1.続「マニアとオタク」

 STAR FORESTが以前のスタイルであった時分に一度「マニアとオタク」という表題の文を 今と同じ「Prose」に書いた事があった。それを書いてからやや時が経ち、もう一度書いてみようか と思って再び公開するしだいである。前の物と内容がかぶる事もあると思う一方、違う事を 主張するかもしれないが、その辺はご了承願いたい。
 さて、同じテーマで再び書こうと思った理由は、営団地下鉄の駅構内全面撮影禁止 という事実を知ったからだった。恥ずかしながらつい最近まで知らなかった。と言うより、 自分を良く言うのは恐縮だが、はっきり言って迷惑をかけるような撮影をしていないから、 駅員さんの目の前で撮影していても注意された事がなかったので、それでは知りようがない だろう。営団地下鉄のホームページにもこの事についての記述がないのだから。いつから この事が具体的に決定されたか定かではない。とはいえ、鉄道ファンにとっては 非常に残念な事態である。営団地下鉄側も無論こうした事は承知の上であろうから、それでも 撮影禁止に踏み切らせたものは何なのか…ときたらやはり、撮影マナーの悪い、と言うよりむしろ 迷惑な輩の存在に他ならない。
 「一部の人達のせいで、集団が迷惑を受けるのです」といったような事は、一般教育を 受けた人であれば聞き飽きるほど聞いた言葉ではないだろうか。それも過去の物ではなく、 社会に出てからでも「会社のイメージが崩れてしまうから…」といった節々で聞かれる事と思う。 実際私もアルバイトし始めて、こういった事への意識は高く持っている。この迷惑をかける 「一部の人達」には絶対なりたくない、とほとんどの人々は思っているはずである(と言うより 思っていなかったら問題ではなかろうか)。しかしながら現実には存在するわけである。その結果が この事例で言えば「撮影禁止」である。
 「これじゃあ撮影禁止になっちゃうんじゃないかなあ〜」という兆しは前からあった。私が よく覚えているのは、昨年(2002年)の東京湾花火大会の臨時列車運転の時の事である。その時 私は新木場駅にいて電車を眺めていた。あわよくば撮影できたらな…という事で一応カメラを 持ってはいたが、いたって普通のカメラであるため、暗くなってからはロクな画像は撮れないと 見越して、過大な期待はしていなかった。該当列車がやってくる。連発される警笛・ 「危ないですから下がってください!」という放送・ワールドカップのキックオフを思わせる フラッシュの嵐…これじゃあ撮影禁止にしたくなるのも当然。私だったらしてしまうだろう。 だって事故が起こるから、あれでは。鉄道会社側にしてみれば、安全が第一だから、その ために撮影禁止が不可欠と判断したら撮影禁止に踏み切るだろう。先程も述べたように、いつから 撮影禁止であったのか定かではないが、つい最近からだとしたら、この事が引き金の1つに なっていることは間違いない。
 以前私は自分の立場を「マニア」、我々に迷惑をかける輩を「オタク」と称していたような 気がする。「オタク」がいわば狂という扱いで、マニアは度合いは異なれど社会的にはまともな 人々の事を指していた。しかしどうも一概にそういう分類はできないようだというのが最近の 私の見解である。
 理由としては、まず「鉄道オタク」というのをほとんど聞いた事がないという事が挙げられる。 そもそも最近では、オタクというもののイメージとして、「ある物事に異常に熱中して、 その他の事に対してほとんど行動しなくなって、生活に支障をきたし始める人々」というものが 多いらしい。オタクについては様々な見解があるので、一概にこうだとは言えないが、このイメージ からすれば、少なくとも普段社会人をやっている人々は、「オタク」には分類されないらしい。
 そこで「マニア」というものを改めて見直す必要性が生じる。すなわち「マニアは悪くないんです」 という、私自身の以前の認識を改めなければならない。
 先程の撮影マナーの悪い輩のほとんどは「マニア」に分類されるものと考える。理由の1つは 先程も述べたがそもそも「鉄道オタク」の存在そのものに疑問が残る事、もう1つは、普段まともに 社会人やってなければ、まともな写真が取れるようなカメラは買えないだろう、あるいは遠くから 新木場まで来る余裕がないだろう、という事。すなわち、普段の生活をちゃんとやっている人間で あろうという事である。まあ、一部例外はいるかもしれないが。
 私自身も時々経験する事だが、何か趣味があるととことんそれを極めたく時がある。 人間の性分らしい。独占欲にあたるのだろうか。それをいかに「常識」の範囲内で収拾を つけられるかで、趣味に対して臨む姿勢が問われると思う。その範囲の中にあってかつ膨大な] 知識量を蓄えられるのが最も理想的である。が、現実はそううまくいかないものだ。まず、 撮影マナーを守らない時点で、鉄道会社関係者に迷惑をかけているという事実が浮上し、それは 趣味を傷つけていると言わざるを得ない。すなわち、常識の範囲を超えているという事に なるわけである。
 この分類で、マニアという物は2つに分けられる(善玉ニアと悪玉ニアという言葉があるらしいが、 なるほどよくできた物だなあと思う)。もちろん、人間は時には些細な部分で過失がある事も あるから、厳しく追及するつもりはないが、少なくともイベント時における迷惑行為は、過失ではなく 意図的であることに間違いはないだろう。
 鉄道マニアという総称に対して評判が良くないのは、おそらく迷惑行為を行うマニアのイメージが 強いからであろう。マナーをしっかり守っているマニアが白い目で見られてしまうのは非常に 残念な事である。彼らは本来、鉄道の良さを伝えられるはずなのに、転じて鉄道を汚してしまって いるのが現実であろう。
 撮影禁止という現実を見て、改めて趣味に対する自分の行動を考えさせられた。

 P.S. 営団地下鉄での駅構内撮影禁止という事を受けて、営団地下鉄駅構内で撮影した画像について 交換を進めるサイトさんが多いようです。私もおそらく「Photo Gallery」の中で営団地下鉄の車両を 取り上げると思います。その際には、基本的にはこの流れに従うつもりでいます。具体的には、 相互直通先の鉄道会社線で撮影したもののみ掲載するという事です。ただし、そうすると、銀座線と 丸の内線が全く撮影できないという事になります。それもやむを得ないというサイトさんも多い ようですが、私の方針としては、既に所持している画像に関しては掲載するという事に しようと思います。そもそも撮影禁止が一部のマナーを守らないマニアのためだとすれば、マナーを 守っている我々が制約を受ける理由はどこにもないというのが私の意見です。私がマナーを守っている という保証はどこにもないですが、1つの出来事を挙げるとすれば、丸の内線の池袋駅で撮影を した後に、降りてきた車掌氏に「フラッシュは焚いてないですか?」と問われ「焚いてないです。 もう撮り終わりましたから。」と答えたら「じゃあ大丈夫ですね。」と笑顔で言い返してくれました ので、少なくとも悪いやつには見られていないでしょうし、何より「大丈夫です」という一言で 許可を得て撮影の肩書きがつけられますから。ただし、この方針に関してはまた後で 変更する可能性があります。営団地下鉄が大きく発表するようになったら考え直さないと いけませんものね。