2019年10月吉日 | |||||||||||||||||||||||||||
多文化共生を目指す教育関係者の皆様 | |||||||||||||||||||||||||||
グローバル化社会の教育研究会 事務局 | |||||||||||||||||||||||||||
第72回 グローバル化社会の教育研究会のご案内 |
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拝啓 ようやく秋も深まってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか? さて、第72回グローバル化社会の教育研究会(EGS) は、玉川大学の江里口 歡人先生に話題提供をお願いしました。 江里口先生は セルフ・エスティーム研究のほか、国際バカロレア(IB)教員の研究・実践、そして普及にも先駆的なご活躍をされています。 EGS研究会では これまでにも、何度かIB教育を取り上げてきましたが、IB教員の養成や 公立学校へのIB導入、SGH認定が終了した学校の将来など、興味は尽きません。 昨年4月にスタートした文部科学省の 「IB教育推進コンソーシアム」 では、実態調査研究や学校支援策、ICTプラットフォーム構築、シンポジウム等の開催など 本格的な活動に入っています。 日本国際バカロレア(IB)教育学会の副会長もされている 江里口先生から、ざっくばらんな現状報告を伺い、それを素に話し合いたいと思います。 なお、準備の都合上、お申込みは お早めにこちらまで ご連絡ください。(受付:11月 7日まで)
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以 上 |
最近 「自己肯定感(Self-esteem)」という用語をよく耳にしますが、公立校教員の間で流行語のようです。
他方、私立校教員の間では 「メタ認知」(自分が認知していることを客観的に把握し
制御する力)が注目されています。 いずれも公教育の目的ではあるものの、20世紀末のわが国では見失われていました。
それが現在、「グローバル人材育成」の必要性から再認識され、リベラル・アーツやIB教育などに取り組む風潮が高まっているわけです。
こうした経緯をずっと眺めてこられた江里口先生から、下世話に語られる
「文科省のSGH(スーパー グローバル ハイスクール)が終了したら、IBが目玉」といったことなどについて
ざっくばらんなお話しを伺い、それを素に話し合いたいと思います。 IBを導入したい学校では何が障害なのか、あるいは 既に導入した学校で何が起こっているか、今後の課題は何なのか等について、オフレコ前提の本音の議論が楽しみです。 ---------------------------------------------- 江里口先生は、マイケル・サンデルの 「Quality of life(生活の質の向上)」を糸口に話されました。 自尊感情(Self Esteem)の大切さ…… 他人との比較(or偏差値に拘る生き方)ではなく、「自己を大事な存在とし、的確な意思決定と行動ができ、人に好かれることで人は満たされる」点にこそ 学びや成長の原点があり、日本人の持つ価値観の転換が必要とのこと。 また、日本では 議論することが人格の戦いになってしまう点も課題とされました。 互いが主体性をもって話し合うなかで “納得解”を探していく姿勢も、多文化共生社会を生きるために必要なのです。 自由協議では、公立学校、とりわけ過疎化の進む地域の学校へのIB教育の導入が求められているという確認もできました。 IB教育そのものでなくても、リベラルアーツやIBの理念に沿った教育、それを体現できる教師の養成・確保が必要なのです。 なお、以前、PYPの卒業発表で 「技術的特異点(Singularity)」をテーマにした児童のことを紹介しました。 「教師は要りませんね」と言い切った直後、「でも、ファシリテーターは必要ですよ」(=引き出す(educate)人は必要だが、教える人(teacher)は不要)とフォローした12歳児の将来が楽しみです。 |
11月15日、「グローバル化社会の教育研究会」が聖学院中学高等学校(東京都北区)で開かれ、教育関係者を中心に約20人の参加があった。
「我が国におけるIB教育普及の現状と可能性」というテーマで、玉川大学教育学部教授で日本国際バカロレア教育学会副会長の江里口歡人氏が話題提供を行った。
江里口氏は玉川学園の「K‐12」教育改革および国際バカロレア(IB)のプログラム導入に携わり、2014年、大学院教育学研究科にIB教員養成コースを立ち上げた経験を持つ。 江里口氏はまず、マイケル・サンデルの「Quality of life(生活の質の向上)」を糸口に、日本人が生活の質を向上させるためには価値観を転換する必要があると述べた。 その実現に大切なものとして、学びや成長の原点となる 「自尊感情(自分としても誇りに思い、他者からも十分に認められているであろうという自負心・自尊心)」と 「社会構成主義(社会と学習の融合)」を挙げた。 また、日本では議論が人格の戦いのようになる傾向がある点を指摘し、互いが主体性を持って話し合い、納得のいく解を模索していく姿勢の重要性を説いた。 IBでは それらについて具体的に学ぶプログラムが用意されていて、たとえば初等段階(PYP)では 「私たちは誰なのか」 「この地球を共有するとはどういうことなのか」等を考えさせるという。 そして、日本にIBを導入するにあたっては、学校教育を過去に遡り、その目的やあり方について押えておく必要があると述べた。 さらに、学制の頒布を境に、エリート階層のみが対象だった学校教育が一般にも急速に拡大・発展。 社会的に 「教育=学校教育」という学校化が進んだ結果、「学校の学習や進学準備のための勉強が学習である」という価値が共有されることになり、現在は 「人々の自ら学ぶ力、癒す力、問題を解決する力」の退化が進んでいると警鐘を鳴らした。 続いて、音楽業界の日韓の戦略の違いを例に、日本の改革は部分的に行われがちだと話し、日本にIB教育を導入するにあたって懸念される課題として、「IB教育のシステムのみの導入」 「IB教育に携わる教員が増えない」 「文部科学省主導での導入」 「ミッション・学習者像の表層的理解」を挙げた。 現在、IBの教員になるためには、ワークショップを受講したり、大学や大学院でIB教師養成コースを受講したりする必要があるが、江里口氏は 「これで十分なのか?」と苦言を呈す。 そして、IBの教員に大切なのは 「『授業の技術』 と 『IBの概念理解』の両輪」であると述べ、IBのガイドブックを熟読し、教授法などをきちんと習得してほしいと要望した。 最後に、世界で活躍できるグローバルな人材になるには 「Think Globally, act locally(グローバルに考え、ローカルに行動する)」ことが大切で、IBによってそれは実践できると力強く結んだ。 会場からは 「IB教育は、公立校、特に過疎化の進む地域にこそ導入されるべきではないか」「リベラルアーツやIBの理念に沿った教育を体現できる教師の養成や確保が求められる。すぐには解決できない大きな課題だろう」などの声が聞かれた。 |