2023年 7月吉日
多文化共生を目指す教育関係者の皆様
グローバル化社会の教育研究会 事務局

第85回 グローバル化社会の教育研究会のご案内

拝啓 早くも暑さがやってきていますが、皆様 如何お過ごしでしょうか?

  さて、第85回グローバル化社会の教育研究会(EGS) は、中京大学の芝野 淳一先生に話題提供をお願いしました。芝野先生は昨年、帰国した政府派遣教員の実態調査を実施され、今春 その結果を発表されています

  この領域の本格的な実証研究は従来、東京学芸大学(1989年)と三菱系調査機関(2022年)の二つしかありませんでした。 しかも、派遣教員の実践経験の特徴(多様性や複雑性)が体系的に把握されてはおらず、赴任校での経験が帰国後にどのように活かされるのかを解明できていませんでした。
  今回の調査を素に、派遣教員が どのような側面に重点を置いて教育を実践しているかを正面から捉えた研究成果をお話しいただくと共に、帰国教員の潜在力を わが国の学校現場で有効に活かす方策について話し合いたいと思います。

  なお、お申込みは 郵便振替用紙にて 参加費を払い込んでいただく方法で受け付けます。 準備の都合上、お早めにお願いします。 (受付: 7月14日まで)

               記

開催日時 :  2023年 7 月 21 日(金) 午後2時〜4時半

開催方法 :

対面式+Zoom 利用による On-Line のハイブリッド開催

[スタジオ会場] 金沢工業大学 虎ノ門Campus
         (東京都 港区 愛宕1−3−4 愛宕東洋ビル 11F)
             * 海外子女教育振興財団の上。

研修テーマ:

帰国教師の実態調査から見えてきたこと
     --- 「越境性」を活かす教師の協働に向けて』

 (1) 話題提供:

芝 野 淳 一  (中京大学 現代社会学部 准教授)
1986年兵庫県生まれ。 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。 専門は教育社会学・移民研究。 2015年 大阪成蹊大学教育学部の講師。 2020年より現職。 主な著書に 『「グアム育ちの日本人」のエスノグラフィー: 新二世のライフコースと日本をめぐる経験』(ナカニシヤ出版 2022年)、『移民から教育を考える: 子どもたちをとりまくグローバル時代の課題』(ナカニシヤ出版 2019年) など。

 (2) 自由協議:


話題提供の、ご意見・ご質問をたくさんいただき、活発な会にしたいと考えています。

参 加 費:

1,000円(運営費)

申込み方法: 郵便振替用紙に 氏名、所属先、Eメール連絡先、ご意見・ご要望などを記入し、ATMで1,000円を払い込んでください。(詳しくは ここをクリック)
※ スタジオ会場参加をご希望の方は、その旨を通信欄に明記してください。
※ 開催日の4日前になっても Zoom招待のURLが届かない場合や、ご不明な点がありましたら、<kyoiku@t.toshima.ne.jp>まで お問い合せください。
以 上   


『小山の教育通信』 2023年7月・8月

  新しい教育振興基本計画(6月16日、閣議決定)では、「“学び続ける人材”の育成」「“全ての人の可能性を引き出す共生社会”の実現」と共に、「“共に学び支え合う社会”の実現に向けた教育の推進」が柱になっています。 しかし、より具体的には 「教育DXの推進」「計画の実効性確保のための基盤整備・対話」と 経産省の思惑もチラリ。 教育現場としては、この大波に上手に乗っていく(Ride the Waves)賢さが求められています。
  その賢さの一つは、他の学校の先生との交流…… 同じ悩みを持つ者同士が 全国から集まる研修などは 格好の機会です。 公立校なら無数にありますが、私立校でも 日私教研や私大連盟・私大協会、キリスト教学校同盟などで開催しています。 「自分だけが苦労してる」「この課題は克服なんかできない」と悩んでいたことが、他校の話を聞くことで解消したり、思いがけないヒントを得たり…… ともかく 「なぁんだ…」という前向きな気持ちにもなれるのです。
  とりわけ効果が高いのは、日本人学校の政府派遣教員で3年間の研修に出てみることです(私立校の教員も応募可能)。 全国から様々な文化や習慣、実践経験を持った教師が集まり、日本と異なる環境の中で一緒に苦労する経験は絶大です。
  今回のEGS研究会では、帰国教師の側にも コツや工夫、発想の転換が必要だという話題(批判?)が出るかもしれません。 要は 両方に知恵が必要なのですけど、そうした批判に対抗する論理の準備も必要なのです。
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  芝野淳一先生から、日本人学校等に派遣され帰国した教師の 内面に迫る分析に基づき、異文化の狭間で頑張る先生方の姿が説明されました。 この問題は 過去30年余り、まともな研究がなされていないし、行政からも見放されたかのような扱いを受けてます。 関係者としては 「やっと…」という気持ちですが、圧巻の内容に、参加者は皆 しばし感動に浸る思いでした。
  その “空白”の裏返しとして、いわゆる 「海外子女教育」の捉え方が 2000年以降、大きく変わったともいえます。 「祖国を出たら 祖国に還る」を前提とした枠組みが、「第三文化の子ども(TCK)」の相対的な観点で捉え直されつつあるのです。 派遣教師もまた、異文化の狭間で格闘しているわけで、「国民教育」から 「グローバル人材育成」へと関心は変わる…… 芝野先生は 「“移動”をキー(鍵)に」と仰いますが、これこそ、異文化同士を対等に捉える基本になると思うのです。 いわば 「TCT」の枠組みを、「越境性」という言葉を用いて説明されました。
◆ 「海外子女教育」は 日本の海外経済活動の必要性から発想された経緯もあり、「政治・経済」に引きずられ易い要因を含んでいます。 まして昨今の 「きちんと分析をしない」 「過去の経緯や関係者の心情等に配慮しない」といった(忖度の)風潮の中では、なおさら露骨です。
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  派遣教師は異文化の中で、限られた教育資源を最大限に利用しながら、ダイナミックな教育実践を展開しています。 国内では奨励されているけど実践できなかった 双方向型・参加型のフィールドワーク教育にも取り組めます。 スポンサーである企業や保護者の理解が得易く、赴任地の特徴や外部資源を活かした多様な教育活動ができるのです。 こうした経験は 帰国後、帰国生や外国籍の子だけでなく、学習面や生活面に困難のある子の支援にも役立っています。 しかし、その活用は個人レベルに留まっていて、学校や行政レベルで発揮できる機会がないのは、もったい話です。

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