地域・おもしろマーケティング大賞 巣鴨地蔵通り 伊勢屋
これまで、「地域・おもしろマーケティング大賞」の内、「地域大賞」部門を紹介してきたが、今回より「おもしろ大賞」部門の紹介を始める。先ずは、同部門で「特別賞」を受賞された巣鴨地蔵通り商店街「伊勢屋」(巣鴨3-21-17)を訪ねてみた。
「伊勢屋」は、同商店街ゲートのすぐ手前に位置し、ここを通る観光客には、帝釈天の団子屋を思い起こすような存在感がある。
当店は餅米を原料にした和菓子店である。塩大福、豆大福、マネモチ、すあま、茶まん、中でも塩大福(120円)は当店の看板商品で、長年の根強いファンを抱えている。売り場の隣には、「買った饅頭を座って食べたい!」というお客さんがいるから、と始めた食堂もある。店頭はいつもお客で賑わい、人だかりで奥が見通せないくらいだ。従業員はテキパキと明るく応対し、生き生きと働いている。まさに活気溢れる店という感じがする。
当店は、明治20年創業「深川不動尊・伊勢屋本店」から暖簾分けを受け、昭和30年に巣鴨の地で開業。現在は先代の佐藤運重(82歳)に代わり、息子さんが二代目を継いでいる。
先代の運重さんは、若いころ福島県から「伊勢屋本店」に奉公に出て、そこで奉公仲間の今の奥様、ふみさん(74歳)と知り合い夫婦になった。二人は長年の功労が認められ、巣鴨の地で「伊勢屋」の看板を許された。「借金返すために夢中で働きましたよ!」と、ふみさん。今も現役で働き、生粋の福島弁を話す人懐っこい方だ。
忙しい中、ふみさんが取材に応じてくれた。「企業は人なり、商売も人なりです。働いている方のお陰です。いつもありがとう、って手を合わしてんですよ」と、ふみさん。店頭で従業員が生き生きと働いている姿からみると、ふみさんの気持ちが伝わっているかのようだ。「うちで働いている者はみんな家族同様で大切な人です。みんなが幸せになってくれる、これが私の自慢なんです!」。ふみさんの仲立ちで、従業員同士が夫婦になったのは七組、嫁に出したのは40人、仲人が12組、暖簾分けは5店舗。
その昔、ふみさんご夫婦は地方から奉公に出て、一代で巣鴨の一等地に店を立ち上げた。そして今や、従業員30人を抱える繁盛店までにした。その成功の秘密は「従業員を大切にする」この一言に尽きるような気がする。
さきごろ、赤福、船場吉兆、ミートホープなど、新聞紙上を賑わす話が枚挙にいとまがない。多くが従業員の不満から来る内部告発が発端だという。その裏には、「従業員を大切にしない」、経営者の傲慢がある。いつぞや松下幸之助が言ったように、「企業は人なり」、まさに商売繁盛の原点がここにあるのではなかろうか。(山口)
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