11.『【鳳凰の翼:竜鳳相克】炎の群像:砦門を突破せよ!』(サポート)
============================== ●西門を攻略し、焔鷹鬼を倒せ! 体から五感を切り離し上空から史家村の偵察を行った鳳礼の視覚に、まるで統率の執れた軍隊のような深樹海のケモノ達の布陣の様子が映る。見事な幾何学模様を描いて、それぞれの持場を固めるケモノ達。外出する村人はおらず、村内には警戒態勢が敷かれている。赤髪鬼が倒れた時点で、サムライの反撃を予期したのだろう。 「ご苦労。鷹であろうが竜であろうが地に叩き伏せ、塵に帰すのみだ‥‥前進、砦攻開始!」 鳳礼の報告に頷くと、西門攻略班の指揮を執るラセツの狂剣士・千孕(w2a269)が号令を下す。花深が整理した情報を持って韋駄天足で東門攻略班へ伝令に走る。 「龍鎧、連携を取れ! 危険だ!」 「俺は俺でやらせて貰う。指図無用」 「馬鹿が! 単独で砦攻めが出来るか!」 千孕とセンシ族の狂剣士・龍鎧(w2c883)の口論が交錯する中、雛乃が床几からすっくと立ち上がる。 「‥‥雛乃姉様‥‥まだ『目』が‥‥動くべき‥‥じゃない‥‥」 白蛇が雛乃の袖を引っ張って、真摯な眼差しで彼女の瞳を見詰める。 「はい。解っておりますが、龍鎧様を見殺しにする訳には参りません」 その白蛇の頭を撫でてなだめるように言い聞かし、援護へ向かおうとする雛乃の前に是鵡が立つ。 「ここは、拙者と禰音殿にお任せあれ。雛乃殿は余り無茶はせぬように」 「任せなさい! あたしの突貫と回復で打開してみせるわ!」 是鵡と禰音の言葉に再び床几に座り直す雛乃。 「龍鎧様は未来より来たりて、力を失ってからの初陣です。その単独行動がいかに危険な事か‥‥よろしくお願いいたします」 頷くが早いか是鵡と禰音は龍鎧の援護に駆けて行った。 小蛍符の大量の蛍を盾に雛乃を庇う白虎は雛乃に口付けすると、 「必ず生きて帰って来てね」 と、にこやかに笑った。 「はい。ありがとうございます」 雛乃も微笑んでお礼を言う。護りの雫の口付けくらいで慌てないのは、戦闘中のサムライとしては当然だろう。 単独で西門を破壊しようとする龍鎧だが、矢倉からの炎や酸の集中砲火を喰らって門に辿り着く前に満身創痍となっていた。援護も陽動も連携も無くしては、力を取り戻したサムライとて同じ目に遭ったに違いない。まして、まほろの転移で力をほとんど失ってから回復していない龍鎧なら尚更である。 体の力が抜けて意識が遠退いてゆく。トドメとばかりに矢倉から吐かれた炎が紅の死神のように龍鎧へ向かう。 「ふん!」 その時。ギリギリで駆け付けて間に割って入った是鵡が鎧剣士の重装甲と事前に仲間と自分に張った武の城壁に護られた体を盾にして龍鎧を護った。すかさず禰音が月の輝きを駆使して傷を癒すが、龍鎧の首はがくりと垂れ下がってしまった。 「意識を失ったでござるか! 生死は?!」 深刻な状況に是鵡が声を張り上げる。 「解らないわ! こう矢倉からの攻撃が激しいと後送して確かめるしかないわ!」 禰音が応え、急いで是鵡と彼女の手で担ぎ上げられて後送される龍鎧。果たして命を繋ぎ止めている事が出来るだろうか‥‥。 しばしの後。 「ケモノ班の動きが変ですわ。千孕さんと是鵡さんしか戦ってませんわ。雛乃さんと護衛の方々は動かないとしても、お二人だけで深樹海のケモノを相手にするのは‥‥」 霞彩の白珠・若桜(w2a092)の言葉に、 「はい。禰音さんも一応前線にいるようですが、回復に徹しているようですね。仕方ありません。彼らの手に余るケモノも私達が相手にしましょう。幸い朱猫さんも今はケモノ班の援護をしてくれています」 灰色の猟鬼師・斜烙(w2a085)が応える。既に戦場には彼らの霧幻符によって、より濃い霧が発生して強靭な深樹海のケモノの動きを妨げている。紅の流れ猫・朱猫(w2b487)がケモノ班を召雷光で援護し、若桜と斜烙もそれぞれ召雷光や火炎弾で援護する。さらに怜理と斜烙が事前に呼び寄せた小蛍符の蛍の群れが砦の破損した箇所を護るケモノを攻め立てている。 上空では文月と刹那の外法術師コンビが念浮遊を駆使して焔鷹鬼と戦っていた。文月が事前に召喚した五匹の蛍と連携して焔鷹鬼の動きを制限した所に、刹那の召雷光が閃く。事前に示し合わせておいた刹那の仲間が範囲に入っていてもお構いなしの攻撃に歯を食い縛って耐えると、一瞬の隙が生まれた焔鷹鬼に取り付いて吸魂掌で体力を奪い取って回復する。翼を押さえ込んで落下させようとするが、焔鷹鬼の鋭い嘴で突かれ、爪で切り裂かれてしたたかに打撃を被る。 「行け! そこにゃ! 回り込め! 違うにゃ! そうにゃ! 誰にゃーーー!?」 文月と刹那のコンビが投射系武神力の射程距離まで焔鷹鬼を引き摺り降ろそうと奮闘するのを必死に応援する朱猫。落下はさせられないまでも、文月と刹那は連携して焔鷹鬼の動きを空中で止めながら下降させる事が出来たので、斜烙と若桜の呼吸を併せての一際大きな炎の弾『獄炎弾』が命中した一瞬の隙に朱猫の蜘蛛縛りの糸が焔鷹鬼と共に、掴み合っていた文月をも絡め取る。 仲良く落下した一人と一体に、待ち構えていたサムライの攻撃の嵐が叩き込まれる。なるべく皆、焔鷹鬼を狙ったようだが、もつれ合っているので文月も無傷という訳にはいかなかった。斜烙と若桜の息を合わせた『風刃符』が焔鷹鬼の首を切り落とした事で決着が付いたが、殊勲の文月は味方の攻撃を受ける事、これまでの最多であった。動きを封じる為に、ほとんど焔鷹鬼と抱き合う形になっていたのだから、仕方が無かったのではあるが。恵那に回復して貰いながら、苦笑を浮かべる文月はもつれ合う内にも吸魂掌で焔鷹鬼から体力を奪っておいて良かったと思う今日この頃だった。 指揮者を失った深樹海のケモノ達は、それでも頑強に抵抗したが、斜烙と若桜が力を合わせた一際強力な雷が扇状に放射される雷帝光で痛撃を喰らい、未補修箇所から蛮刀『沈魂の剣鉈』を振り翳し仲間と連携しながら先頭を切って深樹海のケモノを薙ぎ払いつつ突入する千孕率いる是鵡、禰音、朱猫、怜理らが侵入して内側から門を開け、刹鬼と治療を終えた文月が上空制圧をした事によって、サムライ側の西門における勝利は確定した。 怜理が強靭な深樹海のケモノ達の抵抗を受けた面々に武の城壁をかけ直し、恵那が治療を施して全員で西門の確保維持に当たる。 尚、激しい戦いの最中にラセツらしい者がこっそりと皆に護りの雫や治療を施していたようだが、気にしている暇もなく結局誰だったのか判らなかったという不思議な話もあったようだ。 サムライ達は一部乱れも生じたものの見事な連携と作戦によって、西門を陥落させたのだった。これで後続部隊の侵入経路は確保され、作戦の前提は整えられたのだった。 ●東門を攻略し、竜人鬼の退路を断て! 「あー、こっちの目的は短期決戦で門を落とすこった。肩の力を抜いて、普段通りの力を発揮して行こうぜ」 風(w2c047)の気の利いた鼓舞でリラックスした東門攻略班の面々は、次々と殲鬼不在の東門に攻め寄せてゆく。 鳴が霧隠れで戦場を覆う濃い霧を発生させ、召雷光で牽制した後に塩月と連携して切り込んで、塩月の体を駆け上がるようにして矢倉に飛び移りカスミ斬りで深樹海のケモノを相手にする。 二つ銀尾の・燈艶(w2b621)も韋駄天足を駆使した足を使った攻撃で深樹海のケモノ達を攪乱しながら風と連携して双刀『阿・吽』で切り倒してゆく。風が氷縛剣で凍結させたケモノを次から次へと足を使った素早い動きでトドメを刺して葬ってゆく燈艶。その二人の洗練された連携とスピードに流石の深樹海のケモノもたじろいでいた。しかし、深樹海のケモノ達も殲鬼が率いる程ではないにせよ見事に訓練された連携でサムライ達に手痛い反撃を繰り出して来る。 サムライの中でも一際抜きん出た武勇を誇る塩月は仲間達に武の城壁を展開した後に、鳴と連携しつつ切り込んで、矢倉を極めし大地斬で破壊してゆく。まさにその有様は、圧巻と言うべきだった。 双角の忍姫・翠蓮(w2c561)を先頭とする、神無、哲人らの砦門を内側から開ける班は花深からもたらされた情報を元に、霧隠れに紛れながら高飛びで一気に3m程の高さの柵を飛び越えて最も効果的に奇襲を行えると判断した位置から内部へと侵入した。 内部には、かなりの数の深樹海のケモノが存在していたが、いきなりの奇襲に戸惑いを隠せぬようだった。殲鬼が指揮をしていれば臨機応変にも対処出来ただろうが、ケモノ達は恐らく『持場を守れ』などの命令を与えられているらしく、門も陥落しない内からの高飛びでの奇襲は命令を出しておいた殲鬼にも予期出来ぬ事態だったに違いない。 明らかに混乱する深樹海のケモノ達を翠蓮が攪乱し、神無と哲人のコンビが混乱から立ち直れずおっとり刀で防戦する深樹海のケモノ達を連携プレイで倒しながら砦門を開く。 この時点で勝敗は既に決していただろう。風、燈艶、塩月、鳴が雪崩れ込んで一気に砦門を確保する。風が武神力も尽きよとばかりに、氷縛剣を軸に氷柱衝、極めし流水剣、カスミ斬りを惜しみなく駆使して門を守るケモノ達と先頭を切って戦う。それを援護する形で燈艶の極めし手裏剣が的確に撃ち込まれてゆき、塩月と鳴の同じ里のコンビの強固な連携攻撃が風と燈艶の攻撃をサポートして一匹ずつ屠ってゆく。一対一や多対一で深樹海のケモノに対しては、流石の百戦錬磨のサムライでも危険だが、このように四人一組などの連携を取ってしまえば、たとえ深樹海のケモノといえども恐るるに足らず、とは言い過ぎまでも堅実に優位に立って戦えるといった所だ。 この二つの班が丁度挟撃する形になって、瞬く間に難攻で知られた史家村の砦門を攻め落とし、頑強で知られた深樹海のケモノ達を制圧してしまった。元より、ケモノには『降参して捕虜になる』という思考は無いので、制圧したと言っても抵抗を続けるケモノを排除して四散するケモノは深追いせずに砦門の確保をしたという事である。 「意外ともろかったな。お前さん達のお陰だ」 風が手を差し伸べて、 「皆さんが外側からも果敢に攻めて下さったお陰です」 砦門を内側から破った最も功績のあった翠蓮を始めとする、神無、哲人達と握手する。彼らの活躍なくしては、こうも簡単に東門を制圧出来なかっただろう。 「しかし、鳳凰の谷の武勇と連携、知略には恐れ入ったぜ。白蛇の嬢ちゃんの発案、鳳礼と花深の情報収集、塩月、鳴の武勇と連携。流石に武道系最強と謳われるだけはあるな。俺もうかうかしてらんねぇや」 風が感心したように塩月と鳴に言った。 「北風に忠義を全うし、南風に仁愛を示す、東風に矜持を掲げ、西風に武威を張る! 疾風が我が背を押し、烈風は我が身を纏う。風は見えざれど存在せり、我は『六風の黒髭侯』なり。我の力が必要とあらば、いつでも呼ぶが良い」 塩月が壮重に応え、 「ま、あたしらも日頃は馬鹿やってる部分もあるけど、いざって時のために鍛えてるから、塩月の言う通り、いつでも呼んでくれよな」 鳴が快活に笑いながら応えた。 ●かくて砦門は陥落し かくして東西両面の砦門は陥落し、第一作戦部隊のサムライ達の手で確保維持される事となった。砦門を奪回しようと北と南の遊兵となった深樹海のケモノ達が動き出す事も考慮に入れた上での確保維持だ。彼らがここで頑張っているからこそ、後続の第二作戦部隊、最終作戦部隊は安心して内部で戦えるのだ。 彼らは突入してゆく第二、最終の両作戦部隊を激励しつつ砦門の確保維持に当たる。 ‥‥まずは、砦門突破! 彼らの活躍と行く末に精霊の加護があらん事を! ============================== |