第15回1000字感想

 今回の感想は出遅れてしまいました。相変わらず感想としての体裁は整っていませんが、これが私の今のやり方ですから仕方がありません。いつもの様に軽い気持ちで読んで頂ければ幸いです。

Entry 1●『ミラクルクランケ・完治 第41話』工藤裕也
 いやぁ、すごい設定ですね(名前も解りやすくて凄いけど)色々な対決物がありますが、病気を治す対決というのは、始めてです。「こちカメ」の両さんみたいな生命力があってもやっていける商売じゃないよなぁ。商売といっても裏の戦いだろうから、自由業扱いですかね。例えば抗生物質だって、沢山使うと効かなくなってしまいますから、本当に体力勝負って奴で命賭けですから、裏稼業だからこその緊迫感が感じられます。面白かったです。ただ始めの(…あらすじ)については、賛否があると思いますが、下手に状況説明をするくらいなら、この方が潔いかも知れないとも思いました。毎回これじゃ困りますけどね。

Entry 2●『金字塔』yutaka izumiharaさん
「ユー」は「YOU」でもあるんでしょうか?ユウでは無かったんで、始めにそう思いました。話自体は面白かったですが、三人称での展開の所為で、読みにくかった(解りにくかった)のは否めないのではないでしょうか。ラストで、ナオミがタキ同様に自殺を図ったという設定が今までの状況を知り得ないのに、何故だか必然性がある様に感じたのは、多分作者の力でしょう。

Entry 3●『パブリック』田中接さん
 タイトルは公衆トイレの事だったんですね。朝顔(漏斗みたいなのは多分これのことでしょう)なんていうのは聞いたことがありますが、便器の型の名前なんて普通の人は知らないですよね。でも色々な形とはいえ、考えてみれば男性の小便器だから、特別なのかも知れませんねぇ。外国のは、高くて、背伸びしてオシッコをするなんて話がありますが、文化の違いから色々な形だけでなく、方法もある様です。しかし、(たぶん)警察署内部でも端から2番目でするというシモンの様子からは、治安が悪いんだなぁという思いと、その所為で外国人の名前なのかという納得がありました。かわいい作品という感じがします。

Entry 4●『透明な部屋』Cyeieさん
 私は何通りかに解釈出来る作品に会うと、自分が好きな方の解釈を取ることにしています。これは幻想的な作品なのか、観念的な作品なのか、どちらとも判断がつきかねます。文章の並び(配置)からは観念的な物を感じ(うーん。こういう書き方もあるんだなぁ、勉強になる)話の流れからは、幻想的な感じを受けました。彼女が見えなくなったのは、彼のもとを去ったのか、亡くなったのか、はたまた本当に消えてしまったのか、彼にしても彼女の後を追って死んでしまうのだろうかと考えると、消える事がどういう事なのかが理解出来ないまま残ってしまい、私にははっきりとして欲しいという思いが残ってしまいました。まだ200字以上ありますからね。

Entry 5●『人はアンドロイドに、似る』かつみさん
一年間ひとりで生活なんか出来ないだろうなぁ。だからこそヒトではなく人間なんだからね。いくらペットの様にアンドロイドがいても、余裕がないと精神的に変になると思う。それでも精神異常にならないほどの自分を認識する強さがあって生活出来れば大丈夫だろうか。アメリカなんかでは宇宙船の中で何年も少数の人数だけで生活できるかを実験しているけど、結構大変みたいだからなぁ。飼い主はペットに似るっていうから、きっとアンドロイドにも似るかなという疑問からの作品かも知れない。

Entry 6●『ある日のノビタ』ショート・ホープさん
話としては、面白いとは思います。ただノビタ君がタイムマシンで過去へ行くのはいいんだけど、「○○されたノビタは…」の多さにちょっと閉口してしまいました。それから子供に夢を与えるドラえもんの、重要なキャラクターをこういう風にちゃかすのは反対です。心やさしく、人一倍怖がりののび太君が、過去に戻って自分を傷つけるなんていう設定には無理がありますし、不快感しか残りませんでした。ドラえもんだって、のび太君の状況を見たら、きっとあたふたして、何も出来ない様な気もしますしね。のび太じゃなくてノビタ。ドラえもんじゃなくてドラエモンという名前を使っているから異次元での話だから構わないなんていうのも、やっぱり反対です。

Entry 7●『世界』Defaultさん
なーにが云いたいんだか全然わからん。こういう作品に会うとおじさんとしては、「生きろーっ」てな感じで、もののけ姫になってしまいます。(なんじゃそりゃ)普段の生活から抜け出してぼーっとする時間が取れない様な、そんなに忙しい予備校生がいるとしたら、よっぽど時間の使い方が悪いとしか思えないけど、そういう時でも人のいる電車の中で音楽を聞いて、一人になったつもりになるというのは、ちょっと悲しい気もするし、そういう時代に生きている悲しさ、そういう世界が表現したかったという事にしておきましょうか。

Entry 8●『勘違い』吉澤 理さん
幽霊っていうのは、本当に足がないんですかねぇ。見たことがないもんですから興味はあります。会いたくはありませんけどね。外国の幽霊には足があるっていうし、日本の幽霊だって確か、足の無い幽霊を書いた画家がいて、それが怖いというんで、それから足無しになったという事を聞いたことがありますんで、自分の足が無いという違和感から幽霊だったというオチというのも、ちょっと弱い気がしました。確かに幽霊なら超能力というか異能力だとは思いますが、それだけじゃあまり楽しめません。

Entry 9●『回廊』佐藤ゆーきさん
あぁ、又せりふだけの話かなぁ。やだなぁ。と思っていたら、ラストに来て、絶対相手にされなくなる様な長〜いせりふがあったと思ったら自分のせりふに溺れて自殺してしまうんですか。始めはカップルではあるけれど、どちらも女性というオチなのかとか、自分の浮気でもばれるのかとか思いましたが、死んでしまうという終わりには驚きました。何も殺さなくたっていいと思うんですが、タイトルとの関連から考えると、回廊っていうのは、繋がっている廊下もあるけれど、行き止まりの廊下もあるんだという事でしょうか。

Entry 10●『砂』仏さん
立体を認識できなくて、しかも大小感覚まで麻痺しているとなると、モノ(者も物もモノのうち!?)を認識できなくなってしまう様な気がするんだけど、どうなんだろう。例えばサイコロを見た時に、1の個所だけ見えるところでサイコロだと判断すると、2の個所も1と2が見える角度で見るときもサイコロだとは認識できないはずだ。当然人間だって、同じ人間だという認識が出来るんだろうか?声だけで判断する事も出来るだろうが、そうなると目が見えないのと同じ(勿論全然違うだろうが)様に見えていても見えない(解らない)事になるのかも知れない。もっともそういう設定はただの設定だけの事なんだから、話のテーマとは関係ないんだろうか。特異な障害者を設定することで、現実の事じゃないから軽く流して欲しいという事なのかも知れない。そうだとすると、テーマが逆に引き立たなくなる様な気もする。もっと突っ込んでも良かったんじゃないだろうか。ただ健常である主人公の、ヒトの持っている残酷さは出ていたとは思う。

Entry 11●『足なし鳥』Momoさん
Q書房では少ないタイプの話で嬉しいです。特に私には書けないタイプの話です。たぶん傭兵の中では弱いであろう主人公が、ハイエナの様に死んだ者を利用して生きていく、処世術ともいうべき行動が、足なし鳥(死神)を呼んでしまったんでしょうか。足なし鳥の話の一部の話という感じもいいです。足なし鳥をシリーズ物にするのも、面白いかも知れない。そうなると、中には幸せになる人も出てくるんだろうなぁ。

Entry 12●『追憶』鍋田千晶 さん
句読点のところで文章の余韻に浸れるようにすれば、文章がもっと生きてくるんじゃないでしょうか。改行をちょっと多くするだけでも、随分読みやすくなる様な気がします。幼い頃の行動が、何年も経ってから夢に出てくることもありますし、確かに、誰の心にも愛しい滝はあるんでしょう。500字の作品としてなら、随分いい点が取れるんじゃないでしょうか。

Entry 13●『わたしのいちばん』羽那沖権八 さん
爆笑ですねぇ。いやぁ面白い。こういう作品は大好きです。まともな女性が出て来ない(男性から見た場合だけかなぁ)のも、浩一君の女性運の無さ(とはいっても直ぐに次の女性が出てくるんだから、モテるのは確かだ。うらやましい)は可哀想ですねぇ。友人の尚利君も通帳と印鑑には心の中では笑っているのでしょう。でも主人公もしっかり通帳と印鑑を貰ってくるというのにもお笑いです。

Entry 14●『BeBlue』うめぼしさん
女性のしかも中学生の心境というのは、理解しがたいですねぇ。男子(こういう言い方も久しぶりだ)が殴られていて、それを黙って眺めているのに、保健室にまでいって、彼の事を慰める。しかも涙まで流すなんて。虹の青を盗んだっていう彼流のおちゃらけは、いいとして、彼のブルーっていうのはまさか殴られてあおくなった痣じゃないだろうから、傷心した気持ちって事ですかねぇ。となると、彼女が抱きすくめたのは、ただの気持ちだけであって、彼女の涙も、実際には無いことなんですかねぇ。よく解らなかったです。

Entry 15●『東京夢小路』川辻晶美さん
主人公はバーテンダーともホステスとも読める書き方ですが、そんなことはどっちでも構わないストーリーでした。なんかいいですねぇ。語り手がストーリの完全な脇役になっている、模範的な作品ですね。こういう話の進め方っていうのは私は書いた事がありませんが、難しそうですし、書けそうもありません。生存競争の激しい銀座のお店で、こういう事をしてくれるっていうのも、ママの人柄からなんでしょう。お店も居心地がいいわけだ。ラストの「本日貸切」はちょっとやり過ぎかなとも思いましたが、これは読者サービスという事でOKですね。

Entry 16●『明け方の君』百内亜津治さん
登場人物達が面白いですねぇ。女子高生と多分若いであろう彼女の担任教師の恋。突然出張から帰ってきた彼女の父親。父親としては、相手の男と話がしたかったんでしょうか、追返すのは止めたけれど、どうしても許せなくて気持ちを落ちつかせる為に、ベランダに二人共放り出したんでしょうか?そういう父親ならば、突然風呂場に乱入するとは思えませんが、あまりの怒りに我を忘れてという可能性はあります。が、ひょっとしたら、娘と一緒に風呂へ入るというような生活をしているのかも知れないとも考えられるから、ちょっと娘の方も乳(父)離れしていないのかも知れない状況ではあるわけですね。こういうふうに考えると一番変なのは、教師ですかねぇ。自分の受け持ちの生徒と恋愛感情になってしまうというのは、社会的には問題がありますよ。勿論、この後彼らが結婚を前提に付き合い出すという事もあるわけですから、昔はこんなこともあったよと、子供に聞かせる話とも取れます。父さんたちも若いころはこんな事をやっていたんだぞ。なんてね。そういう意味では教師の目から書かれている文章は、好感が持てます。(すごい読み方だなぁ)

Entry 17●『正しいこと』自作
この作品は酷過ぎますねぇ。俊さんごめんなさい。そのうち又挑戦してみます。

Entry 18●『さらば、ウルトラ・ヘブン』蛮人Sさん
最近のウルトラ物(ゼアス辺りからかなぁ)はウルトラの星のあのウルトラ戦士とは違うけど、すごく強くなっている。セブンが大好きだった私としては、ウルトラマンセブンという間違った呼ばれ方に憤りを感じたりしたものだったが、ダンの悲しい程の人間に対する、地球に対する愛情が嬉しかった。最近その後のウルトラセブンがビデオ化され、懐かしの毒蝮三太夫さんが警備隊のトップだったりしていたけど、ウルトラマンレオの時は、ダンは警備隊の隊長だったなぁ。懐かしい。やっぱりセブンが最高だったと思う。ウルトラ兄弟の一員ではあるけれど、地球人になってしまった彼は、他のウルトラ戦士とは違って、地球人として生きていく道を選んでしまったから、もうウルトラの星には戻らないんだ。…悲しいなぁ。でもゾフィーが男色家だったとはねぇ。

Entry 19●『うず目』川島ケイさん
うずを巻いた目とは驚きですねぇ。不思議さが楽しいです。でも、私にはちょっと不思議さが物足りなく感じてしまいました。最初とラストのシーンは繋がっていて、途中は回想という構成は、読んでいて気にはならないんですが、もっと彼の不思議な感じを味わいたかったです。出来れば中盤をもっと過激にしてもいいのかなぁ、なんて思ってしまいました。

Entry 20●『ブラインドタッチ』鮭二さん
いやぁ。楽しみました。相変わらずの変態振りと楽しい感じが面白く読ませてくれます。ひょっとしたら私の前回の感想を受けての作品でしょうか。だとしたら恐縮してしまいます。面白かったです。次回は近親相姦(姉と弟)でお願いします。ってそんな訳にはいかないですよねぇ。

Entry 21●『午後の海風』一之江さん
前の作品があるからなのか、不倫話の一之江さんだというイメージがあるからなのか、始めは「して」いるのかと思ってしまいました。いつもながら上手いとしか言えません。女性の恋心が可愛らしく感じられました。

Entry 22●『緑の袖の旅人』更羽 さん
不思議な作品。ピーターパンの大人版という所でしょうか。大人になりたくないんじゃなくて、青年のままでいつまでも旅をしている。作者の言葉を借りれば、種子を運びながら漂っている。たんぽぽの綿毛の様なものでしょうか。ピーターパンのラストと同じ様に、彼女の義娘も同じ運命になるのかも知れませんねぇ。

Entry 23●『石ころの旅立ち』池野諭 さん
話としては、ストレートでいいと思います。ただ小説としてはどうでしょうか。小学校の頃の担任の先生が、詩を書くという事を教えてくれた時に、自分の言葉でその時の気持ちをそのまま書けばいいんだよ。という教え方をしてくれました。詩はそれでいいのかとも思いますが、小説となると、そうはいかないんじゃないかと思います。幼児向けの話ならば、こういう事だからこうなんだと教える形式で書くのも、いいかとは思いますが、文字を読める人が読んでいるんですから、出来ればいいたいことは行間にしまいこんで、それを汲み取ってもらえるように書くべきかと思います。

Entry 24●『潰瘍』竹原 秀 さん
最近500字の感想をやっていませんが、それは短い中に凝縮されている物を読み取るのが、私にはまだ無理だろうと思えているからという理由もあります。わずか600字ですから、これも私には読みきれません。胃カメラを飲んだことも幸いありませんし、飲んでみたいとも思いませんが、最近は随分進歩して飲み安くなった様ですねぇ。ってそんなことはいいんですが、作品としては、日記の断片を見ている様で、何がいいたいのか全然わかりませんでした。ひょっとしたら、後ろが切れてるんですかねぇ。(でも600字って書いてあるしなぁ)

Entry 25●『クローン売ります』小沢 純 さん
クローンの技術で、成長の速度が加減できるのが、私には不思議でならない。よくそういう話を聞くけれども、そうなると成長速度を遅くして平均寿命が伸びるという事さえ可能になってしまう。SFでも、産まれたと同時にクローンを作成して一緒に育てていたりする場合さえある。もしそういう話を書きたいのだとしたら、そういう疑問点については充分に検討する必要があると思うし、いくら作り話だからって、そういう事は結構大事なことだと私は思っています。それとも実際にこういうネットがあったんだという事なんだろうか。まさかねぇ。