2019年 3月吉日
多文化共生を目指す教育関係者の皆様
グローバル化社会の教育研究会 事務局

第69回 グローバル化社会の教育研究会のご案内

拝啓 春を迎え 人も草木もいっせいに活気を帯びてきたように感じられます。 皆様いかがお過ごしでしょうか?

  さて、第69回グローバル化社会の教育研究会(EGS)は、科学技術振興機構の西川 裕治さんにお願いいたしました。 西川さんは 商社マンとしてのご経歴のほか、日本貿易会や日本在外企業協会の広報部長、さらに昨年の3月まで 科学技術振興機構インド代表も務められました。

  先端技術の分野でも 途上国に追い上げられているわが国ですが、資源も食糧も足らないので 「科学技術立国」で生きていくしかありません。 科学技術振興機構がどうやって生れ、何を活動しているかを知ると同時に、それに呼応して 学校の現場で何ができるのかを、真剣に考える必要があります。
  また近年、ICT分野等で発展著しいインドの基本情報や、これからの日印関係などを、大学の交流や留学生獲得活動、現地の高校・大学の状況などの視点から、西川さんにお話しいただき、それを素に話し合いたいと思います。

  なお、準備の都合上、お申込みは お早めにこちらまで ご連絡ください。(受付: 4月 9日まで)

               記
開催日時 :  2019年 4月16日(火)  午後2時〜4時半

開催場所 :

聖 学 院 中 学 校 高 等 学 校
(東京都北区中里3−12−1 Tel.03-3917-1121)  地図
     * JR山の手線「駒込駅」東口より徒歩5分、
      地下鉄南北線「駒込駅」北口より徒歩7分
研修テーマ: われらが科学技術立国の行方---インドとの高度人材交流を通して、
            日本人材、社会のグローバル化を考える

 (1) 話題提供:

西 川  裕 治  (国立研究開発法人 科学技術振興機構 国際連携アドバイザー)
1951年生まれ。1969〜70年 AFS交換留学生として渡米。1976年 広島大学工学部卒業、日商岩井 (現・双日) 入社。機械プラント海外営業20年、広報10年、人事総務 6年 (1985〜89年 ジャカルタ、1992〜95年 コロンボ駐在、2007〜10年 日本貿易会に出向)。 2012年 双日を退職し日本在外企業協会 広報部長兼『月刊グローバル経営』編集長に就任。 2014年 科学技術振興機構 主任調査員、2015年 同機構インド代表としてニューデリーに駐在。 2018年より現職。
著書 『インドの科学技術情勢−人材大国は離陸できるのか』(共著:丸善プラネット)。

 (2) 自由協議:

話題提供の後、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。
参 加 費:
1,000円(運営費)
申込み方法: 氏名、所属先、Eメール連絡先、(もしあれば)同伴者の氏名、ご意見・ご要望などを <kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで ご連絡ください。
以 上   
[ キーワード: 取材メモから ]

T.科学技術振興機構(JST)の交流事業紹介
(抜粋)
元 科学技術庁管轄の諸団体が一体となったもの(現在は文科省管轄)で、政府の方針に沿って研究開発を振興する。 予算規模は1千億円、職員数2千名。 cf.日本学術振興会 (JSPS)」は、大学などの研究機関が主導して研究を振興する。
戦略的国際共同研究プログラム (SICORP)」(2009年開始)
 わが国の科学技術を、「日本の顔が見える」支援として諸外国や地域と連携することで相乗効果を出し、相互発展することを目指すもの。 例)東京大学とインド工科大学(IIT)との間で3つのプロジェクトがスタート。 ハイデラバード校 (IITH) には、日本政府の肝入りで多くの大学が進出している。
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS)」(2008年開始)
 科学技術振興機構(JST)・日本医療研究開発機構(AMED)・国際協力機構(JICA) が、地球規模課題解決と将来的な社会実装に向けて、開発途上国の研究者と共同で研究を行う3〜5年間の研究プログラム 【資金は全額日本側が負担】。 例) インドの交通渋滞と大気汚染の解決(日本大学理工学部)
さくらサイエンスプラン (日本・アジア青少年サイエンス交流事業)」(2014年開始)
 わが国の産官学の連携により、アジア等の若者 (15〜40歳の優秀な人材) を日本に招へいし、日本の科学技術を体験してもらう事業。 5年間で 26,164人が来日している。 一般公募プログラムには、「科学技術体験」(7日以内)、「共同研究活動」(3週間以内)、「科学技術研修」(10日以内) の3コースがあり、日本の受け入れ機関が参加者を選考する。 さらに、JSTが独自に企画する 「ハイスクールプログラム (SSHP)」(7日間) もある (5年間で 4,456人を招へい、理工系大学やSGH校との交流なども行った)

U.インド--- 国力と人材
 1)『インドの科学技術情勢(JSTの研究開発戦略センターのWEB)から
湾岸戦争(1991年)で経済危機に陥ったインドは、国際通貨基金(IMF)に財政援助を要請、外国からの投資・輸入の許可制を廃止するなど経済の自由化・規制緩和に着手した。 その結果、年平均経済成長が8%前後の急成長が続き、とくに情報通信分野の 「2000年問題」で信頼された後は米国企業の研究開発委託・共同研究開発が急拡大した。 第3次産業が突出している点で、中国の成長とは異なる。 また、一人当たりGDPの年平均増加率が6〜8%もあり、個人所得倍増による消費市場の成長にも注目が集まっている。

 2)「人口ボーナス期」--- 総人口に占める現役世代(15〜64歳の生産年齢人口)の比率が高まることで
                     経済的な恩恵を受けられる期間。  ⇔ 「人口オーナス期」
インドの人口 (13億人)の構成は "三角形"(若年層ほど多い)で、「人口ボーナス期」は 2040年まで続くといわれる。 cf. 中国 (人口14億人。2010年まで)、インドネシア (2.6億人。2030年まで)、パキスタン (1.9億人。2070年まで)、日本 (1.3億人。1990年まで)。

 3)東京大学PEAK合格者の7割が入学辞退
主に外国人留学生を対象に 受験も授業も英語で行う 「教養学部英語コース(PEAK)」(10月入学)の2012年度の合格者38人(志願者238人)⇒ 入学者27人、2013年度の合格者49人(志願者199人9⇒ 入学23人、2014年度の合格61人 (志願者262人)⇒ 入学20人と、ついに 7割近くが入学を辞退して、英国オックスフォード大学・ケンブリッジ大学、米国マサチューセッツ工科大学(MIT) などに進学するようになった。
                                         (以下 省略)

『小山の教育通信』 2019年 3月・4月
  4月16日(火)、聖学院中学・高校 (東京都北区)で開催されます。 話題提供は 科学技術振興機構 国際連携アドバイザーの西川裕治さんに お願いしました。 テーマは 『われらが科学技術立国の行方--- インドとの高度人材交流を通して、日本人材、社会のグローバル化を考える』 です。 西川さんは 商社マンとしてのご経歴のほか、日本貿易会や日本在外企業協会の広報部長 (編集長)、さらに昨年の3月まで 科学技術振興機構インド代表も務められています。 資源も食糧もないわが国が 「科学技術立国」で生きていくには どうしたらよいか、それに呼応して 学校の現場で何ができるかを、一緒に考えたいと思います。 それは、急速にグローバル化している日本社会の現実に向かい合うことでもあります。
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  世界のトップ企業の経営者層の かなりの部分をインド人が占めており、毎年150万人以上の先端技術者がインドで生まれているとも言われます。 世界の名立たるIT企業が、インド工科大学 (IIT)で 優秀な学生を獲得しに来ていること、東京大学PEAK合格者の7割が 入学を辞退して アメリカや英国の名門校に行ってしまう (東大が "滑り止め")ことなど、衝撃的な現実もあります。
  インドから日本に留学する学生は、アメリカの百分の一しかいないのですが、最大のネックは 「日本語の壁」だそうで、インドの大学関係者から 「日本の大学が英語で教えてくれたら、必ず行かせる」 と何度も言われているそうです。 英語での生活ができる環境整備や、多様な学生への対応力も求められています。 また、日本の大学において 英語での授業や研究活動ができるようになるには、日本の高校生に世界の優秀な学生に出会わせ、理解させておく必要もあります。 科学技術振興機構の 「さくらサイエンスプラン」のほか、インドへの研修旅行、現地高校との交流が もっと増えて欲しいものです。


『月刊 海外子女教育』 2019年 5月号ニュース欄

  4月16日、69回目となる 「グローバル化社会の教育研究会」が聖学院中学高等学校(東京都北区)で開かれ、教育関係者を中心に約20人の参加があった。 「われらが科学技術立国の行方……インドとの高度人材交流を通して、日本人材、社会のグローバル化を考える」をテーマに 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 国際連携アドバイザーの西川裕治氏が話題提供を行い、来場者と活発な意見交換をした。
  西川氏は大手総合商社で海外営業を長く経験したほか、日本貿易会や日本在外企業協会の広報部長兼編集長、さらに昨年の3月まで JSTインド代表としてニューデリーに駐在した経歴を持つ。 まず 司会者から、「近年、海外子女が増えている一方で日本人学校の在籍者数は減少傾向にある。海外駐在員家庭の英語教育志向は強まっているのではないか」 との前置きがあった。 それを受けて 西川氏が壇上に立ち、ICT分野等で発展著しいインドと、経済大国の座を脅かされつつある日本との関係について解説したほか、両国間の交流を活発化するために日本の学校や大学ができること等に関して提言をした。
  西川氏によると、インドにはインド工科大学など優秀な人材を育てる大学があり、グーグル、マイクロソフトなど世界のトップ企業でもインド人は大活躍している。 日本の若者が、多様性に富む優秀な世界の若者と交流し、刺激し合い切磋琢磨することは、今後の日本の発展のために必須だが、欧米と比べて日本の学校・大学はインドとのつながりが弱いのは残念なことだと話した。
  一方、「インドにはアニメ、漫画等の影響で日本に関心を持つ若者は珍しくない。日本側の受け入れ体制さえ整えば インドからの留学生は増える。日本は国を挙げて海外からの留学生を増やそうとしているが、そのためには海外の若者が使いやすい入試制度、奨学金制度や英語で学位を取得できるコース等を整備・拡充する必要がある」 と説いた。 そして、具体案の一つとして、アジア等からの優秀な若手人材受け入れの一翼を担う交流事業 「さくらサイエンスプラン」 についても触れた。
  この事業は 産学官の連携により、「日本とアジア等の国・地域との友好関係を強化する」、「日本の教育・研究機関のグローバル化を促進する」、「科学技術イノベーションに貢献し得る海外からの優秀な人材の育成と継続的な交流に寄与する」 ことを目的に、海外の優秀な若手人材を日本に招へいし、日本の科学技術を体験し交流してもらう事業である。 2014年にスタートし、5年間で26,000人以上の若者が訪日しているという。 インドの20歳前後の層の人口は 日本の約20倍で、その国力が秘める可能性は非常に大きい。 最近では、海外研修旅行先にインドを選ぶ日本の高校も出てきている。 今後ますます日本とインドの若者交流が盛んになり、将来の両国の発展につながってほしいと締めくくった。
  会場からは 「我が校ではインドへの研修旅行を予定しているが、安全や衛生面で保護者の不安が大きい。 どう説明したらよいのか」、「さくらサイエンスプランに申し込むには、具体的に どのようにすればよいのか、応募条件はあるのか」 等の質問が絶え間なく続いた。


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