第11回 グローバル化社会の教育研究会のご案内
木々の新緑が まぶしい季節となりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
  「グローバル化社会の教育研究会」は 企業・団体等の海外人事担当、教育相談員、帰国子女受け入れ校教員、ボランティア団体の幹部など 実務者同士の自主研修会として、お蔭様で順調に活動を続けております。

  さて、このたびの研究会は、昨年6月と同様、特別企画として 「ミニ教育フェア」 を行うことにいたしました。 テーマは「公立高校の帰国生受け入れを考える」 です。 帰国生受け入れ校の情報は 私立学校のものが圧倒的に多いだけでなく、ともすると 公立学校の対応の拙さや融通の無さばかりが クローズアップされる傾向にあります。 しかし、帰国生の多くは 公立高校への進学を希望していますし、中立で的確な判断ができる情報・機会が求められています。
  そこで今回は、「公立高校教員」「公立中学校教員」「帰国生保護者」の経験がある教育相談担当者にパネラーをお願いし、それぞれの立場からの現状報告や話題を提供していただくことにしました。 フロアも交えた活発な議論の中から、公立高校の受け入れ体制の現状や課題を一緒に考えてみたいと思います。
開催日時 :  2005年 6月24日(金) 午後2時〜4時30分
開催場所 : 順 心 女 子 学 園 中 学 校・高 等 学 校
(東京都港区南麻布 5−1−14 TEL.03−3444−7271)
* 営団地下鉄日比谷線(東急東横線乗り入れ)「広尾」駅より徒歩3分。
研修テーマ: パネルディスカッション:公立高校の帰国生受け入れを考える
<パネラー>
 斉 藤 源三郎 (外務省大臣官房人事課 子女教育相談室/元 都立高校教員)
 宮 川 秀 世 (世田谷区教育委員会 帰国・外国人教育相談室/元 区立中学教員)
 古 場 詩 子  (フレンズ 帰国生 母の会 『学校案内2006』 編集長)
<司会>小 山 和 智 (国際教育相談員/グローバル化社会の教育研究会 事務局)
参 加 費: 1,000円 (運営費)
申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   
参加者一覧

参加者アンケート結果 (抜粋)

Q1.今日の研究会のご感想は いかがでしたか?
公立校の良い所を なるべく見たいという会場の雰囲気を感じたので、ネガティブな部分での質問が ちょっと し辛かったです。(教育相談員)
海外からの帰国生で 公立高校受験希望者がおり、大変参考になりました。帰国後1年以内という条件がついている大阪府の場合、 中1・小6で帰国枠では受けられないので、やはり私立を考えています。企業としては、保護者の経済負担を考えると、公立の受け入れ条件の緩和を強く願っています。(企業の海外人事担当)
昨年帰国した生徒で、全く帰国生受け入れが初めてという公立中学校に戻った子がいました。とても静かで内気な子で、順応できるか心配でしたが、いざ入ってみると、校長先生、主任の先生、担任の先生、クラスの生徒たちから大歓迎を受け、わずか半年の在学でしたが とても素敵な公立中学校生活だったそうです。何も整ってなくてもよいのです。温かい気持ちで受け入れてくださる気持ちさえあれば、帰国子女は安心して 受験でも何でもやってゆけるのだと思います。(海外校の教師)
とても有意義でした。いろいろとお話を伺って、「結局うちの生徒は、どういう基準で学校を選んでいるのだろうか?」ということを考えていました。 きちんと整っている受け入れ体制もたしかに魅力的ですが、それ以上に、たとえ整っていなくても、そういう海外子女という特殊な環境で育った子供達を大切に迎えて、一緒に作り上げようとしてくださる、そういう学校ならばお任せしたいと、保護者も生徒も考えているような気がします。(海外校の教師)。
たくさんのことを学ぶことができましたこと、お礼申し上げます。 36年間、公立の小学校に籍を置いた者として、耳の痛い話、襟を正さなければならない部分を含め、教えられることが多くあったように思います。
フレンズの古場さんが言われていましたが、まさに「公立は役所、私立は企業」の感を強くしました。私の経験では、黙っていても(努力しなくても)、毎年子どもたちは入学してきました。 残念ながら教師の意識は旧態依然で、言葉とは裏腹に かなり保守的な一面があるように感じてきました。 しかし、「特色のある学校」を創ろうとしても、人も金も物も、みんな「あてがいぶち」というのが公立の実態です。 今、学校は(公立も私立も含めて) マイナーな立場の様々な子どもたちに、どれだけやさしく、柔軟に、きめ細かく対応するかが問われているのだと思います。
退職した身には重い課題ですが、さらに学校が、そして教師が変わることを願って、情報を発信していきたいと思っています。(企業内の相談員)
大変勉強になりました。 公立の顔が見えないのは 見せたくないと思っているから、つまり学校・教師が多忙で帰国生が増えて余分な仕事を増やしたくないと考えているからだと思います。 財団の「学校便覧」に掲載を断る学校も増えています。
(ロサンゼルスの) 松本先生 指摘の通り、それでも東京や大阪は 私立があるからよい方で、地方では 公立は唯一の選択肢の場合が多いので、事態は深刻です。 この傾向は、協力校センター校制度の廃止以来 顕著です。文部科学省に この点を再三指摘していますが、帰国生受け入れを特色とする学校の出現に期待したいとの意向です。実現には、多くは期待できないと思わざるを得ません。 従って、具体的ケースでは 個々の教育委員会や学校に直接働きかけるのが精一杯といったところです。
繰り返しますが、生徒の確保が運営の要となる私立と対照的に、生徒集めは必要ないと考えている公立では、積極的に情報を提供する意図のあるところは例外的です。 良い所を見て欠陥は論わないことを善しとする教育業界では、小生の執拗な指摘は あまり評判はよくないようです。(海外駐在経験者)
パネラーの皆様の発表はとてもわかりやすく、ありがたいものでした。 東京都、神奈川県の様子を垣間見て、埼玉県との違いを認識できたのも収穫でした。 「公立にもよいところがあるよ、情報さえ上手く出せればもっと帰国生もいけるよ」というメッセージを受け止めながら、あの場に座っていました。
埼玉県の県立は、まだまだ元気なところがたくさんあります。 学力的にはいろいろですが、(ワン・ワールドの会の) 阿久津さんがおしゃっていたように、県立高校に進学することが ほぼ当たり前の埼玉県なので、帰国生も推薦入試を使えば、それほど無理なく入れます。 私も早く「発信者」になれるように努力いたしますので、よろしくお願い致します。(帰国生の母、教育委員会勤務)
元公立校の校長先生から 「この場の空気に、公立高校はダメだという空気が充満している…」と発言されたのは意外でした。 「教師も一生懸命にやってはいるのに…」という“愚痴”が 延々と続きそうになって、いささか焦りましたけど、ロサンゼルスの松本先生が、カウンターパンチを出してくださって、救われましたね。(私立学校教員)
皆様の貴重な、お話しを拝聴させて頂きまして ありがとうございました。 フレンズでも 公立高校について考えていました。 疑問等が やはり皆様も同じ思いと分り、今後、色々と参考にさせて頂きます。(帰国生 母の会)
帰国子女の方は、本当に十人いらしたら 十人状況が違うことが、帰国後のサポートのむずかしさだと、改めて感じました。 でも今日のように、いろいろな立場の方が様々な意見を出し合うことで、少しずつ、少しずつ良い方向に向かっていくといいですね。 私も これから帰ってくる子どもたちのために、何かできることあれば、世田谷区の取り組みのように、杉並区でお手伝いをしたいと思いました。(帰国生の母、英語塾講師)
帰国後のサポートで帰国した子供達が、自国に帰ってきて良かった と思えるような環境を整える・・・。「難しい・・・!」と言わずに、できるところから取り組みましょう。 少しずつでもできると思います。(帰国生の母)
斉藤先生は、本当に頑張ってくださったと思います。 ご自身は 「公立高校はもっとしっかりして欲しい」とおっしゃりたいのをグッと我慢して、報告に専念してくださったのが良かったですね。 宮川さんは、想像以上の貢献をしてくださったと思います。帰国生を指導し、高校に送り出していくご苦労が、ひしひしと伝わりましたし、「公立高校 頑張れ」のお気持ちが、よく現れていました。
古場さんを初め、ボランティア団体の皆さんのご協力には、本当に感謝したいと思います。 皆さん、公立校に期待はしているのです。 要は、それをどう伝え、教員の意識を喚起していくかなのですよね。 苦情ばかり言っていても始まりませんもの。(教育相談員)
<ほか省略>
Q2.11月の「教育フェア」には、どういった内容を盛り込んでいくと、広く皆さんにご紹介いただけますか?
受け入れ後 どのようにサポートしてくれるのかが、とても知りたい。 その情報が たくさんあることによって、現地での生活スタイルが決まってくると思う。
公立も含んだ 教育フェアを お願いします。各企業を通じてアピールしていただくと、参加者が増えると思います。
帰国後の心の教育、違う文化・常識を どう受け入れ、どう生かすか?
フレンズの古場さんのお話から ふと思ったのですが、11月の教育フェアに、実際参加校に通っている帰国生の保護者も 学校説明会に加わっていただくというのはいかがでしょう? 学校と保護者両方のお話が伺えれば、参加された方々には 2倍のお得になるのでは?
<ほか省略>
Q3.その他、何かご意見・ご要望などございましたら、何でも結構ですので お書きください。
やはり、公立高校から一人も来ていないという状況だと、いくら良い所を見つけようと思っても、何か学校の熱意が感じられません。実際、相模原のほうの高校に電話で参加の打診をした時も、同じように感じられました。 でも公立は、生徒を集めなければいけないという理由がないですものね。 その辺りが、やはり難しいのでしょうね。 次回は もっと強力に、いろいろな公立高校にプッシュしてみたほうが よいのでしょうかね---。   (教育相談員)
要は、帰国子女の教育に対して 単なる「与えられた仕事」としてではなく、「私のこと」として捉えておられる方々によって支えられているのだなと痛感しました。 私も帰米したら、その精神でまた子供達とぶつかっていこうと、新たな励みをいただいたような気がします。(海外校の教師)
小山先生の司会は、とてもピンポイントでまとめられていて、よかったと思います。松本先生がおっしゃっていたように、私たち海外でいる者にとって(欲しいのは)具体的なお話です。 それが 一番大きなお土産です。 今年の夏は、私も たまたま帰国することができたので、こういう会に出席することができました。 是非ダイレクトメールでも、いろいろとEGSの活動状況を教えていただけると ありがたいです。(海外校の教員)
長男のみが帰国の恩恵に預かって 埼玉大付属中に入ることができて、それは楽しい中学生活を送ることが出来ましたが、高校では自律神経を壊し、そこから26歳の今まで紆余曲折、まだ はい上がれない状態です。 娘も小5で帰国後、いじめに会いました。 後から帰国される方には、「もっと家庭学習をしてください」と言いがちになってます。 これは 「学校も行政も当てにしてはいけないよ」ということなのですが、今の私の立場では はっきり言うわけにはいきません(笑)。 (教育委員会勤務)
ボランティアのお母様方のネットワークが広がり、今回のように定期的に いろいろな具体的な情報交換ができれば、自分の地区の学校に行かれた時の大きな力になると思います。 EGSが、そうした情報のキーステイションになれるといいですね。 それにしても、都立高校の変革は、普通の受験生や親にとっても よくわかりません。 中の先生方も、毎年あれこれ模索していられる状況ではないでしょうか。 なので、逆に帰国生だから、初めから無理とも言えないかな、と思います。 我が家は、理科・社会の準備が間に合いませんでしたが…。 (帰国生の母)
参加者の皆様が今後、どのようなアクションを取られるか、期待しましょう! (帰国生の母)
パネラーの先生方みなさん、試行錯誤の中で、壁にぶつかりながら帰国子女教育に取り組んでこられたという点が、とても聞いていて面白かったです。(帰国生の母)
<ほか省略>
[終わりに]
第11回グローバル化社会の教育研究会(EGS) は、本当に盛り上がりました。 参加された皆さんの多くが 「自分も何かしなくては…」という気持ちを抱いてお帰りいただけたのでないでしょうか。 それぞれの方が、それぞれの方法で前向きに努力していただける、いろいろな場所で “渦” を巻き起こしていってくださる、その渦巻きの精神的な核に EGS研究会がなれれば、というのが設立以来の活動趣旨です。 その意味で、今回は本当に 達成感があります。 ありがとうございました。
皆様のご活躍を 切に願います。                  (文責: 小山 和智)

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