COMPETITION REPORT

from PIPERS 2000 MARCH

  

 

Complete version 

文=半田澄人 SUMITO HANDA
(テューバ奏者/J.O.H.Sメンバー)

 1999年12月13日からシドニーでおこなわれる、テューバマニア国際大会の室内楽部門に参加するために我々J.O.H.S.Euph-Tuba Quartetの4人は日本を発った。
 J.O.H.S.Euph-Tuba Quartetは、尚美学園短期大学および東京コンセルヴァトアール尚美の卒業生

写真=左からテューバの仲村淳、ユーフォニアムの鈴木里愛、同、岡村由香里、テューバの半田澄人の各氏

 Euph. 鈴木理愛、岡村由香里(新姓 塚本)、Tuba 仲村淳、半田澄人4人、それぞれのイニシャルの1文字をつなげて、「上手」に引っかけて名付けられた。これまでに、山形での第1回自主コンサート、仙台ブリティッシュ・ブラス・バンドのスペシャルコンサートへのゲスト出演、そして昨年11月3日に成増アクトホールにて第2回自主コンサートを開催している。
 いろいろな事に挑戦していく!をモットーに、目の前にあるものはたいてい食い尽くしてきたつもりだが、まさかオーストラリアに行く事になるとは、テープ・オーディションのための録音の時点では思いもよらなかった。
 締切ギリギリに送ったテープは、果たして間に合ったのかどうかもわからず、結果がネット上に発表されると知りながらも、URLも知らずにすごした我々は、「J.O.H.Sってあなたたちのことでしょー!?」という友人からの知らせで通過を知った。
 シドニーでの予選には10団体、Euph-Tuba Quartetだけではなく、トロンボーン四重奏や、金管五重奏なども含まれていた。日本からは、国立音大の学生のEuph Trio「未来」と我々の2チーム。

コンクール直前に2名が体調不良

写真=結果発表の掲示の前でVサインをする、半田・仲村両氏

 空港で、テューバの機内持ち込みはできないと言われ途方に暮れてしまったが、カンタスの職員の「私が貨物室で抱えてますから安心してください!」の言葉に感動しつつ日本を後にした。シドニーは夏!暑いぞー!!と覚悟していったが、春から夏にという時期で肌寒さが残る季節、予想を裏切られることが多い。
 いよいよ開幕、はやめに会場のあるノース・シドニーへと電車で向かう。世界各国からの参加者に混じって日本でよくみた顔が大勢!プロや音大生、アマチュアと総勢160名(日本人は60名)が集まってきた。名札やプログラムを受け取り、コンクールの受付も済ませる。出演順は室内楽は受付順、朝の早い2番目になってしまった。9:20スタート、日本時間の7:20!

優勝を記念してガラコンサートへの出演を要請されたが、帰国日程の都合でランチタイムコンサートで演奏(写真)。

 室内楽部門のコンクールは15日、明日はどのような練習ができるのだろうかと心配しつつ帰途につくが、思わぬアクシデントが待ち受けていた。メンバーの鈴木は胃腸炎を起こし、半田が食あたり!拾い食いをした覚えはないのだが…。鈴木はとうとう医者を呼ぶはめに!前日だというのに何も食べられずただただ安静の1日。
 体調ボロボロで迎えた当日は、満員電車から楽器を守ろうと奮発してタクシーで会場まで。1時間足らずのウォーミングアップ、ただひたすらウォーミングアップしていたので、時間になっても現れない出場者を捜しにスタッフがやってきた。室内楽部門には課題曲はなく、1900年以前と以後の曲を2曲指示されているだけ、我々は後藤文夫編曲W.A.モーツァルト「セレナーデ」とF.ヒダス「Tubaquartett」を用意していった。
 本番、審査員であるS.D.ハーン、ブライアン・ボーマン、メル・カルバートソン、ハリー・リドスル、外囿祥一郎各氏の顔が近くに見える。制限時間の20分は時間を余してあっけなく終わる。ただ夢中でこの1回を吹ききればと思いでいっぱいだった。

チューバのメル・カルバートソン(中央)が鈴木さんに祝福のキス(だかなんだか?)


 「Good!」と案内をしてくれたスタッフのガイ・ハリソン君が迎えてくれ、わざわざ控え室まで「よかったよ」と見知らぬ人までやってきた。ほっと一息、安心したせいか食欲もでてきて「米粒が食いてぇ」とすしをパクつく。


 会場に戻るとホストであるスティーヴ・ロッセが「Congratulation, Finalist!」と声をかけてくれ、予選通過を知らされた。本選にはシドニー・トロンボーン・カルテット、国立ユーフォニアム・トリオ「未来」と我々の3チーム。

「オメデトウ!」

 

とりあえず予選が終わった安堵と疲れでいささかぐったり。

 同じ曲で本選にのぞむのかとも思ったが、こんな自分たちが気に入られたんだろうと勝手に思いこんで再び同じ曲。今度は30分与えられていたが、また20分足らずで帰ってきた。もう吹くことはないんだなあと思いつつ…。
 抜け殻のように外のベンチに座り込み、ソロ・コンクールを受けるユーフォニアムの二人には悪いがテューバの二人はすでに観光モードへと切り替わりつつあった。
 「入賞は間違いないのだから」とか「1位なしの2位3位だったら入賞もないよ」などと冗談を言いながらロビーにいると、スティーヴが客席へとみんなを誘い、席に着いたのを確認するとおもむろに話し始める。今日はお疲れさまのようなことを話し、審査員の紹介をし拍手をする。まるで吹奏楽コンクールと一緒だなあと思っていると、J.O.H.S. Euph - Tuba Quartetの名が呼ばれた。出場者の紹介をしてくれているのかと思い愛想笑いを浮かべながら立ち上がる。その様子に夫人が「1位ですよ」と大きな声で我々に向かって言うではないか!「えっ、まさか!信じられなーい」と座りかけた椅子から飛び上がってしまった。結果は、1位J.O.H.S.、2位シドニー・トロンボーン・カルテット、3位国立ユーフォニアム・トリオ「未来」。
 全然実感がわかないまま外にでてベンチにすわっていると、スティーヴがやってきて、22日のガラ・コンサートの出演とメル・カルバートソンのレッスンを受けなさいと言われるが、あいにくメンバーの1人(実は筆者)が19日には日本に帰らなければならない。18日のリサイタル・シリーズに出演を約束した。メルは我々の演奏を大変気に入ってくれたのだがまだまだ問題があるということでレッスンを買ってでてくれた。多忙の彼のスケジュールを割くことができず実現しなかったが、一緒に飲みに行ったりとかなりフレンドリーな雰囲気で我々を迎えてくれた。メルだけではなく、他のゲスト・プレイヤーたちも気さくに話しかけられ意見やアドヴァイスを得ることができ、文化の違いを感じた。
 18日のリサイタル・シリーズへの出演も過密スケジュールの変更がままならずランチタイムコンサートへと切り替わってしまったが、暖かい拍手をいただき楽しめた。
 毎晩開かれたリサイタル・シリーズには国際大会ならではのスタープレイヤーが出演、ピアノはもとより、バンドバックのソロや、日本からのアンサンブル・ゲスト、国立ユーフォニアム・コアやE.A.S.T.(E=エリザベト音大、A=愛知県芸、S=尚美学園、T=東邦音大)の演奏会が開かれた。特に印象に残ったのはノルウェーのバーズウィック!「様々な超絶技巧ができても音楽は歌うことが大事!」という言葉が今でも心に響く。
 国際コンクールではありがちと聞いていた賞金の未払いもなく後日振りこまれ、円相場とにらめっこの毎日である。

仲村淳(なかむら・じゅん) 沖縄県西原町生まれ。尚美学園短大卒。東京コンセルヴァトアール尚美音研コース、同ディプロマコース修了。東京金管五重奏団団員。

岡村由香里(おかむら・ゆかり) 長野県軽井沢町生まれ。尚美学園短大卒。東京コンセルヴァトアール尚美音研コース修了。第15回日本管打楽器コンクール5位。

半田澄人(はんだ・すみと) 静岡県富士宮市生まれ。尚美学園短大卒。東京コンセルヴァトアール尚美音研コース、同ディプロマコース修了。

鈴木理愛(すずき・りえ) 北海道釧路市生まれ。尚美学園短大卒。東京コンセルヴァトアール尚美音研コース修了。99年レナード・ファルコーニ国際コンクール入選。ヤマハ仙台講師もつとめる。