30.『【温泉殲鬼変】強化合宿をしよう☆』(サポート)

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●特訓しよっ
 温泉、それすなわち快楽の源。湯船に肩までつかって、眠りし胡蝶・翠嵐(w2e445)はご満悦だ。
「すべすべお肌になれるでしょ〜か〜?」
 千は突破しそうな時間をそうやって過ごしていた翠嵐に、氷凰天刃の剣士・鳳鞘(w2a254)が近づいてくる。戦闘用外套を隙なく着こなす彼の姿に、翠嵐は本来の使命をおもいだした。いや、間違い。使命ならちゃんと最初から肝に銘じていた。
「鳳鞘さん、どうかしましたか〜? 必殺技なら考え中です〜」
 そう、これは特訓の一環なのだ。温泉につかることによって、疲れを癒しつつ、術師系に必要な集中力も同時に養い、更に(中略)、忍耐力もつくとゆう素晴らしい考えを、翠嵐は実行しているだけなのだ。
 だが、鳳鞘は気の毒そうに、だまって首を横にふるだけだった。
「いや、そうじゃなくって。‥‥混浴は明日の朝であって、この時間のここは漢湯だったりするわけなんですが」
 しばしのときを、彼らは無言で過ごす。
「あああん。まちがえちゃったです〜」
「なに、おんなのこにいやがらせしてんのよ。鳳鞘ーっ!」
 すぱぱぱぱ、と連続攻撃が、鳳鞘の後頭部にきれいに決まる。西國の将姫・龍羽(w2a255)の鉄扇技は、重傷状態でも絶好調だった。
「ふつうまちがえるか? どうして龍羽はここにいるんだ? そもそもオレはなにかの罪を犯したかーーっ?!」
 さながら嵐の海で難破した小舟のごとく。疑問と混乱にもてあそばれる鳳鞘に、龍羽はさも当たり前といった表情をかえした。
「いっしょに合体必殺技を開発しようって約束したじゃない。迎えに来たのよ」
「ここ、迎えにきたらいけない場所だと思うんだが」
「だいじょーぶ。ちゃんとお知らせ出してきたから」
 と、龍羽が指さした先には。

『たった今から、こちらは女湯です』
『おまけ:旅のお共に蜃屑楼名物★饅頭と★煎餅は如何でしょう? 至福の味わいは天にも昇る心地。でも食べ過ぎるとあっと言う間に懐が寂しくなるから要注意! 』

「おまけが本命だろう? つか、根本的な解決になっていない」
 立て看板を読み込んだ鳳鞘がふりかえると、龍羽はすこしばかり顔をしかめていた。どうやら動きすぎて、傷口が開いたらしい。鳳鞘は龍羽の腕をとり、傷がいたまない程度の強さで引き寄せる。
「それみたことか」
 流れだした血に、そのままくちづける。なめとり、新しい包帯をとりだして巻きなおす。鳳鞘がふと龍羽の顔を見やると、彼女の顔はめずらしく紅潮していた。それも怒りではなく、恥じらいに近い雰囲気で。が、もしかしていつになくいい感じ? と鳳鞘が考えられたのは、ほんの数瞬だった。
 ――ここが漢湯であることを忘れていたのは、鳳鞘のほうだった。気がつくと彼は、嫉妬や羨望のいりまじった大量の視線にさらされていた。
 今宵、あなた(数十人の裸の男性諸君+翠嵐)は目撃者。
「え、えと。これはただの治療で、別に他意はないわけで」
 なにかいうほど言い訳めく。視線はますます熱くなる。
「それでは、みなさん。また来週。龍羽、特訓は向こうだっ」
 ぴゅうっ。風切る速さで、鳳鞘は龍羽を小脇にかかえて、逃げ出す。あとに残された翠嵐は、頭にのせた手ぬぐいをたたみなおした。
「女湯になったんですか〜。じゃあ、もうだいじょうぶですね〜」
 だから解決してないよ、と誰か彼女に教えてやれ。

「見られたくらいで逃げるとは、まだまだ若い。見せつけてこその男だろ」
 露天の木陰に、ツッコミあり。鳳鞘より年下の深月の術師・碧殫(w2b830)が判定をくだしていると、うしろから誰かに肩をたたかれた。
「何してるんだい?」
「わ。って、そっちこそどうして、ここに」
「牛乳を買ってきたんだよ。飲むかい?」
 いわれてみれば、たしかに。白槍牙・蒼瞑(w2d652)は種類・数ともにやたらに大量の牛乳を腕にかかえていた。ざっと見だけでも、20は超えているだろう。
「えらく多くないか。11人でも飲みきれるかどうか」
「いろいろあったからね。このさい全部買ったほうが、迷わなくていいと思って」
「オレの里の牛乳も買ってるね。えらいぞ☆」

『クズノハ窃盗団〜団員募集中☆』
「マドウ族の仲魔が欲しいんだゾ〜!」テクテク

「‥‥なんか今、脈絡もなくマドウ族の少年が通りすぎなかったか?」
「こまかいこと気にしちゃダメだよ。はい、いちごでよかったかな。将くんもおいで」
 納得していない風情の碧殫に、蒼瞑は薄い桃色の飲料を渡し、夢を追う者・将(w2e146)を招く。いちおう物陰だったはずの場所は、えらくにぎやかになってきた。
 そうだ、ここは物陰だった。蒼瞑は自分の最初の質問に、碧殫がまだ答えていないことに気づいて、問いただす。すると、碧殫は平然とした顔で、特訓だ、と答えた。潜みの練習だ、と。
「昔、センシ族(=ちっちゃい巨人)の星というサムライがあみだした『明子潜み』といってな。かの武神力・影潜みの原型にもなったという話だ」
「へぇ、物知りだね。私はてっきりノゾキかと思ってたよ」
 なぜだ。なぜそこで疑問の余地を挟まない、蒼瞑。後半の意見のほうが、むしろ真実に近い。
「すごいですねっ。教えてください。殲鬼を倒して、僕も男になるんです!」
 今度は、将が疑問をいだかなかった。だから、なぜ。
 確信的正直と天然性素直をまえに、碧殫が次にどう切り出そうか悩んでいる(でも、ちょっと楽しんでいる)と、龍羽の特訓にいそしむ声が、どこか遠くから聞こえてくる。
「ほら、技をきりだすのが遅い〜!(スパパン)」
 ‥‥あわれ、鳳鞘。
 あぁ、しみじみと平和だなぁ。でも、嵐の前となんとやらかもしれない。

●ぐっすりねむろっ(無理)
 夜は眠らない。だが、眠る用意をしなくていいというものでもない。
『枕は投げる為に。布団は寝る為に。温泉はあったまる為に』
 と、鳴速もいっている。では、布団を引きましょう、と押入れを開けると、出ばなをくじかれた猛虎仮面がころりんと転がってきた。邪魔なので、とりあえずおしいれに戻しておいた。
「楽しみだったんです☆ はじめましょ〜♪」
「うむ、やるか」
 五秒後、謎の脱出技をくりひろげた猛虎仮面が、将のうしろに力強く立っていた。

>>>

 こんにちは、深月の術師・碧殫です。なぜか女将に景品を交渉しに行ったら、実況を押し付けられました。俺も参加者だったような気がするんだけど、そこらへんは無視されてるようです。いいんか。
 あ、そうだ。どこかの実行委員長いわく、大切なことをひとつ書き忘れていたようです。『回復中に枕があてられた場合、回復処理を先におこなってから、PPをひく。また15を超えて、PPが回復することはない』だそうです。不手際をつつしんで、おわびいたします。俺のせいじゃないけどね。
 おわびを、もひとつ。『細かい経過判定を書くにはいろいろなものがたりなくなったので、文章だけでお送りすることになりました。もうしわけございません』なんだと。あ、だから俺のせいじゃないって。
 あと、将へ。『回復は自分だけを想定してるので、孫の手さんには適用できませんでした。申し訳ございません。それと、蜘蛛縛りも活性化しておられなかったようなので、つかえませんでした』という、個人的な伝言を承っております。
 では、いってみよっ♪

 運が悪いやつってのはどこにでもいるもんで。今回の最大の不幸者は、鳳鞘でした。なぜか、毎回、着実に枕が当てられる。そのほとんどが、『精霊様のお導き』の結果によるものだったりするんで、おーい、最近精霊様に怒られるようなことでもしたんか?
 注目すべきは、第八巡。第二巡、鎧変化で装着した鎧をふたたび脱ぎだした蒼瞑のところに、枕が集中。しかも、そのうち二つは会心の一撃だったりして、ここで一気にけずられたっ。
 そして、『PPが8以下になったら、里の仲間をかばう』と書かれた孫の手さん。里の仲間では、あなたが一番最初に十巡めで8以下になりました。みんなけっこうたくましいみたいだな。
 十一巡めでの初の脱落者は、思ったとおりというか鳳鞘。酒の肴を横取りされた怒りは、精霊にはとどかなかった。功労者は翠嵐。
「やりました〜♪」
「あぁ、別にいいんだ。他の誰かが幸せになってくれれば」
 大の大人が拗ねるない。このあとの龍羽の『鳳鞘狙い撃ち』は、『精霊様のお導き』として処理されました。
 十五巡めに倒れたのは、禍鎚。鳳鞘とおなじく攻撃一辺倒だった彼は、鳴速にあたった枕が鏡反衝でぐわんと反射され、撃沈。いわゆる、自爆。ある意味、鳳鞘に次ぐ不幸もの。
 十八巡。仲間をかばうことなく、孫の手兄貴が布団にしずむ。あてたのは‥‥オレの会心の一撃だわ。いやぁ、だって、そのまえにあてられたから、ついかっとなっちまって。この瞬間、里の仲間は、15PP維持してたりする人もいたりして。
 二十巡め。
「みゅ‥‥。僕、そろそろ眠いです‥‥」
 定時就寝が旨の良い子・将が、突如、試合を放棄。ごそごそと押入れへ向かう。あー、そういや猛虎仮面をふたたびあっちにしまいなおしておいたんだっけ。ぐっすり眠れよ。
 しかし、まぁ、そろそろ遅いし、解散するか? では、この時点で、一度PPを集計します。んで、PPの一番多いもんが勝ちね。
 はい、集計終わり。そんでは、発表します。優勝者は朔風の幻狼・弧月です。おめでとーっ♪
「え゛? 俺はやられ役一号として活躍する予定だったんだけど?」
 本人はそのつもりだったかのかもしれないが、回復と攻撃をうまく組み合わせた作戦が功を奏し、蒼瞑の悪巧み? をくぐりぬけて、この時点でも15PPを維持してたんだと。まさに完璧☆

 で、終了した時点での他の方々のPPはこんな感じ。

西國の将姫・龍羽:14
夢を追う者・将:10
鬼面仏手・孫の手:0
胡蝶の夢・翠嵐:13
深月の術師・碧殫:9
氷凰天刃の剣士・鳳鞘:0
白槍牙・蒼瞑:4
蒼拳狼牙・禍鎚:0
シノビ族の天剣士・鳴速:8

 龍羽は、『重傷で身動きのとれない小鳩ちゃんを攻撃していいの?』攻撃のせいか、鳳鞘の運をとりつくしたのか、やたらに運が良かったらしい。なかなかあてられなかったそうな。が、翠嵐の『小鳩って雑草ですか〜?』のまえに、わずか1PPだけけずられる(そりゃコウバコだ。苦しい)。オレは鳳鞘の次くらいに、あてられた。回復が順調だから、沈みはしなかったけどな。とりあえず、みんな、体育館裏で話し合おう。将にはやはり遠慮する人間が多かった。翠嵐もなんか運が良かったらしく、あまりあたらなかった。おんなこどもに甘すぎるぞ、みんな。おんなじサムライなんだから。蒼瞑は上記のとおり『あてられたときには、いっぱいあたる』で、こんな結果に。鳴速は、鏡反衝がけっこう効果的だったそうだが、ここまで。
 あーあ、いっぱいしゃべって疲れた。蒼瞑、飴もらうな。代わりに、広告出していいから。
「宵処『雪割草』の皆ごめんねーっ。考えたんだけど上手い広告思いつかなかった〜☆ 許してっ☆」
 まぁ、いいんじゃないか?
 
>>>

 ぽふっ、と将は寝返りをうつ。今日の枕は張りがあって、とても気持ちがいい。さっきまで投げてたものとは大違いだ。
「あ、そうです。広告‥‥『筋肉兄貴の里で踊る筋肉と戯れませんか?』‥ふにゃふにゃ 」
 寝言も順調な枕の正体は、とうぜん猛虎仮面の二の腕だった。

●あさだ、あ〜さ〜だよ〜♪
 翌日、早朝の漢湯。混浴になったそこで、殲鬼を待つサムライ面々にはぐったりした表情が浮かんでいた。まぁ、気持ちは分からんでもない。やさしくゆさぶる将はともかく、『らじお体操』という謎の歌を披露する龍羽に、朝の腕立て伏せに強制的に巻き込む孫の手。快適な目覚めにはほど遠いといってもよいだろう。前日がんばりすぎの弧月は、ほとんど死に体となっていた。
 しかし、それでもおきない強者はいた。
「あたしが何度、耳元で歌っても起きないのよっ」
 おかんむりの龍羽は、禍鎚が思念投射でエクトプラズム、ちゅうか、お空へ逃避、ちゅうか、そういう状態であることに気がついていない。
 しかし、いちばんの不機嫌は、なんといっても翠嵐だ。裏翠嵐の登場とでもいおうか。あきらかに人格が交代していた。
「あぁん、殲鬼だぁ? ったく、人がいい気持ちに眠ってるところに、とんでもない迷惑なもんがくるもんだな。誰が呼んだんだ?」
 呼んでないし。というか、それのためにそもそもここに来たことまで、忘れてるし。そんな翠嵐をなだめすかして、ほら、いい子にしてたら飴をあげるから、とだまくらかして、一同はサムライだけでお風呂場へ。

 そんで、殲鬼来襲。
「不屈の応援! がんばってください、孫の手さん! あ、ちょっと待っててください。腰の手ぬぐいがずれそうなんです」(応援一直線の将)
「加速装置! 震撃いっけえ! ‥‥でも、加速装置なら、本当は韋駄天足をつかうべきなのかな」(飴玉を奥歯でカチリの小技もばっちり☆ の蒼瞑)
「湯煙旅情、はぐれ刑事が迷子になったら事件が解決しなくて大変だの舞!」(いちおう月天剣舞をつかってる龍羽)
「それでも事件はざっくり両断解決剣、威力は砦も真っ二つ。‥‥龍羽、これ、長すぎるって。要塞斬りとはいわんけどな。やっぱり真っ唐竹割りの浪漫をだな‥‥」(でも、ちゃんと両断剣を龍羽にあわせて発動させる鳳鞘)

「おぉ、いろいろと技を持ってるもんだ」
 碧殫は仲間の活躍を、おもしろい芝居でも見るかのような、愉快そうな面持ちで眺めた。
「しかし、いまいち力押しだな。こーゆーのは搦め手も交えていかなきゃな」
 すでにずたぼろになった殲鬼に近づき、彼はやさしく声をかけた。兄さん、つかれてますね。ここはあふろでモテモテになって、癒されてみませんか? 等など。そうやって隙を見て、火炎弾を打ち込むつもりだったのだ。殲鬼は、ある意味お約束どおりというか、興味を持ってきた。そこで、碧殫は。
「必殺・あふ‥‥」
 が、一瞬はやく、もうひとつの炎の弾が彼の横をとおりすぎる。この世のものとも思えぬ大絶叫とともに。
「貴様か、私の安眠をうばったのは。ドタマかち割って、≪温泉≫で≪温泉≫なめにあわせたろかーーーっ!!!」
 それは見るものに、必殺技ってもしかすると存在しなくてもよいかもしれない、と思わせるのに十分な光景だった、らしい。当然、あふろごときで話は終わらず、殲鬼は炎のなかに無と化した。

「え、もう終わったんですか〜? ちっとも覚えてないです〜」
「俺の出番をとって、そこまでいう‥‥」
「ね、時間はあまってるんでしょ。もいっかい、枕投げしてきましょ」
「龍羽ならそういうと思ってたよ。はぁ」
「それもいいねぇ。私は今度こそ、弧月には勝ってみせるよ」
「孫の手さん、腕触らせて下さい!」←脈絡なし

 そんなこんなで、皆様おつかれさまでした☆

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