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女子寮のある高校」「神奈川県立高校の受験」「海外インター校からの高校編入」「中3の帰国時期は?」 「面接では何を見るの?」「帰国子女受け入れ校で不登校に」「国立大学附属小学校の国際学級」「帰国児受け入れに慣れている幼稚園」 「英国の発音を保持したい」「イマージョン教育の支援組織」「SLEPとは、どんな試験?」「日本の大学情報を英語で得たい」「帰国生受け入れ校は なくなった?」「帰国生受け入れ校は どこも同じ?」「帰国生に 進学実績は意味あるの?


◎「女子寮のある高校」
Q. 寮のある共学か、女子のみの帰国生受け入れ高校をお尋ねします。 全寮制でも 希望制でも結構です。
A. 女子寮のある高校は、あまり数多くありません。 帰国生の多いところでは 国際基督教大学高校 ICU高校。週末は閉寮になりますので、自宅あるいは国内保護者宅に帰らなければなりません)、 自由の森学園、暁星国際、茗溪学園、関西では 同志社国際、千里国際、立命館宇治、武庫川女子などがあります。 JOBAの寮からは、首都圏の高校へ通えます(週末だけJOBAの寮を利用している ICU生もいます) 。 「関係リンク先」の下の方に、寮のある学校一覧を載せていますので、 参考になさってください。 なお、JOBAの受け入れ校紹介 も参考になります。

◎「神奈川県立高校の受験」
Q. 長男は今、神奈川県の公立中学1年です。 父親が任期2年で赴任し、ちょうど帰国と同時に 高校入試があります。 2年後に帰国子女扱いで入試など受けられるのか 心配です。
A. 帰国後、神奈川県立高校を受験される場合ですが、帰国生の特別選抜は、2017年時点で8校が実施しています(各校5名〜15名程度の特別枠)。 2年間日本人学校に在籍されて、帰国後 神奈川県内に住まれるのでしたら、受験資格があります。 それ以外の県立高校でも、受験すれば募集定員の15%前後は「県外からの受験」として考慮してもらえます。 例年、12月初旬に志願者説明会があり、1月初旬に県の教育庁高校教育課(学事育英班)で「入学志願資格承認申請」を します。
私立学校の場合、どこの高校にも受験資格があります。多すぎて選ぶのが大変でしょうが、今から、どんな高校がいいか 探しておかれるとよいでしょう。 「帰国子女のための学校便覧」 も参考になります。

◎「海外インター校からの高校編入」
Q. サンパウロのインター校へ通う17歳(高校2年生)です。 予定では来年の3月、東京に本帰国します。 私の学校が1月中休みなので、1月に高校3年生の編入試験を受けたいと思っていますが、可能でしょうか。
A. 編入試験を受験可能な学校は いくつかありますし、海外入試やインターネット入試と一緒に 編入試験を実施する学校もあります。 そうした学校は、編入学試験 のために、わざわざ一時帰国される必要はありません。 高校3年の9月まで いつでも編入学ができる学校もありますから、3月に帰国されてから、直ぐに編入試験を受けて編入することもできます。 もし、お父様の任期が延びて 来年の夏頃に帰国されることになっても、大丈夫です。
大学受験のことも、ご心配なのでしょうね。 帰国生受け入れ校の多くは 大学からの指定校推薦枠を持っていて、よほど特殊な学部を希望されていない限り、進学面でも安心です。 帰国生特別枠や AO入試(自己推薦) で受験する選択肢も たくさんあります。 要は、今 通っておられるインター校の成績次第ですけど。

◎「中3の帰国時期は?」
Q. 父親の帰国が 1月〜3月に決定している場合、中学3年の子供を抱える家庭は、父親より半年くらい早く 帰国して 中学に子供を編入させるか、あるいは帰国を遅らせて 現地高校に進学して 国内高校への編入試験を 受けるか、きっと迷うところでしょうね。
A. 一番多いケースでは、12月末〜1月初旬に帰国して 国内の公立中学3年に編入し、その学校の「卒業見込み」で高校受験をします。 中学校側は成績を出せませんから、海外校の成績で受験をするわけですが、どの高校でも受験が可能です。
ところが、中学3年の9月から編入すると、日本の学校の学習に馴染めない間に 2学期が終わりますので、それほど良い成績は期待できません。 もっと深刻な問題は、周囲の生徒は 自分の成績が下がったり、志望高校への推薦枠から弾き出されたりすることを心配する ことです。 もし、その中に帰国生がいれば、その帰国生は お子さんのことを 「自分の帰国生枠受験の障害だ」 と考えても 仕方ありません。 ただでも神経質になっている受験生の中に入っていくのだ という覚悟が必要でしょう。
その点、私立の中高一貫校では 比較的落ち着いていますが、半年後に また高校の入学金・施設設備費等を払わなければなりません(半額にしてくれる 学校は多いものの、それでも結構な額です)
逆に、高校1年の夏に帰国する場合、1月に帰国した場合と比べて 学校選択の幅は狭くなってしまいます。 また、4月から在籍していればできたであろう行事体験や友達作り、そして教科 内容が欠けるだけ、お子さんの気苦労は増します。
こうして、年末年始の時期の帰国が 最も好まれる状況が生まれるわけです。 お父さんの帰任が お子さんの中学3年11月以前であれば、早めに帰国せざるを得ない という判断も極めてまともですが、お父さんの任期が まだ翌年1月以降まで残っているのに 中3の夏に帰国されるのは、余りにもリスクが高過ぎるのではないでしょうか?
なお、最近は 公立の中高一貫校も生まれていますが、ほとんどが進学校で人気があり、中学校段階での編入は認められていません。 ただし、いわゆる 「併設型」と呼ばれる公立の中高一貫校では、高校入試を行いますし、高校段階での編入も認めるのが普通です。 一貫校を敬遠する中3生は多いので、帰国生(1月までに帰国し、中学校に編入している場合)には “ねらい目” といってもよい状況になっています。 12月頃に、受験資格の説明会がありますので、帰国する都道府県教育庁の高校教育課に相談してみましょう。

◎「面接では何を見るの?」
Q. 帰国生入試の試験科目が 面接と作文だけ という学校があるのですが、何を評価しているのですか。
A. いくら 「作文と面接だけ」といっても、在籍している学校から の成績書類等を提出しているのですから、まず その段階で 予め評価はなされていることを理解してください。 逆にいえば、帰国生や外国籍生徒を受け入れるのに 学力試験を課す学校は、現地からの成績書類等を読みこなす手間を 省きたい(あるいは 理解できない)のだと思ってよいかもしれません。
では、面接や作文で何を評価しているかですが、その学校が どんな生徒を欲しいかによって異なります。
国立大学附属の中学校・高校は 10年後の教材や教育技術開発のための “人体実験”の場ですので、 「モルモット (実験動物)として相応しいか」 「生徒指導や進学指導を期待してはいないか」を確認し、これからやろうとする研究 に必要な生徒を選び出そうとしています。
公立高校では “機会均等”がタテマエですから、受験生に何らかの序列(order)をつけて 「上から〇番目まで合格」 といえるようにしなくてはなりません。 学校ごとに 評価の観点 (何を見るか)は異なるものの、協調性・倫理性・自律性など かつての通知表の生活欄に並んでいたようなものが中心となり、それらを数値化して合計点が出されます。
私立学校の場合は、それこそ千差万別で 「何のために帰国生を受け入れるのか」 によって 評価の観点は 大きく異なります。 例えば「英語がよくできる生徒を集めて特訓し、有名大学に多数合格させて 学校の評判を上げたい」と思っている学校なら 「部活を頑張りたい」というと、評価は下がります (そんな学校は止めた方がよいのですが、お母さん方には人気があります)
他方、「人生全体を眺めたときに 中学・高校時代にしかできないことは絶対にあり、それを満喫したい帰国生を大事にしたい」と考える学校でしたら、学科試験などよりも、本人の意志・希望・夢などを よく聞きます。 そのうえで 「うちの学校に入ってきて、この生徒は幸せだろうか」 という判断をしています。 こうした帰国生受け入れの伝統校の合格偏差値は 計算できないのですけど、海外の保護者の間で 「あそこの学校の偏差値は〇〇よ」 といった情報が まことしやかに流されているのは残念です。

◎「帰国子女受け入れ校で不登校に」
Q. 帰国してすぐ、帰国子女クラスのある私立中学校に入学したのですが、「勉強が追いつくまで、部活動をしてはいけない」という学校の方針に驚きました。 いきなり受験勉強のスパルタ教育に投げ込まれたショックを受けつつも、娘は夏休みも頑張って勉強しましたが、とうとう不登校になってしまいました。 これから他の私立学校に転校するのは非常識でしょうか?
A. 有名進学校なのでしょうね。 本当なら、受験前によくお調べいただくべきでしたが、海外の受験情報(とくに母親同士の話題)の中には、誤ったものや偏ったものも少なくありません。 お子さんが辛い思いをされている状況には、胸が痛みます。
しかし、私立学校に一旦入学されますと、他の私立学校への転校は なかなか難しいのです。 私学同士、「他校の生徒の引き抜きはしない」という紳士協定がありますから、できるだけ現在の学校で頑張っていただければと思います。
とはいえ、すでに不登校気味になられているのでしたら、学校には内緒で、いくつか他の学校を巡ってみられては いかがですか? お子さんが 「ここなら頑張れる」 と顔を輝かせる学校に出合えるかもしれません。 非常識であろうと何であろうと、お子さんのために今、何が大事なのかを考えましょう。
今度こそ、ていねいに時間をかけて、お子さんに最適の学校(公立中学も含め)を探されることです。 受け入れてくれる学校は限られますが、焦らないでください。 そして、編入試験前に、その学校の生徒の日頃の様子を、お子さんと一緒によく観察するようにしましょう。
編入試験に合格したら、現在の学校に実情を話して、何とか退学を認めてもらいます。 多分、入学後の数ヶ月で不登校になってしまったということで、学校も認めてくれるでしょう。

◎「国立大附属小学校の帰国子女学級」
Q. 海外在住です。 御茶ノ水女子大学附属の帰国子女学級は、普通の日本人学校ではついて行けない子供たちのためのクラスで、日本の生活になれるための特別 なクラスだと、聞きました。 附属中には、上がれないのでしょうか? ある程度、日本語ができるならば、むしろ、普通の近所の小学校の方がいいとも聞きました。 本当なのでしょうか?
A. お子様の状況が よく分からないので、どういう点から不安や疑問を持たれているのかが 予測できないのですが、一般的には、在外期間がとても長くて、日本語の基礎から教える必要のある児童が対象です。 附属の中学に上がれるかどうかは、中学校の校長・副校長の判断ですが、他の中学校に行く子どもも少なくありません。
ある程度、日本語ができるならば(とくに在外期間が3年程度、あるいはそれより短かければ)、むしろ 近所の公立小学校の方がよい……という考え方も一理あります。 しかし、一旦 公立小学校に編入してから、「学校を間違えた」という例が多いのも事実です。 学校自体が帰国児童に全く 配慮してくれない学校だったり、通学時間が極端に長くて子どもの負担過多だったり (越境通学)、など理由 はいろいろですが、本人の状況をよく見ないで親が決めてしまうと、後が大変です。 適応教育を こじらしてから相談に来られても、困ってしまいます。
ともかく、同じ両親の子であっても全く性格が異なったりするように、同じ環境で育ってきても、 子どもの心身の成長状況は様々ですから、「帰国後は、どの学校がよいか」は慎重に選んでください。 国立だからといって、どの子にも良いとは限りません。
お子様を連れて、いろんな学校を見て回られることを勧めます。 「ここがいい」と お子様が顔を輝かせた学校に出会うまでは、諦めないことです。 「学校が決ってから住む所を探せばよい」くらいに考えてください。

◎「帰国児受入れに慣れている幼稚園」
Q. スイスで3年過ごし、8月に帰国が決まりました。 4才の娘は インターナショナルスクールの幼稚部に1年半通い、文法はともかく 気合の英語で毎日元気に過しています。 帰国後は年中組に編入することになりますが、帰国子女の受け入れに慣れている幼稚園、または様々な国の子どもたちを積極的に迎え入れているような幼稚園を ご存知でしたら教えてください。
A. まず、日本国内にあるインターナショナル・スクールの幼稚園は 除外して考えてよいでしょうか?
日本の学校教育法に基づいて設置される幼稚園で、帰国子女の受け入れを唱った幼稚園はありませんし、 帰国子女受け入れの体制が整った幼稚園はありません。 ただし、帰国子女や外国籍・二重国籍の子供が多く 通っている所はいくつかあります。 こまめに探されることをお勧めします。 念のため、全日本私立幼稚園連合会のサイト をお知らせします。

◎「英国の発音を保持したい」
Q. 英国の私立学校に子どもを通わせていました。 わがままと思われるかもしれませんが、 ぜひともクィーンズ・イングリッシュをキープしたいと願っています。 個人教授ではなく、 教室で仲間と一緒に学べる所は、どこかありますか。
A. お気持ちは解りますが、あまりこだわり過ぎると、お子さんの ストレスにつながりますので、ほどほどに。 保持の学校は、渋谷にハンプトン・スクール・オブ・イングリッシュがあります(TEL.03−3406−1231)
因みに、英国人学校は、低学年は渋谷教育学園、Y4〜Y13は昭和女子学園の中にあります。 徹底的に英国流をお望みなら、こちらがよいでしょう。

◎「イマージョン教育の支援組織」
Q. 日本人学校での勤務を終え、埼玉県の公立小学校に戻りました。 英語のイマージョン教育に挑戦してみたいのですが、現場の私たちを指導・支援してくれる機関はありませんか。
A. 東京都教育委員会では、モデル・ランゲージ・スタジオ(MLS) という学校に、教職員研修を委嘱しています。 外国人講師に頼るよりも、現役の教師に頑張って もらおうという方針のようです。 ドラマメソッドを使って、子どもたちに ボディーランゲージを楽しく体得させていく指導法で、使い易い教材・教具も提供されます。 教材監修には 文部省の元教科調査官(英語) も関わっていますので、内容も大丈夫。 一度、ワークショップを体験されてはどうでしょうか。

◎「SLEPとは、どんな試験?」
Q. インターナショナルスクールでは、SLEPという試験があると聞きました。 SLEPって何ですか?
A. SLEP (Secondary Level English Proficiency Test) は、英語を母国語としない中学・高校生の英語力を測るテストです。 英語圏の現地校や国際学校などで、「ESL教室での指導が必要かどうか」「普通学級の授業についていけるかどうか」を確認し、また 普通学級のクラス編成のためのデータを取ることなどに用いられます (全米の標準学力水準と比較対照が可能)
「聴き取り」と「文法・語い・読解」の2つのセクションから成り、「聴き取り」は北米の標準的な発音で録音されたテープを用います。 試験時間は約85分、問題数は150問です。 地図、絵なども盛り込んだ8類型の多肢選択問題で構成されていて、子どもが親しみ易いよう工夫されています。また、学校の授業時間を考慮して、2つのセクションを別の日に実施してもよく、 買い取り式テストなので、採点も各学校でできるというメリットもあります。

◎「日本の大学情報を英語で得たい」
Q. 海外のインターナショナルスクールに子どもが通っていますが、日本の大学の情報を英語で入手できないかと、スクールカウンセラーから聞かれています。 昨年9月に インター校からの受験資格が緩和されたという話も、どうしたら確認できますか?
A. もう ご存知と思いますが、 文部科学省(MEXT) のサイトは 必ずチェックしておくべきでしょうね。 それと 英語での情報収集の裏技としてJAGAM(マレーシア元日学生協会) に コンタクトする方法があります。 日本の大学フェアを現地サイドで支える活動もしていますので、南半球では、おそらく最も多くの情報と人脈を持っていると思いますし、何しろ英語でコンタクトが可能なのが魅力です。 また、リンクリストも充実していますよ。

◎「帰国生受け入れ校は なくなった?」
Q. 海外で数年育った孫(14歳)が帰国するので、受け入れ校を探しているのですが、30年前と全く勝手が違って困惑しています。 「帰国生受け入れ校」 はなくなったのでしょうか?
A. 制度的には、2001年になくなっています。 しかし、需要がなくなったわけではないですし、帰国生受け入れに対する助成金も 結構残っています(知らない学校が多いですけど)。 2000年ごろまでは、真面目に正面から帰国生を受け入れる高校は20校ほどしかない印象でしたが、今の 『月刊 海外子女教育』1月号の “会員校一覧” には、260校も載っていることに驚かれるでしょうね。 「会員校=(なんちゃって)受け入れ校」と思われても 無理ありません(笑)
また、かつての受け入れ校には、「帰国生担当」とか 「国際学級」とかの部署があって、そこに行けば専門の先生が相談に乗ってくれる安心感がありましたね。 この制度を残している帰国生受け入れの伝統校は結構ありますが、たいていの学校は 「学習支援センター」など(名称は各校さまざま)という部署を設けて 生徒の学習データを一元管理し、個別指導を行うようになっています。 そして、その部分を地域ボランティアが担う例もありますが、多くは学習塾などの教育産業にアウトソースされています。 つまり、帰国生に限らず、学習上の課題を持つ生徒一人ひとりを面倒見ようとしているのですが、親の目から見たら 「海外育ちの子に 全く理解がない」と感じられることも多いでしょう。
結局、一校ずつ実際に訪問して、“学習支援”の現場を確認していかざるを得ません。 海外子女教育振興財団が 「受け入れ校」という呼び方を止め、「会員校」としている事情も想像してみてください(帰国生が一人も居ない会員校も、もちろんあります)

◎「帰国生受け入れ校は どこも同じ?」
Q. 「帰国生を受け入れます」という学校を いくつか訪ねたのですが、どこの学校でも同じことを言われるし、やってることも変わらないように見えます。 というより、「本当に そこまでやってくれますか?」と言いたい学校ばかりです。
A. 2000年頃までは 「帰国生受け入れ校」は極めて限られ、合格偏差値の高い名門校からは、帰国生は見向きもされませんでした。 というのも、海外の学校で 「アクティブ・ラーニング」だとか 「探究型学習」だとか “如何わしい教育” を受けてきた生徒は、厄介者でしかなかったのです。
しかし、帰国生を受け入れて指導に当たった教師は、従来型の日本の学校教育にはない学習観に面食らいながらも、双方向的な/生徒主導的な学習の仕方も試みるようになります。 つまり、それまで見たこともない規格外の帰国生に出会って、教師の方が 「ちょっと待てよ、この子らは面白いじゃないか」と魅力を感じてました。 いわば 「世界標準の学力観」に出会ったわけです。 しかしながら大手学習塾からは、帰国子女枠特別入試が 「カジュアルだ」「逆差別だ」と批判されたように、「世界標準の学力観」は猛反発を受けました。
ところが、「PISA(注:OECDによる国際学習到達度調査。満15歳を対象)という “黒船”に、日本の教育界は震撼します。 PISAの「世界標準の学力観」からみると、今世紀初頭の日本の満15歳の学力は、10位前後(中位)を低迷していることにされてしまったのです。 にわかに中教審で 「主体的に学ぶ」「協働的に学ぶ」という議論が 正面からなされるようになったのは、「帰国子女受け入れ校がやっている方式を、すべての学校でやろう」という趣旨でした。
その動向を受け、2005年頃から大手学習塾は 「世界標準の学力観」に大きく舵を切り、「帰国生を中心に置いた教育を!」とまで言い出します。 帰国生に見向きもしなかった名門校を連れて、海外説明会を行う塾もありました。 さらに、公立の中高一貫校まで 文科省が容認するに至り、小・中学生や保護者の意識も一転、PISAやグローバルな資格を話題にするようになりました。 もはや、「わが校では 多様性を大事にしていて、帰国生も楽しく学べます」と言わない限り、まともな学校として認められなくなったのです(現実はさておいて…)
皮肉なことに、どの学校も似たような言い方になってしまい、学校を探す側は、本当に帰国生の面倒を見てくれそうかどうかを真剣に観察せざるを得なくなりました。 頑張ってください。

◎「帰国生に 進学実績は意味あるの?」
Q. 帰国生受け入れ校なのに、「うちは進学指導もきちっとします」と言って、進学実績を見せる学校が多いですね。 どんな状況の帰国生が、どういう経緯を経て “夢”を実現したかを教えて欲しいのに……。
A. 進学実績には、複数校合格した者も 浪人して合格した者も 混在していたりしますから、見るのなら注意が必要です。 まず疑ってみることです(笑) 試しに 「じゃあ、昔ながらの偏差値教育をやるんですか?」 と聞けば、きっと 「いえいえ、とんでもない。今は 英語入試がありますから」 といった “変な言い方” が返ってきます。 「自分自身でどれだけ個性的に考えられたか」などと理想を語りながら、最後は 「これからは英語入試、あるいは総合型選抜の時代ですよ」と、説明する先生が とうとうと話されるのです。 「そうやって東大に入れたいわけですか?」 と聞いたら、「一人は出したいですね」 なんて本音も聞けたりします(笑)
私の娘が受験相談(実質的な面接試験)に行って、「この学校は絶対いやだ」と言った某有名私立校があります。 その数年後、取材でその学校に行った時に、帰国生がたくさんいるので 思わず 「あなたたち、大丈夫?」と聞いたら、全員が笑いました。 ただ、中二くらいの子が一人 「でも、高みを目指さない子には居づらいかもね」と言いました。 今の価値観で “高み”が何になるか…… 「偏差値」以外にも多様化しているのでしょう。 例えば、途上国の大学に進みたい子もあれば、専門学校で学びたい子もいます。 自分の将来がはっきりしてる子は、キャリアプランができあがっていますが、そういう子を どこまで応援できるかが、学校の実力です。
今は 「多様性を認めます」という学校ばかりですけど、いざ具体的に聞いていくと、「いやこの条件は…」「その部分は…」と返ってくる学校も多いです。 親の立場からすれば、「個性の強いこの子が、自分で決めたこと、自分が選んだことを、受け止めてくれる学校ですか?」は 最大の関心事ですよね。 この学校に入って、わが子が幸せかどうか…。
よくあるのが、「帰国生ですが、こういう部分で学力がちょっと劣ってる子がいたら、どういうフォローをされてますか?」と聞いた時に、「これが守れないとだめです」とか、「基礎・基本は大事ですから、まずは我慢して努力していただかないと」とか 「黙って言うことを聞くことからです」と言われると、ガッカリします。 その点が、帰国生はいちばん苦手なのですから(笑)。 でも、わが子のために、必ず確認しておきましょう。



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