1ー1アドレノメデュリンとPAMPの分布と新たな分子型

宮崎医科大学第一内科:北村和雄、加藤丈司、松井英三郎、桑迫健二、江藤胤尚

国立循環器病センター研究所:寒川賢治

【目的】アドレノメデュリン (AM) とPAMPは共通の前駆体より生合成される強力な降圧ペプチドであり、両ペプチドとも前駆体より中間体のAM-glyおよびPAMP-glyが生合成された後に、C末端がアミド化され、成熟型ペプチドが生合成される。我々はAMとPAMPの認識部位の異なる各種ラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて、各組織でAMとPAMPの生体内分布と分子型を検討した。 【方法】現在までに確立した、AMのC末のアミド構造やAM分子全体を認識するRIAに加え、今回AMのリング構造を認識する高感度RIAを確立した。また、PAMPのRIAはC末を認識するRIAを用いた。 【結果】いずれの種でもAMやPAMP免疫活性は副腎髄質に最も高濃度存在していた。副腎髄質や心房においてはAMとPAMPはほぼ近い濃度存在したが、肺をはじめとする他の組織では、AMの方がPAMPより高濃度存在した。また、血中においては中間体のAM-glyが高濃度存在していたが、組織中には成熟型がほとんどであった。PAMP免疫活性を指標としたRIAにより、PAMP免疫活性には20個のアミノ酸からなるPAMP以外にPAMP(9-20)にあたる12個のアミノ酸よりなるPAMP-12が主要な分子型として存在することを明らかにした。PAMP-12はPAMP-20に匹敵する降圧作用を示した。一方、ウシ副腎髄質からはAM(11-26)をAM由来の主要な分子型として単離構造決定した。AM(11-26)はウシ副腎髄質には総AM免疫活性の5−25%存在したが、健常人血中には検出できなかった。合成AM(11-26)をラットに経静脈投与し血圧の変化を観察したところ、用量依存的で強力な昇圧活性が見られた。また、心拍数も用量依存的に増加し、昇圧活性の持続は1−2分間であった。 【結論】AM前駆体より生合成される内在性のペプチドとして、AMやPAMP以外に、PAMP-12やAM(11-26)の存在が判明した。PAMP-12はPAMP-20に匹敵する降圧効果を示したが、AM(11-26)は強力な昇圧活性を示した。

1ー2アドレノメデュリンの生体内分布

浅田祐志郎、原 誠一郎*、丸塚浩助、北村和雄*、江藤胤尚*、住吉昭信

宮崎医科大学第一病理、*第一内科

【目的】アドレノメデュリン(AM)はヒト褐色細胞腫より単離された52個のアミノ酸よりなるペプチドで、血管拡張を介した降圧作用を有しているが、それ以外にも、水利尿、ナトリウム利尿作用、気管支拡張作用、アルドステロン分泌抑制作用など多くの生理活性を有することが知られている。また、AMmRNAの発現は、副腎髄質をはじめ、心、肺、腎、などの多くの臓器で認められている。今回、ヒト、ブタ、及びラットの全身臓器におけるAMの局在を免疫組織化学的に検討した。 【方法】ヒト組織(剖検症例、手術、生検標本)、ブタ、SDラット組織を10%ホルマリンあるいは4%パラホルムアルデヒド液で固定後、パラフィン包埋切片を作成。AMに対する3種のモノクローナル抗体(抗AM[12-25],[25-36],[46-52])を用いて、免疫組織化学染色(ENVISION, DAKO社)を行いAM抗原の組織内局在を観察した。 【結果】AM抗原は、ヒト内分泌組織(副腎髄質、皮質、膵島、下垂体、Neuroendocrine cel)、循環器系組織(心筋、血管平滑筋、内皮細胞)、腎組織(遠位尿細管、集合管)さらに消化器、呼吸器、生殖器の粘膜上皮に広範に認められた。ブタ、ラット組織においても類似の染色態度であった。また3種の抗体において、陽性細胞の分布に差は認められなかった。 【結語】AMは循環器、内分泌組織のみならず、全身組織で産生、分泌されており、循環調節のみでなく多くの生理活性を有するものと推察される。

1ー3アドレノメデュリン受容体の機能解析

岡野一郎1,小野紫1,2,寒川賢治1(1国立循環器病センター研究所・生化学部,2帝京大学医学部・麻酔科)

アドレノメデュリン(AM)は多彩な機能を有する生理活性ペプチドであるが、その受容体については、CGRPと一部共有していること以外不明であった。しかし昨年Glaxo社のMcLatchieらにより、G蛋白質共役型のオーファン受容体であったCRLRが、細胞膜1回貫通蛋白質であるRAMP1と相互作用することによりCGRP受容体を、また構造的に類似するRAMP2と相互作用することによりAM受容体を形成するとの報告がなされた。今回私達は、HEK293細胞を用いたinvitroの系により解析した結果、CRLRとRAMP1との組み合わせはCGRPに対する高親和性受容体を形成するものの、CRLRとRAMP1,2,3いずれの組み合わせにおいても高濃度のAM添加時には細胞内cAMPは上昇するもののAM高親和性受容体の形成は認められなかった。またヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるRAMPsとCRLRの遺伝子発現を解析した結果、HAECにはCRLRが高発現している一方、HUVECには発現は非常に低く、CRLR以外にもAMの未知受容体が存在することが示唆された。更にマウスのRAMPsとCRLRのホモローグを単離し各組織における発現分布を解析したところ、CRLRとRAMP2は肺において、RAMP1は脳において、そしてRAMP3は精巣で高発現していることが明かとなった。

1ー4線維芽細胞におけるアドレンメデュリンの産生とその意義

南野直人、井角能隆、友田芳夫、片淵 剛、寒川賢治

国立循環器病センター研究所  

アドレノメデュリン(AM)は、副腎髄質細胞のみならず血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、単球/マクロファージ、心筋細胞など広範な細胞で活発に産生されることを明らかにしてきた。この事実は、AMが血管の収縮弛緩調節以外に多様な機能を担う可能性を示唆する。中でも、線維芽細胞は最も高いAM分泌水準を示すが、線維芽細胞がペプチド性因子を多量に分泌するとは考えられていなかった。これが普遍的事実なのか、であればその機能は何かという観点から研究を進めた。  胎児、肺、皮膚由来の線維芽細胞に加えて、新生ラット心臓の線維芽細胞について検討した。心臓線維芽細胞のAM分泌量は、内皮細胞と同程度で心筋細胞の約3倍であった。心臓線維芽細胞のAM産生は、他の線維芽細胞と同様に炎症性サイトカイン、LPS、糖質ステロイドで増加したが、心筋細胞では変化しなかった。AMは心筋細胞、線維芽細胞のIL-6産生を増加し、IL-1βで誘導される線維芽細胞のIL-6産生をさらに8倍亢進した。心筋細胞、線維芽細胞におけるNO産生をAMは1.5倍増加し、IL-1β刺激下の線維芽細胞のNO産生をさらに2.5倍増強した。心臓線維芽細胞のET-1分泌量は心筋細胞より9倍多く、AMは線維芽細胞のET-1産生を60%に抑制したが、心筋細胞では変動を与えなかった。  マウス胎児由来Swiss3T3細胞でも、AMは炎症性サイトカインと共同してIL-6産生を強く亢進したが、IL-1βで誘導されるTNF-α産生を逆に最大で20%に減少させた。この反応は10nMで1時間以内に最大抑制に達する強力、迅速な反応で、その作用は受容体-cAMP-PKA経路を介すると推定された。  以上の結果より、AMは線維芽細胞で多量に産生されるとともに、産生刺激条件下でサイトカイン産生やNO産生を強力に変動させ、炎症時の線維芽細胞の機能調節因子として機能していると考えられた。

1ー5アドレノメデュリンの臓器保護再生における意義

京都大学臨床病態医科学・第二内科 中尾一和、伊藤 裕、向山政志

アドレノメデュリン(AM)は、心臓、血管、腎臓等、循環・体液量調節に関与する諸臓器に発現し、その局所ホルモンとしての意義が注目されている。最近、局所ホルモンが臓器の組織構築破綻に伴う機能不全に対する制御・保護作用を有すること、更に機能廃絶に陥った臓器の再生作用を発揮することが明らかにされつつある。我々は、これまでナトリウム利尿ペプチド・NO/cGMPカスケードが内皮の再生を促進し、また腎糸球体障害に対して保護的に作用することを明らかにした。更に、AM特異的中和モノクローナル抗体を開発し、これを用いAMが内皮細胞や血管平滑筋細胞、腎メサンギウム細胞に対しcAMPカスケードを介しその遊走・増殖を制御することを報告した。AMは、発生過程において、血管発生分化において重要な意義を有するTGF-βの発現との関連が報告されており、TGF-βはまた腎硬化における意義も明らかにされている。そこで、我々はAMの血管・腎の保護・再生における意義に注目し検討を行った。今回マウスES細胞を用いた新しい血管発生・分化モデルを開発した。すなわち、京都大学分子遺伝学教室西川伸一教授との共同研究により、マウスES細胞よりflk1(中胚葉マーカー)+の細胞をFACSを用いてソーティングし、この細胞群をIV型コラーゲンコートディッシュ上で再培養し、更にVEGFやPDGF等増殖因子の添加を行うことにより内皮細胞(VE Cadherin+、PECAM+)や血管平滑筋細胞マーカーであるαアクチン+の細胞の誘導に成功した。更に、これら前駆細胞のin vitroゲル内3次元培養を行うことにより、内皮細胞による管腔構造とその外部に血管周皮細胞を有する完全な血管構築を構成することに成功した。一方我々は、AMの腎保護作用の検討のため、間質線維化モデルとしての尿管結紮水腎症モデル、糸球体障害・硬化モデルとしての5/6腎摘モデル、及び増殖性腎炎としての抗糸球体基底膜腎炎モデルを確立した。今回、これらの血管分化、腎障害モデルにおけるAM、その受容体(CRLR)及びその修飾膜蛋白としてのRAMPファミリー(RAMP1, 2, 3)の発現を明らかにした。また、これらのモデルにおけるAM、cAMP投与の効果も検討中である。

1ー6泌尿・生殖器におけるAdrenomedullin family の発現と生理作用

柳田俊彦、小林英幸、山本隆一、上園保仁、和田明彦    (宮崎医科大学薬理)

降圧ペプチドとして発見されたAdrenomedullin (AM) は、循環ホルモンとしての作用のみならず、オ-トクリン・ パラクリン因子として各組織で多彩な作用を持つことが明らかにされつつある。しかし、下部尿路および陰茎、前立腺、精巣、精嚢などの男性生殖器における知見は未だ乏しい。また、女性生殖器のうち子宮においては、妊娠に伴いAMの発現が増加し、循環血液量の増加や血管弛緩作用に関与することが示唆されたが、子宮平滑筋そのものに対する作用については、未だ明らかにされていない。一方、AM前駆体より生合成されるProadrenomedullin N-terminal 20 peptide(PAMP) についても、下部尿路および生殖器における発現や作用は、未だ不明である。そこで本研究では、下部尿路および生殖器における AM、PAMP の発現とその調節機構および生理作用の解明を試みた。 1)雄ラットの下部尿路および生殖器におけるAM、PAMP の発現:Northern blot において、AM mRNAは、下部尿路および生殖器に幅広く発現していたが、特に前立腺では、副腎の10~20倍の発現がみられた。さらに、RIA による組織含有量の測定では、mRNAの発現同様、前立腺のAMが高値を示したが、PAMPは、いずれの組織においても低値であった。免疫組織染色によるAMの組織内分布の検討では、前立腺の腺上皮細胞が陽性であった。2)ラット摘出子宮平滑筋に対する作用:AMは、ラット子宮の自動運動を濃度依存的に抑制した。また、bradykininによる子宮収縮を抑制した。3)ラット摘出膀胱平滑筋に対する作用:AMは、膀胱の静止長および、AChによる収縮には効果を及ぼさなかったが、AM(100 nM) 存在下に、膀胱切片を伸展すると、AM非存在下に比べ有意に伸展した。 以上より、AMは、泌尿・生殖器組織において、オ-トクリン・ パラクリン因子として発現し、さまざまな生理作用を担っている可能性が示唆された。

1ー7循環器疾患におけるアドレノメデュリン遺伝子近傍のマイクロサテライト多型の検討

獨協医科大学 循環器内科

石光俊彦,細谷和良,塚田高樹,南順一,中村美貴,太尾泰雄,小野英彦,土谷範昭,堀中繁夫,松岡博昭

【目的】アドレノメデュリン(AM)のヒト・ゲノム遺伝子の近傍に存在するマイクロサテライト多型と本態性高血圧(EH),冠動脈疾患(CAD)および糖尿病性腎症との関係を検討した。 【方法】ヒトAMをコードするゲノムDNAを含む14 kbのBamHI断片をプローブとしたFISH法により、ヒトAM遺伝子の染色体上の局在を決定した。そして、その近傍において数bpの繰り返し配列から成るマイクロサテライト部位を検索した。健常人300名(男 219, 女 81; 56±1才),EH患者143例(男 89, 女 54; 57±1才),冠動脈造影にて病変の確認されたCAD患者111例(男 83, 女 28; 59±1才),腎障害のない糖尿病患者(DM)106例(男 64, 女 42; 59±2才)および糖尿病性腎症による透析患者(DM-HD)128例(男 81, 女 47; 56±1才)の末梢血白血球より抽出したゲノムDNAをテンプレートとして、AM遺伝子近傍に見い出された(CA)nの繰り返し配列を含むDNA鎖を蛍光標識プライマーを用いたPCRにて増幅し、シーケンスゲル電気泳動にてDNA鎖長および(CA)nの繰り返し数を決定した。 【結果】ヒトAM遺伝子は第11染色体の短腕遠位部(11p15.1-3)に位置し、その3 kb 3'下流に(CA)nの繰り返し配列が存在した。日本人におけるCAリピート数は11, 13, 14および19の4種類であった。健常人における各アレルの頻度は11: 29%, 13: 33%, 14: 35%, 19: 3%であり、EHでは11: 30%, 13: 33%, 14: 30%, 19: 7%と19リピートの頻度が高かったが(χ2=9.86, p<0.02)、CADでは11: 28%, 13: 32%, 14: 38%, 19: 2%、DMでは11: 29%, 13: 37%, 14: 30%, 19: 4%と健常人に比べ有意な違いはなかった。これに対し、DM-HDでは11: 33%, 13: 27%, 14: 31%, 19: 9%と19リピートの頻度が多かった(χ2=17.2, p<0.001)。 【結論】AM遺伝子の近傍に存在する(CA)nのマイクロサテライト多型は本態性高血圧の素因および糖尿病における腎障害の進展と関連を有する可能性が推測されるが、冠動脈疾患のリスクとは関係しないと思われる。

1ー8アドレノメデュリンノックアウトマウスの作成

藤田敏郎、下澤達雄、柴垣有吾、石橋光太郎、加藤茂明、寒川賢治

東京大学分院内科、第一製薬、東京大学分生研、国立循環器センター

【目的】アドレノメデュリンの生理活性をさらに詳しく検討するために発生工学的手法を用いてアドレノメデュリンノックアウトマウスを作成し検討する。 【方法】アドレノメデュリン遺伝子はPAMPとアドレノメデュリンをコードしておりそのそれぞれは生理活性が異なるため、個別にノックアウトすることが好ましい。我々はコンディショナルノックアウト法を用いてアドレノメデュリン単独ノックアウトマウスの作出を試みた。 【結果】7匹のキメラマウスを得、現在250匹のヘテロ体を得ている。F2世代は50匹以上解析したところホモ接合体は得られていない。また各個体あたりの産児数も少なく、ホモ接合体は致死である可能性が考えられる。ヘテロ接合体の検討では、成長に異常を認めない。また、各組織にも病理学的には現在のところ明らかな異常を認めない。血圧に差はなく、またアンジオテンシン負荷、食塩負荷時の血圧にも差を認めないが、心肥大は増強される傾向にある。 【結論】アドレノメデュリンは胎生期に重要な役割を果たす可能性がある。

1ー9アドレノメデユリンの中枢作用

山下 博 産業医科大学・医・第一生理

アドレノメデユリンを中枢内に投与すると、血圧上昇、腎交感神経の賦活、飲水・摂食抑制、食塩嗜好性の抑制などを引き起こす。アドレノメデユリの中枢における作用部位および作用機序の詳細は不明である。我々は、アドレノメデユリンが自律神経系と神経内分泌系の統合部位である視床下部室傍核および視索上核に存在すること、下垂体後葉に運ばれていること、およびアドレノメデユリンの脳室内投与によりオキシトシン産生ニューロンが選択的に賦活されることを明らかにしてきた。今回、我々は覚醒ラットの脳室内にアドレノメデユリンを投与し、血液中のオキシトシン濃度およびプロラクチン濃度をラジオイムノアッセイ法により測定した。実験は、ウイスター系成熟雄ラットを用いた。ネンブタール麻酔下で、左側脳室上方1mmのところにガイドカニューレを挿入し、頭蓋骨にデンタルセメントで固定した。5日間の回復後、脳室内にカニューレを刺入し、アドレノメデユリン(1, 10 mg)またはコントロール群には生理食塩水を投与した。投与後、5分、10分および15分後に断頭して体幹より血液を採取した。各群5−8匹を用いた。血中オキシトシン濃度は、投与したアドレノメデユリン量に依存して著明に増加した。10分後の血中オキシトシン濃度(240.9 +- 65.5 pg/ml, n=8)が最も高値を示した。この時のコントロール群の血中オキシトシン濃度は17.0 +-1.0 pg/ml (n=7)であった。一方、血中プロラクチン濃度は、アドレノメデユリンの中枢内投与により有意な変化を示さなかった。さらに、麻酔下ラットの視床下部室傍核からオキシトシン産生ニューロンの神経活動を記録しながら、アドレノメデユリンを脳室内に投与したところ神経活動の増加が見られた。以上より、脳室内に投与したアドレノメデユリンは選択的にオキシトシン産生ニューロン活動を増加させ、その結果オキシトシン分泌を引き起こすことが明らかとなった。

1ー10アドレノメデュリンはMax遺伝子を誘導することによって内皮細胞のアポトーシスを抑制する。

平田結喜緒、七里真義 東京医科歯科大学医学部

血管内皮細胞におけるアポトーシスについてはいくつかの増殖因子の関与が報告され ているにすぎず、その制御についてもほとんど不明である。我々は最近、アドレノメ デュリン(AM)が血管内皮細胞における強力なオートクリン/パラクリン・アポトーシ ス生存因子として内皮保護的に働き、これまで知られているどの内皮生存因子より強 力な作用を示すことを明らかにしてきた。AMによるアポトーシス抑制作用の分子機構 についてはこれまで知られているアポトーシス制御のメカニズムとは異なり、AMが cAMP非依存性にc-Myc family ペプチドであるMax蛋白を強力に発現誘導することを見 いだした。Maxはhelix-loop-helix luecine zipper構造をもち、c-Myc、Mad、Mxi1な どとheterodimerを形成するが、transcription activation domain を持たないため 、Max homodimerはMax-Mad、Max-Mxi1 heterodimersと同様、c-Myc-Maxに拮抗する転 写抑制因子である。すなわちAMは内皮細胞ではc-myc遺伝子に影響を与えずmax遺伝子 のみ強力に誘導することによって、E-boxを介した転写抑制をきたすことが抗アポト ーシス作用をもたらすと考えられる。したがって、AMは単に血管トーヌスの調節だけ でなく、内皮細胞のアポトーシス/抗アポトーシスの制御にも重要な役割を果たして いる。

1ー11覚醒ラットにおいて延髄最後野の除去がプロアドレノメデュリン由来ペプチドの

末梢及び中枢作用に及ぼす効果 

宮崎医科大学 第一生理 *斉田光彦、河南洋             

〈目的〉我々は覚醒ラットを用い、同一遺伝子由来のアドレノメデュリン(AM)と プロアドレノメデュリンN末端20ペプチド(PAMP)の静脈内投与 (iv) 実験から、AMは圧受容器反射(ABR)を促進し、PAMPは減弱させること、また脳室内投与(icv)実験よりAMは中枢性にもABRを調節する可能性を報告してきた。さらに脳室周囲器官の一つ最後野(AP)はAM感受性ニューロンをもち、幾つかの末梢由来ペプチドはAPを介してABRを修飾することが知られている。そこで、APを破壊した覚醒ラットにAMとPAMPをiv 及び icvし、心血管系や交感神経系の反応よりABRに対するAPの関与を検討した。 〈方法〉APを吸引除去したラット(APx)群とsham群の各々において約4週間の回復期間後に意識下でAMとPAMPをiv 及び icvし、血圧(BP)、心拍数(HR)、および腎交感神経活動(RSNA)の変化を測定した。次に中枢作用評価のため圧受容器除神経(SAD)モデルでの検討を行い、ABRの大きさの基準として、sham・SAD・APxの3群においてsodium nitroprusside (SNP)をivした。 〈成績〉APx群では、sham群に比して、AM iv 時のABRは減弱され、逆にPAMP iv時のABRは増強された。 icv の場合には、PAMPでは有意な変化を認めず、AMによるBP、HRとRSNAの増加反応は、APx群とSAD群では共にsham群に比し増強されたが、SNP iv によるABRの程度はshamとAPxの2群間で有意差を認めなかった。 〈結論〉末梢性に、AMはAPを介してABRを促進し、PAMPはAPに作用してABRを減弱させると考えられた。一方、中枢性にはPAMPは作用せず、AM本来の中枢作用はABR以外の機序を介してAPにより抑制されていることが示唆された。

1ー12アドレノメデュリンの一酸化窒素遊離能に関する病態生理的検討

東京大学医学部循環器内科 平田恭信

AMの血管作用の病態生理的意義を検討するために新藤・栗原らがET-1遺伝子のプロモーター領域にAM遺伝子を組み込んで作成したトランスジェニックマウス(Tg)の腎および大動脈の血管反応性を調べた。Tgおよび野生型マウス(WT)の右腎および胸部大動脈リング標本においてACh、AM、 CGRP、AM拮抗薬であるAM(22-52)・CGRP(8-37)およびL-NNAによる反応性を測定した。その結果、Tgの大動脈リング標本ではAM投与により用量依存性の拡張反応が見られたが、その程度はWTに比して減弱していた。この時、いずれにおいても内皮剥離によりAMの血管拡張作用は著明に減弱した。同様にTgのAChおよびCGRPによる血管拡張も減弱していた。ACh、AM、CGRPは両マウス灌流腎でも用量依存性に腎灌流圧(RPP)を低下させたが、その程度はTgにおいてWTに比して減弱し ていた。AM(22-52)およびCGRP(8-37)は両群でRPPを上昇させたが、その程度はTg群で大きかった。またL-NNAによるRPPの上昇はTgにおいて増強していた。以上より本TgではAMが内皮依存性に血管の緊張度を調節している可能性が示された。

1ー13局所調節因子としてのアドレノメデュリン(AM)の役割

宮崎医科大学第一内科 加藤丈司、鶴田敏博、北村和雄、江藤胤尚

AMは血中および副腎髄質、心房、心室、大動脈などの組織中に存在し、血中を循環するホルモンならびに組織内における局所調節因子としての役割を担っている可能性が指摘されてきた。高血圧ラットを用いた研究により、圧負荷に伴う肥大心筋では、AMの組織濃度や遺伝子の発現が、肥大の程度と関連して増加することが明らかにされてきた。そこで、本研究では心筋肥大における組織内AMの役割を明らかにするために、新生児ラット培養心筋細胞および心筋線維芽細胞を用いて、AMの合成・分泌動態とこれらの細胞の肥大、蛋白合成、増殖に及ぼすAM の影響について検討した。培地中に分泌されるAMをラジオイムノアッセイで測定し、AM mRNA発現をPCRで調べた。蛋白合成およびDNA合成は、フェニルアラニンまたはチミジンの細胞内への取り込みで評価した。培養心筋細胞および心筋線維芽細胞はAMを産生・分泌しており、アンジオテンシンII(Ang II)やエンドセリン−1(ET−1)によりAMの分泌量と遺伝子発現が増加した。合成AMは、Ang II刺激による心筋細胞の蛋白合成や細胞のサイズの増大を抑制し、心筋線維芽細胞では、細胞内cAMP濃度を上昇させ、Ang IIまたはET−1刺激による蛋白合成およびDNA合成を抑制した。さらに、抗AMモノクローナル抗体を用いて内因性AMの作用を中和したところ、心筋細胞では蛋白合成が増加し、心筋線維芽細胞では細胞内cAMPの基礎値が低下して、DNA合成と蛋白合成が増加した。以上より、培養心筋細胞および心筋線維芽細胞がAMを産生・分泌しており、分泌されたAMは、オートクリンまたはパラクリン的にこれらの細胞に作用して、心筋細胞の蛋白合成を低下させ肥大を抑制し、心筋線維芽細胞の増殖を一部は細胞内cAMP依存性に抑制していると考えられた。すなわち、AMは心筋における局所調節因子として心筋肥大や心筋リモデリングに対して抑制的に作用している可能性が明らかになった。

1ー14マウス遺伝子操作によるアドレノメデュリンの生理的役割の解析

栗原裕基 東京大学循環器内科

2−1アドレノメデュリン測定系の開発

○太田 英樹、辻 哲男、浅井 茂、谷崎 純代、杉田 憲治、北村 和男*、寒川 賢治**

塩野義製薬株式会社 診断薬部、*宮崎医科大学第一内科、**国立循環器病センター研究所

【研究目的】  アドレノメデュリン(AM)は52個のアミノ酸よりなる血管拡張性の降圧ペプチドである。最近、血中にはC末がアミド化された成熟型AMだけでなく前駆体のAM-Glyも存在することが報告された。しかし、血中のAMを直接測定したという報告はまだない。そこでわれわれはこの成熟型AMおよびAM-Glyを直接分別定量する測定法の確立を試みた。 【研究方法】  まず、AMの環状構造部分、アミド化C末端およびその中間部分を認識する3種類のモノクローナル抗体を作製した。次に、環状部分の抗体をビオチン化し、残りの2つの抗体を125I標識した。さらに抗ビオチン抗体固相ポリスチレンビーズを作製し、これらをサンドイッチイムノアッセイに応用した。 【研究結果】  血漿中の成熟型AMのみ、および成熟型AMとAM-Glyの両方を直接測定する2種類の高感度ラジオイムノメトリックアッセイ(IRMA)を確立した1,2)。この測定法を用い血漿中のAM量を測定した結果、心疾患患者および慢性腎不全患者では健常者に比べ成熟型AMおよび総AM量とも有為に高値を示した。また、敗血症患者では健常者に比べ血漿中AM量が著しく高く、成熟型AMの比率は健常者に比べ低かった。 【考察】  我々が確立した2つのIRMA法は非常に高感度で、血漿中AMを直接測定するのが可能となった。心疾患患者や腎不全患者では有為に高値を示し、臨床への応用の可能性を示した。また敗血症患者ではAM濃度が高いと報告されているが、今回我々の2つのIRMA法により大部分は活性のないAM-Glyであり、健常者に比べ成熟型AM量の比率が低いことが判明した。今後、疾患と血漿中AM濃度あるいは成熟型AMの比率との関係を調べることはAMの臨床的意義を調べる上で重要だと考えられた。 【まとめ】  今回我々が開発した2つのIRMA法は簡便でAMに対し非常に特異性が高く、少量の血漿で測定可能であり、大量の検体を測定するのに適している。また、AMの存在様式あるいはAMの生理学的、臨床的研究を行う上で有用であると考えられる。 【参考文献】 1) Ohta, H., Tsuji, T., Asai, S., Sasakura, K., Teraoka, H., Kitamura, K.,Kangawa K. One-tep dirct assay for matute-type adrenomrdullin with monoclonal antibodies. Clinical Chemistry 45, 244-251 (1999) 2) Ohta, H., Tsuji, T., Asai, S., Sumiyo T., Sasakura, K., Teraoka, H., Kitamura, K, Kangawa K. A simple immunoradiometric assay for measuring the entire molecules of adrenomedullin in human plasma. Clinica Chimica Acta, in press.

2ー2慢性糸球体腎炎における血漿・尿中 成熟型および中間型adrenomedullin(AM)の動態

宮崎医科大学第1内科 木下浩、藤元昭一、戸倉健、久永修一、北村和雄、江藤胤尚

【背景】降圧ペプチドadrenomedullin(AM)は前駆体から中間型AM-gly(iAM)として生成された後、C末端がアミド化され、生物活性のある成熟型AM[1-52]-CONH2(mAM)となる。AMは利尿作用を有し、腎内で産生されること、培養メサンギウム・尿細管細胞から分泌されることが明らかとなっている。我々はtotal AMを認識するRIAを用い、慢性糸球体腎炎(CGN)において、AMの血中濃度は健常群と変わらないが、尿中排泄が低下していることを報告した(AJKD 34,1999)。しかし、CGNにおけるmAMとiAMの動態は現段階では明らかでない。 【方法】対象は腎生検で診断され、腎機能の正常な(sCr 0.8 ± 0.1mg/dl)CGN患者15名および健常者10名である。mAMおよびtotal AMに対する特異的なIRMA法(AMmature RIA SHIONOGI, AM RIA SHIONOGI)を用い、血漿・尿中mAMおよびiAM濃度を測定し、臨床データと比較検討する。 【結果】血漿mAM濃度はCGN群で健常群に比較し有意に高値であったが(1.83 ± 0.13 vs. 1.34 ± 0.08 fmol/ml,p<0.01)、iAM濃度は差がなかった。尿中mAM排泄量は両群で差がなかったが、尿中iAM排泄量はCGN群で有意に低値であった(3.66 ± 0.65 vs. 5.61 ± 0.80fmol/mg creatinine, p<0.05)。尿中Na排泄量はmAM排泄量と有意に相関したが、iAM排泄量とは有意な関係を示さなかった。total AM(mAM+iAM)に対するmAMの割合は尿中で血漿より有意に高値であった(28 ± 2% vs 15 ± 1%)。血中尿中mAMおよびiAMは血圧、心胸比、血清TP、Albとは有意な関係を示さなかった。 【結論】慢性糸球体腎炎においてmAMがNa代謝に関わっている可能性がある。AMの病態生理学的意義を検討する上でtotal AMのみならず、mAMの測定が必要であると考えられた。

2ー3血液透析患者における成熟型アドレノメデュリンの循環血液量評価の有用性

埼玉医大総合医療センター第4内科 ○叶澤孝一、御手洗哲也、磯田和雄

同人工腎臓部 長澤龍司

東大腎内分泌内科 下沢達雄、藤田敏郎

【目的】鬱血性心不全において重症度に比例して上昇することが知られているアドレノメデュリン(AM)が、血液透析(HD)患者において循環血液量(BV)の指標になるかを検討する。 【方法】HD施行中、クリットラインモニターを装着してBVの変化を経時的に観察し、1時間毎にAM、成熟型AM、HANP、浸透圧を測定した。さらに除水を施行した27例(Qf(+)群)と除水のない12例(Qf(-)群)に対して、AMの経時的変化を検討した。また、HD前後でエンドセリン-1(ET-1)、NOx、アドレナリン(Adr)、ノルアドレナリン(Nor)、ドパミン(Dop)を測定した。 【結果】BVの変化量は、AMの変化量とr=0.19、p<0.02、成熟型AMの変化量とr=0.27、p<0.0006と、成熟型AMにおいてより相関した。Qf(+)群とQf(-)群の検討では、成熟型AMはQf(-)群においてHD前で3.0±0.3fmol/ml、HD後で2.8±0.2fmol/mlと変化しなかったが、Qf(+)群ではHD前の4.4±0.3fmol/mlから経時的に低下し、HD後では3.1±0.3fmol/mlとQf(-)群と同レベルまで低下した。一方、HANPはQf(+)群においてHD前で193±32pg/ml、HD後で87±14pg/mlと低下したが、Qf(-)群でもHD前の67±12pg/mlからHD後の46±8pg/mlへ低下し、尚かつ両群のHD後の値に差を認めた。ET-1、NOx、Adr、Nor、Dop、浸透圧の変化は両群で差を認めなかった。 【総括】血液透析(HD)患者において、成熟型AMはBVの変化を反映して変動し、AMやHANPよりもBVの評価に有用と思われる。中間型AMから成熟型AMへの変換は、アミド化酵素によって規定されており、今後AMアミド化酵素活性とBVとの関係を明らかにする必要がある。

2ー4Urinary adrenomedullin (AM) excretion and tissue AM levels in the renal cortex and medulla are increased in heart failure rats due to aortocaval shunt

National Cardiovascular Center Research Institute 5-7-1 Fujishirodai, Suita, Osaka 565-8565, Japan

Fumiki Yoshihara, Toshio Nishikimi, Takeshi Horio, Hisayuki Matsuo, Kenji Kangawa

Adrenomedullin (AM), a novel vasodilating and natriuretic peptide, may function as an endogenous autocrine and/or paracrine regulator of renal function, as AM peptide, mRNA and binding sites have been found in the kidney. To investigate the pathophysiological significance of renal AM in heart failure, urinary, tissue AM levels in the kidney were measured in aortocaval shunt-created rats (n=9) (ACS) and sham-operated control rats (n=11) (C). Rats were housed in metabolic cage for collecting 24-hours urine samples for measuring urinary Na and AM excretion. After 2 weeks, plasma renin concentration (PRC), plasma atrial natriuretic peptide (ANP) and tissue AM levels in renal cortex and medulla were measured by RIA. PRC and ANP were significantly higher in ACS than in C, however, there was no difference in urinary Na excretion between two groups. Tissue AM levels in renal cortex and medulla and urinary AM excretion were also higher in ACS than in C and positively correlated with urinary Na excretion (R=0.59, R=0.45, R=0.77, P<0.05, respectively). Tissue AM levels in renal cortex and medulla positively correlated with urinary AM excretion (R=0.53, p<0.05, respectively). Immunohistochemical examination revealed that AM immunostaining in cortical distal tubule and medullary collecting duc cells was more intense in ACS than in C. These results suggest that urinary AM excretion increases with the development of heart failure and that increased urinary AM excretion and tissue AM levels in the kidney may play a role in the regulation of Na excretion in aortocaval shunt rats.

2ー5MODULATION OF CARDIAC HYPERTROPHY BY ADRENOMEDULLIN.

Dominic J. Autelitano, Baker Medical Research Institute, P.O. Box 6492, Melbourne,VIC. 8008 AUSTRALIA

Adrenomedullin (AM) is a recently discovered peptide hormone that shares some structural homology with calcitonin gene related peptide. In a wide variety of species, AM has a potent and relatively long lasting hypotensive effect that is associated with a sustained decrease in peripheral resistance and increased cardiac output. (ir)-AM circulates in plasma and has been shown to be significantly elevated in both hypertensive and heart failure patients in proportion with clinical severity. The ventricular induction of AM gene expression in the failing heart suggests that cardiac AM may play a role peripherally as a compensatory vasodilator and natriuretic factor, or alternatively, as an autocrine or paracrine modulator of cardiac function. In order to determine the functional significance of this novel cardiac hormone, we have examined expression of AM in vivo, and have used neonatal cardiac myocyte cultures to establish its molecular mechanisms of action in the heart. AM mRNA transcripts were shown to be expressed at equal concentration in rat atrium and ventricle. In response to pressure overload induced in a two-kidney one-clip model, AM gene expression underwent selective and sustained up-regulation in ventricles at both 1 and 3 weeks, demonstrating that in vivo, induction of ventricular AM represents part of the hypertrophic phenotype. Cultured neonatal rat ventricular cardiac myocytes were shown to express the AM gene and to actively secrete ir-AM. Furthermore, we have demonstrated that cultured cardiac myocytes have considerable levels of mRNA encoding the AM receptor CRLR in addition to high levels of the receptor activity modulating protein (RAMP-2), which has been shown to confer AM-selectivity to this receptor. Taken together, these data suggest that cardiomyocyte derived AM may act as a local modulator of cardiac function. Addition of exogenous AM to neonatal cardiomyocyte cultures led to a dose-dependent increase in cAMP that reached 20-times control levels with 50 nM AM. To determine whether AM receptor activation plays a role in the induction and maintenance of hypertrophy in cardiac myocytes, we have used RNase protection analysis to examine steady state mRNA levels of multiple hypertrophy-related genes, and transient transfection of cardiac gene promoters linked to luciferase reporter constructs to examine their transcriptional responses. In transient transfection assays, phenylephrine stimulated transcription of the constitutively expressed ventricular myosin light chain gene (MLC-2v) 8 - 9 fold; co-incubation with 100 nM AM suppressed this response by 30 - 40 %. AM had similar inhibitory effects on phenylephrine mediated induction of the ANP gene. Using highly specific RNase protection analysis, we have further demonstrated that addition of exogenous AM modestly increases steady state levels of cardiomyocyte alpha-MHC mRNA by 25 - 30%. The current data suggest that AM represents a novel cardiac hormone that potentially acts in a paracrine or autocrine manner to modulate the hypertrophic response.

2ー6心不全ラットの心臓におけるアドレノメデュリン(AM)受容体複合体(RAMP2+CRLR) の遺伝子発現

東北大学医学部第二内科、分子生物学1、毛利内科2 戸恒和人、高橋和広1、村上治、曽根正彦1、在原善英、毛利虎一2、伊藤貞嘉

【目的】心不全におけるAMの役割が注目されている。我々はすでに心不全ラットの心臓内でAM遺伝子発現が亢進していることを報告した。今回、AM受容体を構成する2つの要素、受容体活性修飾蛋白(RAMP)とカルシトニン受容体様受容体(CRLR)の遺伝子発現を同じモデルで検討した。 【方法】ラット心不全モデルを左冠状動脈結紮法にて作成した。CompetitiveRT-PCR法を開発し心臓及び腎臓中のRAMP2とCRLRのmRNA濃度を定量した。ラットRAMP2のヌクレオチド配列はヒトRAMP2の配列を参考にpartial cloningを行い決定した。 【結果】心不全ラット(n=4)の心房内RAMP2 mRNA発現はシャム手術(SO)群(n=4)と比較して2.0+/_0.3*倍 (24.3+/-3.9 mmol/mole GAPDH, 平均+/-SE, *P<0.05) と有意な上昇を示し、心室内発現も1.6+/-0.3*倍 (19.6+/-6.4 mmol/GAPDH)と上昇した。CRLR mRNA発現は心不全群の心房内でSO群の2.8+/-0.5*倍 (0.23+/-0.03mmol/GAPDH) と有意に上昇し、心室内では1.4倍 (0.97+/-0.15 mmol/GAPDH)と上昇傾向を示した。腎臓内RAMP2, CRLRのmRNAレベルはSO群に比較してともに有意な変化を認めなかった。 【結論】心不全ラットの心臓内RAMP2及びCRLR mRNAレベルはAMと同様にともに上昇しており、心臓にはオートクライン/パラクラインによる局所的AMシステムが存在し、心不全の病態に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。

2ー7腎虚血再潅流腎不全モデルラットにおけるアドレノメデュリンの役割 -酸化ストレスとの関連において-

東京大学腎臓・内分泌内科 安東克之、長瀬美樹、千葉優子、下澤達雄、高橋克敏、佐々木信和、藤田恵、藤田敏郎

血管収縮因子の一つとして知られいるスーパーオキサイド(O2-)は一酸化窒素(NO)を除去することによって血管収縮作用を発揮している。しかし、O2-は蛋白、脂質、炭水化物、DNAなど多くの因子に影響するのでNO以外の因子もO2-の影響を受けていると考えられる。われわれは培養血管平滑筋細胞でO2-がAMの産生を亢進することを指摘し、O2-の血管収縮作用をAMが代償的に修飾している可能性を示唆した。実際、ヒトAM遺伝子のプロモーター部位には活性酸素によって賦活化されるNFkBが存在するという報告がある。ここで、AMは糸球体濾過値の増加や腎髄質血管拡張作用など、腎に対して保護的な作用が知られており、腎臓においては血管以外に糸球体、メザンギウム細胞、皮質遠位尿細管、髄質集合管にその存在が確かめられている。したがって、腎においてもO2-過剰状態においてはAMがオートクリン・パラクリン機序により代償的に働いている可能性がある。そこで、われわれはその病態生理に活性酸素が重要な役割を果たしていると考えられる腎虚血再潅流腎不全モデルにおいてAM mRNAの発現を検討した。7-9週齢の雄Sprague-Dawleyラットにおいて両側腎動脈を1時間クリップした後、クリップを除去して、0.5、2、8、24、48、72時間後の腎臓においてAMの発現みた。その結果、2時間目をピークとしてAMの発現が亢進し、以後漸減した。このことから、AMは腎虚血再潅流後比較的早期に産生され、O2-の作用に対して代償的に働いてる可能性が示唆された。

2ー8Adrenomedullinによる血管弛緩作用の血管種による内皮依存性と受容体の相違

伊藤 薫、北村和雄、江藤胤尚(宮崎医科大学、第一内科)

Adrenomedullin (AM)はAM受容体とCGRP受容体に作用して血管平滑筋を弛緩させるが、両受容体の分布や弛緩作用の内皮依存性は血管の種類によって異なる。今回、ラット血管で内皮依存性弛緩を示す血管と平滑筋に直接作用する血管について我々は各受容体の関与を検討した。(方法)8-9週令の雄性Wistarラットより肺動脈、尾動脈を摘出し、リング標本を作成し、4 mlの器官槽で張力を測定した。また灌流槽で微小電極法により膜電位を測定した。(結果)phenylephrine (PE)で収縮させた肺動脈、尾動脈にAMを投与すると、用量依存性の弛緩反応が認められた。肺動脈における弛緩反応は内皮除去あるいはNO合成阻害剤のNw-nitro-L-arginineの前処置により消失したが、尾動脈の弛緩反応はこれらの処置で影響を受けなかった。AMのアナログであるAM(22-52)の前処置は肺動脈におけるAMの弛緩反応を抑制したが、尾動脈の弛緩反応に影響を与えなかった。CGRP受容体の拮抗薬であるCGRP(8-37)の前処置は両血管のAMによる弛緩反応を抑制した。内皮を保存した肺動脈の静止膜電位は-65mVで、AM 1 mMの投与により過分極が認められた。NOドナーであるNa nitroprusside (1 mM)は肺動脈で過分極を引き起こした。一方、尾動脈ではAM 1mMの投与は膜電位に影響を及ぼさなかった。(考察)AMは肺動脈において内皮からNOを遊離して弛緩および過分極反応を引き起こす。一方、AMは尾動脈においては内皮に依存せず、平滑筋への直接作用により弛緩を起こした。内皮と血管平滑筋では関与する受容体が異なることが示唆された。

2ー9ヒトグリア細胞株KG-1Cにおけるアドレノメデュリンの作用

上園保仁、中村英一郎*、上田陽子*、豊平由美子*、柳原延章*、和田明彦 (宮崎医大・薬理、*産業医大・薬理)

アドレノメデュリン(AM)は、循環調節に関与する降圧性ペプチドである。近年AMは中枢神経系にも存在し、中枢において飲水、摂食作用などさまざまな作用を持つことが明らかとなってきた。今回私たちは、グリア細胞におけるAMの作用を明らかにするために、グリア細胞におけるAM感受性受容体の薬理学的解析、並びにAMの生理学的作用についての検討を行った。  実験には培養ヒトグリア細胞株KG-1Cを用いた。AMの抗体を用いて免疫組織学的解析を、またAM受容体の存在についてはRT-PCR法を用いて検討した。cAMP測定にはRIAを用い、細胞内Ca濃度変化はCa蛍光薬Fura-2を取り込ませた細胞を用いて画像解析を行った。さらに細胞増殖は[3H]thymidineの細胞内へのuptakeを指標として行った。 1)KG-1C細胞にはAMの免疫染色性が認められ、またRT-PCRによりAM受容体が発現していることが判明した。 2)AMは濃度および時間依存性に細胞内cAMP濃度を上昇させた。この効果はAM受容体阻害剤AM[22-52]、ならびにカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体阻害剤CGRP[8-37]により抑制された。 3)AMは、濃度依存性に持続的な細胞内Ca上昇を引き起こした。またCGRPも同様の作用を示した。これらの効果は細胞外液のCaを除去しても認められ、また、cAMPを上昇させるforskolinでは細胞内Caの上昇は認められなかった。 4)AMは、グリア細胞を増殖させることが知られているplatelet-derived growthfactor、並びに細胞外ATPによる細胞増殖作用を有意に抑制した。  AMはKG-1Cグリア細胞において、autocrine/paracrine的に作用している可能性が示唆された。AMは受容体への結合により、おそらく複数のシグナル伝達系を活性化し、グリア細胞の細胞増殖作用を調節している可能性が考えられた。

2ー10PAMP のTyrosine hydroxylaseおよびdopamine β-hydroxylase mRNA発現におよぼす効果

筑波大学臨床医学系臨床病理 竹越一博、石井清朗、本岡正彦、磯部和正、南木融、野村文夫、中井利昭

【目的】 PAMP (proadrenomedullin N-terminal 20 peptide)は、副腎髄質に高濃度に存在することが知られている。しかし、その作用について不明な点も多い。そこで、nicotine刺激によるカテコールアミン合成の律速酵素であるTyrosine hydroxylase(TH)およびdopamine β-hydroxylase(DBH) mRNA発現に PAMP がおよぼす影響について検討を行った。更に、 nicotine刺激によるTHおよびDBH m RNA発現には、cAMP/Aキナ−ゼ系が関与しているため、 cAMP増加に PAMP がおよぼす効果についても検討した。 【対象と方法】ラット褐色細胞腫のcell lineであるPC12細胞を用いた。実験は以下の如く行った。・ nicotine (10μM)単独、 ・PAMP(1μM)およびAM(1μM)単独、・nicotine + PAMP(1, 10, 100nM, 1, 10μM)併用、 nicotine + AM (1,3μM)併用 ・ 細胞内cAMP産生量。 TH mRNA発現はヒトTHタイプ1 cDNA, DBH mRNA発現はヒトDBH cDNAをプロ−ブとしノザンブロットで検討した。 【結果】・nicotineはTHおよび DBH mRNAを誘導した。・AMおよびPAMP 単独では効果を認めなかった。・nicotine + PAMP 併用でTHおよび DBH mRNA発現は有意に抑制された(IC50:400nM)。一方、nicotine + AM 併用では効果は認めなかった。・nicotine + PAMP 併用でcAMP増加は、有意に抑制された(IC50:300nM)。 【結論】 PAMPは、 nicotineにより誘導されるTHおよび DBH mRNAを、少なくともその一部はcAMP/Aキナ−ゼ系を介して抑制する。一方, AMには、それらの作用は認めなかった。【考案】 PAMPは、カテコールアミンの合成系を慢性的に抑制する可能性が示唆された。 【参考文献】K, Takekoshi et al. Life Sciences 1999 ;65 : 771-781.

2ー11アドレノメデュリンのヒト血管内皮細胞における凝固系因子の発現調節

宮崎医科大学病理学第1講座  丸塚浩助、浅田祐士郎、山下篤、佐藤勇一郎、畠山金太、住吉昭信  

 アドレノメデュリン(AM)は副腎髄質をはじめ、心、肺、腎および培養血管平滑筋細胞・内皮細胞等での産生が報告されており、我々も組織学的に全身諸臓器に広く分布していることを報告してきた。また、AMには降圧作用のみならず、細胞増殖促進・抑制作用等、種々の生理活性があることが知られているが、血液凝固系に関する報告は血小板凝集抑制以外ほとんどない。組織因子(TF)は、主に血管外膜に認められ、凝固系開始因子として止血に重要な役割を担っている。種々の動脈硬化病変にても認められ、動脈硬化症の発生・進展や胎生期の血管形成に関与することが知られている。外因系経路阻害因子(TFPI)はTFによって引き起こされる凝固カスケードの強力な阻害因子である。今回、我々は、血管内皮細胞におけるTFおよびTFPIの発現にAMが関与する若干の知見を得たので報告する。培養大動脈内皮細胞において、AMは濃度依存性および時間依存性に培養上清中のTFPI抗原量を増加させた。逆に、cell lysate中のTF抗原量は減少した。これらの作用は、AMに対する特異抗体(anti-C-terminal、anti-Ring)および非活性型AMフラグメント(AM1-25, AM22-52, CGRP8-37)の共存にて抑制され、また、cAMP受容体阻害薬(Rp-6-Brom-cAMP)およびMEK1阻害薬(PD98059)にても抑制された。皮膚由来微小血管内皮細胞では、ほぼ同様の結果が得られたが、冠状動脈内皮細胞および胎児臍帯静脈内皮細胞では、全く違った反応形式を示し、局所におけるAMの作用に場所による差異があることが示唆された。

2ー12アドレノメデュリンの消化管における生理学的役割

京都大学病態代謝栄養学 福田一仁,塚田英昭,清野 裕

【目的】アドレノメデュリン(AM)は,1993年北村らによって副腎に高濃度存在することより発見された強力かつ持続的な血管拡張作用を持つ活性ペプチドである.その発現は名前の由来からおもに副腎,その他血管平滑筋や膵臓などでみられるが消化管にも多く分布していることが知られており,消化管の生理機能に深く関わっていると考えられる.今回われわれはAMの胃,大腸における生理学的役割を種々の方法を用いて検討した. 【方法および結果】上部消化管に対しては,ラット胃灌流モデルにおいて,AMはペンタガストリン(PG)による胃酸分泌亢進を濃度依存的に抑制した.またAMの酸分泌におけるソマトスタチン(SM)の関与について検討したところ,ウレタン麻酔下においてはAMはSM分泌を促進した。同時に胃運動に対しては,バルーン付圧トランスデューサーによる内圧測定法にて,濃度依存的に蠕動運動抑制および胃内圧の低下を認めた.酸分泌、運動抑制作用はCGRP(8-37),迷走神経切離,副腎摘除により影響を受けなかった.さらに,ユッシング法を用いたラットおよびヒト実験的胃粘膜傷害モデル(高張食塩水負荷)において,AMの前投与によりrestitution(迅速細胞再構築)促進効果がみられ,いずれも胃粘膜に対して保護的に働いていると考えられた.一方下部消化管に対しては,ユッシング法を用いたラット遠位大腸粘膜における電解質輸送の検討で,AMのCl-分泌亢進とNa+吸収抑制作用を認めた.大腸運動はマグヌス法による大腸平滑筋KCl拘縮に対して,強力な弛緩作用を示し,in vivoにおいても大腸内圧測定で蠕動運動低下および大腸内圧の低下を示した.さらに免疫組織学的検討(ABC法)では,AMは胃粘膜層基底部主細胞内,大腸粘膜表層および平滑筋細胞に認められることより,AMは上部下部消化管において直接およびparacrineとして作用している可能性が示唆された. 【結語】AMは胃粘膜傷害に対し保護的に働いており,また大腸においては水分,電解質の吸収抑制と腸管運動抑制など,種々の生理作用を持ちあわせると考えられた.新しい消化管ホルモンとしてさらなる解明が期待される.

2ー13アドレノメデュリンの調節性膵外分泌抑制作用

東京大学分院内科 土田知宏、大西洋英、植田なみ紀、峯徹哉、藤田敏郎

[目的]アドレノメデュリン(AM)は、ヒト褐色細胞腫より生成された降圧作用を有するペプチドで、膵ランゲルハンス島(PP細胞)にも存在していることが明らかとなり、我々は、AMが調節性膵外分泌機構のカルシウム感受性を低下させることにより調節性膵外分泌を抑制していることを明らかにしてきた。Rab3D蛋白は膵分泌顆粒膜状に存在し、調節性膵外分泌機構においてカルシウム感受性を亢進させ膵外分泌を促進させていることが知られており、我々は、さらに抑制機構のメカニズム解明のため、AMのRab3D蛋白に対する作用を検討した。 [方法] 活性型Rab3D蛋白はGTP結合しているため、[a-32P]GTPを用いてRab3D蛋白への結合率を測定し、AMのRab3D蛋白に対する作用を検討した。HA-tagを付加したRab3D蛋白を膵臓に特異的に過剰発現させたトランスジェニックマウスより、ストレプトライジンOを用いてpermeabilized aciniを作製し、[a-32P]GTP存在下にコントロールおよび10pM CCK、10pM CCK+10nM AMで刺激した後aciniを超音波破砕し、抗HAモノクローナル抗体にて[a-32P]GTP結合HA-Rab3D蛋白を免疫沈降し、その放射性活性を測定し結合率を検討した。 [結果]CCKは10分で最大約200%結合率を増加させた。一方AMは、CCKで増加した結合率を約100%まで抑制した。 [結論] AMは、CCKによって上昇したRab3D蛋白へのGTP結合率を低下させることによってRab3D蛋白活性を制御し、調節性膵外分泌を抑制していることが明らかとなった。

2ー14脳微小血管のAdrenomedullin

小林 英幸、南 慎一、 山本 隆一、柳田 俊彦、和田 明彦

宮崎医科大学、薬理

脳微小血管は、血液脳関門としての働きを持つのみならず、脳機能維持に必要な栄養素、酸素、イオン等の輸送の場である。そこで、脳微小血管の生理機能の調節に、Adrenomedullin (AM) が関与しているか否かを調べた。   神経細胞やグリア細胞の混入のない高純度の脳微小血管を、ラット大脳皮質からアルブミン浮遊法とグラスビーズ濾過法により調製し、AMによるcyclic AMP の変動を測定した。   AMは、低濃度から濃度依存的に脳微小血管の cyclic AMP を増加させた。CGRP もcyclic AMP を増加させたが、AM より100倍以上高濃度必要であった。AMによるcyclic AMP の増加はCGRP 受容体アンタゴニストであるCGRP[8-37] により抑制されず、AM 受容体アンタゴニストの AM[22-52] によって抑えられたので、脳微小血管には、AM に特異的な受容体が存在することが判明した。    また、RT-PCR法により、脳微小血管は、AMとAM受容体 (calcitonin receptor-like receptor) の mRNA を高レベル発現していることが判明した。よって、AM は 脳微小血管で合成される一方で、脳微小血管にオートクリン的に作用しcyclic AMP レベルを上昇させることで、脳微小血管の機能を調節していることが示唆された。   AM の情報伝達経路として、cyclic AMP 増加作用以外に、大動脈内皮細胞や培養線維芽細胞では、細胞内Ca濃度上昇作用やMAPキナーゼカスケードへの作用も報告されている。今後、脳微小血管におけるAMのcyclic AMP 上昇作用以外の情報伝達経路も解析することにより、AMの脳微小循環での役割がさらに明らかになるものと考えられる。

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P1ラットにおけるアドレノメデュリン/CGRP受容体活性修飾蛋白(RAMP)ファミリーのクローニングとその発現

京都大学臨床病態医科学・第二内科

永江徹也、向山政志、菅原 照、森  潔、八幡兼成、槇野久士、笠原正登、菅波孝祥、藤永有理子、伊藤 裕、田中一成、中尾一和

【目的】アドレノメデュリン(AM)は腎糸球体や尿細管に発現し、オートクリン/パラクリン調節因子として働く可能性が想定される。一方その受容体は、ヒトにおいてAM/CGRP共通受容体であるcalcitonin receptor-like receptor(CRLR)に膜一回貫通型修飾蛋白としてのRAMPファミリー(RAMP1、2、3)がassociateして形成されることが報告されたが、ヒト以外の種では明らかでない。今回、ラットRAMPファミリーのクローニングを行い、各臓器における遺伝子発現を検討した。 【方法】ヒトRAMPファミリーの配列をもとに、Expressed Sequence Tagデータベースを検索し、RAMP1、2についてはラットcDNA断片を、RAMP3についてはマウスcDNA断片を参考にプライマーを設定後、ラット心臓および腎臓cDNAを用いてRT-PCR法、RACE法によりラットRAMPファミリーのクローニングを行った。さらに各臓器におけるそれらの発現をNorthern blot解析を用いて検討した。 【結果】ラットRAMP1は148アミノ酸より成り、ヒトRAMP1と核酸レベルで79.4%、アミノ酸で70.9%の相同性を示し、ラットRAMP2も182アミノ酸より成り、核酸レベルで72.7%、アミノ酸レベルで64.7%の相同性を示した。さらにRAMP3は147アミノ酸より成り、核酸レベルで81.3%、アミノ酸レベルで85.2%と高い相同性を示した。RAMP1、2、3とも多くの臓器に発現が認められ、RAMP1では脾臓、胸腺、脂肪、肺、精巣に、RAMP2では肺、脾臓、脂肪に、RAMP3では肺、腎臓、脳に特に強い発現を認めた。 【結論】ラットRAMPファミリーのクローニングと各臓器における発現を検討した。腎臓ではRAMP3が強く発現しており、腎臓でのAM/CGRP受容体の調節に関与している可能性が示唆され、その機能的意義が注目される。また、病態時での腎臓におけるRAMPファミリーの発現とその調節について、現在腎疾患モデルを用いて検討中である。

P2敗血症モデルにおけるCRLRおよびRAMPsの遺伝子発現変化

帝京大学医学部麻酔科学講座1)、国立循環器病センター研究所2)

小野 紫1)、岡野一郎2)、岡田和夫1)、寒川賢治2)

目的]アドレノメデュリン(AM)は、多彩な生理作用を持つペプチドであり、敗血症患者において著明な血中濃度の上昇が知られているが、病態との関係については未だ不明な点が多い。われわれは、動物モデルへのリポ多糖(LPS)投与により、血中AM濃度および血管、臓器でのAM遺伝子発現が増加することを報告した1)。今回さらに、LPS投与モデルにおけるAM受容体側の遺伝子発現変化の解析を行った。[方法]マウスのcalcitonin-receptor-like receptor (CRLR)およびreceptor-activity-modifying proteins (RAMPs)のcDNAクローニングを行い、塩基配列を決定した。マウス(C57BL/6)にLPSを腹腔内投与し、敗血症モデルを作製し、主要臓器でのAMおよびcalcitonin gene-related peptide (CGRP)受容体構成因子と報告されたCRLRとRAMPsの遺伝子発現を検討した。[結果]敗血症モデルマウスにおいて、肺でのCRLRおよびRAMP2のmRNAは著明に減少し、逆にRAMP3の発現増加が認められた。RAMP3は、脾臓や胸腺でも著しい増加を認めた。[考察]CRLRとRAMPsは、AMまたはCGRPの受容体を構成すると報告されているが、各々の組織分布には特異性が強く認められ、AMとCGRPの作用部位に関与する可能性が考えられた。さらに、敗血症におけるCRLRとRAMPsの発現は臓器特異的に顕著な変化を認め、AMの敗血症における病態生理学的関与は、AM自身の発現変化に加えて、受容体側の遺伝子発現変化を伴うものである可能性が示唆された。1)SHOCK, 10 (4), 243-247 (1998)

P3酸化ストレスによる内皮細胞におけるアドレノメジュリン発現調節とそのエンドセリン分泌における意義

斉藤隆俊1、伊藤 裕1、山下 潤1、土居健太郎1、全 泰和1、井上真由美1、 政次 健1、福永康智1、澤田直樹1、坂口五月1、山原研一1、曽根正勝1、万木貴美1、向山政志1、荒井宏司3、東條克能2、細谷龍男2、中尾一和1

京都大学臨床病態医科学・第二内科1、東京慈恵会医科大学内科学講座第二2、近畿大学医学部第二内科3

<背景>近年、酸化ストレスの高血圧症、糖尿病性血管合併症、動脈硬化症における意義が注目されている。我々はこれまでに内皮由来血管作動性物質が血管のトーヌスのみならず血管リモデリングにおいて重要な役割を演じていることを明らかにしてきた。すなわち血管弛暖ペプチドであるC型ナトリウム利尿ペプチドやアドレノメデュリン(AM)は血管増殖抑制的に作用し、血管収縮ペプチドであるアンギオテンシンIIやエンドセリン(ET)は増殖促進的に作用する。今回、酸化ストレスに対する内皮細胞の応答反応における内皮由来血管作動性物質間の相互作用を明らかにするため、酸化ストレスによる内皮細胞に於けるAM発現の制御とそのET分泌への作用を検討した。 <方法と結果>ウシ内頚動脈由来内皮細胞に対し0.25mM〜0.75mMの過酸化水素(H2O2)を投与し3〜24時間培養した。AM及びETは我々が開発した特異的なラジオイムノアッセイにより測定し、mRNA発現はノーザンブロット法にて検討した。ET基礎分泌は5.0±0.3pmol/105cellであり、H2O2投与により濃度依存性に低下し一方、AM基礎分泌は9.5±0.3fmol/105cellであり、H2O2投与により濃度依存性に分泌が増加し、0.5mMH2O2はAM分泌を16.2±2.5fmol/105cellまで亢進させ、更にAMmRNA発現も増加させた。0.5mMH2O2はET分泌を2.6±0.2pmol/105cellまで抑制した。またETmRNA発現も転写レベルで濃度依存性に抑制した。8-br-cAMP及び8-br-cGMP(10uM)投与は共にET分泌を投与3時間後において、約40%抑制した。更に我々の開発した抗AM中和モノクロナール抗体(50ug/ml)は投与後6時間後より0.5MH2O2によるET分泌抑制効果をほぼ完全に阻害した。一方、一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NAME(1mM)はH2O2によるET分泌抑制に対し影響を及ぼさなかった。<結論>酸化ストレスはAM分泌を亢進させ、ET分泌を抑制した。更に酸化ストレスによるET分泌抑制はAMによりもたらされることが明らかになった。高血圧症や糖尿病、高脂血症における血管の酸化ストレスに対する代償機構として、内皮由来血管作動性ペプチドの協調的分泌調節が行われ、血管拡張、増殖抑制に作用すると考えられる。

P4ラット腎における虚血によるアドレノメジュリンの発現の増加

1)東京大学医学部分院内科、2)埼玉医科大学医療センター人工腎臓部

田嶋章弘1)、長瀬美樹、長澤龍司2)、下澤達雄1)、張漢佶、柴垣有吾、 宮嶋芳弘、河合順介、要伸也、高市憲明、峯徹哉、藤田敏郎

血管拡張性ペプチドであるアドレノメジュリン (AM)は、ラットの腎臓における発 現が、知られている。 腎虚血におけるAMの作用を検討するために、AMの発現の変化をラットの腎臓で調べた。組織を虚血状態にする方法には、8% O2 吸入、0.1%CO吸入、コバルト投与、腎動脈狭窄 (内径 0.2mm) などがある。また、AMは、各種臓器に広く分布していることが知られている。そこで、腎臓以外の心臓、肺、副腎、血管内皮等で虚血によりAMの発現の増加の可能性がある。そこで、腎臓の選択的な虚血条件でのAMの発現の変化をみるために、腎動脈狭窄モデルでの検討を行った。Sprague-Dawleyラットで腎動脈狭窄後、2時間、24時間後のAM mRNA発現レベル、部位をノーザンブロッティング, In situ ハイブリダイゼーションにより検討した。髄質のみならず皮質にもAMの発現がみられ、虚血条件下では発現量も増加していた。いずれの条件でも糸球体には、AM mRNAの発現はみられなかった。 ラットの腎臓において、AMは、オートクリン、パラクリン様作用により、腎潅流量低下による虚血条件下で、なんらかの役割を持つ可能性が示唆された。

P5一側尿管結紮による腎間質線維化モデルにおけるアドレノメデュリン発現の低下

京都大学臨床病態医科学・第二内科

永江徹也、向山政志、菅原 照、笠原正登、森  潔、八幡兼成、槇野久士、菅波孝祥、藤永有理子、伊藤 裕、田中一成、中尾一和

【目的】アドレノメデュリン(AM)は、腎糸球体や遠位尿細管、集合管に発現し、オートクリン/パラクリン調節因子として働く可能性が想定されるが、その機能的役割はいまだ明らかでない。われわれはすでに、AMが培養メサンギウム細胞から分泌され、強力な細胞増殖抑制作用を有することを報告したが、今回、腎尿細管疾患におけるAMの意義を明らかにするため、マウス一側尿管結紮水腎症(unilateral ureteral obstruction, UUO)モデルにおけるAMの発現の検討を試みた。 【方法】12週齢C57BL/6Jマウスを用いて、右尿管結紮術を施行。6日後、14日後に両側腎を摘出し、組織学的、免疫組織学的検討を行い、線維化およびα-SMA発現の程度を0〜4までの5段階にスコア化して半定量化した。さらに、AMおよびTGF-β mRNA発現をNorthern blot法にて検討した。 【結果】組織所見は患側腎では尿管結紮6日後、髄質を主体に軽度の尿細管上皮の変 性、脱落を認めたのに対し、14日後では皮質、髄質共に尿細管上皮の変性、脱落、結合組織の増生およびα-SMAの発現が高度に認められた(線維化スコア:6日後1.5、14日後3.8)。TGF-β mRNA発現は患側腎で健側腎に比べ6日後2.7倍、14日後2.3倍と有意に増加していた。一方、AM mRNA発現は、患側腎で健側腎に比べ6日後56±13%、14日後42±12%と明らかな低下を認めた。 【結論】マウスUUOモデルにおける腎間質線維化の過程において、早期よりAM発現の低下を認め、間質細胞増殖とそれに続く線維化に関与する可能性が示唆された。

P6ラット大腿動脈カフモデルにおけるアデノウイルスベクタ−を用いた

アドレノメデュ リン遺伝子の血管内膜増殖抑制効果

東京大学分院内科 山崎正雄、河合順介、荻田光彦、中岡隆志、中村祐子、藤田敏郎

【目的】アドレノメデュリン(AM)は培養血管平滑筋細胞において血清やPDGF刺激に よる増殖を抑制することが示されているが、in vivo の系では不明である。血管内膜 増殖の実験モデルとして血管の外側にチュ−ブを巻くことにより内膜増殖を生じるカ フモデルが報告されている。今回我々はラット大腿動脈のカフモデルを用いて、アデ ノウイルスベクタ−を介してAM遺伝子を血管に発現させ、内膜増殖抑制効果について 検討した。【方法】オス10週齢ウィスタ−ラットの大腿動脈にポリエチレン製チュ− ブを巻いてカフモデルとし、14日後に血管を採取し組織学的に検討した。カフ装着時 にカフと血管の隙間にAM遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクタ−を注入した。な おこれに先立ち大腸菌のLacZ遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクタ−を同じカフ モデルに用いてβ-ガラクトシダ−ゼ染色により血管外膜側へのウイルス導入を確認し た。【結果】カフを装着することにより14日後の内膜と中膜の面積比(M / I比)はカ フなしのコントロ−ル0.95±0.10に対して1.23±0.41と増加し、軽度の内膜増殖を示 した。AMを導入したカフモデルにおいてカフ装着14日後のM / I比は0.61±0.06とAMを 導入しないカフモデルに比し有意(p<O.O5)に減少した。【総括】ラット大腿動脈を 用いたカフモデルは血管内膜増殖モデルとして適当であり、この系において、AM遺伝 子を導入することにより血管内膜の増殖が抑制された。今後免疫組織学的検討を加え ることによりこのメカニズムを解明する予定である。

P7伸展刺激により産生されたアドレノメデュリン(AM)は心筋肥大を抑制する。

宮崎医科大学第一内科 鶴田敏博、加藤丈司、北村和雄、今村卓郎、小岩屋 靖、江藤胤尚、

東京大学医学部循環器内科 小室一成

血行力学的負荷により生じた肥大心筋のAM遺伝子発現や含量が増加することが報告されている。我々はこれまでにAMが培養心筋細胞で産生され、アンジオテンシンII (Ang II)の添加によりAMの分泌が増加することを報告してきた。本研究では、伸展刺激に伴う心筋肥大におけるAMの役割を明らかにするために、シリコン皿上に培養した新生児ラット心筋細胞に伸展刺激を加え、培養液中のAM をラジオイムノアッセイ法で、遺伝子発現を定量的PCRを用いて検討した。また、AMの心筋肥大に対する影響をANP分泌と蛋白合成により評価した。20%の伸展刺激を24時間加えるとAM mRNAおよび培養液中への分泌はコントロールに比べ、それぞれ80%、40%増加した(P<0.01)。伸展刺激により増加したAM 遺伝子発現や分泌量はAng IIタイプ1(AT1)レセプター拮抗薬の前処置によりそれぞれ、46%、52%抑制されたが(P<0.05) 、AT2レセプター拮抗薬の前処置では抑制されなかった。一方、心筋細胞からのANP分泌や細胞内への[3H]phenylalanineの取り込みは、伸展刺激によりそれぞれ36%、21%増加したが(P<0.01)、抗AMモノクローナル抗体により内因性のAMの作用を中和したところ、それぞれ、さらに39% (P<0.05)、24%(P<0.01)増加した。以上のことから、培養心筋細胞におけるAM産生は伸展刺激により、一部はAT1レセプターを介して増加することが明らかとなり、分泌されたAMはオートクリン/パラクリン的に伸展刺激に伴う心筋肥大に対して拮抗的に作 用している可能性があると考えられた。

P8組換えヒトアドレノメデュリンの大量生産

(塩野義製薬 製薬研究所1 医科学研究所2)

光田 祐一1、瀧本 明生1、光島 健二1、神谷 重樹2、坂田 恒昭2

現在、ヒトアドレノメデュリン(AM)の供給はペプチド合成により行われている が、供給量に限りがあり、医薬品として開発するには大量かつ安価な生産システ ムを構築する必要がある。そこで、我々は組換え大腸菌による大量生産系の開発 に取り組むことにした。 AMは分子量が小さくC末端がアミド化しているため、大腸菌で直接発現させるこ とは困難と考え、AM-gly前駆体を融合蛋白質として発現させることにした。 fusion partnerとしてチオレドキシン(TRX)を用いるとともに、融合蛋白質の 切断にはAMがGluを持たないことよりGlu特異的エンドペプチダーゼである BLase1)を使用することにした。また、BLaseの切断効率を高めるため、TRXとAM の間にGluを含むlinker peptideを挿入した。設計したTRX-linker-AM-glyからな る融合蛋白質の遺伝子組換えによる大量発現系を大腸菌を用いて構築した。組換 え大腸菌の培養では、融合蛋白質は細胞内に封入体として生産された。発現量は 1.5 g/l程度であった。細胞破砕、遠心分離により封入体を回収後、洗浄・溶解 したのち、BLaseにより限定分解したところ、AM-glyは沈殿物として回収された 。このAM-gly沈殿物を遠心分離にて集め、抽出することで純度の高いAM-gly溶液 が得られた。次に、アミド化酵素によりC末端をアミド化し、成熟型のAMを得た 。その後、陽イオン交換カラム、逆相HPLCによる精製、膜濃縮した後、凍結乾燥 品を調製した。 得られたAM凍結乾燥品の純度は逆相HPLCで98 %以上であり、SDS-PAGEでsingle bandを示した。また、アミノ酸分析、細胞内cAMP上昇活性、抗体アッセイ、血圧 降下活性の結果は化学合成品(ペプチド研究所製)と同等であった。このように して、生化学的に活性のある組換え型AMの大量生産が可能になった。 1) J. Biol. Chem. 267, 23782-23788 (1992)

P9ヒト副腎癌培養細胞株SW-13からのアドレノメデュリンとエンドセリン-1の産生・分泌

東北大学分子生物学、*第二内科、**国療岩手病院

吉野谷彩子、高橋和広、村上 治*、戸恒和人*、曽根正彦**、佐藤文俊*、柴原茂樹

【はじめに】種々副腎皮質腫瘍の腫瘍組織には、アドレノメデュリン(AM)のmRNAが発現しており、ヒト副腎癌の培養細胞SW-13からはAMが産生・分泌される(Takahashi et al., Peptides 19: 1719-24; 1998)。今回我々は、AMの分泌に対するACTH、アンギオテンシンII、デキサメサゾンやサイトカインの効果をノーザンブロット法とRIAで検討し、SW-13細胞から分泌されるエンドセリン-1(ET-1 )と比較検討した。  【方法と結果】SW-13と種々培養細胞におけるAM mRNAの発現をノーザンブロット法にて検討したところ、AM mRNAはSW13、T98G (glioblastoma)、 BeWo(choriocarcinoma)、IMR32 (neuroblastoma)のいずれからも検出された。SW-13でのAM mRNAの発現レベルはT98Gの約50%であったが、BeWoやIMR32よりは高値であった。  SW-13細胞の培養液中から免疫活性(IR-)AMとIR-ETが共に検出された(22.7 +/- 1.6 fmol/10万個細胞/24h, 9.9 +/- 0.8fmol/10万個細胞/24h,平均 +/- SEM)。SW-13細胞のTNF-alpha (20 ng/ml)の24時間の処理では、培養液中のIR-AMとIR-ETはともに上昇した。インターロイキン-1beta (10 ng/ml)の処理ではIR-AMのみ、インターフェロン-gamma (100 U/ml)の処理では、IR-ETのみの上昇がみられた。ノーザンブロット法では、TNF-alphaの処理で、AM mRNAの約50%の増加がみられた。また、ET-1 mRNは、インターフェロン-gammaあるいはTNF-alpha の処理で増加した。  SW-13細胞の培養液中のIR-AMとIR-ETは、ACTH、アンギオテンシンIIやデキサメサゾンの添加では変化しなかった。 【結語】ヒト副腎癌培養細胞株SW-13からAMとET-1の産生・分泌がみられ、その分泌量はサイトカインにより相違する影響を受けることが、明らかとなった。

P10リポポリサッカライド投与ラットにおけるアドレノメデュリンとPAMPの生合成・分泌機構の検討

宮崎医科大学第一内科  松井英三郎 、北村和雄 、吉田美帆 、加藤 丈司 、江藤胤尚 、      

同第一病理  浅田祐士郎 、住吉昭信

【目的】AM遺伝子発現が著明に亢進する、リポポリサッカライド(LPS)投与による敗血症モデルラットを用いて、AM及びPAMPの生合成・分泌機構を検討した。 【方法】10週令無麻酔WistarラットにLPS(5mg/kg)、または生食を投与し(いずれもIV,bolus)、4時間後に採血と組織(副腎, 心房, 心室, 大動脈, 肺, 腎臓, 脾臓)の摘出を行った。血中及び組織中のAM、PAMP濃度をRIAで測定し、血中AM、PAMPの定性を逆相HPLCで行った。各組織でのAMmRNA発現量を定量的RT-PCRを用いて比較した。免疫染色により副腎、心房、心室、肺組織のAM分布を観察した。 【結果】生食群の各組織ではAM濃度がPAMP濃度よりも高かった。しかし、血中ではPAMP濃度 (26.23±2.76 fmol/ml, mean±SE) はAM濃度 (6.78±0.33) よりも高かった。LPS投与群の血中AM濃度 (111.59±9.93) は生食群に比べ約16.5倍と著明に増加したが、PAMP濃度 (81.13±17.20) は約3.1倍の増加にとどまった。増加した分子型は主にAM[1-50]、PAMP[1-20]であった。副腎、心房のAM、PAMP含量がLPS投与群で有意に低下した。その他の組織のAM濃度はLPS投与群で有意に増加、PAMP濃度は肺のみで増加した。AMmRNAは全ての組織で発現しており(腎臓を1.0とすると肺6.0, 副腎3.0, 心房1.6, 大動脈1.4, 心室1.0, 脾臓1.0)、LPS投与によって大動脈、肺、副腎で有 意に増加した(各5.8倍, 3.8倍, 3.7倍) 。AM陽性細胞は血管内皮、副腎髄質、心筋 で認められ、肺胞中隔の毛細血管内皮ではLPS投与群における著明な増加が確認された。 【結論】ラットにおいて、各組織中のAM濃度はPAMP濃度よりも高かった。LPS投与後の血中AM濃度の上昇度はPAMP濃度の上昇度より明らかに大きかった(約5.3倍)。副腎、心房のみでLPS投与群のAM、PAMP含量が有意に低下したことから、両者が調節性機序によるAM、PAMP分泌の主要組織であることが示唆された。LPS投与後にAM濃度の上昇する臓器とPAMP濃度の上昇する組織が異なることから、AMとPAMPは共通の前駆体を有するが、組織により、生合成・分泌機構が異なる可能性が示唆された。

P11 Swiss 3T3細胞におけるアドレノメデュリンの産生とサイトカイン産生の調節

井角能隆、久保篤史、友田芳夫、片淵剛、寒川賢治、南野直人

国立循環器病センター研究所

【目的】アドレノメデュリン(AM)はヒト褐色細胞腫より単離された強力な血管弛緩性ペプチドである。我々はAMが内皮細胞、血管平滑筋細胞、マクロファージから産生され、炎症性サイトカインやLPSでその産生が増加すること、LPS投与ラット、敗血症患者の血中AM濃度が顕著に増加することを明かとし、AMが炎症反応に寄与する可能性を示してきた。さらに最近我々は線維芽細胞からも多量に分泌されることを見出した。そこで、本研究では、炎症部位でのAMの機能解明を目指し、マウス胎児由来線維芽細胞のSwiss 3T3細胞におけるAMの産生調節とそのサイトカイン産生に及ぼす影響につき検討を行った。 【方法】AM、cAMP量はRIA法で測定した。IL-6、TNF-α量はバイオアッセイ法で測定し、mRNAはノザンブロット法、Real Time Quantitative PCR法で測定した。 【結果】Swiss 3T3細胞のAM産生は、炎症性サイトカインやデキサメサゾンなどで刺激され、TGF-β1などにより抑制された。また、AMはcAMP産生を増強し、IL-6産生を6倍誘導することがわかった。さらに、TNF-α、IL-1β、LPSで誘導されるIL-6分泌を相乗的に最大で基礎値の270倍に増加させた。一方、TNF-α産生はAM単独刺激で変化しなかったが、AMはIL-1βで4倍に刺激されたTNF-α産生を80%抑制した。これらのサイトカイン産生に与えるAMの効果は、AMレセプターアンタゴニスト、プロテインキナーゼA阻害剤で阻害された。 【結論】線維芽細胞のAM産生はサイトカイン、ホルモンなどにより調節され、分泌されたAMは線維芽細胞自身に作用し、特異的受容体-cAMP-プロテインキナーゼA系を介して、強力なIL-6産生促進、TNF-α産生抑制作用を示すことが明かとなった。これより、AMは血管弛緩因子として働くばかりでなく、炎症反応の調節因子として機能する可能性が強い。

P12培養ヒトアストロサイトからのアドレノメデュリンの産生・分泌

東北大分子生物学、同 第二内科* 

高橋和広、戸恒和人*、村上治*、在原善英*、佐藤文俊*、曽根正彦、吉野谷彩子、柴原茂樹

【はじめに】我々はすでにアドレノメデュリンとその結合部位がヒト脳に存在すること(J Clin Endocrinol Metab 80:1750-1752; 1995, Neurosci Lett 203:207-210; 1996, Peptides 18:1051-1053; 1997, Peptides 18:1125-1129; 1997)、脳腫瘍であるグリオブラストーマから産生・分泌されること(Peptides 18:1117-1124; 1997)を報告した。本研究では、ヒトアストロサイトの培養細胞からのアドレノメデュリンの産生・分泌とサイトカインの効果を検討した。 【方法と結果】ノーザンブロット法によって、ヒトアストロサイトの培養細胞から、 アドレノメデュリンmRNAが検出され、その発現レベルは褐色細胞腫の約30%であった。培養液からも免疫活性アドレノメデュリンが検出され(29.6 +/- 1.2 fmol/10万個 細胞/24時間、平均 +/- SEM、n=4)、interferon-gamma (100 U/ml)、TNF-alpha (1 -10 ng/ ml)やinterleukin-1beta (1-10 ng/ml)の処理により、20倍以上に増加した。サイトカイン処理アストロサイトの培養液のHPLCでは、合成アドレノメデュリンと同一部位に主ピークがみられた。他方、ノーザンブロット法では、interferon-gammaあるいはinterleukin-1betaの処理で、約40%のmRNAの増加が見られたにすぎなかった。 【結論】ヒトアストロサイトからアドレノメデュリンの産生・分泌がみられ、アストロサイトは脳のアドレノメデュリンの源のひとつと考えられた。サイトカインによるアドレノメデュリンの分泌の増加は、転写レベルと同時に翻訳あるいは分泌レベルでの制御を受けている可能性が示唆された。

P13血液透析患者における成熟型adrenomedullin (mAM)と中間型AM(iAM)の血漿濃度

宮崎医科大学第1内科 ○戸倉健、木下浩、藤元昭一、久永修一、北村和雄、江藤胤尚

【背景】 Adrenomedullin (AM)は強力な血管拡張作用とナトリウム利尿作用を有する降圧ペプチドである。ヒト血漿中には免疫活性を有する2つの分子型、生物活性を有する成熟型AM[1-52]-CONH2(mAM)と降圧活性をほとんど有しない中間型AM-gly(iAM)とが存在する。しかし、透析患者でのmAMとiAMの体内動態は明らかにされていない。【方法】今回、血液透析患者39名と正常コントロール10名を対象に、2つのIRMA法 (AM mature RIA SHIONOGI, AM RIA SHIONOGI) でtotal AM(mAM+iAM)mAMとiAMを各々測定し、計算で得られたiAMとともに臨床データとの関連検討した。【結果】血液透析前の血漿中のmAMおよびiAM(平均値±標準誤差、 fmol/ml)は、正常コントロールと比較して有意に高値であり(4.76 ±0.28 vs. 1.28 ± 0.22 , P < 0.001および 25.99 ± 1.47 vs. 8.52 ± 0.91 ,P < 0.001)、 しかも収縮期および拡張期血圧と有意な負の相関を示した。透析後のmAMとiAMの濃度は透析前に比較し有意に低下した。また、血漿mAMとiAMの間には有意な相関が見られた (r = 0.73, P < 0.001) 。【結論】血液透析患者においてmAMは血圧調節に関与している可能性がある。iAMがmAMのhormone reservoirとしての機能を持つかどうか、今後の検討を要する。

P14血液透析患者の血圧調節におけるアドレノメデュリンの関与―高血圧の成因と透析低血圧における動態―

埼玉医大総合医療センター 第4内科

叶澤孝一、御手洗哲也、磯田和雄 同人工腎臓部 長澤龍司

東京大学腎内分泌内科 下沢達雄、藤田敏郎

【目的】アドレノメデュリン(AM)は強力な血管拡張物質で、血圧や循環動態を規定している。そこで、血液透析(HD)を施行している患者の高血圧の成因および透析低血圧におけるAMの動態を検討した。 【方法】39例のHD患者に対して、HD施行中の血圧をモニターし、経時的にAM、成熟型AMを測定した。 1) 通常の血圧を測定し、WHO/ISHの定義に基づきHT群(n=24)とNT群(n=13)に分け検討した。 2) HD施行中に、収縮期血圧(SBP)が30mmHg以上低下したSBP低下群(n=16)と30mmHg未満であったSBP不変群(n=20)に、また拡張期血圧(DBP)が15mmHg以上低下したDBP低下群(n=24)と15mmHg未満であったDBP不変群(n=13)に分け検討した。 【結果】1) HD前の成熟型AMはHT群に対して、NT群で有意に高値を示した。HT群では血圧低下が大きいにも関わらず、HD前後の成熟型AMは変化が少なく、一方NT群では顕著に低下した。HD前後の成熟型AM/AM比も、HT群で上昇傾向を示したのに対して、NT群では低下した。 2) 成熟型AMはSBP低下群、SBP不変群、DBP低下群で低下したが、DBP不変群では変化しなかった。成熟型AM/AM比は、SBPの低下の有無で変動を認めなかったが、DBP低下群では低下したのに対して、DBP不変群では上昇し、異なった変化を認めた。 【総括】1) HD患者の高血圧の成因に成熟型AM濃度が低いことが関与している可能性が考えられた。また、HD施行中の高血圧患者では、中間型AMから成熟型AMへのアミド化酵素活性が亢進している可能性が考えられた。 2) 透析低血圧症例では、成熟型AMはHD中に低下し、DBP低下例で顕著であった。また、DBP低下例では、中間AMから成熟型AMへのアミド化酵素活性が下がると考えられ、HD中の血圧低下に対して防御的に働く可能性が示唆された。

P15高血糖による血管壁アドレノメデュリン発現上昇

東京大学医学部分院内科 林 道夫、下澤達雄、藤田敏郎

目的:我々は、著明な高血糖患者の血中アドレノメデュリン(AM)が正常者と比較て 上昇していることを見いだした(Lancet 350, 1449)。今回、生体内の主要なAM産生部 位である血管壁において高血糖がAM産生を上昇させている可能性について検討した。 方法:糖尿病ラット大動脈におけるAM mRNAレベルをノザンブロット法で検討する。培養 血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、PC12細胞におけるAM mRNAレベルのグルコースによる変 化を検討する。培養細胞内のProtein Kinase C (PKC)活性のグルコースによる変化を検討する。 結果:糖尿病ラットの大動脈のAM mRNAは正常ラットに比較して上昇していた。血管平滑 筋、内皮細胞では培養液中のグルコース濃度上昇に伴いAM mRNAは上昇した。PKC活性もグルコースで上昇し、PKC阻害剤を添加するとグルコースによるAM mRNA上昇は消失した。マンニトールにはこのような効果はなかった。PC12細胞ではAM mRNA,PKC活性ともグルコー スにより変化しなかった。 結論:高血糖は血管壁細胞のAM発現を上昇させる。この上昇メカニズムはPKC活性化を介している。著明高血糖患者の血中AM上昇は、血管壁でのAM発現/産生亢進に起因していると思われる。糖尿病血管合併症の発症に、高血糖による血管壁AM発現上昇が関与している可能性が示唆された。

P16悪性高血圧急性期に血管由来血管作動性物質上昇を来した一例

東京大学医学部腎臓内分泌内科1、塩野義製薬株式会社 診断薬部2、

藤田恵1、高橋克敏1、波多野将1、下沢達雄1、安東克之1、辻哲男2、藤田敏郎1

症例:51歳男性。主訴:全身倦怠感、労作時息切れ。現病歴:明らかな誘因なく2週間前より全身倦怠感、2日前より労作時息切れが出現し当科受診。初診時240/130mmHgと著明な高血圧と眼底出血 ( Scheie: H3S2 )があり、腎機能障害(Cre 4.0mg/dl)、破砕赤血球を伴う溶血性貧血(Hb 10.4 mg/dl, LDH 1783 IU/L, Plt 8.3 x 104 /μl)を認め、Accerelated-Malignant HypertensionによるThrombotic Microangiopathyと考えられた。Malignant cycle解除を期してNicardipine静脈内投与等を行い、溶血性貧血進行とCre値上昇のないことを確認後、AT1受容体拮抗薬内服を開始した。Ca拮抗薬と利尿薬少量も併用し徐々に腎機能改善を認め、110病日頃にはCre 2.4 mg/dl、LDH 258 IU/lまで改善した。 Malignant Hypertensionの急性期には、Adrenomedulin、Endothelin-1等の血管作動性物質の上昇が報告されており(J Kato et al., Hypertens Res 1999, M. Yoshida et al., Clin Nephrol 1994)、本症例でも急性期にAdrenomedulin (AM-Gly) 19.3 fmol/ml、Endothelin-1 5.0 pg/ml (≦2.3 ) と上昇を認めた。22病日には、AM 12.2 fmol/ml、ET1 2.2 pg/mlと、降圧に伴い徐々に低下を認めた。一方、高血圧の重症度・合併症に関係すると推測されているHepatocyte Growth Factorは0.32 ng/ml (≦0.39 ) と上昇を認めなかった。なお、著明な血小板減少 (Plt. 1.5 x 104 /μl) を伴い、TTPとの鑑別が困難であった44才女性のMalignant Hypertension症例では、急性期にAMのみならずHGF 0.74 ng/mlと上昇を認めた。内皮保護作用を有すると言われているこれらの血管由来血管作動性物質は、血管内皮障害の程度や病態の初期指標となる可能性が考えられた。

P17ラット脳室内に投与したアドレノメデユリンの室傍核オキシトシン産生ニューロン神経活動に及ぼす影響

上田陽一、芹野良太、野口 淳、澁谷 泉、山下 博

産業医科大学・医・第一生理

我々はこれまでに、アドレノメデユリンをラット脳室内に投与すると、c-fos mRNAおよびFos蛋白が視床下部室傍核および視索上核のオキシトシン産生ニューロンに選択的に発現することを明らかにした。c-fos遺伝子の発現は、神経活動の指標として汎用されているが、活動電位の変化との相関は明らかではない。そこで、今回我々は、麻酔下のラットを用いて、ガラス微小電極により室傍核神経分泌ニューロンの神経活動を記録しながら、アドレノメデユリンの脳室内の効果を検討した。実験には、ウイスター系成熟雄ラットを用いた。ラットをウレタンおよびクロラロースの混合麻酔液により麻酔し、系咽頭的に視床下部下面と下垂体を露出した。下垂体に刺激電極を置き、室傍核ニューロンからガラス微小電極により神経活動を記録した。下垂体後葉に軸索を投射している神経分泌ニューロンは下垂体刺激による逆行性活動電位の発生により同定した。アドレノメデユリンを脳室内に投与すると、オキシトシン産生ニューロンのその神経活動は増加した。一方、バゾプレッシン産生ニューロンでは、その神経活動には影響を及ぼさなかった。したがって、脳室内に投与したアドレノメデユリンは選択的に室傍核オキシトシン産生ニューロンの神経活動を増加させることが明らかとなった。室傍核は下垂体後葉に軸索を投射している大細胞群、自律神経系のニューロンである小細胞群および正中隆起部に軸索を投射している下垂体前葉系の細胞群に分けられる。下垂体刺激に反応しない室傍核内のニューロンについてもアドレノメデユリンの脳室内投与の効果を調べたところ、神経活動が増加する細胞があった。脳室内に投与したアドレノメデユリンは、下垂体後葉に軸索を投射するオキシトシン産生ニューロンだけでなく、自律神経系もしくは下垂体前葉系の細胞も賦活することが示唆された。

P18肺結核および関連疾患におけるアドレノメデュリン, PAMPに関する検討

国立療養所宮崎東病院内科  下窪 徹, 比嘉利信, 隈本健司

宮崎医科大学第1内科    北村和雄, 江藤胤尚

【目的】アドレノメデュリン(AM)は強力な降圧ペプチドであるが, LPS刺激下マクロファージに対するTNF-a, IL-6の産生抑制作用も有していることが報告され,急性肺障害に対して抗炎症的に作用している可能性がある。AMの関与を調べる目的で肺結核患者の血漿AM濃度を測定した。また, PAMPの血中濃度についても検討した。 【方法】肺結核,結核性胸膜炎,肺非定型抗酸菌症の患者(計15名)を対象として入院時と入院3ヶ月後に採血した。血漿分離後にSep-Pak C18にて処理したのち, ラジオイムノアッセイを用いて血漿AM, PAMP濃度を測定した。入院時の血漿AM, PAMP濃度については, 血清CRP値, 白血球数等との相関についても検討した。 【結果】入院時において, 対象患者の血漿AM, PAMP濃度は健常者と比較して有意な高値を示した(AM:5.0±0.2fmol/ml vs 8.9±1.1fmol/ml, p<0.01, PAMP:1.2±0.1fmol/ml vs 1.8±0.2fmol/ml, p<0.01)。また, 血漿AM, PAMP濃度と血清CRP値との間には有意な正の相関関係が認められた(AM:r=0.57,p<0.05,PAMP:r=0.61,p<0.05)。血漿AM, PAMP濃度と白血球数との間にも有意な正の相関関係が認められた(AM:r=0.55,p<0.05, PAMP:r=0.56,p<0.05)。入院時に高値を示した血漿AM濃度は3ヶ月後には有意に低下したが(p<0.05), 血漿PAMP濃度には有意な変化は認められなかった。 【総括】肺結核および関連疾患の急性期の病態にAMが関与していることが示唆された。

P19心臓構成細胞(心筋細胞と非心筋細胞)におけるアドレノメデュリンの産生とその役割

友田芳夫,井角能隆,片渕 剛,寒川賢治,南野直人

国立循環器病センター研究所

【目的】アドレノメデュリン(AM)は,褐色細胞腫から単離された血管弛緩性ペプチドであり,多種の細胞で産生されている.本研究ではAMの心臓での産生とその作用を検討した.【方法】1日齢のSDラット心室から心筋細胞 (MC)と非心筋細胞 (NMC)を高純度に分離培養し,IL-1β,TNF-α,LPSおよびAMで各細胞を刺激し,分泌されるIL-6,Nitric oxide (NO)およびET-1量を測定した.【結果】MC,NMCのAMの基礎分泌量は,12.85,35.96 fmol/105 細胞/ 14時間 であった.IL-1β,TNF-α,LPS刺激でNMCのAM分泌量は濃度依存的に増加したが,MCでは変化しなかった.AM投与によりMC,NMCのIL-6分泌量は1.3倍,2.3倍に増加し,IL-1βとAMの共投与で,さらにMCは基礎値の1.7倍に,NMCでは8.0倍に増加した.MC,NMCのNO産生量は,AM投与により1.5倍,1.4倍に増加した.IL-1βで誘導されるNMCのNO産生は,AM共投与にさらに2.5倍に増加した.NMCのET-1の基礎分泌量はMCの約9倍で,MCのET-1産生はAMにより抑制されないが,NMCでは約60%に抑制された.【結論】AMは,MCおよびNMCから産生,分泌されるとともに,IL-6,NO,ET-1産生を変化させた.産生量,反応性などより,心臓でのAMは非心筋細胞を中心にして心機能調節に寄与すると考えられる.

P20 Immunocytochemical Localization of Adrenomedullin in Baloon-injured Rat

Junsuke kawai Dpt of Plastic surgery,Univ.of Tokyo
Tatsuo Shimosawa, Akihiro Tajima, Masao Yamasaki, Teruhiko Ogita,and
Toshiro Fujita, Dpt of Medicine, Univ. of Tokyo Branch Hosp.

The proliferation of of vascular smooth cells is a common feature with athrosclerosis and restenosis after baloon angioplasty. In order to study the roles of adrenomedullin, we investigate the Immunocytochemical localization. Aorta of 12wk-old Wistar rats were injured with 2F baloon and killed 7and 14days after operation. Neointimal hyperplasia was observed.Immunocytechemical studies were performed using polyclonal antibody. Adrenomedullin immunoreactitivity was mainly observed in neointimal hyperplastic lesion. Adrenomedullin may play an important role in the formation of restenosis after endothelium injury.

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