『赤いきつねと緑のたぬき』
「力じゃ負けたが、知恵なら負けねぇ」
「知恵でもワシが上じゃ」
 山の中腹の、ちょっと木が無くて広場になっている所で、キツネがたぬきに、ケンカをしかけた。
 その日は山の動物達の相撲大会で、たぬきに投げ飛ばされたキツネが、負け惜しみに云ったのが始まりだった。
「やれ、やれーっ」
 イノシシがちゃちゃを入れたのも後押しになって、相撲大会は結局、キツネとたぬきの化け比べになった。
 葉っぱを咥えたキツネが宙返りすると、綺麗な女性になった。
 たぬきはというと、自分の尻尾を咥えて、ささっと廻ったと思ったら、若い男になっていて、女性に化けたキツネの上に乗った。
「どうじゃ。どうじゃ」
 身体を動かしながらたぬきが聞くと、キツネはうんうんと唸っていたが、下の方から声が聞こえた。
「そ、それは、力技だ。知恵で勝負せぇ」
 元の姿に戻ったたぬきが起きあがると、赤くなったキツネは突然、武士に化けて、たぬきに何度も刀で切りつけた。
 たぬきはぷっと屁をしたと思ったら、憐れにも身体を薄く切り刻まれていた。
「俺の勝ちじゃ」
 きつねが勝ち誇ると、狸の身体は消えていて、声が聞こえてきた。
「まだまだ…」
 みるみる刀が、たぬきに変わった。