出したところで目は無さそうだ」

ゼロス「同じくリリスちゃんは、典型的なお兄ちゃんっ子だ。シャーリィちゃんとは別の意味で、近付けそうも無い」

ロニ「そうだな……。リリスさんも孤児院で一緒に住んでるから、それは良くわかるぜ……」

ゼロス「ん? リリス……さん?」

ロニ「あ、いや……リリスちゃんだよ、リリスちゃん!」

ゼロス「……ともかくだ。更に、プレセアちゃんにも手は出せないだろう」

ロニ「プレセアちゃん……? ああ、ツインテールの子だろ。あの子は近所でも可愛いって評判だからな、ライバルも多いってことか?
 そういえばさっきもそこで、銀髪の新入生がしきりに声をかけてたぞ」

ゼロス「銀髪の1年……? ああ、なるほど。
 いや、そいつに関しては心配しないで大丈夫だ。だいぶ目が無い」

ロニ「目が無いって?」

ゼロス「そうだな……。例えるなら、お前がリフィル先生に求婚するくらいに虚しい行為だ」

ロニ「おい……そりゃどういう意味だ……」

ゼロス「まあ、それはともかく。
 あの子には、リーガル先生がバックに付いてるのよ。だからダメってことさ。
 さすがの俺様も、先生とやり合うことは避けたいからな」

ロニ「リーガル先生だって!? で、でも先生は30超えてるだろ!? まさか、近頃流行りのロリコ」

ゼロス「そこまでだ! みなまで言うな!!
 実は……リーガル先生は、プレセアちゃんの保護者代わりなんだよ。
 プレセアちゃんは両親共に早く亡くしててな、だからリーガル先生が、その後見人になってるってわけだ」

ロニ「ふぅん、なるほど……。それじゃあ、プレセアちゃんも除外、と……」

ゼロス「これで残りは5人……」

ロニ「いや、アニーちゃんっているだろ? 彼女もダメだ。プレセアちゃんと同じく、先生がバックに付いてる」

ゼロス「え? …ああ、教頭のユージーン先生か。
 でもよ…。あの2人、仲悪いってウワサだぜ?」

ロニ「だとしてもだよ。少なくとも、ユージーン先生がアニーちゃんの保護者代わりをしてるのは確かだろ?」

ゼロス「まあ、そりゃそうか……。じゃあこれで、残るは4人…か?」

ロニ「待てよ……確かフォッグ先生が面倒見てる女の子も、今年入学じゃなかったか?」

ゼロス「そういえば、ええと……。ああ、あの子か! チャットちゃん!!」

ロニ「だろ? だったら、これで残るは3……」

ゼロス「いや、待った! となればメルディちゃんも無理ってことになるぞ……」

ロニ「へ?」

ゼロス「フォッグ先生が管理人を務めるシルエシカ荘だけどな。
 あそこに住んでるのは2年のリッドとキールにファラちゃん、今言ったチャットちゃん、それにメルディちゃんの5人なんだが……。
 あの子らはみんな早くに親を亡くしてたり、親と離れて暮らしてるヤツらばかりなのよ」

ロニ「そうだったのか……。でも、ってことはつまり……?」

ゼロス「そ。要するに、その5人はみんな、実質的にフォッグ先生が保護者代わりになってるってわけ。
 特に、1年のチャットちゃんとメルディちゃんは……な」

ロニ「おいおい……。それじゃあ……」

ゼロス「最初、新入生の女の子は全部で10人いたが……。必然的に、残ったのは2人だけになるな。
 …まあ、いいじゃねーの! 俺達は2人、相手も2人ということで!」

ロニ「お、おい! そんなアバウトでいいのかよ!?」

ゼロス「そりゃ、お前の言いたいこともわかるがよ……。だからって、『どうしようもない』。
 ……そう思わないか?」

ロニ「うぐ……」

ゼロス「ともかく! 残った2人が載ってる名簿をシャッフルして、テキトーに渡すぞ!
 ……ホレ、お前はこの子、俺はこの子だ! 入学式が終わっちまう前に、さっさと声かけに行くぞ!!」

ロニ「ちょ、ちょっと待てよ! ……くそっ、行っちまいやがった……。
 仕方ねえ、こうなったら当たって砕けろだ! この子がどんな子かは分からねえが……ここまで来たらやってやるぜ!!」


Back  Next  Top  Home