その昔、保険屋をやめた後、「事故係り」の経験を買われ、ある所で「休日自動車事故初期対応」という交通事故の電話相談をしていたことがあります。
正規の社員がお休みのときに代わりにコールセンターに出勤して、交通事故当事者のいろいろな電話相談に応ずるのが役割です。一種のスキマを埋めるサービス業務です。初期対応とは事故の当事者に電話し、ご様子を伺うと共に今後の対応について平常心を失っている相手が安心するようなリップサービスをすることです。

交通事故の現場は修羅場です。当事者にはパニック状態に陥る人もおります。
特に人身事故の場合は深刻です。
多くの当事者と対話していると、陰惨そのもの、そしてそれを取り巻くドロドロした人間模様が浮び上がってきます。
 突然降ってわいた事故で、自分を見失ったり、ヒ・ミ・ツにしておきたいプライバシーがむき出しにされてしまうこともあり、真に残酷なものです。


◆こんな時貴方ならどう対応なさいますか?
世にも「ヒドイ事故」と「本音の初期対応」)
これらの事故は、私があるコールセンターで数ヶ月間の間に実際に体験したものの一部ですが、これらは総て脚色なしですからオドロキです。
このようなケースの対応では正直言ってハラが立つたり呆れたりすることも多いのですが、感情は押し殺し冷静にかつ丁寧に対応し、動転し不安に陥っている相手の気持を和らげ安心を与えるよう最大の努力をしますが、これは商売上の建前でホンネは違います。
もう相談業務はとっくにやめましたので本音を述べます。

@バカは死ななきゃ治らない事故
▲一日のうちに2回も対物事故を起したお客さんがいる。

初期対応⇒ 電話対応中に曰く「オイ、今日2回もやっちまったよ アハハハ」だと 笑い事じゃねえぞ、 今3等級だってな。 今後契約は一切お断りだ! 喝!

だがそれよりヒドイ者もいるんだってな。
先日聞いた話だが、同一保険期間内(一年間)にナント四回も事故を起し、挙句の果てに、とうとう警察のパトカーのオカマを掘っちまったんだとさ(二十代後半の男)こうなると、もう怒るよりお笑いだよ。 呆!

▲同じ阿呆の話しだが、高速道路を出て料金ゲートに行く途中のカーブを高速道路並の猛スピードで突っ走り、曲がることが出来ずにガードレールに激突大破 

初期対応⇒ 当たり前だ! お前みたいなバカ者は「死ななきゃ治らねぇ」よな。 よく免許とれたなあ 自業自得だよアハハハ。 呆!

▲契約者のドラ息子が夜中に田んぼ道を走行中、電信柱にぶつかり右の田んぼに落っこち暴走、さらにご丁寧にも道路を乗り越え、反対側の田んぼに再び落下して稲をなぎ倒した。

初期対応⇒ 両方の田んぼの持ち主があきれ返っていたぞ。(契約者は恐縮し、息子がウンウンうなって寝ているが起こしましょうかと云うが お断りだ!) 
どうせ酔っ払いだろうが。顔でも洗って出直して来い! この親不孝者めが! 喝!
それにしてもこの損害はどう算定するのかな?収穫間際だが ええい面倒くさい現場で考えてくれ。
(注)ヨッパライ運転で事故を起すと自動車保険では自分のケガや車両の損害は補填されないが、他人に対して与えた人身・物損の損害については補償される。このことを正しく理解していない人が多い。

A「夢うつつ」でドライブしなさんな事故

▲色男が夏の終り、夜明けの六甲の道をバルカンとか云う大型バイクに女子学生を乗せ、ルンルン気分でドライブ(カッコイー!)していたが「ムジナ?」が横たわっていたのにビックリ仰天し、急ブレーキ、女性を振落とし転倒、カワイコちゃんのギャルにひん死の重傷を負わせた事故
初期対応⇒  オイほんまに狢かいな? 猫かねずみと間違えたんとちゃうの?
前の晩何してたんだよ、えぇ? この色男が!(いらぬお節介だか) 有頂天になりやがってモウ! こう云うの「天国と地獄」って言うのよ!
ギャルの魅力的なママは電話の向こうでオロオロ声で、とても心配してはったでぇ。 可哀相だと思わんかい!喝!

▲地方大学病院の脳神経外科医が運転中に白昼夢にふけり、ボンヤリ運転、反対車線に入り、相手とぶつかり、被害者を自分の病院で一晩観察したが「大丈夫だ、ショック受けたがカウンセリングもするから」だとさ

ほんまかいな? 私が被害者に電話したら不安がって居ましたぜ…センセイよ。 
この「迷医さま」は「これから他の患者の開頭大手術に入るので忙しい」とおっしゃるが…

初期対応⇒ いらぬおせっかいかも知らんが、あんたみたいな「白昼夢に耽る自己中」のシェンシェー?に手術されたら命が幾らあっても足りねえよなぁ。
クワバラ,クワバラ!患者さん気いつけなさいよ。
週刊誌によると、手術の縫合のためにボンドをベタベタ貼り付けて、半年間に数名もあの世へ送り込んだ大ヤブの外科医がいるんだってな。 
恐!

<ご参考>                       
JAF−MATE 11.(危険な運転中の考え事−白昼夢と事故の関係の記事から一部引用)
事故ドライバーの23%が考え事をしていた
一般に「白昼夢」と呼ばれる心理状態があるのをご存知だろうか。
睡眠時とは異なり意識はあるものの、心ここにあらずの状態になり、運転中にはそれが事故に結びつく危険性も多分にあるのだ。

警察などでは漫然運転という項目で一括りにされているが、白昼夢とは夢と呼ぶ限りにおいて何かを思い描いていたり,考え事にふけっていたりする感じがある。
とりとめもなく脳裏に去来するイメージに支配された心理状態で、目の前の現実がおろそかになり、それが事故に結びつくことがあり得るのだ。

現代はまさに、「ストレス性白昼夢」の時代
白昼夢が起きるメカニズムには願望や欲求不満、不安、疲労、強迫観念などが深く関与しているという。その意味で現代は、まさに危険なDay Dream」の時代であるといえよう。
事実、有名なフインランドの研究では衝突事故死亡25件中の80%が、事故前の24時間以内に経済的あるいは対人的な葛藤で強いストレスを経験していたと発表している。

Bいい年のオッサンがひでえな事故
いいトシした警察官の被害者が、勤務明けにバイクに乗った少年にはねられた。確かに事故を起した方がワルイ。だが‥

対応中に「ワシはT社を代理人に立てて?徹底的にヤルぞ!」とか「公務執行妨害になるぞ」??とか「相手高校生は有名私立の進学校だから学校にバラせば、すぐさま退学だ!」などと小生に向かって大声でわめいた。

初期対応⇒ フン! お前みたいな「的外れ」がいるから、この国の「おまわり」はダメといわれるんだよ。悪いことばかりしやがって、チートモ反省していねえな。
そんな程度ことでこのワシが驚くとでも思っているのか。百戦錬磨?のこのワシはこの程度の脅しは屁とも思っていないのだょ。
これからの「おまわり」はもっと常識を持たないとなぁ。

▲ある自動車会社の代理店から、顧客(契約者)が老婆をはね「腕を骨折させた」が、本人のショックが大きいので初期対応して欲しいとのこと。

所が本人に何度電話しても留守。
デーラに問合せると、「被害者からの電話がコワイので居留守らしい」とのこと?
やっと翌日本人から電話があり、いわく相手からの電話が「怖くてねぇ」だと。 

初期対応⇒  エエ加減にせんかい! 本人に聞いたら単なる打撲程度じゃねえか! 
こんな無責任なことで、この世の中が渡ってゆけるのかよ 50も過ぎたオッサンが情けねぇな、全く
小生のアドバイスですっかり元気づいて 「相手はマンジュウ屋のバアサンだから、菓子はダメなので、ゲンナマ三千円也を包んで見舞いに行く」だと? 疲れるなぁ!  喝!

これに似た話が他にもある。

60を超えたオッサンがスーパーの駐車場で車に接触した。(この手の事故は非常に多い)
「誰も見ていないわよ」の奥さんの掛声に勇気付けられ?自宅に一目散。
自車のキズにラッカーを吹付けて知らん顔。

しかし、悪いことは出来ない!
程なく警察官が現れサンザン油を絞られ「当て逃げ」を認め、堂々たる前科一犯に。
注)他人のモノに損害を与えた場合は特殊な場合を除き、不法行為を認め損害賠償すれば罰せられることはないが、知らん顔して逃げたりすると「器物損壊罪」の適用を受ける。
オッサン曰く、政治屋の誰かさんみたいに女々しく「女房が 女房が…」と言い訳を繰返し
「自責の念で昨晩眠れず死にたい…どうしたら良いのでしょうか」とジョウダンとは思えないシンコクな涙声でおっしゃるではないか。

初期対応⇒ 思わず絶句した。そんなに死にたければ死んだらどうですか!! 甘ったれるなよ、あんた幾つになったんだ。「死ぬ」ということは大変なことだ。勇気がいるぞ。あんたには怖くてできっこないよ。それにしても‥ かつての日本にこんな「ウジウジしたオトコ」居たかなあ? 
「大和なでしこ」のほうが立派だよ。
 哀!

▲春まだ浅い頃、二十歳のチャパツのニィチャンが土曜日の明け方に民家の暖房用室外機を押し倒し、車もろとも壁を突破り室内に飛び込んできた。その家には老婆と孫娘が寝ており、別居の娘さんから「壁に穴があき、とても寒いのでどうすれば良いのか」との相談

初期対応⇒ 「ご迷惑かけて申し訳ありません」と平謝り(何で相談員が謝らねばならないのか?? 現実には契約者に代わって謝ることが多い)、取りあえず近くの業者に仮囲いを頼むように依頼し、本格的には休み明けの月曜日に現地(京都)で対応するまで待って頂きたいとひたすら懇願し、やっと了解してもらう。

このような事故は珍しいものではないが、この父親が全くあきれたオヤジであった。
曰く「息子はBe1というレトロな?車に乗り、後ろにキンキラキンの飾りをつけていたので暴走族に追いかけられ、狭い路地に逃げ込んだのが悪かった。逃げようとして飛び込んでしまったのだ!」(まるで息子は悪くないと言わんばかり)
そしてナント「Be
1と云う車をまた買ってやらないといけないが、探してもなかなか見つからないのだ。困ったなぁ 如何したらいいんだろう」だと。

寒空に震えている老婆に対する思いやりなどひとかけらもない。「このバカやろう!」と思わず怒鳴りたくなった。 蔑!

▲話がわかるわい⇒たまにはこんな良い?オヤジもいるのか。

ある大手自動車会社の保険責任者(自称)の娘が対物事故の相手方になったケースがあった。
電話したところ、本人は「総て父親に任せてある」と言うので、運転中の父親の携帯に電話(危険なので本来ご法度だが)したところ、あっさりと自分の娘の過失(7080%)を認め「バカ娘が迷惑かけます!」とコメントし、当社契約者に対して、休み明けに「Y社に対応させる」と明言した。

さすがにこのような玄人は話が早い。こういうのは気分良し、天晴れ!
たまにはこんなのもないとなーやってられないよこの商売。

Cやりきれなくなるとても不幸な事故

▲夜中、直進道路を漫然と運転し、そのままノーブレーキで横断歩道上の親子(盆休みで都会から帰省していた息子が老母の手を引いて渡らせていた)をはね、母親が即死、孝行息子が瀕死の重傷を負った事故。

 初期対応⇒  悲惨だ!不注意で起きた事故かもしれないが、ある意味では「人殺しに近い行為」だよ!お前は昔なら縛り首だよ。お前のような者は地獄行きだ!
それにしてもオヤジはなぜか電話の向こうで薄笑いをしているようで不気味だった。
「この親にしてこの子あり」なのか。 「人間失格」だな。 暗!惨!怒!

▲ある有名企業のサラリーマンからの事故相談だった(保険には精通していた)

60を超えた父親がクルマで病が癒えて退院する母親(妻)を迎えに行き、帰路自宅の直ぐ傍で突然意識を失い喫茶店に暴走し、お店に飛び込み大破,さらに退院途中の同乗の母親がフロントガラスに頭部を強打、意識不明の重症を負い病院へ逆戻りの悲劇。

初期対応⇒それにしても、なんてついていないんだろうか 世の中にはこんなこともあるのだ。彼に対して傷害保険や夫婦間事故だが自賠責の対象の可能性があること、建物の損害(大破)について直ちに修理業者を派遣することなどを説明し、少し安心させたが、それにしてもこれはとても悲しい事故だ。 悲!

◆このワシも古希を迎えた立派な?ジジイだ。だからとても身につまされる事故だ。そういえば最近目がかすみ、モノが良く見えず、運転中、めまいがしフラフラすることがあるが…  
事故のクスリが効きすぎたのか最近異常に慎重過ぎる運転になり、ノロノロモタモタの老人運転でしばしばクラクションを鳴らされる。もうクルマはやめよう。
相談員が事故起したら失格だもんな。駐車しっぱなしだし、カネもかかるし… 遊びに行くところもないしなー。「クルマ大好き人間」なのにさみしいなぁ。

しっかりしてよ日本のおとーさん!

この商売ストレスがたまる。まともな相談が大半だが、時折首をひねりたくなるような相談やグチも聞かされる。日本社会の自己中、無責任の風潮は正に極まれりと云ったところだが、以下は実際に体験した例だ。こんな相談を電話で受けたら貴方だったらどのようにアドバイスなさいますか?
一例を挙げると

今、駐車場内で「当て逃げ」しようとして捕まり脅されている。「金が無い」どうしたら良いのでしょうか。(自動車契約者)

息子が自転車で老婆と衝突、負傷させたが、本人は受験期なので可哀相だ。調査の段階で本人に対しては一切聞かないでくれ(学生総合契約者)

息子が事故起こしたが「標識が悪い」どうしてくれる!警察にに文句言いたい。あんたどう考えるか! とカンカンになり小生に対して怒鳴った。(自動車契約者)

大学3年の息子がコンビニの駐車場で争い事を起こし、怖くなって車で逃げようとし立ちふさがった相手に接触し怪我させ「刑事事件にする」と脅されている。
息子が大変だ。
  今すぐ弁護士を依頼して現場に急行し解決してくれ。金は出しますから。(学生総合契約者)

オイオイ「ニッポンのオトーサン」たち冗談じゃないよ!  あんた大丈夫なの?しっかりしてよ!   「デキが悪いムスコ」甘やかさない方が本人の為になるんじゃないの?と言いたくなる。
この世の中
♯人生イロイロ♪だと思ったが、かつての「日本人」はどこへ行ってしまったのか。それとも、もしかしたら小生の感覚の方が古臭く、狂っているのかも知れないが…
勿論相手は「お客様」だから丁寧に誠意を持って??対応したが、年甲斐もなくキレてしまい、思わず「お説教」をしてしまったこともある。明らかに相談員としては行き過ぎで、大いに反省?しているのだが‥

<最後にジジイのひとり言>

 ◆さて、ヘンな事故相談はまだまだある。
例えば
 ベンツに接触、コワイので、相手未確認のまま現場で有り金14万円をはたいたが示談 書はおろか領収書さえ貰わなかったドジなビジネスマンの話。⇒かわいそうだが救い難い。

道路の「焼き芋屋の屋台」を見つけ我を忘れ夢中で突然バックし、逆突事故を起こし
たイモネーチャンならぬ「芋オバ様」のお話 ⇒一個数十万円の焼き芋代‥

バイクで衝突し、オトコの大切なタマを二つとも無くした16歳の高校生の話等、週刊誌のネタになりそうなケースは山ほどあるがキリが無いのでこの辺で止めておこう。

ホケンというのは因果な商売だ。人が顔をしかめる事故解決を売り物にしているのだから。もっとも事故なかりせば、この商売は成り立たない。事故がメシの種なのだ。

◆最後にドライバーの皆さんに一言ご忠告しておく。

ゆめゆめ不倫の相手を車に乗せてドライブし、いちゃいちゃしないようにね。その最中に事故って大変な事になった方がいる。慌てふためいて「ばれないようにしてくれ!」とおっしゃられてもそれはムリな相談だ。事故ったら責任関係について総て警察が調べる。プライバシーは守れない。
特に相手にハンドルを握らせるようなことは絶対避けるべきだろう。最悪の場合、事故ってもホケンが下りない事だってあるのだから。

事故・こぼれ話 (オドロキの自動車事故特集)