2018年 4月吉日
多文化共生を目指す教育関係者の皆様
グローバル化社会の教育研究会 事務局

第64回 グローバル化社会の教育研究会のご案内

春を迎え 人も草木もいっせいに活気を帯びてきたように感じられます。 皆様いかがお過ごしでしょうか?

  さて、第64回グローバル化社会の教育研究会(EGS)は、東京学芸大学の西村 圭一先生に 話題提供をお願いしました。 西村先生は 「豊かに生きる力を育む数学授業」 の旗頭といわれる方です。
 
  いまの高校生の大半が 「こんな数学は自分の人生に役に立たない」 と思っていますが、一部の専門家や技術者だけの数学教育ではなく、社会の大半を占める庶民が困難な社会を生き抜いていくための数学教育が求められています。
  「実社会に出ても、算数・数学の学びを主体的に活用できる子どもを育てたい!」 を掲げて活躍されている西村先生に、教育現場だけでなく、教員養成の現場の状況も含めてお話を伺い、話し合いたいと思います。

  なお、準備の都合上、お申込みは お早めにこちらまで ご連絡ください。(受付:4月13日まで)

               記

開催日時 :  2018年 4月20日(金)  午後2時〜4時半

開催場所 :

聖 学 院 中 学 校 ・ 高 等 学 校
(東京都北区中里3−12−1 Tel.03-3917-1121)  地図
     * JR山の手線「駒込駅」東口より徒歩5分、
      地下鉄南北線「駒込駅」北口より徒歩7分

研修テーマ: 庶民のための数学教育とは?
         ---- 現実世界を読み解き解釈する能力の育成を

 (1) 話題提供:

西 村  圭 一 (東京学芸大学 教育学部 数学科教育学分野 教授)
1968年東京生まれ。 東京学芸大学を卒業後、東京都立高等学校、東京学芸大学附属大泉中学校、同 国際中等教育学校の教諭、国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官を経て、2011年 東京学芸大学 准教授、2016年より現職。 教育学博士。 日本数学教育学会会員。 著書に 『中学校新数学科 活用型学習の実践事例集』(明治図書)、 『数学的モデル化を遂行する力を育成する教材開発と その実践に関する研究』(東洋館出版社)、『中学総合的研究 数学 三訂版』(旺文社)、『真の問題解決能力を育てる算数授業 資質・能力の育成を目指して』(明治図書)など。

 (2) 自由協議:


話題提供の後、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。

参 加 費:

1,000円(運営費)

申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   

『小山の教育通信』 2018年 4月
  最近の高校生の7割以上が、「こんな数学は 自分の人生に役に立たない」 と思っているそうです。 将来、同じ世代の10数パーセントしか専門家や技術者にならないのに、全員に同じ内容を課し、同じような教え方しかしないのは、余りに無理な話です。 ところが、数学教員を志す学生の大半が 「難問を学生の前で美しく解いて見せる」 ことを夢見ています。 社会の大半を占める庶民が困難な社会を生き抜いていける--- 実社会に出て、算数・数学の学びを主体的に活用できる子を育てるには どうしたら好いのか、西村先生のお話を素に話し合いたいと思います。
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  “目から鱗” は、英国の数学教育の改良プロジェクト 「Bowland Maths」 のソフト--- 実生活に数学的な推論を考えたり、数学的方法を使って分析することで、幅広い問題解決を図るケーススタディの例示がなされました。 生徒たちが、必要なデータを考え、仮説を立て・検証し、データを層別し、目的に合ったグラフを選び・読み、対策を評価し、データを示して伝え合い、決定に至る過程を実践的に学ぶことができます。 わが国では 今回の学習指導要領改訂で、ようやく この過程が正面から取り上げられましたが、学校現場では 「効率が悪くて 大学受験に間に合わない」 と、抵抗は相当大きいようです。
  しかし、「ドライバーズ効果」(運転者は助手席の人よりも道を覚える) といわれるように、私たちの脳は、自分自身が主体者であると判断すると活性化し、自分が主体ではないと思うと “催眠モード” に入っていきます。 学習者に受身の感覚を持たせると、結局、脳内の学習効果を妨げてしまいますから、従来の授業形式の方も 非効率だったわけです。 日本学術会議でも、「これからの時代の市民にとって、数理科学的な事象の把握・処理の能力は欠かせない」 と訴えています (2013年)。 かつて、カメラの自動化が高度に進んで、「カメラマンに残されたものは、哲学しかない」 というCMもありました。 何もかも AI(人工知能) に任せる時代には、人間は 「あるべきもの」 を求める価値命題に取り組むしかありません。 それを怠れば、AIに 「人間はもう要らない」 と判断されかねませんから。

『月刊 海外子女教育』 2018年 6月号ニュース欄
  4月20日、64回目となる「グローバル化社会の教育研究会」が聖学院中学高等学校(東京都北区)で開かれ、教育関係者を中心に約二十人の参加があった。 「庶民のための数学教育とは?……現実世界を読み解き解釈する能力の育成を」 をテーマに東京学芸大学教育学部数学科教育学分野教授の西村圭一氏が話題提供を行い、来場者が意見を交換し合った。
  西村氏は、日本の中学・高校生は数学を学ぶことを重要だと感じている割合が他国と比べてかなり低い点を指摘し、数学教育において実生活の中で具体的に数学を活用させる ことが必要だと述べた。 具体的に英国の数学教育の改良プロジェク ト「Bowland Maths」を活用し、世の中の課題を数学的に解決していくケーススタディーを数例紹介した。 「地域の交通事故を減らすにはどうしたらよいか」という課題では、事故が起きた場所、時刻、被害者の年齢等のデータをもとに、生徒たちが仮説を立てたりデータを絞り込んだり、目的に合ったグラフを選んだりしながら、交通安全対策を考える。 自分たちの考えた対策を データを示して伝え合うことで、決定に至る過程を実践的に学ぶことができると解説した。 つまり、生徒たちは身の周りの生活のなかで、実際に数学が役立つことを実感できる。 同じ数学を学んでも、実感することで、育つ力が違ってくるという。
  さらに、日本学術会議(2013年)での 「これからの市民にとって、数理科学的な事象の把握・処理の能力は欠かせない。市民が正しい判断を行うためには、データに基づき物事を量的に把握することが必要不可欠」 との報告を紹介し、「現実世界の問題に数理科学を応用するためには 個々の具体的な事例から共通点を探り、一般的な原理や法則を導き出す能力も必要になる」 と述べた。
  会場からは 「評価はどう行うのか」「多くの授業時間が必要だと思うが、どう実践していくのか」 といった質問のほか、「教える側の数学リテラシーが問われる」「数学のみならずどの教科でも実践可能な魅力的な授業だと思う」「AIが進歩するなか、人間にしかできないことを考えないといけない」 等の声が上がり、活発な議論が続いた


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