第32回1000字感想

 少し遅くなりましたし、今回は久しぶりに参加していますが、やっぱり好き勝手に思ったことを書いてしまいます。
 今回の作品についても、私が読んで思った事や全然関係ないことを書いていますが、もちろん作者に他意はありません。私が読んでただこう思ったというだけです。異常に短い感想も中にはありますが勿論作品の出来不出来とは関係がありません。

Entry.01『夕凪』岡崎源作さん
小説というよりは、詩に近い感じがしました。こういう短い話の中で、読者への解りやすさよりも、言葉を選んだという点については、そういう方法もあるのだろう。という事しか言えません。いつも同じ事の繰り返しと結んでいるラストですが、そんな事はありませんよ。それは貴方の心がけひとつです。

Entry.02『老人と梅』御自慰 小津郎さん
文体が好きです。読んでいてニンマリとしてしまいました。そりゃぁ大した話じゃないんですが、タイトルの洒落から出来た話かも知れませんが、いいじゃありませんか。

Entry.03『じゃあ今度の日曜日にね』坂口与四郎さん
ありゃ、話が同性愛に発展してしまった。ネカマ(ネットオカマ)が友人らしいというのはなんだか想像が付いてしまったけど、オチは意外だった。オチが意外だからといって、作品の質がどうということはないんだけど、なんだか物足りなかった。しかしQbooksでもネカマはいるのかなぁ?

Entry.04『僕らの儀式』党一朗さん
ごめんなさい。私はこういう話は好きになれません。説明だけの話というのは、やっぱり読んでいて寂しいです。自分達だけの世界に浸っているという感じは充分にわかりますが、何だか微笑ましさが感じられなかったです。

Entry.05『ヒューマンポリティクス』フジワラカズオミさん
ビザなのかピッツァなのか小さい字なので解らなかったが、どうやらピッツァらしい(笑)ラストで切れる大統領の行動に笑ってしまったが、少し物足りない。もっとお腹を抱えて笑えるオチを期待してしまった。

Entry.06『マリア』宙さん
途中で彼女の性癖がわかってしまい。想像通りのラストでちょっとがっかりした。もう少し解らないようにしても良かったのではないだろうか?

Entry.07『確かなもの』たずらさん
「確かなものなんかないのに」っていう意味のタイトルがいい。名前も知らない少女が、何故家に遊びに来たのか、何故泊まっていったのかは説明されていないが、帰ったら死んでしまうかも知れないという思いが、やり場のない主人公の思いが悲しい。

Entry.08『ざる蕎麦とコロッケ』岡野義高さん
サラリーマンの悲哀という奴ですが、なんだかあんまりピンと来ませんでした。日頃から部下を可愛がって育てていれば、そんな風になるもんじゃないでしょう。そういう風に育てだ自分が悪いんです。ざる蕎麦とコロッケという取り合わせも、なんだか作り物めいていて、あまり心に訴えかけてはくれませんでした。

Entry.09『便意の太陽』矢沢 一真さん
雨の中、河原でのアオカン。確かにこの話は射精しているようです。でも、私にはその快感は伝わってきませんでした。

Entry.10『無知である恐怖』伊藤 彰貞さん
凄くストレートな文章で、特にラストには圧倒された。無知である事の悲しさ。そうだからこその行動。考えさせられてしまいます。

Entry.11『邪魔なのは』一宮遼さん
オチはいいと思うんですが、何だかスッキリしません。主人公の友人だった男は、彼女としめしあわせていたんでしょうが、いくらなんでも私はそんな女とは付合いたくはありませんから、打ち明けられた時点で、相手を殺すという事ではなく決断してしまいそうです。もし自分の彼女が自分の友人とねんごろ(古い)になっていたらという事じたいで、彼女との仲か友人との仲が変わってしまうと思うからでしょう。しかしこんな女とは付合いたくない。

Entry.12『狂ってるおばさんの999』ポチョムキンさん
いやぁ、やっぱり生き残るのはおばさんだけがいいですよ。突っ走っているストーリーですが、ちょっと物足りなさを感じました。しかしラストの死者1名はやっぱり変です。途中で警官が2名死に、運転手も絶命したはず…。結構こういう事にはシビアになってしまいます。

Entry.13『父の年賀状』セキネクマヲさん
最近はパソコンで印刷している年賀状も、昔は毎年版画を彫っておりました。しかも多色刷りでしたから、版木は最低でも2枚、多い時には5枚位あったこともあります。しかも版画が出来あがるのが毎年年末の31日だったり、年が明けた1日だったりしたものですから、正月にポストに投函しており、年が明けてから出すのが正しい何ぞと言っていたのを思い出します。まぁ毎年趣味でやっていた様なものだったし、そんなに枚数を出すわけでもありませんでしたから、なんと生産性の低い作業だっただろうと思っています。適度な情景描写と回想シーンが、孫もいるであろう年齢になって書く便りの意味と雰囲気を充分引き出している気がしました。しかし45才の時に母子家庭になって、多分再婚もせずに今まで過ごしてきたという女性が、年賀状という形で息子達への近況報告でもするというのが、少し悲しい気がしました。

Entry.14『佐久間式人嫌い矯正機械』てこさん
途中で出てくる妙な夢が現実の事であり、今の状況は矯正されている人間が見ている夢?の話のようです。タイトルが無ければ解らないですが、そういう意味ではいいタイトルではあります。しかしラストの「この幸せ…」以降は、もう少し捻って欲しかったと個人的には思いました。現実として生きている主人公には、いつまでも続くはずですし、コンセントが抜かれるまでなんていう説明みたいな文は、今までの効果が半減しているような気がします。

Entry.15『世界は暗がりで君を待つ 』オカダレゴゑさん
笑った。関西の地震でアレっと思った途端に、金星人登場だ。この展開は誰だって予想がつかない。やっぱり予想のつかない話というのは、読んでいてワクワクする。ラストの白熊に強姦された女性が10万人を突破、には何を書いてるんだ事作者は、と思った。

Entry.16『君の中の僕は』坂本 一平さん
だって、君は…。ってそれで終りなの?君って一体何者なんだろう?まさか、「犬」ってことはないだろうけど、ひょっとしたら人間じゃないのかも知れないという思いはある。謎のままに終わりという形は嫌いじゃないけど、せめて1000字まで引っ張って欲しかった。もう少しヒントが欲しい(笑)

Entry.17『モルグコルムの涙』橋本 聡さん
人間を餌にして成長する「モルグコルム」それを餌?に若さを保つ主人公といったところだろうか。しかし話が解り難い。もちろんそれを狙っているのは解るが、不思議さも限度を超すと理解されないで終わってしまう。

Entry.18『温かい手』池田@ママさん
フリースは高価な羊毛の事だと思っていた私は、ユニ○の製品が出た時本物かよと疑った。後で、ペットボトルから作られているという事は判ったが、あぁいうネーミングが消費者達から反発を食わないのが不思議だ。と全然関係ない話から始まってしまったが、子供達と一緒になって走る主婦というのも面白い。子供の位置に立って行動する主人公には、若いわねぇという冷やかしとも取れる廻りの目を気にしないで、行動してもらいたい。しかし自分の子供を放っておいて行動するのは、気を付けなくっちゃね。事故でもあったら大変だ。

Entry.19『母より』秋月さん
父親不明で母親は家出という境遇で育った女性が、どんな辛い悲しい思いをしたかを、この母はどれだけ理解しているのか不安です。自分のお腹を痛めた子であるのに、産んだことを後悔していないと思っているのに、何故子供を捨てるという事が出来るのか、私には理解出来ません。しかもその身勝手な行動を取っているにも関わらず、娘に連絡をするという神経は、現代の子供への虐待なんかを表しているんでしょうか?知り合いならば「何考えてんだ。馬鹿野郎」って言ってしまいそうです。

Entry.20『コンビニのことで』アナトー・シキソさん
値段的には、小さいペットボトルみたいだけど、紙パックの発泡酒の事ですかね。あのテリーさんがCMしてるやつ(ってそんなのあるわけないじゃん)前回・前々回とバスの話から一転してコンビニになって、カエルからサルに変化してるけど、今回の登場人物も例のコンビのようだ。なんだか話はどんどん続いていくようで、こういう連作も面白い。

Entry.21『ゆずり葉の家』上條 裕さん
恐い。どんな不思議な家系なのかと思ったら、言伝えを信じて死んでいくとは。きっとこの母親も代々受け継がれてきている事をするのだろう。しかし「これが我が家のしきたりだ」としても、やっぱり自殺幇助ではなくて罪の意識のない殺人だろう。だからこそ恐い。

Entry.22『Re:香り』さとう啓介さん
3000字を先に読んだけど、これは面白い企画だ。タイトルにどちらも「Re:」と入っていたんで、何だろうとは思っていたが、両方読んで、楽しさ倍増って感じだ。でもこれは3000字を先に読んで正解の気がする。しかし私も同じ話を別の視点から書きたいとは思っていたが(今回の3000字はそのテスト版)1000字と3000字が毎月になったからこそ出来る企画ではある。しかしこの母親の立場の話を1000字はキツイ。流石に無理がある気がした。

Entry.23『春の棘』kobaさん
恐い奥さんだなぁ。というのが第一印象です。普段はめちゃくちゃ丁寧な(とはいっても少し変な)言葉遣いらしい奥さんの、ヒステリックな話が、何だこりゃ。ってな感じで面白かったです。しかしこんな奥さんがいるのに、浮気なんかしちゃあダメですよ。しっかり離婚すべきです。

Entry.24『古本屋にて』羽那沖権八さん
なんだよぉ。ドラえもんかい。「ネバー・エンディング・ストーリー」とか、「リング」とか、なんかもっと凄い話を期待してしまった。読み始めたら止められなくなってしまうという本や、必ず感動するなんていう本があったら、いいなぁなんて思っていたりしたもんですからねぇ。次はその線でよろしく。

Entry.25『一寸』自作
800字程迄書いていた昔の未完成の話をちょこちょこっと1000字にしてしまった。ちょっと後悔しています。

Entry.26『緋色の桜』カピバラさん
余りにも有名な梶井基次郎の「桜の木の下には」が題材なのかも知れないが、確かにあの話を聞いた(読んでない)時には、恐くなったものだ。幻想的な夜桜は、そんな事もあるのかという気にさせてくれるが、人間の死体というのは、桜にとってはあんまり栄養にはならないという話もある。人と同じ事をしないけらばならないという脅迫観念は現代の病気かも知れないが、そんな所をブラックユーモアで切っているのがいい。

Entry.27『自動改札』越冬こあらさん
仕事ばかりでニュースも見ないという、こういう設定には無理があるのは解っているが、だからこその面白さである。時間管制局とはいえタイムトラベルするわけでもなく、税金を取るというなんだか本当にあるかも知れないと思わせる話だから、余計に面白い。しかし、こあらさんのユーモア小説もどんどんこなれてきて、これがこあらだと主張してきている。いいなぁ。

Entry.28『私の正義』瀬野 美智緒さん
なんか過激派というよりは、テロ集団に所属している感じの彼だが、この主人公はいくらなんでも遣り過ぎたとは思わないのだから、本当にいい恋人だと思っているんだろう。何故逃げているかの説明が長い(というよりは1000字という短さ)所為もあるからだが、もう少し迫真の状況が書かれていると、現実味を帯びてきて、「正義」の無軌道振りが面白くなったんじゃないだろうか?

Entry.29『太陽の季節』るるるぶ☆どっぐちゃんさん
人間というのは多面的な部分があるから、その時にはそう思っていても、そんなことは忘れてしまって違う考えになっていることもある。特に子供の頃の思いは、大人になってしまうと思い出すどころか、人に言われても「そんなことないよう」なんて全然覚えてないことも多い。世の中のイヤなことから逃れて太陽に飲み込まれてしまう事を願うなんていうのは、この姉もきっとそういう事なんだと思いたい。ただ若い頃に死んだという事実だけさ。

Entry.30『甘く切ない話』日野光里さん
何故カタカナなのかと思ったシュウマツも終末だからなんですね。一緒に死んでしまうと判っていたら、やっぱり愛する人と一緒がいいと思うのは当然でしょう。しかしこの国は日本と違って、ラーメンを食べに外食出来る程前から、カウントダウンを国民に知らせるんですねぇ。日本だったら多分知っていても国民には知らせない様な気がしますし、日本のトップがそれを知るのさえ、恐らく2・3分前でしょう。そう考えると、私はそんな事を知らずに死んでいくんだろうなぁ、なんて感傷に浸ってしまいます。

Entry.31『花盗人』立田 未さん
黄昏時の、少し不思議な雰囲気の中での花盗人の目撃談なんですが、凄く雰囲気があっていいです。彼女になんだか一目惚れでもしたような書き方でしたが、私は始めの雰囲気から和服の女性をイメージしてしまいました。でもふくらはぎが上下していたんだから、きっとスカートなんでしょう。罪を問わないと言われる花盗人ではありますが、でも他人の庭(玄関)からは別ですよ。生垣で庭から人が見ているなんて気付かなかったのかも知れませんが、見ていないからいいという事にはなりません。しかしなんだか許してしまいそうな感情が湧いてしまうというのは彼女が人間ではないのかも知れないと思わせているからなのかも知れません。しかし枳殻(からたち)とか躑躅(つつじ)を漢字で書かれると判らない(笑)