第37回1000字感想

 今回はやっと自分の作品を棚上げして感想が出来ます(笑) で、今回も今まで通り、好き勝手に感想を書いています。文学作品を目指す方が多いのか、最近の作品には理解に苦しむものも多々ありますし、判らないと書いている読解力の無さを提示してしまっているものも多くなってきています。ですから作者の意図したものと違う受け取り方をしている場合も多いと思います。しかし一読者としての意見ではあります。好き勝手に書いていてなんですが、私の感想で立ち直れなくなってしまうという方が、もしいらっしゃるのならばそれは間違いです。今まで通り自分の作品を書きつづけてください。私の考えが絶対なんてことは、それこそ絶対ありません。軽い気持ちで読んで下されば幸いです。

Entry.01『蜘蛛の巣』夢追い人さん
これは人間を昆虫(蜘蛛は昆虫ではないから虫か)に例えた話なんだろうか? そのまま直接読むと、ナンパしている男を真似て自分もナンパに加わり、男を出し抜いて彼女をゲットして食べてしまった。出し抜かれた男は自分を見て、遊び人仲間としてまぁヨロシクな(又は遣りあがったな、どうなるか判ってるんだろうなぁ)ってな感じでニヤッ笑う。まぁナンパでなく結婚でも仕事でもなんにでも読み方は各々自由だろう。ただ実際の話として捉える事も出来てしまうというストーリーは、人間関係に疲れたらしい主人公が、蜘蛛の土俵にたって、自分はお前よりも強いんだという証しを誇示しているというちょっと悲しい、そしてそれでさえも蜘蛛に嘲笑されてしまうというラストが恐い。雰囲気は面白かったんだけど、まぁ結局よく読み取れませんでした。

Entry.02『激闘の午後』百内亜津冶さん
読み始めて、これはどこまで過激になるのだろうかと期待したが、少しがっかりした。器物破損程度のちょっと頭のおかしなおじさんで終わってしまったじゃないか。途中で心の中の混沌が透明になって戦いがそれから爽快に始まるのだから、もう少し暴れさせて欲しかった。

Entry.03『囁きの夜』緑目のさん
死を勧めるあいつが出てくる位だから、生きている事に疲れているんだろうが、あいつを追い返し、頑張らなくっちゃと思うんだから、まぁ主人公は大丈夫だろう。自分が変わらなくちゃいけないと気付いているからこその話は素敵だ。でも会話ばかりのこういった軽いせりふが続く話だと、主人公の頑張る姿勢もなんだか軽いものに感じられてしまうのでは無いかと思えた。

Entry.04『あいつとの悩める生活』ルイジードさん
そういう小さい事で悩んではいけません。そんな事で悩んでいるんじゃ後々困りますよ。と軽く答えてしまいます。だってただ彼女の変な個所をあげつらって、自分がそれを気にしているんだけど、まぁ腐れ縁でいつまでも続くんだろうなぁと思っているという展開では、たんなるノロケ話とは取れても、凄く悩んでいるとは思えません。

Entry.05『ポストくん』ストロベリーファンタジーさん
始めの1文で悩んだ。「ポストは入れないものがありますよ」「いれられない」ではなく「はいれない」だ。まぁラストで「物=私=アカリの手紙」だと判るんだけれども、この不明さはなんだか日本語が変なのかと思える程の不快感があった。その所為か、途中で出てくるあだ名の連続は興味を半減させて話がよく判らなくなってしまった。結局何がいいたんだ。不思議なといか変な話だなぁと笑えば良いのだろうか?

Entry.06『見張りをしていたはずのガードマンが』編ん手さん
サザンの曲は英語の単語と日本語の単語での音が微妙に似通っていて面白いという歌詞があるが、最近の歌では日本語として意味不明な歌詞が登場しているのを思い出した。こういう話が小説として成り立っても面白いかも知れないとは思うのだが、そういう意味での実験の為の話ならば、これは失敗作だと私は思う。( )内のツッコミとも思える合いの手は、面白いが、荒唐無稽な話はストーリー展開ではなく、可笑しさを狙っているんだろうが、固くなった脳細胞には面白さは伝わってこなかった。

Entry.07『空』内田士郎さん
昔読んだファンタジー小説で、時間が逆光する話があったけれど、この話は天使が墜ちて、人間になるという事なんだろうか?もう少しでも書いてくれれば、判ったかもしれないが、舞台設定自体も理解できなかった。まだ文字数もあるのだから十分に理解出来る様に書けると思うのだが、どうだろうか?

Entry.08『空と雲』ラディッシュ大森さん
登場人物の相姦、あいやぁ相関に意味があるのだろうか?途中で出現するホテルのおばちゃんや、覗きのしかも変態趣味のオーナー。ちんけなタクシー運転手と、金持ちらしいおばさん。なんだかただラストの1行が言いたかっただけの話のような気がした。まぁそういうのも面白いけどね。

Entry.09『プロペラ男』フォニックスさん
ひぇーっ。新種の伝染病かよ、おぃ。タイトルでどんな話かと想像はしたけれど、プロペラマニアの男だとか、頭にプロペラを付ける話だとか(これも異常だけど、この話は双発機だ)この話の展開だと、プロペラは両手に現れて、ひょっとしたら空でも飛べるのだろうか? 私も飛んでみたい。羨ましい。

Entry.10『タイムマシーン』クランパさん
タイトルは最近映画化されたあれからきたのだろうか? 話はタイムマシンーンとは全然関係ないが、過去に戻ったらしい男が、若い頃の自分と少し関係を持っているという話になってはいるが、教師の年齢が不明な為、過去に戻ったその動機さえも推測出来ない。これでタイトルがなかったら、一体何の話かさえも理解出来ないだろうと思う。だってただ名前が同じだけの話なんだもの。

Entry.11『なにか』坂口与四郎さん
格好ええのう。族・暴走族というのは、チーマーとかギャングとかいうのと違って、何だか男気に近いような筋が通っているようで、彼らよりは好きだが、私にはそういった人達との関係がないから、本当の所は判らない。走り屋としての真っ当?なそしてやり場のないモヤモヤしたものを発散させるための何かを求めている彼らの行動が、なんだかマンガの湘南爆走族みたいな感じもして、花束のシーンでは、やるなぁと思ってしまった。

Entry.12『一本イッといた。』村玉さん
おいおい。と笑ってしまった。そういえば私も子供の頃、カレーライスを食べながら「水、水」と言って、近くにあったコップの水を飲んだら、「馬鹿。酒だよ」というのと同時に口に入ったアルコールを吐き出した覚えがある(笑)

Entry.13『毒薬』オキャーマ君さん
即効性でない毒が突然効果を表すというのがあるのかどうかは判らないが、薬を飲めばそれが解毒剤というパターンはありふれていて、少し残念だった。やっぱりプロは会話なんかせずにチャンスがあったら、即実行しなければ相手に反撃のチャンスを作る事になるのだから、彼女はプロではなかったという事なんだろう。そういう意味で考えると、『プロになりきれない女』を書いたのだろうか? しかしそれならそれなりに、彼女の言動がプロっぽくなっているというギャップを書くか、プロらしからぬ言動をもっと書いた方が面白い。

Entry.14『江ノ島は今日も雨降り』青野 岬さん
別れる事になったのに、わざわざ車で江ノ島へ二人で行くという感覚が私には判らないが、喧嘩別れとか、好きな人が出来てとか嫌いになったから、という事ではないのかも知れないが(だったら何故?)又寄りを戻すのかとも思えるシチュエーションは、恋愛物の嫌いな私には(笑)どうにももどかしくて、ついていけなかった(申し訳ない)

Entry.15『神様がくれた時間』Makozさん
読んでいて何故か、『ダメ親父』というマンガを思い出しました。あんまり古いマンガなんで知らないかも知れませんが、連載当時ずーっと家族のみんなから苛められ、犬にさえ攻められ、ダメな親父だとレッテルを貼られるんですが、ラスト近くで、金持ちになり、今までヒドイ目にあわされてきた家族からは大切に思われ、しかもみんなの性格までもが凄く良くなって、今までのダメ親父への手酷い虐待はなんだったのだろうかとさえ思えるマンガで、結局ラストは感動物でした。それまでの長いながーい苛められるシーンはこの為の布石だとは到底思えない長さでしたから、逆に感動したものです。あんまり関係ないかも知れないけれども、今まで嫌われ者だと思っていた主人公が、本当は心の中では大切に思われていたという、まぁありがちな話というか、普通の家庭の姿だなぁというそういう感じしか受けませんでしたが、逆にそれを実感するという事が大事なんだろうなぁと思いました。

Entry.16『天国への坂道』やみさきさん
不参加表明により感想も中止

Entry.17『陰翁』鈴木新太郎さん
話は引篭もりの理由という訳ではなさそうだが、タイトルからすると、この主人公はおじいさんなんだろうか? まさか字は違うが、「陰嚢」の事で、外にでないといっている訳ではないと思うが、どうなのだろう? しかし幻惑の描写は、本当にそれっぽく感じられ、私を不安にさせてくれた。

Entry.18『ウサギ日和』なぎやまたけしさん
他の家がどうだか知らないが、というフレーズが何度か出てくるが、出てくる回数が中途半端な気がする。煩わしさを感じてしまった。もっと少なくするか、逆に多くした方が面白い様に感じた。しかし、この家は是非教えて頂きたい。馴れない私でもなんとかなりそうな感じがする。でも警察とかには知らせちゃダメよ。

Entry.19『ネコと魔法とコーヒーのそら』橘内 潤さん
ラストが恐い。この香里ちゃんの年齢が判らないから、余計にそう思う。もしも小学生の低学年だったらどうしよう。なんていう恐ろしい考えが浮かぶと、ラストでの先生のギリギリに耐える姿が、それは犯罪だよ、良くないよと声をさえかけそうで、香里ちゃんが可愛い分恐さが増してくる。

Entry.20『出立』xeiさん
小雪降る三月。東北の片隅から夜行列車に乗って少年は東京へとやって来た。ホームに残る母や妹は涙を見せ、大きく手を振った。なんていう昔々の話は今では流行らないだろうし、現実的でも無いけれど、こういった作品というのはなんだか感動的ではあるのだが、この話がお涙頂戴というわけではなく、これから待ちうける生活への期待として書かれているらしいところには、好感が持てた。しかし背中まで伸ばした髪を認めている小学校や中学があるのかは判らない。

Entry.21『目覚め』佐藤ゆーきさん
世界一毛深いのがアイヌ人だという事や、日本人の多くは恐らくアジア大陸からやってきた民族の子孫であろうという事は言われていますが、タイトルにある「目覚め」という感覚を1冊の本からのみ理解するというように書かれているのが、少し気になりました。元々そういう思いがあっての事でなければ、余りにも唐突過ぎるのではないかと思うからですが、まぁ事実は小説よりも奇なりといいますから、本当の所は判りません。ただ気になったのは、始めの方で、1文の中に、「…、僕の中の…僕の心拍数を…」という僕という品詞?(何だっけ?昔過ぎて判らない)次の1文の「僕は…いるから、僕はまた…」という、主語が二つあるというのは、結局は2文なのでは? と思われることです。なんだか日本語として読んでいて変だなぁ、と感じてしまいました。

Entry.22『花』Ameさん
なんかこういう屈折したというか、屈折せざるを得なかった主人公が出て来て、それを何とかしたいと考える人が出てくると、捻れてしまっている私の感性は、気恥ずかしさと照れが先だって、話にのめり込めなくなってしまう。施設といっても、色んな施設があるので一概には言えないが、読んだ印象だと親がいない子供向けの施設の様に感じるからだろうか? とここまで書いて、夏休み明けに読み直してみると、この少年の心理というものが、ひょっとしたら精神的な病気の為の施設なのかなぁとも思えてきた。自分は他の人とは違った世界に住んでいて、何故かそこで生かされている。そういうふうに読めてしまったのだから仕方がないが、そういう事ならこの主人公の気持ちというものが表現出来るという事をを考えると、凄い作品の様な気がしてきた。

Entry.23『向かいの世、夏のビックリハウス』ユキコモモさん
いやぁ、何が書いてあるのか判りませんでした。搬送されるという表現とヘリコプターからは孤島にでも隔離されている人なのかとも思ってしまいますし、住宅街を探しまわっている目の不自由な(これは何かの例えのようにも思えますが?)私が会いたい彼らも何だか不明です。ざらざらの舌で舐められて目を覚ます私は何だか人間では無いようでもある(「もう出よう。次に乗るのをやっと見つけたから」からは何だか、何かに寄生でもしているようだ)始めの方でもがいている私がいるのは、何かから出ようと必死になっているらしいのは、伝わってくるし、ラストで「出よう」と決めるのは、とにかくここから脱出だと考えているらしいのも判るんだけど、やっぱり理解出来ない。でもひょっとしたらこれは、ただ単に自分の殻を破って、何かをしようと模索している心の事なのかも知れないなぁとは思うんだけど、…やっぱり判らない。

Entry.24『普通のラーメン』一宮遼さん
結構有名どころのラーメン屋で、食った途端にマズイと思う時がある。そういう時は勿論それ以降その店には行かない。せっかく金を払って食べるのだから、せめて立ち食いのラーメンよりは美味しい物を食べたいというのが人情だろう。女子高生が文句をいうというのは、今までの味が好きで、これからもここに通いたい。又はもう一度あの味を味わいたいという思いからだろう。しかし文句を付けるという行動を取る現代的な女子高生の実態が楽しい。こういう味を大切にしない店は、美味しかったですよと言って、無視し、黙って潰してしまえばいいんです。

Entry.25『毬藻になりましょう』タクティクスさん
毬藻は読めるけど、百日紅(さるすべり)なんて私は読めないし書けない(笑)ジュリエット方式が入水自殺というのは何故かは判らないが、首吊りはあまり宜しくない、あくまでも綺麗にという前半部分を(というか殆どだが)想像かも知れないが、その反動としてのラストへの話の展開は面白かった。
とここまで書いたんだけど、これってQさんの作品だったのかぁ。とするとジュリエットはバスドライバーが憧れているらしい女性の名前で、(っていうかもういい加減にしてよという気持ちもあるんだけど…)尚且つ、始めに死のうとした手段では死ななかったという事にもかかっているのかも知れないなぁ、なんて思った。Qさんの作品ならばもう少し穴を探そうかと思ったら、松田さんが、自分の奥さんに対して「降ろしてあげたほうが…」なんていう言葉遣いは変だなぁとは思ったが、まぁ対した穴じゃないだろう。Qさん又参加して下さいよ。

Entry.26『青空』ニョロ鰻田さん
ラスト近くまで、段々面白くなってきたなぁ(スケベなオジサン)と思ったら、ラストで主人公の感慨があって、なんだか始めの方の主人公の気持ちの軽さとのギャップが青空のように澄み切る事がなくて、少しがっかりした。勿論こういう展開だっていいとは思うんだけど、私にはこの元の生活には戻れないという悲しさよりも、主人公の軽さから、例えば、この世界で生きていくかぁなんていうもっと軽い気持ちのラストを期待してしまったからだろう。

Entry.27『タイヘンおばさん』キリハラ キリオさん
なんだか訳わかんないけど、笑った。しかし男の子には、「タイヘン、タイヘン」よりも「大変だよぅ、大変だよぅ」という言葉を続けて貰いたかった。その方が子供っぽくて楽しい。

Entry.28『素晴らしき国』kobaさん
酒を飲まない私は、そういう所へは行った事がありませんが、何日も出なかったウンコが出るような気持ちのいいもんらしいという事は聞いております(笑)

Entry.29『The ides of march』黒男さん
こういう歴史物っていうのは、登場人物が段々わかってくるという手法で書かれると、誰だ?と考えてしまって、話の内容に集中出来なくなってしまって、効果が薄れるような気がする。下手すりゃ、殺されるのがシーザーだって読んでも判らないかも知れない(笑)まぁ余りにも有名なセリフだから、シェークスピアを読まなくても判るとは思うが、私も英語の教科書で「ロミオとジュリエット」の一部分を読んで、後も喜劇を少し読んだだけだ。この元になったであろう、「ジュリアス・シーザー」も映画位でしか知らない(笑)から、女たらしとか酒池肉林などというイメージがあるシーザーだが、あの頃の時代背景をよく知らない私には、あれが普通だったのではないか?なんていう、思いさえある。国の為を思ってシーザーを殺すというか、殺しをさせられるブルータスの悲しみは出ているような気はするが、どうせ作り物ならシェークスピア版ではない、作者独自のブルータス像があっても良かった気がする。

Entry.30『愛に、感謝』マーマレード=ジャムさん
まず始めの「確か私がもつれた糸を取られた」で何じゃ?と思い、中盤の「早速来た」から後ろで諦めてしまった。この作品は判らなくても良くて、ただ雰囲気を楽しめばいいのかも知れないが、私には雰囲気も楽しめなかった。雰囲気の為ならば、何だか違う方向へ向かった方が良いと思える。

Entry.31『おい丼』自作
おいおい、そりゃあ無いだろう。一体「おい丼」って何なんだぁ?と思って頂ければ嬉しいんですが、やっぱりこれは反則だよなぁ。という訳で、おい丼は何かというと、それはやっぱり秘密です(笑)

Entry.32『提言』羽那覇沖権八さん
そういえば最近ACのコマーシャルって多いけど、CMの放映料って結構高いんだが、その金はどこから出ているのだろうか? 以前某ホテルの客室管理システムが1億位の値段だったのだが、そのホテルのCM作成料(15秒のCG)が7億とかいうんで怒っていた同僚がいたのを思い出した。勿論作成料と放映料とは違うけど、噂では高いという話を聞いた事がある。ラストのオチを期待してしまった分だけ、夢オチみたいで少し残念だった。

Entry.33『この女』乙人君さん
「次に男は、古ぼけた冷蔵庫を開いて彼女に訊いた」で笑ってしまった。ホラーがこんなにポップな感覚で小説になるのは、新鮮な感じがするし、好感が持てるというか好きです。こういう手法でホラーが読めると、スプラッターであっても、気味悪さとか気持ち悪さは目立たないから、今度マネさせて頂きたいです。

Entry.34『願い月』さとう啓介さん
「♪上弦のぉ月だったけ、久しぶりだぁね、月見るなんて」吉田拓郎の「旅の宿」だったかなぁ。ストーリーは、実話なのかも知れないが、大学の合格祝いに腕時計を買ってくれるというのは、なんだか少し古い気がする。出来れば現代風なアレンジが欲しかった。上弦の月が受け月といって、願いを叶えてくれるといわれているのは知らないが(作者の創作?)東京じゃ、余りにも人々の願いが多すぎて、月が受ける程の星が見えない。きっと願いである夜空の星は皆に使われてしまったのだろう。なんて少し感傷的になってしまった(笑)

Entry.35『balance』mokuさん
中盤の私というのは、料理の先生の事なのだろうか? そうとでも考えないと、「2週間もの長い夢から先生を覚まさせる、彼女の唯一の現実」という意味が不明になってしまう。しかしだとすると、始めの私と、中盤の私、それからラストの私の話としての繋がりが非常に判り難い。ラストでの「あの人の、スーツケースを…」に到っては、あの人が誰なのかも不明だ。「お礼の歌さえ、唄うことが…」なんていう文章は良いし、バランスが大事だという事からの彼女の恋の行方は、雰囲気としては判るのだが、そこへ到達する迄のストーリーが判り難くて、少し残念だった。

Entry.36『猫のことで』アナトー・シキソさん
やっとこのシリーズも終盤に差し掛かったのだろうか? 登場するミカという女性は実はカミ(神)でなんていう話に展開しそうな雰囲気もしてきた。まぁ、今回の話だけを単発に読んでしまうと、1000字の投稿作品としては、及第点は上げられないから、次回に期待したい。

Entry.37『思惑』3月兔さん
少ない給料が解決するというその理由が、保険金だとは思わなかった。そんな一時金じゃ、余程の金額で無いと解決にはならないからそう思ってしまうのだし、少ない給料でどうやって高い保険料を払っていくのか不安になるからだろう。話としてはまぁよくあるというか、よく書かれるパターンだしストーリー展開も面白いのだが、やっぱり私には、新婚3ヶ月で少ない給料なのに、朝食は和食と洋食を別々に作るとか、高い保険料を払うといった彼らの、少し現実味のない生活感に違和感を覚えてしまう。

Entry.38『逆襲』マー君さん
この話はなんだろう? 山田太郎氏の逆襲というには少しおとなしい気がするが、山田太郎といえば「新聞少年」という歌を唄っていた人(古すぎる)や、明訓高校野球部のドカベンを思い出す(あれは始め柔道漫画だと思っていた)が、しかし毎週2回必ず時間ピッタリに登場して時間通りに行動するという本当に変態とでもいうべき人物は興味の的だろう。そういう人が店に来なくなったという展開からの紳士としての登場には話がどうなっていくのか期待してしまうのだが、あっけない展開がタイトルと比べてしまうからか、力が抜ける。ただ、ミカさんのラストのせりふは、彼女の山田氏への今までの態度への悔しさとでもいうべきものや、やっぱりコイツは変態だったという恐怖とがあって面白い。

Entry.39『二枚』越冬こあらさん
才能がない場合には、やっぱり地道な努力をするしかないという現実が悲しいですねぇ。才能に溢れて、その才能を十分に使っている人は幸せなんでしょうが、持っている才能以外のところで一生懸命才能を発揮しようとしても、無駄骨になるばかりか、その才能さえも錆付いてしまうかもしれないと思うからこそ、転職なんていうことをするんでしょうが、しかし転職とはいっても、実際には転社する(仕事が変わるんじゃなくて、会社が変わる)人が殆どだというのは事実でしょう。ラストは、それだけ二枚舌の効果はあるという事でオチているのかどうかわからないが、久しぶりのこあらさんの作品は少し変わった感じがした。

Entry.40『子供の味方』カピバラさん
あれれ?これはごんぱちさんとの競作だろうか?あまりにも展開が似ている。とはいえ、どちらが面白かったかというと、結論としては個人的には、こっちの作品だった。ただ、子供を放って母親が隠れるというのは、いくらなんでも遣りすぎだよなぁ。そんな母親見た事ない。まぁだからこそのストーリーなんだけど、やっぱり純真(笑)な私にはこういう展開は好きにはなれない。

Entry.41『青い空と白いボール』川島ケイさん
童話のような展開で面白い。10年近くもかかって返せたボールは、ひょっとしたら昔のボールではないのかも知れないが、なんだか心がほっとなる話だ。私もたまにはこういうのを書いてみたいとは思うし、題材だってそこいらに転がっているはずなのに、今の私にはこういった話を見つけることが出来ません。それを考えると少し悲しい。

Entry.42『無声小説』てこさん
発想は面白いし、これと似た事を何度かしたこともあるしこれからもしようとさえ思っているのだが、無声映画には弁士がいるのと同様、無声小説には作者や読者がいるわけで、登場人物が喋らなくとも、はたまた擬音さえなくとも、小説というのはとくに1000字くらいだと、成り立ってしまうのだが、それを逆手にとってしかも1000字という枠で遊んでいる姿は楽しい。しかし途中で出現する女性器の表現は夢精小説にかけているのだろうか?

Entry.43『花*花』るるるぶ☆どっぐちゃんさん
江戸川乱歩のあのどろどろとした性と魔界じみた不可思議な世界が広がっていくような感じがする。男だけれど綺麗になりたいという想いが、なぜ男に身を売るという結果にたどり着くのかは疑問だが、小説の展開としては面白い。女々しいという言葉は男性にしか使われないけれでも、雄々しいという言葉が女性に使われるのを聞いた事はない。なんだか言葉の中の男女差別ではあるが、そんな事をふと思ってしまった。

Entry.44『バスドライバー・4』有馬次郎さん
仕事をしたくない時には、たまに仕事を休んでぼんやりするのもいいものではあるが、なかなかそうはいかないところが、家庭を持っている者の辛いところではある。ただこの運転手もそうなのかと問われると、多分このキャラクターならば「客がいれば、私はどんな時でも運転します」とはっきりと答えるんだろうが、今回の飽きてきたという運転が、このシリーズも終わりなのかと思わせる。暗い出だしだったから、今回のバスドライバーでは、みんなでガードレールに追突なんて事にならなけりゃいいがと思っていたが、流石にそれはなくて安心した。出来れば作者のもっと明るい話を読んでみたいなぁと思うこの頃である。

Entry.45『ドアを壊す』伊勢 湊さん
この作者の話の展開はいつも参考になる。組み立て方が巧いと思う。なんだか学生時代からバイトしていた会社にそのまま入社したみたいな感じの状況ではあるが、そろそろ結婚も考えなくちゃならないし、このままここで埋もれてしまっていいんだろうか、なんていう気持ちもあって、少し不安になっているらしい主人公が爽やかな感じがした。