第55回 グローバル化社会の教育研究会のご案内
日増しに暑さが増していますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

  さて、第55回グローバル化社会の教育研究会(EGS)は、横浜市の公立小学校で永年 教鞭を執ってこられた 江口 俊昭先生に 話題提供を お願いしました。 江口先生は、ウェリントン、ダブリン、ロンドンと 3つの補習授業校に派遣された経験も お持ちです。
  近年 「グローバル人材育成」 が盛んに叫ばれていますが、グローバル化 していく社会 (主に多言語下の状況) に置かれている子ども達は、どのようにして学ぶ力 (生きる力)を育てていけばよいのでしょうか。 海外で学ぶ子ども達は 一見、日本で暮らす子ども達より 有利な環境で学んでいるように見えますが、現実は そうでもありません。
  ずっと帰国子女教育に携わられ、海外でも教鞭を執られてきた江口先生から、補習授業校の現状や保護者・教える側の問題等について お話を伺い、具体策について 話し合いたいと思います。
開催日時 :  2016年 6月24日(金)  午後2時〜4時半
開催場所 : 聖 学 院 中 学 校 ・ 高 等 学 校
(東京都北区中里3−12−1 Tel.03-3917-1121)  地図
* JR山の手線「駒込駅」東口より徒歩5分、地下鉄南北線「駒込駅」北口より徒歩7分
研修テーマ: グローバル化する状況下で “生きる力” を育てる
        --- 補習授業校の現状から 見えてきたこと
 (1) 話題提供: 江 口 俊 昭 (元 横浜市公立小学校 校長/ 前 ロンドン補習授業校 校長)
1947年 北海道生れ。 青年期はバックパッカーで 世界を巡った。 1975年 北海道教育大学を卒業し、横浜市の小学校で 教壇に立つ。 1984年 ウェリントン補習授業校 (ニュージーランド) に赴任。 2004年から 横浜市内の小学校長、 横浜教育支援センターを経て、 2009年から ダブリン補習授業校 (アイルランド) 校長、 2012年から ロンドン補習授業校 (英国) 校長を勤めた。 現在は 民間の子ども支援組織 「わいわいアリス」指導員。 全海研・神奈川県国際教育研究協議会会員。
 (2) 自由協議: 話題提供の後、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。
参 加 費: 1,000円 (運営費)
申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   

『小山の教育通信』 2016年 7月
  話題提供者に 江口 俊昭 先生(元 横浜市立小学校長)をお迎えします。 江口さんは、ウェリントン(NZ)・ダブリン(アイルランド)・ロンドン(英国)の補習授業校に勤務のご経験も お持ちです。
  近年「グローバル人材育成」が盛んに叫ばれていますが、グローバル化していく社会(主に多言語下の状況)に置かれている子ども達は、どのようにして学ぶ力(生きる力)を育てていけばよいのでしょうか。 永年、帰国子女教育に携わられ、海外でも教鞭を執られてきたご経験から、補習授業校の現状や保護者・教える側の問題等についてお話を伺い、具体策について話し合いたいと思います。
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  江口俊昭 先生から 「子供の“学び”を どう保証するか」 の観点で 講話を伺いました。 学習言語の習得には、十分な生活言語の土台が必要である上に、意識的に学習言語に触れる機会を作っていくことも 大事なことを、再確認できました。
  35年前に、私が北米の4都市を訪ねた時、いずれの街でも、補習授業校と日本語学校(日系2〜4世の継承語教育) との関係を どう扱うかが 問題になっていました。 永住家庭から 「補習授業校に継承語教育を入れて欲しい」 との要望が強く、駐在員の皆さんも 悩んでおられたのです。 「補習授業校は、家庭学習の成果を持ち寄って、集団で学ぶ場」(保護者が教育の主体) の原則は外せませんが、母語でも 継承語でも 学習言語として積み上げる方策は 柔軟であって好いでしょう。 江口先生に 特別支援教育の教材が 補習授業校でも有効に使えること、また 算数・数学の学習が 日本語による論理的・抽象的思考に どれほど有効かを、具体的に教えていただけたのは、幸せです。
  ともあれ、日本政府も 継承語の補習校を援助する時代に入ったそうで、それはそれで 喜ばしいと思います。
◆『月刊 海外子女教育』7月号: 江口俊昭先生が 「聞いてみよう!子どもの教育」 の欄に、国語・日本語の学習に 本当に大事なことは何かを、優しく解説してくださっています。


『月刊 海外子女教育』2016年 8月号ニュース欄
  6月24日、55回目となる 「グローバル化社会の教育研究会」 が聖学院中学校・高等学校(東京都北区)で開かれ、「グローバル化する状況下で “生きる力” を育てる-- 補習授業校の現状から 見えてきたこと」 をテーマに、横浜市内の公立小学校をはじめダブリンやロンドンの補習授業校で校長を務め、ウェリントン補習授業校での教員経験もある江口俊昭氏が話題を提供し、来場者が意見を交換し合った。 アイルランド補習授業校校長をはじめ教育関係者などを中心に約二十人の参加があった。
  江口氏は三校の補習授業校を経験し、現在は 民間の子ども支援組織 「わいわいアリス」の指導員として活躍している。
  近年 「グローバル人材育成」が盛んに叫ばれ、海外の補習授業校で学ぶ子どもたちは 日本で暮らす子どもたちよりバイリンガルに鳴り得る立場にあるといわれることも多いが、かならずしも その環境を生かしきれていないのではないかと 江口氏は語る。 現在、多くの補習授業校では、子どもたちが多様化して 指導の目標が定まらず、レベルの低下や授業が成立しない事態を招いていると述べ、その原因を 「『国語科』と『日本語科』の児童生徒が混在したままの授業」「簡単にバイリンガルになれるという安易な思い込み」「週一度の補習授業校で『足りる』という誤解」「柔軟な指導体制の欠如」「政府の従来型支援枠」にあると開設した。
  続いて、その対策として 次の六つを挙げた。@発達段階を見据えて指導する、A「スモールステップ」を重視し、「基礎基本に返る学習」「家庭と学校との指導の共有化」をはかる、B「国語科」と「日本語科」を併設して指導の違いを明確化し、学習者の選択を自由にする、C学習者の学び直しを保障し学習の回復を支援する、E学びの場を守るためのネットワーク等を確立する。
  まとめとして 江口氏は 「グローバル化の時代だからこそ、一人ひとりの育ち方が保障されるべきではないか。 どの立場であろうと 『学びの大切さ』 は共有すべき」 と語り、「ことばの力がその子の人格やアイデンティティ、知力を育てる」 と述べた。
  その後、元ニューヨーク日本人学校校長の八重澤勇一氏や 元パース日本人学校校長の木村廣氏が 異文化を行き来しての自身の子育て経験を語り、全体での協議に入った。
  「保護者は 『子どもの日本語を守りたい』 という強い思いがあれば、なんらかの支援はできるはず。 補習授業校と保護者が協力し合って 子どもの学びを保障できるといい」「子どもの多様化における補習校の悩みは 帰国生受け入れ校が抱える課題に共通する。 補習校だけの問題ではない」 など、途切れることのない意見交換が続いた。


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