『甘辛コンビの推理』
天野光夫26才独身
渋井唐子3?才独身
ひとたび事件が起これば速やかに解決する。
甘辛コンビと人は言う。


「警察の者ですが、佐藤俊夫さんですね?」警察手帳を見せて天野はドア
チェーンを開けさせた。
「日曜の朝早くから何ですか?」ネクタイ姿の俊夫は、緊張した面持ちで
問い返した。
「早朝から申し訳ありませんが、お伺いしたい事が…」ワンルームの部屋
をじっくり覗きながら、天野はドアの中に体を滑り込ませた。
「岩井さんは、ご存知ですね?」
「ええ、知っていますが?」不審そうに、俊夫は答えた。
「今朝テレビか新聞は…?昨夕岩井さんが襲われて怪我をなさったんです
が…」上目遣いに天野は俊夫を覗った。
「えっ、知美は無事なんですか?病院はどこです?どんな具合なんですか
?」焦った様子で俊夫は聞き返してきた。
「いやいや、怪我をしたのは、お兄さんの知雄さんです。」天野がそうい
いながら頭を掻いた。
「ところで昨夜はどちらへ行かれたんですか?『遅くなって帰宅した』と
隣りの方がおっしゃていましたが」疑いの態度をありありと見せながら、
天野は俊夫に問いただした。
「何か関係あるんですか?」俊夫は憮然とした態度で切替えした。
「署の方で伺っても良いのですが」天野はそういって俊夫の手をぐっと掴
んだ。
「こらこら、そう乱暴にしちゃいけませんよ」脇で見ていた渋井が、天野
を押さえながら俊夫に質問を始めた。
「何故、知美さんが怪我をしたと思ったのですか?」
「そりゃ、『岩井さんはご存知ですか』と聞かれた後で、襲われたといわ
れれば誰だって怪我をしたのは、付き合っている知美だと思うじゃないで
すか?」俊夫は憤慨して答えた。
「それじゃ、質問の繰り返しになりますが、今朝テレビか新聞をご覧にな
りましたか?ラジオでも構いませんが」渋井が俊夫の目をじっと見て聞き
返した。「いいえ、あなた方が来てから起き出したんで、何も知りません
でした。」少し気持ちを落ち着けて俊夫はゆっくりと答えた。
「やっぱり署へご同行願います。」


 取り調べの結果、佐藤俊夫が犯人だった。結婚に反対していた知雄を恨
み、昨夜襲ったのだった。知雄が死んだと思い立ち去ったが、幸い傷も浅
く発見も早かった為助かった。意識が戻った知雄の証言で事件は解決した。

「ところで、何故俊夫が怪しいと思ったんですか」天野は渋井に聞いた。
「起きたばかりだと言ったんだよ。普通ネクタイ締めたまま寝ないよ」渋
井は天野にそう答えた。