子女教育ニュース

      担当: 国際教育相談員 小山 和智
海外人事や教育関係の実務担当者の皆様に配信しているニュースの一部を、
一般の皆様にも公開します。 教育相談などについては 「教育相談から」を。
2018年 12月11月10月9月5月〜8月1月〜4月。2017年 9月〜12月5月〜8月1月〜4月

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【2018-12月】

12月、師走です。
  私は 「年中 走り回ってますね」 と からかわれますが、中国語で 「走」は “歩く” の意味…… 昔の老師(=お坊さん) の年末は暇で お布施も少なく、仕事を求めて街中を巡回していました。 禅宗では 12月1日から、釈迦が悟りを完成した(成仏得道) といわれる8日朝まで 座禅をする(臘八接心) のが お勤めです。 それもせずに ふらついているのは “落ちぶれ者” と蔑まれてきましたが、私の場合、パソコンの前で座禅を決め込んでいると、家内にハタキを掛けられます。

文部科学省 17年振りの組織再編
  10月16日、総合教育政策局が設置されました。 学校教育と社会教育を通じた 包括的で一貫した教育政策を より強力かつ効果的に推進し、超スマート社会(Society 5.0) の教育 (誰もが必要なときに必要な教育を受け、また学習を行い、充実した生涯を送ることができる環境) の実現を目指します。 これまで 海外子女・帰国子女教育等を担当していた 国際教育課は、初等中等教育局から 総合教育政策局に移されますが、その業務の大半は 「教育改革・国際課」になります。
  かつて 学術国際局教育文化課にあった 「海外子女教育室」(1981年) が、教育助成局に移され 「海外子女教育課」となり(1984年)、さらに 初等中等教育局に移され(1998年)、2001年の省庁再編の際、留学や外国人児童生徒の教育等を加えて 「国際教育課」 となっていました。 今回17年振りの再編で、旧「生涯学習政策局」を改変した 総合教育政策局に移され、「教育改革・国際課」となったわけです。 「国際的な動向を踏まえた教育政策の企画・推進を効果的に行う」 とのことです。
教育改革・国際課の使命は、「教育のグローバル化や情報化など わが国の教育環境の変化等を迅速に捉え、広く教育改革に関する動向の調整 及び取りまとめを行い、時宜に適った教育改革を推進するとともに、次世代の教育の研究開発や実証研究を強化する」 こととされています。

第67回グローバル化社会の教育研究会(EGS) を開催
  11月29日(木)、聖学院中学・高校(東京都北区) でが開かれました。話題提供は、文科省の加藤賢一先生(教育改革・国際課 専門職) で、「グローバル・コンピテンス(Global Competence)」 を巡って 協議が展開しました。
  加藤先生は 広島県教委で、中高一貫校の新設、スーパーグローバルハイスク―ル(SGH) 指導などを担当している間、「グローバルリーダーとは?」 「課題研究とは?」 といった問いに直面していたそうです。 『広島版「学びの変革」アクションプラン(2014年12月) は、十年先を見据えた施策展開で、「育成すべき資質・能力(Competence) の系統的な育成」 が謳われています。 OECD日本イノベーション教育ネットワーク(ISN) の一クラスターとして 「国際協働プロジェクト型学習を通して Global Competenceの育成」を実践された報告は 感動的でした。 生徒が まず自分が変わることの大切さに気づき、文化や考え方の違いを超えて、人と人はつながることができると実感する…… そうして 生涯学び続ける姿勢を育てていくことこそ、教育の本道なのです。
◆ 「良い大学を出て、良い会社に入って…」 という妄想に囚われてる子どもや教師・親の発想を転換させ、“違うもの”に交わる挑戦心・行動力を持つよう促していく施策を、どんどん打ち出していくべきでしょうね。

<イヌ>年も 残りわずか
  英国の 『疫学・地域保健ジャーナル』に、「犬の噛み傷に関する有病率、発生率および要因の横断的調査」の報告が載っていました。 リバプール大学が 地元住民 694人の回答を分析したもので、「神経質で不安を抱え易い人ほど、犬に噛まれるリスクが高い」と…。 人間の性格調査には 「TIPI: Ten Item Personality Inventory」という情緒安定性/神経症傾向を10段階に評価する尺度が用いられ、1段階評価が上がる(安定性が増す) ごとに、(病院で治療を要する程度に) 犬に噛まれるリスクが 約23%低下するという結果でした。
  犬自身の性質や年齢、血統などは無視されていますが、知らない犬に噛まれた経験がある人は、55%もあったとのこと。 「恐い」と感じて不安になったり、警戒心を抱いたりすると、余計に噛まれてしまうというのです。 クレーマーや特殊組織の構成員ならまだしも、普通の顧客 (学校の場合は保護者や近隣住民など) に対応する時には、挨拶と笑顔を忘れず 平常心でいることが肝要です。 普通の人が “噛みついてくる” のは、こちらが先に 「嫌だ」という素振りを見せてしまった時が ほとんど。 無視したり 軽くあしらおうとすると、噛みつかれる危険が増すようです。
◆ 私は家内に いつも噛みつかれています (笑)。 病院に行くほど酷くはないので、コミュニケーションの一つと観念していますが、“恐い” と思ったり不安になったりしたら、深手になるのでしょうね……きっと。

「チル友」をご存知ですか?
  「chill out」は、「calm down, cool off」と同様 “頭を冷やす, 冷静になる”の意味ですが、1990年代から “くつろぐ, まったりする”の意味が増えました。 ダンスホールで踊り疲れた客が身体を休ませるブースが 「Chill (Out Lounge)」と呼ばれ、歌にも歌われています。 日本でも 冷蔵庫の “凍結寸前の温度で冷却”を 「チルド (Chilled)」と呼んでいるうちに、「チル友」が ほぼ流行語になっています。 “一緒に くつろいで過ごせる友達”のことだと解る教員は、そう多くはいませんけど。

リーダーとマネージャーの違い
  『JALの奇跡』(致知出版社 2018) に、稲盛和夫氏の話として紹介されています。
 「優秀なマネージャーであれば、困難に遭遇すれば その迂回策を考えるだろう。 うまくいかなかったら、その言い訳を探して、責任逃れをするだろう。 そんなマネージャーばかりだから (JALは) 倒産したんだ。 再建を成功させるには、どんな困難にぶち当たってもあきらめずにやり遂げようとする、一つの目標に向かって部下を鼓舞して なんとかまとめていこうと考える、そんなリーダーが必要なんだ」
  これは、JALだけの問題ではなく、今の日本企業に蔓延する病気です。 現場をよく知らない年寄り役員が、「口利き」と 「パワハラ」で高給を得る技の裏には、“優秀なマネージャー”で生き残ってきた 処世術があります。 管理部門のコストが高い分、企業の競争力を殺いでいるという認識・理解が欠落しているのです。 それは、国会議員や官僚の数を減らせば 国家の様々な投資が可能になるのに、それを先送りする “病い”と同じです。
◆ 先月の 『いちびり川柳』に、「ちょうどいい ノルマはいつも ギリ未達」が入りました。 「ノルマを達成してしまうと 次からハードルが上がるから、ギリギリ未達成が好い」という感覚は、民間企業にも蔓延しています。

主体性と想像力の喪失
  「働き方改革」が叫ばれ、労働生産性や長時間労働が課題とされていますが、本当は 日本の職場で蔓延している 「主体性と想像力の喪失」が病根で、「誰かに決めて欲しい」 という他者依存の風潮は 深刻です。 国際的にも悪名高い 「長い会議」も、他者依存と過剰な平等意識が邪魔して、なかなか解消できません。 グローバル人材は、突き詰めれば、あくなき好奇心や柔軟な想像力・許容力、創意・工夫力、説明力、人間的な魅力などを持つ "大人" です。 その意味では、明治時代の日本人の方が、よほど その資質を持っていたのではと思えるほどです。
  しかし、大正デモクラシーを経た日本人は 他者依存の風潮に流されて、偏狭な保護主義や全体主義が 蔓延していきました。 反社会的なことや、弱者・少数派へのしわ寄せの不公正に鈍感になり、「おかしい」と発言することを怖れる状況ができ上がります。 上司の横暴にも逆らえなくなってしまうと、結局は、自分の幸福を犠牲にすることになるのですけど……。 2000年頃からの日本の教育界も、「負け組になるな」の焦りに席巻され、昭和初期の空気に似てきました。 社会正義を守り、皆の幸福を実現していく人材を育てる目標を見失うと、自滅が待っています。
  なお、安倍政権の 「夫人就労拡大」政策の前提にある "暗黙の了解" は、「安い給与で働いて貰う」ということです。 「20〜40歳代の給与を低めに誘導し、所得税の配偶者控除もなくすことで共働きを促す」という発想は、取り返しのつかない事態を招きました。
◆ 副業にならないまでも、勤務先とは別の名刺を何種か持つことは、物事を複眼的な視点で考えたり人脈を広げたりできて、本業にも役立ちます。 在学中に自分の有限会社を持つ若者たち(事業税・法人税等を払えるだけの収入がある) が現れてくると、頼もしいですね。

暮れのボーナスは出ましたか?
  中国語で "給料" は 「工資<gong1zi>, 薪水<xin1shui>」ですが、「薪」だけでも "月給・俸給" の意味になります。 ただし、軍隊や警察の俸給は 「饗 <xiang3>, 薪饗」といいます。 中国は共産主義ですから、基本的にボーナスを支給する制度はなかったのですが、GDPが世界第二位となった 2010年ころから、インターネット関連企業を中心に 年一回(年末)支給されるようになり、現在は約8割の企業が支給しているそうです。
  賞与は 「紅利<hong2li4>, 花紅<hua1hong2>」と呼ばれ、基本給1ヶ月分の場合は (年収13ヶ月分なので)「13薪」、2ヶ月分なら 「14薪」といいます。 一般企業の相場は この程度で、急成長の企業では 「16薪」もあるそうです。 「奨金<jiang3jin1>」ともいいますが、こちらは "報奨金" に近いイメージで、翌年はないかもしれません。
  因みに、マレー語でも 「bonus」で通じますが、どちらかというと "給料の一部=当然の権利" のイメージが強過ぎます。 "頑張ったことへのご褒美" なら 「hadiah」ですし、成果・貢献度等によって個人差をつける(報償orペナルティ) なら 「ganjaran」ともいえます。

日本人学校に通う比率が 23%に
  今年の4月現在の在留邦人子女(海外に在住する日本国籍の小・中学生)の数(外務省調べ)が発表されました。 それによると、日本人学校に通う子の比率が 23%(cf.1981年 46%)になっています。 アジアだけ見ても 46%と、最盛期(1981年 95%) に比べて 半分以下の比率なのです。 日本人学校が "選択肢の一つ" である今、日本人学校のあるべき姿とは どういうものでしょうか?

12月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Teacher's Lab. 公開ワークショップ--- 12月 2日(日)、於:新宿区イベントスペース。 テーマ 『「留学」×「主体的に生きる力」』。 ※ 生徒に「先生、留学したい!」と面談で言われたら どう答えられるか……。
ロシア語教育研究集会 2018--- 12月 2日(日)、於:上智大学 四谷キャンパス(東京都千代田区)。 テーマ 『社会に開かれたロシア語教育とは? 高校における実践』。 [プロジェクト報告] 永沼 栄理子 (関東国際高校) ほか。 [基調講演] 「統合的でインタラクティブな外国語授業に向けての提案」=和泉 伸一 (上智大学 外国語学部教授)
チカラン日本人学校(Jakarta郊外) 学校説明会--- [大阪] 12月 3日(月)、[名古屋] 12月 4日(火)、[東京] 12月 5日(水)。於:海外子女教育振興財団 関西分室(12/3)・東京本部(12/5)、豊田自動織機 シャインズ (12/4。刈谷市東陽町2-18)。内容:「チカラン日本人学校の概要、教育について」 「入学準備、事務手続き、年間行事計画、入学希望仮登録など」 「チカラン地区住環境など地区の情報、質疑応答」 ほか
ASIA-NETセミナー (12/7)--- 12月 7日(金)、於:南部労政会館 (東京都品川区)。 テーマ 『3つの「ムジン」で中国ビジネス2018年を振り返る』=野村 義樹 (愛豊通信科技(上海)有限公司 副総経理)。※ 中国最新トレンド・生情報を本音トークで聴く会です。
国際バカロレアを活用した大学入試に関する教育シンポジウム--- 12月15日(土)、於:つくば国際会議場 (茨城県つくば市)。 [講演] 「国際バカロレア特別入試の導入と課題」ほか、[パネル討論] IB生+大学担当者、[IB生/保護者/IB教員のための大学入試説明会]。 ※ 都立国際高校の実践報告も見ものです。
第1回 GIEST公開シンポジウム--- 12月14日(金)、於: FinGATE KAYABA(東京都中央区)。 テーマ 『北朝鮮と中東』=高橋 和夫 (放送大学名誉教授)・阪堂 博之 (ジャーナリスト)。 ※ 中東の理解に北朝鮮という視点も欠かせません。
獲得研の公開講演会--- 12月15日(土)、於:日本大学文理学部。 テーマ 『研究する教師×省察する教師』=石井 英真 (京都大学)・渡辺 貴裕 (東京学芸大学) 。 ※ 教師のあり方を巡って「研究」「省察」をキーワードに 縦横に語り合われます。
第14回 リケジョ未来シンポジウム--- 12月16日(日)、於:お茶の水女子大学 (東京都文京区)。 講演 「ムダなこともしよう」、「人間工学の研究者になるまで」 ほか。 ※ お茶の水女子大学 理系女性教育開発共同機構が、女子中・高生などを対象に開催します。
サイエンスキャッスル 関東大会--- 12月23日(日)・24日(月)、於:神田女学園中学・高校 (東京都千代田区)。 テーマ 『多彩な熱の融合が創り出すエマルジョン--- 熱と熱の出会いからその反応は始まる』。 ※ 関西大会は 23日(日)、大阪明星学園明星中学/高校(大阪市天王寺区)=テーマ『今日から始まる新たな研究』。 世界大会は4月13日(土)。
バイオテクノロジー ALCA公開シンポジウム--- 12月26日(水)、於:JST東京本部別館 (東京都千代田区)。 ※ 科学技術振興機構(JST)は、「さくらサイエンスプラン」もやっていますね。
第16回 さいたま新都心大道芸フェスティバル--- 1月12日(土)・13日(日)、於:けやきひろば・コクーンシティ・JRさいたま新都心駅前。 ※ 「和楽器バンド大新年会 2019」は 5日(土)・6日(日)です。
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◆ 「Society 5.0」 は、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0) に続くもの……「仮想空間と現実空間とを高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する 人間中心の社会」 と説明されても……???

◆ 『月刊 海外子女教育』12月号の特集は、「海外生 我が校紹介」「国語の教科書、こうしてつくられる」。 会員校訪問は 日本女子大附属中学です。 在留邦人子女数(外務省調べ) が載ると、年の暮れを感じますね。

◆ セントラルケンタッキー補習校が 一昨年30周年を迎えたこと、州立大学の援助が その時期に終わり 独自運営になったという記事には、感慨深いものがあります。 隣のエリザベスタウン補習校・シンシナティ補習校とともに、何度かお訪ねした 懐かしい学校です。

◆ 来春、首都圏の公立中高一貫校としては初のIB校 「さいたま市立大宮国際中等教育学校」(市立大宮西高校が母体。共学) が開校します。 なお、埼玉県では既に 私立の昌平中学・高校がIB校に認定されています。

◆ 晩秋の一日、肥後細川庭園(東京都文京区) に、紅葉狩りに行って来ました。 ちょうど、来年のNHK大河ドラマの主人公、金栗四三先生の写真展示会が催されていて、女子生徒が袴姿で楽しそうに走る様子や、女子高等師範(お茶の水女子大の前身) の授業風景など 感慨深く眺めました。 流行語大賞は「そだねー」……辛い時こそ 「ポジティブな発言だけをする」と 彼女たちは決めているそうです。 好い笑顔でしたね。

◆ キリスト教では 待降節・降臨節 (Advent) に入っています。 イエスの誕生を祝うクリスマスまでの4週間を、指折り数えるように楽しみに待つ風習です。 日本では、「大師講」に紛らわせて布教をしたため、忘年会シーズンと混同されますが、本来は 慎ましく静かに過ごす時期です。

◆ 今年は 「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」(ユネスコ憲章) に対し 逆風が吹き荒れました。 自分と違う意見には耳を貸さず、お友達だけで強引に押し通すやり方は、一種のテロです。 そんな中で、ノーベル平和賞が二人の旗手に贈られたのは せめてもの救いです。

Microsoft社から取得するアカウント (…@hotmail.com, …@outlook.com など) のサーバーが、この子女教育ニュースの配信を拒否しています。 該当するアドレスをお使いの方に そのことをお報せする手段はなく 困っています。 「大事なメイルの交信には Microsoft のアドレスは使わない」 というのは、常識ですか?

◆ 喪中葉書が届き、90歳を超えての大往生ですと、何だかホッとします。 大正生れの方には 最後までお健やかだった方が多く、あやかりたいものです。 忘年会が続くと 胃腸が弱ったり メタボが気になったりする方もあるでしょうね。 皆様、お身体を大切に。ごきげんよう。
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【2018-11月】

11月は霜月、秋は夕暮れ……
  布団が恋しい季節になりました。 植物の 「わた」 は 秋の季語ですが、防寒用の 「わた」 は 冬の季語です。 「真綿」 という言葉が示す通り、「わた (綿)」は 元々 「<bo2><ハク>」(絹・錦, silk, soie) を意味しました。 養蚕の発祥地は中国で、歴代の王朝は その製法を秘してきましたが、5世紀頃に 中央アジアの 「Khotan (巨丹)」から 蚕が盗み出されて、ローマやスペインでの養蚕業が始まりました (⇒ cotton)。 日本には6世紀、中国西北部「 (khotan)」の「弓月君<ゆづきのきみ>」 が 一族10万人を引き連れ 日本に帰化した際に、伝わったとされています (巨丹将来伝説)。 時の欽明天皇は、受け入れの条件として 秦一族を日本中に分散して住まわせ、地方の殖産興業を図ったそうです。
  日本語では 「khotan」が訛って、「ハタ⇒わた」 と変化したとのこと。 秦の総本家は 京都に置かれ、「貴正<うずまさ>の秦」(正統の太秦の家) や 「禹豆満佐」(絹をうず高く積む) と呼ばれました。 「太秦<うずまさ>」の読み方は難しいのですが、日本映画ファンにとっては常識です。(そういえば、シルクとスクリーンは 縁が深いです)
  なお、中国で紙が発明されるまで、竹簡や絹布に記録を残していたので、「竹帛<zhu2bo2><チクハク>」 は “典籍・歴史”の意味になりました。 「功垂竹帛」は、功績を挙げて 歴史に名を残すことなのです。 因みに、木綿<もめん>(インド原産の"棉") は、平安時代に わが国に伝来したそうですが、やはり 高級品でした。 マレー語では 「setera(絹) と 「kapas(木綿・綿花) は区別されています。 また、インドから東南アジアに育つ 「ワタノキ(cotton tree)」 は 「kasur(⇒絣?) と呼ばれますが、一般に 「kasur」は “布団”の意味です。

第67回グローバル化社会の教育研究会(EGS)の開催決まる
  11月29日(木)、聖学院中学・高校(東京都北区) で開かれます。 テーマは 『「トビタテ! 留学JAPAN」 ---グローバル コンピテンスに向けて』 で、文部科学省 教育改革・国際課の加藤 賢一先生に話題提供をお願いしました。
  加藤先生は 広島県立高校の教師でしたが、昨年度まで4年間、県の教育委員会で、インターナショナルな公立中高一貫校 「広島叡智学園」の新設にも関わられました。 その間、世界各地の延べ39都市を訪問され、グローバル教育やIB教育等を研究してこられています。 激変する日本社会において、わが国の教育が普遍的に目指すべきものは何なのか、また、地球社会における課題についての理解力・想像力、そして 文化的な多様性と それを許容し協働して学ぶ態度をどう育てるか…… 等についてお話しを伺い、それを素に話し合いたいと思います。

「カペラ」 は “マルティンの外套”
  11月11日は「聖マルティンの日 (St.Martin's Day)」 です。 元々は 「Bacchus(ギリシア神話のディオニュソス⇒ ローマでワインと酩酊の神) を祭る日でしたが、4世紀に Martin が登場して以降は、彼が 宿屋の主人や 飲兵衛(drunkard) の守護聖人となりました。 ローマ軍兵士だった Martin は敬虔なクリスチャンでした。 数々の善行を行ったので、後に 仏ツールの司祭に任命され、遂には 聖人に祀られます。 真冬の寒さに震えている乞食を見て同情し 自分の外套(cappella) を剣で二つに切り裂いて、一つを乞食に与えてやった逸話は有名です。 その外套は 聖遺物となっただけでなく、軍隊の “旗印”として掲げられるようにもなりました (当然、複製されています)。
  やがて、この外套を納めておく建物自体も 「cappella」と呼ばれるようになり、さらに (宮殿・学校・兵舎などで) 聖遺物を保管する建物は、全て 「cappella」(⇒ chapel) と呼ぶ習慣が生まれます。 通常は礼拝所を兼ねており、いつの間にか “礼拝堂”の意味にもなりました。 因みに、「a cappella」は 無伴奏の合唱・重唱ことです。 ルネサンス期(15〜16世紀)、音楽家が 教会で豪華な伴奏曲作りを競い合うと、礼拝なのか音楽会なのか判らなくなるし、歌詞も聴き取りにくくなるため、ローマ法王庁は 教会内での伴奏を禁止しました。 この“聖堂での様式”を「a cappella (=in chapel)」と呼ぶわけです。
◆「St.Martin's jewellery/ring」(偽造の宝石/指輪) などといわれたり、飲兵衛の "守護聖" にされたり…… Martin 本人には不愉快でしょうが、それだけ庶民に慕われています。『聖者の行進』にも“韻用”され…?  マツダの名車「カペラ」は ぎょしゃ座の星"カペラ"(雌山羊。マレー語では「kambing」) に因んだそうです。 しかし、抜群の加速力からいって、先陣を切って進む“マルティンの外套”のイメージでしょう。 SF漫画の 『銀河鉄道999』では、内銀河環状線を走る特急列車の名前でした。

外国人労働者の受け入れ拡大に思う
  日本政府は、留学生受け入れを推進するとともに、建築・介護等の労働者の受け入れも拡大しようとしていますが、地域社会が被る負担については 知らんぷりです。 その姿勢は、1990年頃の日系ブラジル人の定着問題に対するものと 何も変わっていません。 つまり、企業が “安い労働力の確保”という経済的打算に基づく政策を求め、政治家が それに応えているだけで、“外国人との共生”の視点が全く欠如しているのです。
  私の地元(東京の池袋) も、気がつけば 辺りは“国際グルメ街”に変貌し、新華社、人民日報などが日本事務所を構えています。 築35年を超えた“古マンション”(銀行は担保価値を認めない) のオーナーも 急速に外国人に替わっていって、ゴミの分別や騒音、無届け入転居、違法民泊、白タク横行などに関して 苦情や愚痴が途切れません。 公立小・中学校も含めた地域社会が “宇宙人”に浸食されているような脅迫感すら、古くからの住民は感じています。 その “不協和音”は、かつてのニューヨークのスラム街を髣髴とさせますが、外国人との共生に向けた工夫と努力は、太古から 「渡来人」を受け容れてきた日本の伝統芸だったはずです。 急速にグローバル化が進む地域社会を正面から捉え、対応していくことは、学校教育においても求められているのです。

鍋料理の季節ですね
  鍋料理に欠かせないのが “酸っぱさ” です。 大分県特産の 「kabosu (香母酢)」 は 柚子<ゆず> の仲間で、強い酸味と独特の香りが 料理に格別の趣向となります。 また 果汁に含まれるポリフェノールの抗酸化作用も注目されており、清涼飲料やリキュール製品、菓子類にも使われます。 皮には花粉症抑制の成分もあるとか。 カボスとよく似た 「sudachi (酢橘)」 は徳島県の特産。 カボスよりも小振り(3分の1程度の重さ) で、やはり料理等に用いられますが、成分的には、柚子・カボスよりも レモンやライムに近いそうです。
  「カボス」 の名の由来は諸説あり、「カブチ」 「カムシ」 などと呼ぶ地方もあります。 マレー語の 「kabus」 は “霞<かすみ>” で “はっきり見えない(翳む)” の意味までありますが、カボスとは関係ありません。 いずれにせよ、「yuzu」 「kabosu」 「sudachi」 が英語の辞書に載るほど、海外でも珍重される食材になりつつあります。 原産地は中国なのでしょうけど、中国では レモンやライムの方が人気のようです。
◆ 米メジャーリーグ 「Chicago Cubs」 の 「Cub」 は 狐・熊・獅子・虎など食肉哺乳動物の子のことで、“青二才・小僧・見習い” などの意味です。 ボースカウトの幼年団員(8-11歳) も 「Cub-Scout」 と呼びます。

歳を取れば耳鳴り・空耳も…
  50歳頃から 男女を問わず、耳鳴りに悩まされる方が出てきます。 ちょうど更年期と重なる時期で 気が滅入ったりしますが、これも “五月病”(環境の変化が原因) の側面を持っているようです。 まあ 老化現象ですし、耳鳴りの特効薬はないので、上手に付き合うしかないのですけど、困るのは 「私の耳に宇宙人の交信が届く」 などと思い込み、周りに信じて欲しいと言い出すことです。
  SF小説『Story of Your Life』(米1999年) は、こうした中高年層の実感を背景に注目されました。 それを映画化した 『Arrival(米2016年) も、英国アカデミー賞「音響賞」、全米アカデミー賞「音響編集賞」を受賞しました。 「Hepta-pod(七本脚) の “交信音” が 如何に耳鳴りに似通っていたかを示していると思います。 それがどうして、「原発は再稼働しろ」 「赤字国債は垂れ流せ」 とまで聞こえるのか…… もし 「Hepta-pod」 が聞いたら 呆れ返るでしょうね。
◆ 劇画やアニメで静寂を表現する時、「シーン」と描くのは、実際に小さく 「ジーン」という音が聞こえているからだそうです。 内耳の "蝸牛" という器官が、老化等で難聴になると感度を上げようする余り 「耳鳴り」 の症状が出易くなるとのこと。体調を整えるようにしましょう。

グアナファト日本人学校が 来春 開校
  メキシコにある日本人学校では 3校目です。 「バヒオ(Bajio)」 は メキシコ市の北西に広がる高原の盆地地域を指します。 標高 1,500〜1,800mで 肥沃な土壌と温暖な気候、適度な降水にも恵まれて、メキシコ随一の農業地帯です。 日系企業630社が進出しており (邦人 約5,000名)、その盆地の真ん中のアグアスカリエンテスには、日産自動車を中核に、三井化学、日本通運などの日系120社が集まっています (邦人 約1,250名)。
  このたび 新しい日本人学校ができるグアナファトは、アグアスカリエンテスとメキシコ市の中間にあり、大学が多く治安の良い地域です。 ホンダ、トヨタ、マツダ、日野のほか 日系270社が進出(邦人 約2,120名) しています。 一昨年、在レオン日本国総領事館が開設されました。
メキシコ市とグアナファトとの間の ケレタロ(日系100社、580名) には、自動車産業・航空機産業などがあります。 国際学校等に通う児童生徒や 他のバヒオ地方在住の子どものために 補習授業校も開設される予定です。

11月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
関西 学校施設・サービス展 特別講演--- 11月7日(水)、於:インテックス大阪 (大阪市住之江区)。 内容:「無理なく 今すぐできる児童・生徒の生命と安心を守る防災教育・防災学習」=石井 布紀子(NPO法人 さくらネット 代表)、ほか ※ 多発化・多様化する災害に対し 子どもたちの安全を守るためには学校施設に どのような対策が必要か解説。 このほか、AI教育の将来に関する講演も 3日間連続します。
ASIA-NET「NLPセミナー」--- 11月7日(水)、於:南部労政会館 (東京都品川区)。 今回の 「NLP(Neuro Lin-guistic Programing)」は、アニメのキャラクターや憧れのヒーローに自分を投影して、理想の自分を潜在意識の中から発見するワークショップ。
国際バカロレアフォーラム in 大阪--- 11月11日(日)、於:大阪 YMCA土佐堀会館。 ※ 公設民営学校「大阪市立水都国際中学・高校」のDPコーディネータ 熊谷優一先生(3月まで筑波大附属坂戸高校) も登壇します。
森上教育研究所 私学中等教育セミナー--- 11月12日(月)、於:アルカディア市ヶ谷。 テーマ 『「新入試」「4技能」、だから必要となる英語指導とは!--- 中・高「英語教育」の課題と展望 』。 ※ NHK英会話の大西泰斗先生と山本紀彦編集長、ベネッセの阿達茂孝さんが解説します。
獲得研 公開ワークショップ--- 11月17日(土)、於:日本大学文理学部。テーマ 『教師のライフコース研究』=渡部 淳 (日本大学 教授)・両角 桂子 (埼玉県立所沢北高校 教諭)。 ※ 演劇的プレゼンテーションをつくって話題提供者に応答するプログラムです。
教養講座「地球にロングステイ」--- 11月17日(土)、於:城西大学 紀尾井町Campus (東京都千代田区)。 テーマ 『知りたいウィーンの歴史物語』=福永 佳津子 (海外生活カウンセラー)、イップ 常子 (ロングステイ オーストリア社)。 ※ 山下真澄さんのバイオリン演奏もあります。
関西「帰国子女教育を考える会」第79回 研究例会--- 11月17日(土)、於:大阪教育大学附属高等学校 池田校舎。 テーマ 『本校の紹介と帰国生支援、そして国際交流』=寺田 明彦ほか (大阪府立住吉高等学校 教頭・首席)、筒井 和幸ほか (大阪教育大附属高校池田校舎副校長・国際教育委員会)
第11回 日本旅行医学会 東京大会--- 11月18日(日)、於:KFC Hall & Rooms (東京都墨田区)。 内容:[特別講演] 「インドネシア最新医療事情」、[教育講演] 「羽田空港国際線クリニックについて」 「性感染症の最近の動向と臨床現場」、[企業発表] 「海外旅行保険について」 ほか。 ※ 海外の医療事情の最新情報を得られる学会です。
TJF「りんごをかじろう」トークイベント--- 11月24日(土)、於:講談社会議室 (東京都文京区)。 テーマ 『心を健康にする瞑想法とだれも知らないインドの話』=草薙 龍瞬 (僧侶)。 ※ マインドフルネス (2500年以上前に仏陀が説いていた 心を健康にする考え方・瞑想法)を体験します。
JACTFL第4回ワークショップ--- 11月25日(日)、於:慶應義塾大学日吉Campus (横浜市港北区)。 ※ 多様化、グローバル化が叫ばれている中、学校現場では 英語至上主義が はびこっています。いま改めて「複数の外国語を学ぶ意義」を考えてみませんか?
第67回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 11月29日(木)、於:聖学院中学・高校(東京都北区)。 テーマ 『「トビタテ! 留学JAPAN」--- グローバル コンピテンスに向けて』=加藤 賢一 (文部科学省 教育改革・国際課)。※ 公立の国際学校、グローバル教育、IB教育などの実態や可能性に、参加者の関心が寄せられています。
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◆ インドネシアのジャカルタの東の郊外に「チカラン日本人学校」が 来春開校します。 当該地区には 日系企業の進出が相次ぐものの、首都圏における交通渋滞が深刻で、通学が困難なためです。 ジャカルタ日本人学校の “兄弟校” の体裁(運営母体は同じ) で設置されます。

◆ マレーシアのマハティール首相は、政権復帰後 何度も来日しています。 私たちが創意工夫して問題解決していく姿を高く評価し、日本の大学を誘致したいとのこと。 筑波大学が マレーシア・キャンパス開設の検討に入りました。 ※ 今年の外国人叙勲で、マハティール首相に「桐花大綬章」が授与されました。

◆ 『月刊 海外子女教育』11月号は 海外子女文芸作品コンクールの入賞発表です。 会員校訪問は帝京中学・高校。 スポーツ進学校なのに 「海外育ちの子が居場所を見つけ易い学校」の風評…… 現場を見てきました。

◆ 私立小学校の入試と中学・高校の帰国生入試のシーズンです。海外入試も既に始まっていますが、帰国生入試は 12月中旬までが第一の山場。 帰国生入試では、受験資格の条件があります。 『帰国子女のための学校便覧2019』が刊行されましたので、最新情報をご確認ください。

◆ 森永乳業が 立冬(11月7日頃) を 「ココアの日」と勝手に定めて宣伝していましたが、一昨年ようやく 日本記念日協会に 正式に認定・登録されました。 肌寒くなるこの時期、体が温まる飲み物は嬉しいですね。

◆ 「ぎょしゃ座の星 カペラ(山羊=kambing)」 について 「私の故郷(愛媛) でも “カンビン” と呼びます」 とのお便りがあり、調べてみると 「燗瓶」(お燗の徳利) の字が当てられています。 ヤギさんもビックリ! 晩秋の夜、気のおけない友達と 鍋を突きながら熱燗……も好いですね。
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【2018-10月】

10月は 「神無月」です。
  「神無月<かんなづき>」 の語源は諸説ありますが、元々 “神の月” だったのが、平安時代に “神々が出雲に出かけて留守” の俗信が生れ、“無” の字を当てるようになった というのが 本当でしょう。 個人的には 「醸成月<かみなしづき>(新米で酒を造る月) と考えるのが好きですけど。
◆ 伝説の地ビール「オゼノユキドケ」(群馬県館林市) が 遂に製造停止……「木曽路ビール」(長野県木曽町) に続き、また一つ "銘酒" が消えます。 愛飲家の切なる要望を無視した経営方針は解せません。 アメリカには 日本酒メーカーが15社もあるそうですが、彼らの情熱を見習って欲しいです。

秋は ランドセル購入の季節
  そのことは、わが子や孫が6歳になって解ります。 小学生がランドセルを背負って歩く姿は、日本の風物詩です。 「ランドセル(粮嚢)」は オランダ語の 「ransel(背嚢) が訛ったものですが、幕末から明治初期に 軍隊装備品として輸入されました。 通学カバンとしては、1885年に 学習院初等科が導入したのが最初といわれ、1950年代から ベビーブーマーの間に普及したそうです。
  今や、「背嚢, 背負子<しょいこ>」 は死語で、ドイツ語の 「Rucksack」 が定番になっています。 英語では 「knapsack, sackpack」 ですが、アメリカで 1910年代以降、「backpack」 と呼ぶようになりました。 若者が自分で計画を立て “低予算で旅行 (badget travel)”することも意味します。 ("背嚢" が基本装備なので)。 これを日本語で 「カニ族」と呼んだ時代もありました。 大きいリュックを背負って 列車の通路や改札口などを通ろうとすると、横歩きを強いられるからです。 しかし、最近の若者は 傍若無人に、正面を向いて周りにぶつけながら(orスマホを見ながら) 歩くのが当たり前みたいですね。
◆ 学生には「通勤電車に乗る時、リュックは前に抱えて」 と指導すべきでしょう。 混雑の一大要因であるため、トラブルが多発するからです。 新入生も 周りから散々注意されれば、6月頃には “大人” になります。

原発の技術者は どこで教育するの?
  厚生労働省は 9月4日、東京電力福島第一原発事故の作業で被曝し 後に肺癌で死亡した男性について、労災を認定したと発表しました。 事故対応にあたった作業員の労災認定は5人目、死亡例では初めてです。 原発事故の甚大さはもちろんですが、それに対し根本的な対策、とりわけ専門技術者の育成を図ってこなかったことも、政府が “想定外” と呼ぶ犠牲者を多く出した原因です。 脱原発を進めるにしても、数十年に亘って継続的に働く専門技術者が多数必要なのですが、わが国に その教育機関は見当たりません。
  国際原子力機関(IAEA) では、世界の原子力発電設備容量は 2030年までに10%以上減少する可能性があると予想しています。 原発産業自体が、老朽化した原子炉の廃炉や競争力の低下 (=安全規制の強化による新原発の工期長期化やコスト増大など)に直面する中で 難しい状況に陥るというのです。 世界の発電設備容量に占める原発の割合(現在5.7%) も、2050年には 2.8%に半減するとの見通しを示しています。 ドイツやスイスなどは既に、原発を段階的に廃止する計画を発表していますが、そこでも “造ってしまったもの” に莫大な経費がかかることが課題となっています。 これに 「原発技術者の養成」 のコストは含まれていませんが、原発の輸出国になろうとしている日本は、“製造者責任” を負わされます。
◆ 今年、原発推進論者が 「猛暑には 冷房を使おう」 と盛んに宣伝していました (技術者の養成には 消極的なのに)。 省エネ型のエアコン普及で 電力消費量が下がる⇒ 原発不要…… の展開は困るからでしょうね。

「お友達便」 には手を出すな!
  最近、「P2P courier」 という種類のスマホ アプリを使った “お友達便” が、広がっています。 例えば、東京からA国に旅行することを登録しておけば、「〇〇をA国に運んで」 という注文が スマホに届き、“ブツ (goods)” が送られて来る⇒ それを A国に入国してから 指定された人に手渡しor送付すれば “お小遣い”がもらえる…… という 「運び屋」のアルバイトです。 留学・旅行中なら、宿泊先に “ブツ”が送られてきて、帰国後、郵便・宅急便等で発送します。
  恐ろしいことに、カード詐欺や密輸等に使われることも多く、知らない間に犯罪の片棒を担がされる危険が 極めて高いのです。 そもそも 頼んでいる人の素性も 運んでいる物が 本当は何なのか (あるいは どういう“訳あり (things)”なのか) も、知らないのが普通ですから。 留学や海外研修等で出かける学生には、「他人の荷物は絶対に預かってはいけない」 と指導しますけど、ゲーム感覚(excitement)+高額の報酬(1万円前後/件) の誘惑は “蜜の味”のようです。
◆ 帰国の際に預かった物が違法薬物だった場合、「1年以下の懲役」は免れません。 もし報酬をもらっていたら、“営利目的”として 「3年以下の懲役」、友達を誘っていたなら 罰金も追加されます。 注) 「goods」 「things」 は必ず複数形。 マレー語で "ブツ" は 「benda」で、捕まれば 「denda」(罰金,処罰) が課されます。

「運び屋, 受け子」 の取調べは厳しい
  通信販売のクレジット・カード詐欺の場合は、商品代金の決済は1ヶ月後なので、運んでいる間は 「(携行者が) 適正に購入した商品」 とみなされます。 たとえ偽造カードでも、その間は 犯罪の立証が難しいのです。 まして、コンビニの 「預かり/お渡しロッカー」などで荷受けをされてしまうと、本当は誰が受け取ったのかすら 特定は困難です。 だからこそ、もし (防犯カメラやスマホの解析等で) 犯罪が立証された際は、警察の取り調べも 法的な処罰も 容赦なくなります。「儲かるなら どうなっても構わない」 という無責任さ(=未必の故意) があったことは間違いないですし、税関でも 「他人から預かった物は何もない」 と虚偽申告しているのですから、かなり悪質だと判断されます。 渡航前の学生には、厳に戒めておくべきでしょう。
◆ お友達便の一つ 「BisTip」の名称は、インドネシア語の 「bisnis titip」(届ける商売) の略だろうと思います。 国際社会では許容され難い商売を ネット上に展開する先見性は見事ですが、いずれ ビッグデータの解析等により、「運び屋, 受け子」 が捕捉されるようになるでしょう。

第66回グローバル化社会の教育研究会(EGS) を開催
  10月5日(金)、都立白鴎高校附属中学校(東京都台東区) で開かれました。 通常の授業、とくに帰国生たちが どんな雰囲気の中で学校生活を送っているかを見せてもらい、いつまでも見ていたい衝動に駆られました。 教師も生徒も皆、「地域社会と世界を見つめる目」や「多様性を許容・奨励する意識」 を持っているからでしょう。 この姿勢こそ、どの学校でも徹底して欲しいものです。
  副校長の田中幸徳先生は、公式な場ではなかなか聞けない、先生方の悩みや葛藤などもお話しくださり、その大変さとともに ご努力の意味も理解できました。 「AI(人工知能) は "1" を "100"にすることでは優れているが、"0" を "1" にするのは 人間にしかできない」 という言葉には 一同納得。 参加者の多くが 「公立校の印象が変わった」と述懐するほど、公立中高一貫校としての頑張りに 好感が持てますし、声援を送りたいと思います。 可能であれば、また数年後に訪ねてみたい学校です。

10月は ハロウィンムード?
  最近は日本でも カボチャのお化け、魔女や黒猫、コウモリなどが 街を彩ります。 「万聖節の前夜 (All-hallow Eve.=10月末日の日没後)、ありとあらゆる鬼・魔物が湧き出し、わがもの顔で飛び回る」 という俗信--- 古代英国のものとも 古代ローマの果実の女神を祭るものとも いわれますが、7世紀になって キリスト教に採り込まれました。(その頃、中東では ムハマッドの宗教改革が始まります)
  キリスト教徒でも、この習俗には どこか如何わしさを感じます。 中には “何をやっても許される” と誤解し、子どもに配る菓子に 髭剃りやカッターの替刃を忍ばせたり 危険な薬物を混ぜたりする輩も現れます。 だから、ハロウィンで子どもがもらってきた菓子は、親が安全を確かめることが大切です。
◆ 1970年代からアメリカ等で、子ども達に配る菓子に 髭剃りやカッターナイフの替刃、危険薬物などを入れることが流行し始め、世間を震撼させています。 知人からの便りにも… 「近所からもらったお菓子でも、食べさせる前には 凄く慎重に扱いました。 まずは ママ(=私)が食べてみて、さらに もっと食べてみて、結局 全部ママが食べてしまって… という 慎重のあまりのチェック体制でした! (^^)!」。

個人の資格で働くのも大変
  政府の働き方改革の一つに 「副業の勧め」 が入っていますが、なかなか個人の資格で働くことは 簡単ではありません。 というのも、個人事業主は 有限会社などの法人格を持たない限り、民間企業や学校法人の取引相手となりにくくされているからです。 例えば、特技を活かして セミナー講師を請け負う場合、謝金の払い込み先が法人の預金口座となる “派遣元”を指定するよう求められます。 事業所が講師に直接謝金を払う場合、税の源泉徴収の計算など煩雑な事務が生じるので、法人間の講習委託や講師派遣等の形にしたいのです。
  個人の側から見れば、謝金を受け取ってくれる (=税務処理をしてくれる) 法人を確保することを求められ、方々を探し回ることになります。 先日、ある方が、派遣先から交替を告げられたうえに、「後任の講師は もう決めてあるが、あなたの会社から派遣された形にするよう 手配して欲しい」 と依頼される珍事がありました。 これほど人を馬鹿にした話はないのですが、人間がAI(人工知能) に使われるようになると、こうした 「人非人<ひとでなし>」が横行し始めます。
◆ 「Indra (帝釈天)」の家来に、「Kimnara (緊那羅)」という音楽・舞踊の神がいました。 頭が馬だったり 身体が鳥だったりして “人のようで人でない姿”から、「人非人」と呼ばれます。 このため 仏教では、“人としての心や情を持っていないこと/ヒト”を指すようになりました。

慣用句の使われ方の変化の調査結果
  文化庁では、慣用句の使われ方の変化を把握する調査を毎年行っていますが、9月末に 今年の結果 (16歳以上の男女 2,022人から回答を分析) が発表されました。 例えば、「なし崩し」という慣用句を、本来の 「少しずつ返していく」でなく、「なかったことにする」という意味で使っている人が 65.6%に上る (正答は 19.5%) とのことで、マスコミでも取り上げられています。
  言葉は時代とともに変化していくものですけど、全く異なるニュアンスを帯びたり、真反対の意味に使われたりすると、面食らいます。 世代間ギャップの最たるものですし、「空気が読めない頑固者」と苛められたり、「聴覚情報処理障害」ではないかと悩んだりする人も 少なくありません。 最近のマスコミこそ、日本語の混乱・誤用の元凶になっていることを、反省して欲しいとも思います。
◆ 「檄をとばす」を「元気のない者に刺激を与えて活気を与える」という意味で使う人は 67.4% (cf.本来の「自分の主張や考えを広く人々に知らせて同意を求める」は 22.1%) もあるそうです。 マスコミ辞典では どうでしょうか?

10月の諸行事―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
江戸・TOKYO 技とテクノの融合展 2018--- 10月2日(火)、於:東京国際フォーラム(有楽町)※ 現代の職人技の粋を 肌で感じられる貴重な機会です。 人口知能(AI) が 最後まで越え難い世界とは……?
第66回グローバル化社会の教育研究会(EGS)--- 10月 5日(金)、於:東京都立白鴎高校・附属中学校 (東京都台東区)。 テーマ 『都立中高一貫校の新たな展開--- 帰国生入試や多文化授業』=田中 幸徳 (同校 副校長)。 ※ 全国初の公立中高一貫校となった同校の今後は? 帰国生や外国籍生徒のいる学級の授業参観もできます。
東京理科大学 坊っちゃん講座 第2回--- 10月13日(土)、於:東京理科大学(東京都新宿区)。テーマ 「化学(科学)のチカラ 常識を疑う心」=渡辺 正(東京理科大学 嘱託教授)。 ※ 世界には 未解決の謎が多くありますが、それらの謎の解明や応用研究におけるリーダーは何を語るのでしょう?
日本マレーシア協会 創立60周年記念セミナー--- 10月17日(水)、於:国際文化会館 (東京都港区)。 基調講演 『日マ関係の現状と今後』=宮本 新吾 (外務省 南東アジア第2課長)、『日マ協会の公益活動と持続可能な開発目標』=森嶋 彰 (広島修道大学 名誉教授)。 ※ 日マ協会は、熱帯雨林の再生、来日留学生支援、現地インタ-ンシップ、各種セミナーなど 際だった活動を展開しています。
日外協 第33回 日本語スピーチ発表会・交流会--- 10月18日(木)、於:日本アセアンセンター。※ 今年ASEAN各国で行われた日本語スピーチコンテストの優勝者10名が、スピーチを披露します。
獲得研公開ワークショップ--- 10月20日(土)、於:日本大学文理学部(東京都世田谷区)。テーマ 「教育プレゼンテーションの工夫--- KP法をいろいろ使ってみよう」=藤牧 朗 (目黒学院中学・高校)
関西かけはし「秋のレッツトーク2018」--- 10月25日(木)、於:大阪市立総合生涯学習センター。 ※ 子どもの教育や自分自身のことなど戸惑い・不安も、わいわいお喋りするうちに解決のヒントが見つかるかも…。
ASIA-NET セミナー--- 10月25日(木)、於:南部労政会館 (東京都品川区)。テーマ 『「一帯一路」の現状と将来、日本企業の商機と課題』=中川 十郎 (元 ニチメン ニューヨーク本社 副社長)。 ※ 中国が進めるグローバル戦略 「一帯一路」の基本を学ぶ勉強会です。
UOS関東 POWER UPソリューションフェア2018--- 10月26日(金)、於:秋葉原UDX (東京都千代田区)。 [特別講演] (11:30am〜)「ビジネスにもプライベートにも役立つ心理学--- これを知っておけば、どんな場面もOK!」=山名 裕子 (臨床心理士) ほか。 ※ 約320社で活動するソフトウェア技術者集団UOSのお祭りです。
ピースフィア関東の朗読会--- 10月28日(日)、於:文京区シビックセンター(東京都文京区)。 ※ 鶴文乃さんの『ところてんの歌』、中井俊己さんの『長崎アンジェラスの鐘』の朗読のほか、鶴さんの特別講演もあります。
日中デジタルビジネス協会の設立記念パーティー--- 10月30日(火)、於:アークヒルズ クラブルーム(東京都港区)。 ※ 中国大使館経済商務処、日本の関連団体・企業のほか デジタルビジネス分野において日中の懸け橋となる関係者が集まります。
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◆ メーカーのデータ改ざんの原因は、現場の技術者ではなく、技術の中身が分からない管理部門・営業部門の “利益の数字優先” 体質にあります。 「表面上のコストを抑え、作業現場に過剰労働を強いる」ことの反省なしに、克服は無理です。 そしてこれは、少子化の最大要因でもあります。

◆ 関西の帰国ママの手による 『帰国生への学校案内≪関西≫ 2019』が完成しました。 今回の特集は「人生100年時代のキャリア・デザイン--- 21世紀を生きるために」。 帰国生の受験生と保護者に必読の情報が満載です。

◆ 『月刊 海外子女教育』10月号特集は、「海外駐在、帯同か不帯同か、家族の選択」 と 「大相撲を英語で実況する」です。 細井宏一先生(学芸大附属大泉小) の「AG5だより」 も必見---“グローバル人材育成” やIB、あるいは “日本人学校離れ” など 私たちの欲求不満を払拭する玉稿です。

◆ 10月5日は 「世界教師デー」ですが、「教師の日」は 中国 9月10日 (台湾 28日)、シンガポール 9月1日、インド 9月5日、インドネシア 11月25日など、独自に定めている国もあります。 日本は…… 毎日!?

◆ ハンプトンスクール学院長の小野 友得子先生が、今年4月に亡くなられていました。 日本航空の第一期スチュワーデス (当時は運輸省の公務員) で、ご退職・結婚後に学校を創られたのですけど、英国からの帰国生は 随分お世話になりました。

◆ 10月14日(日)、九州における発電量が需要をオーバーしそうになり、九州電力は 太陽光発電の一部を送配電網から排除しました。 原発を再稼働して再生可能エネルギーを抑制するという暴挙に出たわけで、世界の潮流に逆行しています。 人災と自然災害の度重なる襲来、そのうえ 企業や大学の経営陣にまで、「お友達優遇」の悪弊が はびこっていることがわかり、心塞がる思いです。
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【2018-9月】

新学期の「不適応症状」に ご注意
  ヒトには 素晴しい環境適応力が備わっている反面、進級・進学、就職・昇進・転勤、引越しなど、自分を取り巻く環境が変わって 数週間後に、心身ともに変調をきたします。 本人も周囲も 「おめでたい…」 と喜んだ翌月に、「こんなんじゃなかった」 と落ち込むことも多いのです。 学校ではこれを 「五月病」と呼ぶのですが、海外からの帰国や国内転校の児童生徒が多い9月の下旬にも、多発します。 症状は、下痢・腹痛・頭痛・吐き気に始まりこじらせると 「鬱的症状 ⇒ 分裂的症状」へと深刻化しかねません。 対策は、予め本人も周囲も それを理解して、心の準備をしておくことです。 「そろそろだね。何も心配することはないよ」 と声を掛け合いましょう。 注意して欲しいのは、児童生徒だけでなく 保護者も少し遅れて “変になる”ことです。 親子に攻められる担任は“大変”です。
  もう一点、子どもの言語習得の側面からいうと、日常会話力(BICS) は 生まれた時から習得が始まりますが、学習言語力(CALP) は 6歳くらいから始まって、10歳くらいで日常会話力を越えていく段階になります。 ちょうど小学4年生頃で、「読み・書きが辛くなった」「急に勉強が難しくなった」 と子どもは感じますし、親も どう教えてよいか 段々不安になる時期です。 原因は 「学習内容のバランスの変化」にありますし、担任も 「落ちこぼれを出さないように」 と必死の努力をしていますから、なかなか保護者にまで気が回りません。 こうした保護者の不安や焦り・不信感が溜まってきて 一気に噴き出すのが、夏休みの終わった 今頃の時期です。 この間隙をぬって、学習塾は保護者の焦りや不信感を煽り、体験学習や夏期講習の “集客”に努めるわけですが、大事なのは 「規則正しい生活習慣」と「基礎・基本の繰り返し練習」、そして「誰でも そう感じているんだよ」 という励ましなのです。
◆ 担任教師に向けられる保護者の不安は、やがて焦りや不信感になり、次第にクレーマーの様相を呈してきます。 若手の教員にとっては 正念場ですし、先輩や上司からの早目のサポートが必要です。

「第1回トビタテ! グローバル教師フォーラム」が開催される
  8月20日(月)、文部科学省講堂 (東京都千代田区) で開かれました。 日本人学校等で勤務している先生方は、よく 「教師冥利に尽きる」と述懐されます。 両親ともに健康で落ち着いた家庭が多く、何かあれば 父親も直ぐに 学校に駆けつける雰囲気は、教職に就いた頃の初心をも 思い出させてくれるのだそうです。
  また、地域の学習は即、異文化理解に繋がり、現地の材料を使った理科の実験も、国の違いを知る契機になります。 グローバル人材を育てるには、多様な学びを提供することが不可欠で、帰国した先生方には、是非 その経験を活かしていって欲しいです。 教師集団は本来、ドメスティックで保守的な世界ですが、そうした “堅物”とも 上手に付き合えないと グローバル人材になれないことを 既に解っているのですから。
◆ 油井亀美也 飛行士は 「40歳過ぎてから ロシア語を勉強しなければならなかったのは、大変だった」 と述懐されています。 「英語さえできれば……」と思っているお馬鹿さんには、ぜひ教えたい話です。 『月刊 海外子女教育』 8月号の特集は 読まれました?

「中風」と不適応症状の季節
  キンモクセイの香りが風に漂う時期になると、私は 何故か 「中風」 のことを考えてしまいます。 重陽の節句敬老の日のせいでしょうか? 中国語で 「中風<zhong4feng1>」 は “風邪や気体に傷つけられる (風疾)” という意味ですけど、脳内出血などが原因で 半身不随 あるいは腕・脚が麻痺する症状をいいます。 英語では「paralysis, palsy」で、サクラソウ (primrose) が原因 という俗説もありますが、古代ギリシア時代に、サクラソウが 「paralisos」と呼ばれていたことによる 混同のようです。
  「中風の病気」を短縮して 「中気」 ともいいます。 マレー語で 「masuk angin((身体の中に) 空気/風が入る) といえば、肩こりや軽い喉の痛みなどの症状……まあ “風邪気味”に近いでしょう。 猛暑に痛めつけられてきた身体には、穏やかな秋風も応えます。 前回、新学期などの環境の変化が原因で起こる不適応症状について触れましたが、マレー語では 「kepala angin(頭が風) …… ボーッとしている状態です。 誰でもなる ということを解って、心身を緩やかに保てば、2〜3週間で “身体が水に浮くように” 回復するものです。 イライラを誰かにぶつけたり 焦ったりすると、その “浮力” は得られません。

文部科学省が「平成30年度学校基本調査」を公表
  8月2日、“速報値”が公表されました。 毎年5月1日現在の全国の学校数や児童生徒数、卒業後の進路などがわかるデータです。 小学1年は104万人となっており、6年後の中学1年生は そこまで減ることが判ります。 また、平成7年(1995年) の小学1年は125万人でしたから、約17%減っています。
  帰国生はもちろんのこと、海外からの留学生を どんどん受け入れていかないと学校の維持が難しい状況は、20年以上前から判っていたはずですが、教育の現場の対応は十分とはいえません。 3年前、わが国の出生数が100万人を下回ったことは確実です。 10数年後に、どの学校が どんな形で生き残っていられるでしょうか? ボーッとしてなど いられません。

第66回グローバル化社会の教育研究会(EGS)の開催
  10月5日(金)に 東京都立白鴎高校附属中学校(東京都台東区) で行われます。 2005年、全国初の公立中高一貫校となった同校は、一躍 全国から注目される存在になりました。 中学は学年四学級、高校は学年六学級あり、都内全域から受検が可能です。 今年度から特別枠入試が設定された “帰国生等クラス” の授業が、実際に どう展開されているのか、特別に見せていただくほか、副校長の田中幸徳先生に 話題提供をお願いしています。 「世界で活躍するリーダーの養成」 が掲げられた同校では、いま 何が行われ、どの方向に進んでいるのか、その現場を実際に訪れて確かめたいと思います。 また、田中先生のお話しを基に、都立中高一貫校の今後の課題や展望などについても 話し合いたいと思います。
◆ EGS研究会で授業見学は珍しく、5日(金) は 午前中から中学1・2年の全8学級の授業を見せていただきます。 そして午後、2時間の “異業種交流勉強会” です。 いつもの会場と異なりますので、ご注意ください!

秋祭りのシーズンですね
  お祭りといえば、笛・太鼓に踊りが定番です。 日本語の 「てんてこ」 は、座敷芸や祭り囃子・神楽 <かぐら> などに用いる小太鼓の音---「てけてんてん」「トントントン」 などと並ぶ擬音語の仲間です。 通常は、踊りの先導として、“笛” と共に演奏されます。 「笛を吹く」という時は、小太鼓も打ち鳴らされるのです。 中国語の 「鼓舞<gu3wu3>」 は “(自分たちを) 奮い立たせる/興奮する” の意味で、他人を奮い立たせ 何かをやらせることは 「鼓励<gu3li4>」 といいます。 日本語では、両者を合わせて「鼓舞」ですけど。
  他方、「手甲<てこう>」は、元々は 手首や手の甲を護る武具だったのでしょうが、神社での奉納舞の衣装から農作業の服装にまで 広く普及しました。 とくに お祭りでは 基本的な装身具で、山車や神輿を先導して 激しく舞う女性群を、「てこ舞」 と呼ぶ地方も結構あります。 これが 「てんてこまい」 となると、“とても忙しく、休む暇もなく立ち働くこと” を表します。 これは多分、能の 『籠太鼓 <ろうだいこ>(作:世阿弥) で、狂乱して鼓を打ちながら舞う女が演じられることから、「打って舞う」 が “髪振り乱して動き回る” のイメージに重なったのでしょう。 ただでも忙しい高校生たちが 文化祭に没頭するのは、これとは少し違うようですけど。
◆ 「てんやわんや」 は、大勢の人が自分勝手に振舞い、混乱したor収拾がつかない様子のこと。 「てんでん」(手に手に⇒ 各自/銘々/ばらばら) と 「わや」(無理/無茶/大騒ぎ) との合成語と考えるのが 多数説です。

安倍首相の「スタンプラリー」に思う
  2012年暮れ 総理大臣に返り咲いた安倍氏は、その後 延べ150回(訪問国・地域数) も海外訪問を繰り返してきました。 歴代首相なら 年に せいぜい3回であることと比べて、異常な多さと言わざるを得ません。 まるで 「世界各国を巡るスタンプラリー」をしているわけです。 北朝鮮の核ミサイルなど 国家の危機で、アメリカ等に頻繁に行かざるを得なかったという事情は 一応理解できるものの、それ以上に “(自分にとっての) 未踏の地” を訪れ、それを “歴史に遺す” ことに、強烈な意欲を燃やしておられます。
  しかし、訪問に当たっては “お土産” を持参するのが国際慣行で、ODA(政府開発援助) や民間レベルの経済協力などの 「ばら撒き」 から、相手国の首脳への “日本の高価な品” まで、ほとんど国費で賄われます。 また、首相の外訪には 政府専用機が使われますが、関係省庁や民間団体の幹部、報道関係者も随行し、ほぼ満席状態で “運航”されます。 これらにも 私たちの納めた税金が使われるのです。 周囲の者には、滅多に行けない珍しい国に連れて行ってもらえる機会は、“ご褒美” でもあります。“お友達” として選んでもらえるよう、日頃から “忖度” の努力が欠かせません。 また、マスコミにとって 首脳外交は大きなトピックですから、外されることを最も恐れています。 批判的な記事原稿など書こうものなら、社内で刺されます。 順番を待つ同僚は 無数にいるのですから。
◆ 首相が訪問する相手国も、首相個人への “お土産” を用意して待ちます。 政府専用機なので、税関もノーチェックにでき、輸入禁制品でもフリーパスです (もちろん 私物!)--- 同行記者は 見て見ぬ振りをします。

9月の諸行事――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
東京都英語村 Tokyo Global Gateway オープン!--- 9月6日(木)から 於:TIMEビル (東京都江東区)。 特色=“英語漬け”の空間・施設で成功体験を創出、子ども8人に一人のネイティブ講師が付き添い 指導、発達段階や語学の習熟度に応じたレベル別プログラム。 ※ 子どもが「生きた英語」をふんだんに発話し 世界に目を向ける契機となるよう 東京都教育委員会が設置。完全予約制です。
「クレーム対応の今と顧客満足」特別講演会--- 9月 6日(木)、於:笹川記念会館 (東京都港区)。 内容:[基調講演] 「クレームの日制定の目的とクレーム対応における人材育成ニーズ」=古谷 治子 (マネジメントサポートグループ代表)。 ※ ネガティブに捉えられがちなクレームを「相手からの ありがたい問題提案」として捉え 前向きに対処していく方策の提案です。
JVC「イラク カフェ」--- 9月8日(土)、於:日本国際ボランティアセンター(東京都台東区)。 ※ イラクに関心のある人が集まり、イラクの文化・歴史を学びながら イラクの人々のための活動を考える会です。
平成30年度 文化庁日本語教育大会・東京大会--- 9月8日(土)・9日(日)、於:文部科学省 3階講堂ほか (東京都千代田区)。 テーマ 『激動! 日本語教育--- 人材が変わる、教育が変わる、学習者が輝く』。 ※ 日本語教育の充実と推進を図るため 毎年開催されます。 京都大会は、10月(13-14日)。
Social Issue カンファレンス by リディラバ--- 9月15日(土)・16日(日)、於:DMM.com Group (東京都港区)。 テーマ 『ソーシャルビジネスを、本当の事業に』。 ※ ソーシャルワーカー、教育関係者、自治体・企業等の プレイヤー同士が出会い、課題解決に向けての協働が生まれる場を目指します。
獲得研公開セミナー--- 9月22日(土)、於:日本大学文理学部 7号館。 テーマ 『シティズンシップ(citizenship)教育とドラマ教育--- 国際理解教育を視野に入れて』=池野 範男 (日本体育大学 教授)。 ※ 長年に亘り 日本のシティズンシップ教育の研究を牽引してこられた池野先生から、各人を 社会の構成員として行動できる人材に育てるコツを伺います。
JDEC 第11回 日本フリースクール大会--- 9月22日(土)・23日(日)、於:東洋大学 白山キャンパス (東京都文京区)。 [基調講演] 「フリースクールとは何か」=奥地 圭子 (フリースクール全国ネットワーク代表)、 [シンポジウム] 「学校に行かなかったワケ、フリースクールに行ったワケ」。 ※ 最近、文科省も “学校外の学び場” として関心を寄せています。
第5回 関西 感染症・ワクチンセミナー--- 9月30日(日)、於:大阪医科大学 (高槻市)。 「帯状疱疹への新戦略---ワクチンという選択」 「海外留学生のためのワクチン基本講座」 「インフルエンザ---重症事例からの教訓」ほか。 ※ 日本旅行医学会が 感染症と予防接種を主テーマに開く専門セミナーも5年目です。 学校関係者は 資料代のみで招待されています。
第3回 合唱と朗読による いしぶみコンサート--- 9月30日(日)、於:日暮里サニーホール(東京都荒川区)。 ※ 広島観音高校 音楽部OB合唱団 東京支部による混成合唱と朗読の レクイエム(鎮魂歌)演奏です。
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◆ 「東京都英語村 Tokyo Global Gateway」の英語プログラムは ELECが担当していますが、プログラム監修は 山本新治先生です。 都教委にも永くいらしたご経験があり、民間企業との調整役には適任です。

◆ 高校を卒業後 48年半経ちますが、先日、「准高齢者同窓会」なるクラス会がありました。 司会が、「『これぐらい 好いだろう』は ご法度。セクハラ・パワハラ・付きまといは しないこと」 と話し、一同 妙に納得しました。 認知力の低下は、他人の話が聴き取れなくなるのが第一歩です。

◆ 4月に亡くなった 武田(長)清子先生を偲ぶ会が、9月8日 国際基督教大学(ICU) で行われました。 「自分と違う文化に 尊敬と愛情をもって接することが重要」 と、事あるごとに話しておられたことが忘れられません。

◆ 『月刊 海外子女教育』9月号の特集は、「自然災害や災難から子どもを守る」です。世界のどこにいても自然災害や犯罪・事故などに遭いかねませんが、被災した子ども あるいは そうした報道を見聞きした子どもに現われる兆候と、周りの親や大人の対処の仕方を取り上げています。

◆ 8月号でも紹介された 国際文化フォーラム(TJF) の多言語・多文化交流『パフォーマンス合宿』 の参加募集が始まりました。 英語圏以外の地域の現地校で学んだ経験のある高校生がたくさん集まり、多様な交流の輪ができることを期待しています。 “英語至上主義からの脱却” を是非! 昨年3月の動画はこちら

◆ 第103回 二科展 (於:国立新美術館) に行ってきました。 鹿児島の宮薗広幸先生の彫刻には、いつも心が和みます。 クアラルンプール日本人学校の正面玄関前にある 先生の作品は、未来を照らす若い輝きを感じますけど。

◆ 過去の大規模台風の死傷者の大半は、「高潮・高波」によるものだそうです。 大雨が降って川が氾濫するよりも、海水面が上昇することで 津波と似た事態が起きるわけです。 そういえば、宮部みゆきの小説にも、2階の天井まで浸かる "江戸の洪水" が描かれていますね。 恐ろしいです。
  被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
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