『サンタの贈り物』
「パパ。サンタさんっているよね?」
 4つになる娘が真剣な顔で聞いてきた。
「もちろんいるよ。去年だってサンタさんからプレゼント貰ったでしょ」
「だけどいづみちゃんが、いないっていうんだよ。去年もプレゼントなかったっんだって」
「そう?いづみちゃんだっていい子なのにおかしいね」
「うん。いづみちゃんいい子だよ。おかしいでしょ」
「でもいづみちゃんいい子だから、今年はいづみちゃんにも、サンタさんきっと来るよ」 
 隣りのいづみちゃんにはお父さんがいなかった。
 女房の話だと、去年はケーキだけだったが、今年はなんとかプレゼントを買ってやれると話していたという。

 街に出るとそこらじゅうでジングルベルの曲が流れ、カップルが寄り添っている。何かの木の下でキスすると、一生仲良くやっていけるとか何とかあった様だが、日本ではそんな事には関係なく、キスしまくっている。
「家はクリスマスが無い」
 小学校の同級生で寺の息子だった友人が、怒っていたのを何故か思い出した。
 儒教に神道、仏教にキリスト教。一応その場は厳粛な気持ちで対応している。元々が八百万の神々を信仰していたんだから、当然なんだろう。何でも受け入れてしまう。それはそれで悪い事だとは思わない。元々は心の救済の為の宗教なのだから。年末だけでも、他人を思いやるやさしさが持てれば好ましい。 

 子供の頃も家には煙突がなかった。私はサンタさんが入って来られないと心配したものだ。が、娘は何故かそんな事は気にしていないらしい。ただ単にプレゼントが貰えてうれしいだけなのかも知れない。

「サンタさんに、何をお願いしたの?」
「いもうと」
 即座に答えが返ってきた。
「今年は無理かもしれないよ」
「どうして?」
「サンタさんも準備しなくちゃならないだろ。妹の場合は準備に時間がかかるんだよ」
「ふーん。そうなのママ?」
「そうね。サンタさんもすぐって訳にはいかないかもね。ママだったら、別のお願いもしちゃうけどな」
「じゃーね。うさぎさん」
「生きてる奴?」
「そう」
「そう。じゃ、いい子でいないとね」
「うん」

 ウーン妹か…。そろそろ二人目を考えてもいいかな。

「ママ。妹が欲しいんだって」
「パパ頑張ってね」
 女房が笑った。