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「高3で一年間留学した場合の進路」「アジアと関連のある仕事につきたい」「
日本人学校で働きたい」「主人が教員海外派遣に挑戦中」「ドンダン・サヤンの四行詩」「マレーシア人の名前について」
「日本人学校の設立について」「日本の大学への進学・留学」「IB教育の現状と国際学校の教育」「グローバル・コンピテンス?」「アクティブ・ラーニング?」「帰国子女という言葉」
Q. | 高3年の息子が 留学したいと言いっています。 これから、1年間留学した場合に、 大学進学は 帰国子女として可能でしょうか? |
A. | まず、私費で1年間の留学をする場合には 「海外子女」とは認められませんから、帰国しても
「帰国子女」ではないことをご理解ください。
従って、帰国子女枠を使って受験するのは不可能です。
ところで、「これから1年間留学」といっても、どういう学校で勉強されるのでしょうか? AFS、YFUなどの機関を通じて 正規の交換留学をした場合には、原籍高校に復学してから大学受験をする道も 無いわけではありません。 最近は AO入試や自己推薦入試などが 多くありますから、正規の留学をしてきたことをアピールして、入学を認めてもらう例も かなりあります。 しかし、語学研修程度の私費留学では、大学入試に合格することは ますます困難になります。 今の段階で留学を考えてしまうのは、現実から逃避したいという気配が多分に感じられます。 まずは 高校をきちんと卒業すること。 そして、将来の自分のなりたい姿やイメージを真剣に描いてみることが 大事だと思います。 何もなければ、“とりあえず大学に行っておこう”という好い加減な選択でも構わないのですが、 とにかく 「自分の人生は、自分で切り拓くしかない」と真剣に考えるよう、助言してあげてください。 万が一、日本の学校が嫌だから留学したいということでしたら、絶対に認めないことです。 |
Q. | マレーシアに 4年半住んでいて、大学に入学と同時に、日本に戻ってきました。 来年 就職活動をする予定で、アジアと関連のある仕事につきたいと思っているのですが、どのように探せばよいのか分かりません。 |
A. | アジア関連の仕事というのは、余りに漠然としていますが、アジアに関連する企業や現地法人ということであれば、日本マレーシア協会や日本インドネシア協会などに相談するのも 一つの方法です。 こうした協会は、アジア関係の担当者をよく知っていますので、アポが取り易いといえます。
また、国際協力機構(JICA)やオイスカなど 発展途上国を支援している団体も チェックを忘れずに。 あなたは、マレー語や中国語を勉強していますか? マレーシアに住んでいたとか、英語ができるとかいう人は、いくらでもいます。 それ以上に何かアピールできること、とくに 大学でどんな勉強をし、体験を積んできたかを、採用担当者は見ています。 極論すれば、数年で何か仕事を任せられるだけの資質・能力と技術・経験があるかどうかです。 マレーシアに数年住んでいたのに、マレー語も中国語も話せないという人は、国際間の仕事には不向きと言われかねません。 逆に、中国語でも 広東語や福建語まで使える人、タミール語やタイ語もこなせる人などは、 “引く手あまた”(女性でも)です。 マレーシアに暮らす人々(多民族・多宗教)と正面から向き合って仕事ができることを、何かでアピールする必要があります。 |
Q. | 中学校勤務 6年目です。 文部科学省の在外教育施設派遣教員に募集も出来るのですが、応募をしづらい諸事情があり、海外子女教育振興財団の専任教員募集に応募をさせていただきました。 英語は ほぼ堪能で、タイ語は少し話せます (小・中(数英)、高(数英)の1種免許所持)。 あえて退職してでも、日本人学校勤務を希望しています。 |
A. | 文部科学省の派遣教員に応募しづらいとのことですけど、財団派遣の専任教員よりも 遥かに条件が恵まれていますから、多少のことはあっても挑戦してみられることをお勧めします。 苦労が多い分、やり甲斐も大きいと思うのです(英語もタイ語もおできになるのなら、なおさらのことお勧めしたいです)。 |
Q. | 中学校教員です。 海外派遣は 何年も前から考えていたのですが、話を聞くと あまり良いものではないとのこと。 確かに家族の生活、その他のことを考えると 迷いもあります。 子どもは現在、小学4年と2年と3歳です。 |
A. | どなたから お話を聞かれたのか分かりませんが、ずいぶん偏った情報ですね (笑)。 もちろん、外国に行って、その土地にいる日本の子どもたちの教育に携わるわけですから、観光や物見遊山のようにはいきません。 限られた条件の中で、毎日悩んだり工夫を凝らしたりしながら 教育活動を続けていくことは、生易しいことではないのです。 しかし、否、だからこそ、経験者の多くは、「教師冥利に尽きる」とか「教職の原点を再発見した」といった感動の“お土産”を持ち帰っています。 ほとんどの子どもたちが、両親とも健康でそろっている、落ち着いた家庭の子どもたちですし、総じて素直です。 経済的にも安定した家庭がほとんどで、国内の学校なら 逐一配慮しなくてはならないような問題に 煩わされずに、教育活動に集中できる良さがあります。 年齢の異なる子どもとも仲良くやっていく雰囲気が 自然に形づくられていることにも、きっと感動しますよ。 ご心配の中には、ご自身のお子さんの教育の問題も あるのかもしれませんね。 とくに小規模の学校では、自分が授業をしなければいけないかもしれません。 しかし、私自身の経験から言って、自分の子どもの学校生活を 間近に見ていられる貴重な時間でしたし、良い思い出になっています。 既に大学生になった子どもたちも、「働いているお父さんを近くで見られて、幸せだった」と言ってくれます。 そして、親子一緒に過ごせる時間が 国内にいるときの数倍あったことが、家族の絆を深めることにもなりました。 帰国後、子どもたちはイジメにあったり 成績が伸び悩んだりしたこともありましたが、家族の絆を宝物とすることで 自信を失うこともなく乗り切ってくれたようです。 私が仕事で悩んでいるときに、「オヤジ、なるようにしかならないよ!」などと励ましてさえくれました。 2回の赴任で 6年間も海外に連れて出たことを申し訳なく思ったことがないわけではありませんが、今では 「良かったな」と自信をもって言えます。 その気になって探せば、お近くに帰国教師の方は 結構おられますので、お話を聞いてみられてはいかがでしょうか? 全海研は 帰国教師が中心となってできた組織で、各都道府県の支部も紹介されています。 |
Q. | Dondang Sayang の即興の四行詩では、どんな内容のことが歌われるのでしょうか? また、特に 何か特別なイベントの時に歌われるものなのでしょうか? その起源など 詳しく知りたいのですが、情報をいただけませんか? |
A. | ドンダン・サヤンは、中国の四行詩が起源ですが、マレー文化と融合して
独自の世界を作り出しています。 特徴は、前半2行と後半2行で構成され、日本の「どどいつ」のように、前半で謎をかけ、後半で気持ちを表現する形になります。
1行目と3行目、2行目と4行目は、できるだけリズムも合わせ、最後の単語は韻を踏みます。
日本でも有名な「ラササヤン」ですが、現地で最もポピュラーな詩を例に見てみましょう。 BUAH CEMPEDAK DILUAR PAGAR 塀の外にチュンプダの実 AMBIL GALAH, TOLONG JOLOKKAN 棒を持ってきて、突ついて落してよ SAYA BUDAK BARU BELAJAR 私は まだ勉強中の身 (新人研修中) KALAU SALAH, TOLONG TUNJUKKAN 至らぬ点があれば、よろしくご指導を このあとに「ラッサッ、サーヤンゲー。ラッサッ、サーヤン、サーヤンゲー」のリフレインが続いていく訳ですが、本文の部分の特徴は分かっていただけましたか? この基本を元に、みんなで即興の歌を作って楽しむのが、マレーの人々の楽しみの一つになっているのですね。 お祭りや祝いの宴席などでは、延々と 歌の掛け合いが続きます。 |
Q. | 今、マレーシアについての資料を見ているのですが、人の名前の表記で、どこまでが名前だか よくわかりません。 たとえば、YBhg. Tan Sri Dato' Seri B. Bek-Newman とか、Tan Sri Dato' Than Yaw Hoo、 Datuk Mohd Razali bin Abdul Rahman、 Datuk Yong Poh Seng、など、最初の方が似ているのですが、これはどういうことでしょう? 自分の名前の前に 何かつけているのですか? 教えて下さい。 また、RM って マレーシアの通貨単位ですね。 何と読むのですか? |
A. | まず、国王や州政府からもらった称号(タイトル) があります。 王家の血を引く人には Tunku や Raja が付けられますが、それ以外では Tun (最高位)、Tan Sri(第二位)、Datuk (第三位)、Dato' (州政府から授与) などがあります。 変わったものでは、メッカ巡礼を終えた人に、Haji(Bapa Haji=男)、Hajah (Ibu Hajah=女性) を冠します。 次に、マレー系の名前では、“〇〇の息子△△” という形をとるものが多く、 「△△ bin 〇〇」(“娘”なら「△△ binti 〇〇」)となります。 タイ系には Than (陳)、Lim (林)、「…ant」「…sin」という姓の人が多く、マレー半島が400年間 タイ の領土であったことを伺わせます。 中国系の姓で多いのは、Ling・Lim (林)、Chang (張/陳)、Lee (李)、Tea・Chang (鄭)、Ng・Hua・Wong (黄)、Yap (葉)、Yong (楊)、Chua (蔡) などで、姓の後に “名前”を付けます。 最近は 英語のクリスチャン名(Danny、Janeなど)を最初につけるのが、流行です。 なお、通貨単位のRM は、正しくは「リンギット・マレーシア」と読みますが、日本人は「マレーシア・ドル」と強引に呼んでいます。 |
Q. | 同地区に 日本人学校と補習校が両方ある都市がありますが、なぜですか? また、補習校があっても、日本人学校は、設立できるのですか? |
A. | どこの日本人学校も、設立当初は「全ての在留邦人が結束して維持する」という熱意を前提として設立されます。
しかし、年数が経過する内に、そうした意識は薄れて、「元からある」という捉え方に変わってきます。
特に最近、「海外→海外」の横滑り赴任が増えてきたこと、国内の高校・大学の多くが英語での編入・入学を認めるようになってきたこと等もあって、発展途上国でも
国際学校を選択する例が増えてきました。 つまり、日本人学校も
「選択肢の一つ」と考えられるようになってきたのです。
現地校や国際学校に通う子どもが多くなれば、補習授業校が欲しくなりますから、在留邦人組織の中には、補習校設立を決断する所もあるのです。 では、「補習校が有っても、日本人学校は設立できるのか」となると、難しいと言わざるを得ません。 日本人学校設立が認められるための前提は 上記の通りですし、毎年 世界各地から複数上がってくる設立要望との競合があるからです。 政府予算は限られていますから、「必要性+緊急性」 を規準に 優先順位がつけられます。 そうなると、既に補習校がある地域は、余程のことがない限り(在留邦人が、どれだけ結束できるかですが)、実現は難しいと思われます。 |
Q. | 日本の大学への進学・留学希望に関して、諸外国の中等教育機関に対し 伝達や紹介などを行う機関には、どんなところがありますか? |
A. | 専門機関として 日本国際教育支援協会があり、毎年「日本留学フェア」などを 各地で開催もしています。 また、政府開発援助(OECF) の対象留学生については 外務省管掌ですし、日本政府招聘留学生も含めて大使館・領事館等の広報室が担当します。 なお、日本語学校については、国際交流基金の 現地事務所でも扱っています。 また、「日本○○協会」という 二国間交流の民間機関では、相手国の青年や関係機関に対し 単なる情報提供だけでなく、留学中・留学後の支援までを行っています。 例)日本マレーシア協会 |
Q. | 国際バカロレア(IB)の現状や インターナショナルスクールの教育について、 基本的なことを知りたいのですが、何か良い方法はないでしょうか? |
A. | 大学教授でも、未だご理解いただけていない先生がほとんどなのです (笑)。 初歩的で、かつ切実な問題については、グローバル化社会の教育研究会(EGS)で、易しく説明されたものを読んでください。 お勧めは 第29回(2009年 2月)、第65回(2018年 7月)。 日本の学校教育との比較や 導入した場合に生じる課題などについては、第31回(2009年 6月)、第42回(2013年 2月)、第62回(2017年12月)、第64回(2018年 4月)、 第67回(2018年11月)。 もし 学校現場の先生でしたら、第59回(2017年 4月) も是非お読みください。 |
Q. | 最近、「グローバル・コンピテンス」という言葉をよく耳にしますが、どういう意義ですか? 「○○ コンピテンシー」という人も多いのですけど… |
A. | 「Competence」は、単なる知識や技能だけでなく、態度などを含む様々な心理的・社会的なリソース(主体性・積極性・協調性・協働力・回復力など)を活用して、複雑な要求/課題に対応することができる実践能力や行動特性のことで、「資質・能力」と訳されるのが一般的です。
「Competency」も同じ意味ですが、「〜に溢れた/富んだ、充実した〜」
のニュアンスが加わります。 「グローバル・コンピテンス」が 経済協力開発機構(OECD) で盛んに議論されている時、日本は蚊帳の外にいましたので、2003年以降、慌てて追いつこうとしています。 そこら辺りの慌てぶりは、広島版「学びの変革」アクションプラン(2014年12月) の巻末資料(P.30〜) をご覧ください。 具体的なイメージは、High Tech High (米サンディエゴの教育実践)、OECD Education 2030、OECD Asia Society 2018 などを。 各国が、急速に変化する世界において グローバル・コンピテンスを育成しようとしているのです。 前項「IB教育の現状…」に挙げたサイトには、それが易しく説明されています。 |
Q. | 最近、「アクティブ・ラーニング」 という言葉を耳にします。 帰国ママたちに聞いても 「海外では耳にしなかった」と言われるのですけど、日本だけのものですか? |
A. | 「Active Learning」(主体的、対話的で深い学習)は、新しい学習指導要領の基本に据えられている学習観です。 前世紀までの学習観は「知識伝達型教育」といわれ、「人間が生まれた時は『タブラ・ラーサ』(白紙) の状態であり、教師はそこに知識を注入する」 という考え方でした。 同じものを多量生産する工場や定型的なサービスをする事務所などで働く人材を育てるには、知識・技術を効率的に教え込むことが必要だったのです。 しかし、人工知能(AI)の発達で、過去の経験・知識に基づいた判断や定型的でスピードを要するような仕事は "自動化/機械化" し易く、人間はそれを使いこなせるor既存の知識等に囚われない創造的な頭脳を育てる必要に迫られています。 そのために 「学習者が自ら考え体験し話し合う過程」 を中心に据えざるを得ません。 また、農工水産業やサービス業など国内労働力の2割以上が 外国人によって担われるようになると、国内にいても多民族・多文化への対応力が必要となります。当然、学校の中でも "異文化を持つ子" の比率が大きくなっているし、「どんな背景を持つ人ともチームを組んで働き、好い結果が出せる人材」を育てざるを得ないわけです。 もう一点、国際的な共通理解になっていることに、「学習定着率」があります。 一斉授業や講義で学習者の頭に残る内容は わずか 5%、資料や書籍を読むのは 10%とされる一方で、他者と議論すれば 50%、経験・実地訓練をすれば 75%、学んだことを他者に教えれば 90%といわれ、能動的になればなるほど 学習の定着化を図れるのです。 探究や課題解決型の学習などを導入することで学習定着率を上げ(⇒ 経費・労力の効率化) 「学び続ける意欲」を育てることは、先進国では当たり前のことですので、教師が敢えて口にすることもなかったでしょうね。 |
Q. | “帰国子女”という言い方は、問題があるのですか? 女性差別とか? |
A. | 「子女」は、日本国憲法第26条(義務教育)に「すべて国民は…(中略)…その保護する子女に……」という表現で登場しています (英文憲法では「boys and girls under their protection」)。 古来、「子」は男子、「女」は女子、「子女」で子ども達という用法で使われていました。
ただ、「男」が保護する立場にあり、「女」が「子」と同様に保護される立場にあるという含意があるので、フェミニズム的な立場からは、やはり
抵抗のある単語になってしまいます(男子が家を継ぐという家父長制の名残も感じられますよね)。 最近は、公的機関でも 「帰国子女」を「帰国児童生徒」と言い換えるようになってきましたが、厳密には 「児童」は初等教育に、「生徒」は中等教育に在籍する子ども達のことで、 これだけでは 高校を卒業した後の人々が含まれない不便さがあります。 「子女」が差別的な用語であるかどうかはともかくとして、帰国生自身で このコトバが好きだと言った人に会ったことは ほとんどありません。 かつて帰国子女自身によるネットワーク 「メタ・カルチャーの会」の袰岩ナオミさん達によって 「海外成長日本人」という言い換えが提案されたこともありましたが、残念ながら定着してはいないようです。 現実には大学生の間で広まった「キコク」という口語が、いちばんフラットなのかもしれません。 ともあれ、「帰国子女」というカテゴリーをつくり、名付け、個々人に そのレッテルを貼っていくこと、あるいは 個人がその用語を受け入れることも拒否することも、ある政治性を伴います。 『私情つうしん』でも さんざん議論されてきていることですが、渋谷真樹さんの『「帰国子女」の位置取りの政治』(勁草書房) が カルチュラル・スタディーズの手法を応用して、見事にそのあたりを分析してくれています。 < この稿、古家 淳 of 『私情つうしん』 > |