隋にて 5




ギシ、ギシリ

前の宿のときよりは少しグレードの上がった寝台。
なのにありえないくらい軋んでいる。
ふたりで乗れば当然か。
とか。

ジャージを脱がされて、幾分冷えた外気に触れて少しの理性が一瞬戻ったが、その僅かな脳の隙間で考えられるのは、そんなつまらないことだけだった。

まな板の上の鯉のように横たわって、妙な準備体操をしている太子の様子を伺った。

ギシ。
(…来る……)





前のときと同じように、自分ばかり脱がされて、丁寧に撫で上げられる感触を背筋を駆け上がる鳥肌とともに味わう。
「あッ、いいっ…」
ヌルつく感触、気持ち悪いはずなのに、きもちいい。

一気に下半身に血が集まって。下で脈打つ感触が、断続的に差し込むような快感が、ビリビリと痺れのように脳に伝わってくる。

「はァ…」
太子の手汗を言い訳にできないくらい、濡れてきているのがわかる。
「んっ…んッ」
輪郭を辿る手に張り詰めた状態を思い知らされる。



「大丈夫だよ妹子」
乗りあがって丁寧になで上げていた太子が話しかける。
「こんなに健康そうだ。何の問題もない」
「……!」

先端をつつかれて、
よかったな。
とか囁かれても恥ずかしいだけで。

「や、そ、んなこと…」
身を捩って言葉から逃げようとする。


ゆっくりすべてを揉みしだかれる。
緩急つけて刺激を加えられ、翻弄される。
すでに絶頂に近づいているのがわかって。


「は…や…ぁ」
期待と。でもすこしの物足りなさ。

……物足りなさって何…?!



ああ。
前みたいな。
前みたいな前後不覚の快感が…欲しい。
なんて、
なんてそんなのね、だれ…な…!

「あ!…イく……………あ、んっ!!」
あっけなく放出させられ、脱力してシーツに身を沈めた。








「フゥ………」
熱の引かない身体をうつ伏せにして、浅い呼吸を繰り返す。
ぼんやり快感の余韻に浸りつつ、心のすみでソレをもてあましている妹子がいた。
ソレを振り払うようにもぞりと揺らした腰の動きは、誘っているように映ったかもしれない。


「なに?」
妹子の横に身を伸ばした青ジャージが、シーツに片頬を埋め、視線を合わせて訊ねてきた。
汗で貼りつく前髪を、優しく払われる感触。

細い目の奥の、黒い瞳。
それに映っている、上気した頬と潤んだ目の男はいったい誰なのか。

…そんなことを考える余裕もない。
ただ、ほしかった。


「…太子…」
「ん?」


妹子は目を伏せて、息とともにその言葉を吐き出した。


「な、中に……」










じゅぷり。
潤滑剤のぬめる音に続いてつめたい感触がそこに触れ、妹子はぎゅっと目をつぶる。

「あ…あぁっ!」
丹念に周りを慣らされたあとで、前のようにゆっくり指を回し入れられる。
凄まじい違和感と痛みを、期待とともに受け止め、身を反らせる。

「あっ…ソコ…」
「ココ?」
「ハイ………あ!!!」
腹の内側を撫でられている感触がすごくリアル。

先刻、ビクともしなかったソレは、ここではまた瞬時に復活して、痛いほど張り詰めた。







「は…ぁ、は…」
「じゃあ、もう1本、いくよ…?」
「く…あ……ン!!」
指を増やされる感覚を、腹に力をいれ、背をそらして受け止める。
強まる刺激に翻弄される。



別にそんなに誇れるような経験があるわけではないけれど、それでも年相応、人並みの人生を送ってきたつもりだった。
そのすべての感覚をふっとばすようなこの快感は、この世のものとは思えないほどで。

これは本当に現実なのだろうか。
こんな気の遠くなるような異国の地で、普通に目通りかなうことも難しい、貴人中の貴人と。

夢心地で、自分を翻弄する相手のジャージに縋りつき、妹子は歯を食いしばって何とか自分の位置を確認しようとする。

「た…いし…」
「ん?」
「あ…ヤ、そこ…やっ………っ!」
「気持ちイイ?妹子気持ちいい?」



「あ・・・ンッ…じゃなくて…ッ!…な、なんで…太子どこでこんな…こと・・・を?ンっ!」
「んん?」
「ぜ…全然そんな風に見えなくて…っ、カッコよくもっ、ないしっ、アンタ、なんでそんな…」

「ああ」


すこし動きを止めた。

太子は一瞬ことばを探して、そしてさらりと、答えた。










「帝王教育。ってやつ?」
「!!」




体温が一気に下がった気がした。


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