『飛ぶ島』
 10年前にオープンされた太平洋上の空中複合レジャーアイランド『ヘブン』
 太平洋上のしかも空中にある為、どこの国にも属さないという。
 地球の磁気を利用して浮かんでいるという噂もあった。
 中にはレジャー施設だけでなく、ホテルから病院・図書館・美術館などもある大きな島だ。入島時に金を払えば、中はフリーだというから、入島さえすれば天国だ。
 入島時に素っ裸にされ、健康診断迄される為、何も持って入れないが、治安も良いという。外部との連絡は自由だし、各国の放送も見る事が出来た。
 何でも揃っている物の一つには、攻撃された時の報復用として核ミサイルも保有していて、防衛威嚇の為の使用しない核だといわれている。
 入島料は、一律10万USドルでしかも60才以上という条件があった。こつこつ貯めていけば、何とか入れる金額ではあった。
 子供達は親への愛情表現の為に、こぞって『ヘブン』へと親を送った。子供達へは『楽しんでるよ』の連絡以外はなく、1年程経つと死亡通知が送られ、しかも死因はみな自然死だった。
 その島は天国の名に相応しく、誰も帰っては来なかった。
 人々も変だとは思ったが、誰も何も言わなかった。