第49回 グローバル化社会の教育研究会のご案内
拝啓、桜の便りが各地から届く季節です。 皆様いかがお過ごしでしょうか。

  さて、グローバル化社会の教育研究会(EGS) の第49回研究会は、臨床心理士で 東京都公立学校スクールカウンセラーをされている木野 照美先生に 話題提供をお願いし、海外に子供を帯同する保護者の心理と必要な支援について 考えることになりました。
  海外子女教育に関わっていますと、被害者意識や悲観的思考に陥るお母さんを 多く見かけます。子育ては親の考え方に大きく依存していますし、私たち関係者が直接接するのも 保護者がほとんどですので、保護者に対して 「何をしてあげられるか/何が必要なのか」 に悩まされます。子育て世代が段々と遠ざかっていき、世代ギャップを感じるなかで、自分たちの経験で得られたものを どう効果的に伝えられるのでしょうか。
  木野先生から、保護者の心理状況や求められていること、アプローチの仕方などについてお話しを伺い、ヒントを探ることにいたします。
開催日時 :  2015年 4月24日(金) 午後2時〜4時半
開催場所 : 波 多 野 フ ァ ミ リ ス ク ー ル
 (東京都新宿区下落合2−14−22  Tel.03-3954-3211)  地図
 * JR山の手線「目白駅」より徒歩5分
研修テーマ: 海外子女・帰国子女を育てる母親の心理
               --- 支援のありかたを考える
 (1) 話題提供: 木 野 照 美 (医療法人高仁会 戸田病院 心理室室長)
小学生時代に父親の仕事でレバノンに滞在、米国ジョージタウン大学に留学の経験もある。 青山学院大学 大学院で 文学研究科臨床心理学専攻 修了。 医療法人高仁会 戸田病院ほか サテライトのクリニックでの心理臨床経験を積み、川口病院心理室室長を経て、2010年から現職。 山野美容芸術短期大学カウンセラー、上智大学カウンセリング講座講師、東京都公立学校スクールカウンセラーとしても活動するほか 原心理相談室(個人開業)でも心理療法を行っている。 臨床心理士。心理臨床学会・精神分析学会・EMDR学会員。
 (2) 自由協議: 話題提供の後、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。
参 加 費: 1,000円 (運営費)
申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   

『小山の教育通信』 2015年 5月
  話題提供は、臨床心理士で 東京都公立学校スクールカウンセラーをされている 木野 照美先生にお願いし、海外に子供を帯同する保護者の心理と必要な支援について考えます。 海外子女教育に関わっていますと、被害者意識や悲観的思考に陥るお母さんを多く見かけます。 子育ては親の考え方に大きく依存していますし、私たち関係者が直接接するのも保護者がほとんどですので、保護者に対して「何をしてあげられるか/何が必要なのか」に悩まされます。 木野先生から、保護者の心理状況や求められていること、アプローチの仕方などについてお話しを伺い、ヒントを探ることにいたします。
◆ 今回のEGS研究会は、海外子女教育・帰国子女教育に関わるスタッフの高齢化問題に焦点を当ててもいます。 子育て世代が段々と遠ざかっていき 世代ギャップを感じるなかで、私たちは何ができるのでしょうか?
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  臨床心理士の木野照美さんのお話しは、人間の“不安”の構造を改めて考えさせられる内容でした。 人間の不安の基が “喪失感” と “喪失への恐れ” であるという指摘は、1970年代から研究されてきたことではあります。 そして 「本人にとって好ましいことであっても、ストレスになる」 ということは、少なくとも 子どもの教育に関わる者(もちろん両親も含みます)は、必ず肝に銘じておく必要があります。
  「五月病」などは その最たるもので、名門校に入学した子ほど 自殺や うつ病に陥る危険が高いのです。 本人も周囲も “幸せの絶頂” に居るはずなのに、環境が変わって6週間目くらいに、判を押したように皆 “おかしく” なります。 1923年(大正12)5月5日、東京帝国大学で 「第1回大園遊會」 が催されたのも、新入生の自殺者と その “予備軍” が余りに多かったからとされます。 大事なのは 「誰もがなるんだ」 という法則性の予備知識を持ち、前向きに “心の準備” を、本人も周囲も しておくことです。
  折しも、『月刊 海外子女教育』5月号で、「親たちのストレス対処」 の特集が組まれています。 EGS研究会の常連でもある小木曽道子さん(渡航前研修講師)と、ボランティアグループ「With Kids」の臨床心理士の皆さんが、実際の相談事例を基に “コツ” を紹介されています。


『月刊 海外子女教育』 2015年 6月ニュース欄
  グローバル化社会の教育研究会は4月24日、波多野ファミリスクール(東京都新宿区)において、「海外子女・帰国子女を育てる母親の心理―支援のありかたを考える」をテーマに、医療法人仁会戸田病院心理室長の木野照美氏の発題をもとに研究会を開き、意見を交換し合った。教育関係者や帰国生の保護者などを中心に22人の参加があった。
  木野氏は小学校時代の6年間をレバノンで過ごした 元帰国子女。 アメリカの大学に留学した経験もあり、異文化適応におけるストレスを 自身も経験している。
  まず、開示されている研究結果を参考に、海外赴任にかかわるストレスについて 「決して ひとくくりにできない」 と念を押したうえで、その要因に 「慣れ親しんだ環境からの決別」「親密な友人や仲間との別れ」「顔見知りの近隣の消失」「新しい環境への適応」「ことばの壁」を挙げ、これらが複合することで 大きなストレスになると説明した。 また適応の過程においては 一般的に 「自己崩壊⇒自己再統合⇒自立」 という流れの中で うまくいったりいかなかったりという UカーブやWカーブが訪れるといい、その落ち込みが激しいと 心の病につながる可能性が高くなると述べた。
  生育環境や心理特性(寛容性や柔軟性、自己認識、包容力、忍耐力、社交性、好奇心、ユーモア感覚等)などによる個人差はあるが、自分自身の状況を認知して 新しい環境の知識を得ること、そして心身共に健康であることで 適応は促進できるという。
  母親の場合、自身に加え 子どもについての不安も生じるため、過度なストレスがかかると 注意を促す。 その背景には、子どもに自分の不安を投影し、「わが子ならできる」「わが子にはさせたい」 と思うことで、自分の自信のなさを 子どもの適応で補償しようとする心理がある と指摘する。 このような場合、周りはどのような支援ができるのか。
  木野氏は 「心理教育(現地の具体的な情報提供やアドバイス、適応過程と子どもの発達過程やストレス対処法に関する知識の提供等)」を挙げたほか、相談に乗る際は 「本人の耐性を見極め、本人の気持ちに共感した関係づくりに努めることが大切」 と説く。 さらに 「相手が 『なぜ』 そういう言動をするのかを考えることが 『共感』につながる。 共感があるかないかでは 知識の入り方が違う」 と述べ、共感することの重要性を訴えた。
  参加者からは 「悩んでいても、病院に行けない人に対しては どんな声をかけてあげればよいのか」 といった質問があったほか、「子どもの元気は親の元気からということを あらためて感じた」「自分の海外赴任や帰国時の体験を伝えることで 支援したい」 等の声が聞かれた。


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