第30回1000字感想

 今回は自分の作品もありませんから棚上げするわけにもいきませんが、私は勝手に思ったことを書いてしまいます。あまりにも久しぶりなので、ちょっと作風?が変わってしまったかもしれませんが、まぁ私は気にしていません(笑)もう既にいろんな方が感想を出されていますし、私の文章は為になるとは限りません。感想の長い短いには理由は特にありませんが、長いから短いからといって、作品がどうこうという意味もありません。たんなる私のその時の気分(環境)の問題です。
 今更読んでも仕方がありませんが、せっかくですからあまり気になさらずに読んで下さい。

Entry.01「ランナー」野口 圭さん
一人で生きていくっていう事に対する話なんだとしたら、この主人公は可哀想なのかも知れないが、彼にとっては一生懸命生きているという考えの中で幸せなのかも知れない。同じ年くらいの男の笑いの意味が判らない主人公だからこその話ではある。しかし途中の息遣いがちょっとウルサク感じた。

Entry.02「僕とカワウソ」野村利三郎さん
日本カワウソが今も生息しているかどうかは判らないが、カワウソという動物を登場させる意味は、主人公にとっての稀少なもの・大事なものという事なんだろうか?まぁ単純に考えれば、2号さん(古い)という事なんだろうが、不倫の相手ならば、確かに私にとっても稀少価値が高い(笑)しかしそういう意味の話なんだとしたら、徒然なるままに関係をただ綴っているだけで面白みに欠ける。

Entry.03「ラン」hanakoさん
日本映画で観客動員を見込めるのは動物物と子供物という話が昔あったが、小説ではやっぱり死ぬ話なんだろうか?こどもの語り口調での展開も可愛いし、ペット(家族?)との関係もこどもの目から見た感じがよく出ているとは思うが、偏屈な私はあまり好きにはなれない。

Entry.04「軽挙妄動侍」小径さん
タイトルから時代物かと思ったが、そうでもないようだ。随分壊れてはいるんだけど、この壊れ具合は読んでいて楽しい。タイトルの「軽挙妄動」の雰囲気は出ているし、前略・中略・後略で、しかも文章の途中でぶった切るとはいくら侍とはいえ、私には書けそうもない。こういう話はストーリーを追ってはいけないとは思いながらも、どんな話なんだろうと考えてしまう私は真面目なのかも知れない。

Entry.05「治らない。」しんじさん
話としては、風邪をひいて彼女が看病に来てくれたという、それだけの話なんだけど、前半部分が説明ばかりで、主人公と彼女との遣り取りが付けたしの様に感じてしまう。彼らのからみともいうべき後半をもっと充実したものにして貰えれば随分違った作品になったと思う。惜しい。

Entry.06「無味無臭無感覚」坂口与四郎さん
おぉっ、とうとう出たか近親相関。こういうテーマを1000字で出すのは(私には)勇気がいる。エッチなビデオなんかじゃよくあるけれども、兄弟とは知らないでの男と女としての愛っていうのは、悲しいよなぁ。妹が電車に飛びこんだのも兄と知った為かも知れないと思うと、余計に辛くなってしまう。ラストの「無感覚だ。」は臭いに耐えられないのに何故という感じがしてしまうのは、感覚がなければ臭いを感じられないのではと思ってしまったからだけど、間違いなのかなぁ?

Entry.07「知ってた?」坂本 一平さん
何がいいたいんだか判りません。小さい弟は可愛いという兄弟の話なんでしょうか?まさか地球って回ってるんですよっていう事がいいたい訳じゃないよなぁ。でも地球は惑星であって星ではないんですよね。スターは輝くものです(笑)

Entry.08「真っ赤な提灯」岡崎源作さん
昔話をするにはちょっとまだ若い20代後半の同窓会。後10年もしたら、きっともっと楽しくやれそうな気もするけれど、世間のしがらみってやつを、外から達観して笑って話せる様になるには、やっぱりまだ若いからだと思う。でもそんな世代の気持ちが充分伝わってきて、理解出来るんだから、私も随分と年を取っているんです(笑)

Entry.09「適時」とらふぐさん
最近小説を書いていないけれども、せりふだけの話は書かない様に気を付けていた。勿論せりふだけの話しを否定するつもりはないし、効果的な場合もあるとは思う。この二人が喫茶店でコーヒーでも飲みながら話しているのか、片方の家で酒でも飲んでいるのかは判らないが、こういう話しをしたいと思うのってどういう時だか判らない。自分の死期を感じた時なんだろうか?そうならば、本当にタイムリー(適時)な話題ではある。

Entry.10「ぐうたら主婦万歳!」池田@ママさん
姑が帰り際に言うせりふは、ちょっと現実離れしているとは思うが、それだけ仲がいいという事だろうか。片付け下手な人は方向感覚が良いらしいが、まぁ話しとしては面白い。しかしラストの主婦としてのせりふはもう少し、愛情を持った可愛い甘えた感じのせりふにして欲しかった。!マークがあったんじゃ、怒ってるみたいで、ちょっと恐い。

Entry.11「ブーゲンビリア」三浦あいさん
親子の会話が可愛くて楽しい。母親と娘の会話っていうのは、やっぱり何故か楽しい。こういう会話を父親と息子がすると、喧嘩になるか、生きるっていうのは…なんて事になりそうな気がする。タイトルの赤い花は、彼女らの生き方を表しているんだろうか?花言葉を調べたら「情熱」らしいから、ひょっとしたら娘の事なのかも知れない。早くいい男を連れてきてよ私も楽しみたいじゃないなんてね。

Entry.12「エレクトリックポップ世代の幼年期」イシカワレゴゑさん
タイトルでアーサー・C・クラークの「幼年期の終り」を思い出してしまいました。エレクトリックポップ(電気での生活?)に馴れた世代の若い頃の話しという感じなんでしょうか。そういう意味でこれを読むと、なんともすこぶる付きで面白い。昔はこういう理解されない事があったんだ。という先駆者達の苦悩。スターウォーズの始まりみたいですよ。それを1000字で書くなんて、びっくりです。でもこれは是非是非長編で読んでみたい作品ですね。

Entry.13「運命の輪」樹神 心さん
なんか暗いなぁ。確かに出産という事に対する不安は伝わって来るんだけど、こんな事占ってもし産んだら不幸になるなんていう結果が出たらどうするんだろう。旦那が出てこないからひょっとしたら私生児という形なのかも知れないけれど、子供の為には妊婦さんはいつも笑っていられるように心を安らかに保たなくっちゃいけないと思う。そういう意味ではこの話しが何をいいたいのか私には判らなかった。

Entry.14「クリスマス・イブ」山田せばすちゃんさん
不倫相手に自分の女房を家内なんていう男の気が知れないが、私はローストチキンの方が好きです。不倫の話しもなんかこんなにどっぷり浸かって本当っぽく感じられて、私には好きになれませんでした(私は不倫の話しはキライなんです)

Entry.15「怪盗 紅のタコ」のぼりんさん
秘書の太田さんが出てきて犯人は目星がついたけど、笑った。ラストのツッコミがなかったら、ただのシャレオチで終りだけど、このツッコミがただの話しを作品にしている気がする。この番田院と金台地のシリーズは今後も続くんですかねぇ。楽しみです。

Entry.16「きりんの寓話」林徳鎬さん
出ていこうとする彼女にこんな話しをしたら、完全に別れてしまうだろうなぁ。もっともこんな話しに丸め込まれるような女性ならば、ご勝手にというところでしょうか。

Entry.17「後天性ベルーゾー血栓による肝細胞機能不全がもたらした老廃物中性腫瘍」羽那沖権八さん
ベルーゾー血栓というのが、貧血の事なのかどうかは判らないがまぁ人間の身体というのは良くしたもので、自然治癒というヤツなんでしょう。私もこういう病気にかかったら、きっと手術なんかはしないで、自分の身体の治癒能力を使ってしまうでしょう。始めの方の「 」内が主人公の気持ちだとしたら、第三者的に観ている彼女の心情でもあるのでしょうが、女性の言葉でないという点が新鮮でした。

Entry.18「桜待ち」YOSHIMURAKeijiさん
高橋というのは女性だと思うけど、主人公と豊橋と高橋との関係が判らないのが興味を誘う。豊橋が高橋に好意を持っているのか、それとも主人公と豊橋とが恋愛関係?にあるのかなんて考えると楽しくなってくる。しかし歌なんか詠めない私としてはよく1000字の中で歌を詠むなんて事をやったなぁと感心してしまう。という事でここで一句(笑)
ぼんやりと川面に垂れる釣り糸が歌と一緒に春も来らん(解説はなし)

Entry.19「バスのことで」アナトー・シキソさん
この話しは一体どう読めばいいんだろうか?世の中なんてもんは、カエルの頭でもやっていけるほど、大した事はないんだから、お気楽にやろうよ。ってなもんだとは思えない。人間の仕事が動物に取って変わられるという恐怖でもなさそうだし、仕事は動物に任せて人間は別の事をして行こうというのでもないだろう。この世界を操っているのは小さな生き物であるカエル程度の能力しかない者達なんだから気をつけなければという警告なんだろうか。しかし自分の利益を第一に考えている人達がトップに沢山いるというこの世を見ていると、あながちカエルが運転しているバスに乗っている私達が恐くなってくる。それとも何も考えず、そんなバカななんて笑っていればいいのかも知れない。

Entry.20「where or when?」ポンコチーヌ21さん
ダイニングという言葉で、一体彼はどこにいるんだという違和感があった。船の中でのダイニングという言葉と文章での漢字の量からの違和感だろう。前半部分で、少年が最後に「神様は…」と叫ぶシーンにギョっとした。私が死ぬ時に神様に愚痴をいうだろうかと思ったからだ。無宗教である私は、多分少年の年齢ならば、「お母さ〜ん」といってお終いのような気がするからだろう。しかし彼の母親が神さまに食べられちゃうというせりふをいつも話しているのだろうということで納得は出来たが、しかし悲しい話だねぇ。

Entry.21「むじなアンダーグラウンド」蛮人Sさん
やっぱりむじな(のっぺらぼう)のストーリーはこうでなくっちゃという当たり前とも言える展開の後での、妖怪からのお誘いというどんでん返しが面白い。現代人の心のバランスという理由を持ってきてのお笑い系のオチでもあるが、そういえば妖怪物って最近ないなぁ。

Entry.22「浮かぶ」川島ケイさん
廻りからの反対に負けて別れてしまった恋人達のように読んでしまったんですが、全然違うかも知れない。確かに釣り合いが取れないという事はありますし、そういう関係でもまぁ一緒になって幸せになれるかというと、それは判らない。こういう所が人と人との関係で面白いところでもあるんですけどね。浮かんでしまうという非現実的なことに対して、自分も浮かびたいとは思わなかった男性が、ちょっと悲しいですが、それだから彼女は泣く泣く去っていくのかもしれないと思うと、もっとがんばれよと思ってしまいました。

Entry.23「愛と正義」越冬こあらさん
タイトルであの名作「愛と誠」を思い出しました。「君の為なら死ねる」といっていた岩清水君の強いキャラクターも懐かしい。時代的には、反体制のもとに戦ったのは現在は50代前半位のはずだから、ひょっとしたら正義という言葉を出してしまってからの思いつきかも知れない。いくらなんでも愛と誠にしたらそのまんまだもんね。でも今回はちょっと流されて書いてる感じがしてしまいました。

Entry.24「さよならの定期券」伊勢 湊さん
話しとしては、伊勢さん得意の分野なのかな?なんだかこういった傾向が多いような気がする。私にはちょっと苦手な分野だ。「 」付きのせりふの間の思いは、情景描写じゃないんだけど、こういう書き方っていうのは、巧く書ければ効果的だと思った。そうか、こうやって書けばいいんだ。やっぱりせりふの間の文章っていうのは難しいと思う。

Entry.25「MOON」さとう啓介さん
じっくり読めば子供を捨ててきた母の悲しさと遣りなおそうと決めた女性の心が染み入ってくるんだけど、さらっと流して読んでしまうと判り難い。店のママや客のガンバレと後押しする姿勢も、なんだか無理に短くしたみたいな感じがしてしまうからかも知れない。

Entry.26「水族館」一之江さん
親子の会話でも、若い頃の会話ではなくて、年老いてきた母の年齢を感じてしまう会話というのは、なんとなく遣りきれない。冗談もマトモに受け取ってしまうというラストも悲しくなってくる。一之江姉さん文章はやっぱり巧いねぇ。(っていつから姉さんだ。昔は若奥さんなんていってたのに…)

Entry.27「子守唄」るるるぶ☆どっぐちゃんさん
この世の全てが美しいなんて、続くのかと思っていたら、自殺する方に考えが転じて行くというのには驚いた。暗い思いつめている感じの自殺の話しが多い中で、こういった文体での話しというのも面白い。