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昨年も何回かの音楽会に出かけた。かなりの数の上るが、その中から印象に残ったものを少し取り上げてみる。また、私自身も性懲りも無く合唱団に加わり、ステージに上がったのでこれについても述べてみたい。
◆ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2007 (5月)
今年も風薫るゴールデンウイークに恒例の「熱狂の日音楽祭」が東京国際フォーラムを舞台に開催された。今年のテーマは「民族のハーモニー」だ。昨年に引き続いて5月2日に二つの公演を聴いた。
いずれもスペインの指揮者であるファンホ・メナ指揮のビルバオ交響楽団の演奏会だった。

数曲を聴いた印象では少し荒っぽい演奏だったが、力演だった。特に良かったのはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲だった。ソリストはセルビア生まれの若々しい男性だった。

この音楽祭の人気はたいしたもので、いずれの会場も満席に近い入りだった。折りしもゴールデンウイークのことで東京のみならず近郊あるいは地方からも聴きに来ている人々もかなり居たのではないか。

堅苦しい雰囲気が無いのが大変よろしい。幼児や子供の入場も全く問題ない。クラシック音楽は何もかしこまって聴く必要は全く無い。

大ホールの演奏の時には修学旅行の生徒らしき団体が大勢居たがこのような音楽祭を体験できるのは大変意義あることだと思った。


私はカミさんと聴きに行き、公演の合間に食事を楽しみ、ワインをしたたか飲み、一杯機嫌でウトウトしながら
後半を聴いたが、
この企画は文句無く楽しめる。

国際フォーラム入り口と
夕暮れの風景


◆中村紘子女史のベートーヴェン協奏曲全曲同時演奏会 (6月)

このコンサートは大変素晴らしかった。聴き応え十分だった。

何しろ数時間であのベートーヴェンのピアノ協奏曲5曲、全曲を一時に聴いたのだ。正直言って最初は大丈夫かなぁ…と少し心配だたった。
勿論彼女はあのチャイコフスキー国際コンクールの審査員も務めた有数のピアニストだが、もうお年だし、小柄な女性だからだ。

しかし、これは全くの杞憂に終った。途中で一時間近い休憩はあったものの最初から最後まで迫力十分で美しいベートーヴェンをたっぷり聴かせてくれた。私はそれまでリサイタルを聴いたことがあり、「お嬢さん芸のショパン弾き」だと思っていたがその認識は全く違っていた。

演奏は堂々としていた。最近のソリストに良く見られる、わざとらしい、しかめっ面したり、思い入れたっぷりな大仰な身振りをしたりする事は無く、淡々と弾いていたが、紡ぎ出された音楽はメリハリが利き力強く上等だった。

驚いたことに最後の「皇帝」が終った後、満場の拍手に応えてショパンのノクターンか何かをアンコールで弾いたことだ。皆が「エェー!」と、声を出し、ビックリしていた。
女史は涼しい顔して笑っていた。これこそプロ中のプロだと思った。

*この演奏会はカミさんと聴いたが非常に印象に残った。

オーケストラは大友直人指揮の東京都交響楽団で、6月3日、新緑の美しい上野の文化会館で開かれた。






◆NHK音楽祭でゲルギェフを聴く(11月)

昨年に引き続いてNHK音楽祭の出し物を一つだけ聴いた。

ゲルギェフ指揮のマリンスキー劇場管弦楽団の演奏会だ。
もう10年ほど前になるがロシア旅行の際、サンクトペテルブルグの当劇場でバレエ「眠りの森の美女」を観たことがあるが、この時のオーケストラボックスにはこのオケが入っていた。
指揮者はゲルギェフではなかったと思うが、プログラムが見当たらずはっきりしない。

最近活動は活発らしく、なかなか素晴らしい音を出していた。私には鋼のような硬質の音のように感じられた。
バレエ音楽の特集だったが、いずれも熱演、特にストラビンスキーの「春の祭典」は圧巻だった。


満場の拍手に応えてアンコール曲を3曲も演奏したが、ゲルギェフのサービス精神は旺盛だ。
彼は日本のファンやホールは大のお気に入りらしい。

わが国は海外クラシック業界の大のお得意さんらしく、いろいろな演奏家がわんさか出稼ぎに押し寄せてくるが、中には首を傾げたくなるような演奏もある。だがこれは正真正銘のロシア音楽だ。

★ファビオ ルイージのワーグナーはものすごい
この音楽祭の出し物のハイライトが放映された。12/14日にドレスデン国立歌劇場その他の出演による演奏会の録画を見た。
中でもワーグナーの楽劇、ワルキューレ第一幕を演奏会形式で演奏したものはあらゆる面で素晴らしかった。普段は長ったらしいので聴いたことがないワーグナーを我慢して聴いてみたが、このオーケストラの紡ぎだす音色は真に素晴らしく、すぐに引き込まれてしまった。テレビの放映でもその音の美しさと迫力は十分感ずることが出来た。また3名の歌手がいずれも素晴らしかった。大編成のオーケストラに伍して実に堂々としていた。
わが国のオペラ歌手は到底足元にも及ばないだろう。
率直に言って、大人と子供ほどの違いだと思った。

指揮者のルイージの集中力と、ど迫力のある動きの激しい指揮ぶりに圧倒された。私にとってはオーケストラ演奏会は「聴く」というより、むしろ指揮者や共演者の動きや表情を「見ている」ほうが楽しい。
音楽評論家の諸石氏が彼の指揮振りでは首や背中を痛めるのではないかと懸念していたがさもありなんと思った。
ルイージ氏のワーグナーやヴェルディのオペラに対する考え方も面白かったが「人の声は人類最古の楽器だった…オペラは人生の縮図だ」という話はなるほどと思った。同じくイタリアオペラ界の重鎮であるサンティ氏も同様なことを言っているのは面白い。
このマエストロの演奏を機会があれば是非とも生で「見てみたい」と思った。


◆豊島区民合唱団で歌う(12月9日)

私が住んでいる豊島区は行政が文化都市の実現を宣言し、いろいろな施策を講じている。その一環として毎年、池袋の東京芸術劇場大ホールで、区民参加の音楽会を開催している。

今年はここの合唱団に初参加した。当日のプログラムと演奏曲目は以下の通りだ。




盛り沢山な曲目だがこのうち数曲を合唱で歌った。
一種のオペラコンサートだが、お流行の「千の風になって」のコーラスバージョンや「第九・歓喜の歌」の一部分なども歌った。

独唱者はオペラなどで活躍中のテノールの川上洋司氏やソプラノの大貫裕子氏など実力者や音大在学中のプロの卵たちなども出演、更には子供たちの合唱団も加わるなどして、にぎやかなコンサートだった。


合唱の稽古は8月から原則毎週一回のペースで行われたが、指導者は坂本和彦氏で当日のマエストロだった。




私は「第九」だけは過去数回、思うところあって毎回合唱団を変え歌い続けてきた。パートもテノールだけではなくバスも歌ったことがある。

今回はいろいろな曲をオーケストラをバックに歌ったが、勿論上手く歌えたなどとは思っていない。特にアイーダの第二幕グランドフィナーレ「凱旋と勝利の歌」は稽古不足もあり、かなりいい加減な状態でステージに上がってしまった。
オーケストラの勇壮なトランペットの音でごまかしてしまったが、元気よく出来る限りの大声?だけは張り上げた。。
合唱団は130人規模、やはり男声パートは少なく25名、特にバスは数名で極端なアンバランスだった。「第九」と「アイーダ」だけはプロの助っ人10名が加わり、何とかバランスをとっていた。若々しく体の大きなプロが加入すると歌っていても安心感が違う。

他の合唱曲をはじめて歌って改めて「ベートーヴェンは難しい」ということを再認識させられた。
だが今回の演奏会では「歓喜の歌」の総てではなく、ソリストが加わらない部分、すなわち第四楽章の543小節から終わりまでを歌う変則的な合唱だったので物足りないと感じた団員がかなり居たようだ。
しかし私はこの曲は「さわり」だけ歌えば十分だと思った。

コンサートそのものは盛りだくさんでバラエティにも富んでいたのでお客さんの評価は悪くは無かったが、私そのものは総てにおいて稽古不足で消化不良気味だった。だがアマチュアの演奏会は所詮、お歌の「発表会」であり自己満足に過ぎない。
合唱団は今年、ヴェルディの「レクイエム」に挑戦すると云うことだが、今のところ参加するかどうかは全くの白紙だ。


◆今年最後の「第九」を聴く(12月25日)
「第九」を聴く時には原則としてプロか音大の合唱団を聴くことにしている。

「アマの第九」は聴いているとミスが目立ち、ハラハラする。ヘンな緊張感で、安心して聴けない。聴くよりアマチュアとして舞台で大声を張り上げているほうがはるかに楽しい。

今年は都響の特別演奏会で、歴史のある二期会合唱団の「歓喜の歌」を聴いた。さすがだった。大変素晴らしい出来で、特に男声が良かったと思う。陣容は約80名規模で男女比率は半々といったところだ。

少し話はそれるが、アマチュアの場合は、人数だけはこの倍から3倍規模だが通常男声パートが極端に少ない。聴いているとアンバランスで、団子状態、もこもこと音がこもり歯切れが悪く、オケと音が合わず何かちぐはぐで、全く聴くに堪えないと思う。後で録音を聴いてみるとあらが目立つ。恥ずかしくなるほどヒドイ。「アマチュアだから」と言えばそれまでだが…

最近のお客さんの耳は肥えているので、高い金を取って聴かせる代物ではない。
遊び半分のアマチュアの演奏で満足する聴衆は居ないだろう。

素人の下手なお歌の発表会から「第九」の感動は全く伝わってこない。

私は自分でステージに上がる場合は友人知人らにはチケットをプレゼントして、「恐る恐るご来場いただく」ことにしている。これが常識あるアマの対応だと信じて疑わない。



指揮は著名なエリアフインバル氏で彼のベートーヴェンには少し疑問を持っていたが、重厚で素晴らしい出来だった。
昨年聴いた東フィルの「第九」は「東京オペラシンガーズ」の合唱は良かったが、プレトニョフの指揮が余りにも珍奇だったのでひどい演奏だった。だが今年はオーソドックスで美しく満足した。
独唱者も今わが国を代表するようなヴェテラン揃いで美しく迫力ある歌唱を堪能することが出来た。
私は最初東京芸術劇場のマチネー公演を予約しようとしたが、満席だったため翌24日の文化会館での演奏会を聴いたが当日も満席状態で改めて日本人の「第九好き」を再認識した。


◆親しい友人、Nさんからの賀状
長年の友人であるNさんから毎年いただく年賀状は真にユニークだが興味深い。
彼は極上のコンサートを毎年100回以上聴いている。総てに博識だが、特にクラシック音楽については精通しており、ヘタな批評家より詳しい…と感ずるほどだ。私は彼の足元にも及ばない。

感心するのは彼自身の「ものさし」で年間ベストテンを選んでいる点だが、これはかなり難しいことだと思う。