2012年8月

第2954号 2012年8月1日号


豊島区のいじめ対応は
 大津氏の中2いじめ自殺事件
 三田一則教育長聞く


 大津市の中2生徒のいじめによる自殺問題は教育委員会、学校の対応の不適切さもあり、連日マスコミを騒がせるとともに、いじめの実態が全国に広がって明らかになってきている。豊島区の対応と現状を三田一則豊島区教育委員会教育長にお話を伺った。

 ――今回の事件をうけて区民、教育委員会の対応は。

 「うちの子は大丈夫とか、うちの子の行っている学校は大丈夫なんですか、という区民の方からの問い合わせが一時多かったです。豊島区にそういう実態があるからというよりも一般的に心配だという声ですね。私どもでは豊島区教育委員会の見解をしっかり出しておこうということで、7月23日に豊島区教育委員会からの報告ということで、大津市の学校、教育委員会の対応は人道上も教育上も非常に遺憾だとの見解を明らかにしたところです」。

 ――大津市の学校、教区委員会の対応についての率直な感想を。

 「マスコミで昨年の12月、大津の中2の男子が自宅マンションから飛び降り自殺したということで騒がれたということは承知していました。私どもとしては解決していると思っていましたが、7月に入ってからマスコミで騒がれ、このことが未解決である、また学校も調査がしっかりできていない、教育委員会も吟味審査した形跡がないということがわかり、各方面からさまざまな批判が出ています。親御さんが2月に加害者を訴えて、7月に第2回口頭弁論が行われるということになって、教育長と首長が噛みあっていないということがわかったわけです。一人のお子さんの命が、こういう形で失われているのに、当事者である学校や教育委員会が適切に対応できていないということについては、同じ立場の人間として非常に遺憾だなという風に思います。厳しい怒りを感じながらも、これは他人ごとではないとして、自分たちの学校、教育委員会は大丈夫かということで、もう一度しっかり見直さなければならないと強く感じております」。

 ――豊島区のいじめに対する対応は。

 「私どもは毎月の定例校長会を通して全校の生活指導上の事件や事故をお知らせしております。また生活指導委員会などでそういった案件についてはすぐに情報交換し対応するようになっていますし、また学校と警察が連携している学警連という組織でも連絡を取り合ってことにあたるようになっていますから、大津のように他の学校が知らなかったというようなことは、本区ではありえません」。

 ――今回の件をうけて新たな対応は。

 「この事件をうけて7月17日に東京都教育委員会で指導課長会が臨時に開かれて、全小中学校で夏休み前にアンケートを取り、実態を把握して疑わしいものもしっかりと調査するということになりました。内容はいじめと認知した件数と、いじめの疑いがあると思われる件数、それにいじめの疑いがあると思われる児童・生徒への対応状況で、8月の上旬にその結果を集約することになっております。実態があればすぐに対応していますが、疑わしいものを含めて学校でどう認識している確認するものです。もちろん結果はすべてオーップンすることになっております。調査をするということはオープンにするということが前提です。問題があればすぐに手を打つというのは我われの責任です。我われは、情報はすべてオープンにして、いち早く対応します。また他の力を借りなければならないところは関係機関と連携してやってゆきます」。

 ――よく個人情報保護が問題になりますが。

 「個人情報に配慮しなければいけません。今回の問題では報道に行き過ぎがあったのではないかと思います。マスコミが子供たちの心に傷を残すような報道をすることはさけなければいけないのでは。学校側の隠ぺい体質がそれを過熱させたのかもしれませんが、デリケートな部分には慎重に対応しながらも、情報をオープンにして対応してゆくということはとても大切なことだと思います。そこがないと信頼を得ることができませんからね。少年法というものがありますから15歳までは刑法よりも教育を中心にしてその子を更生させていくというのが前提ですから、それを加害者、被害者の論理だけで考えていくということは非常に危険だと思います。ただいじめはそれが度を越すと、少年法や刑法につながっていく事案に発展しているのに、学校、教育委員会がそれに手が打てないというのは非常の問題であると思います。初期の教育のレベルでどう察知するかがとても大事で、大津の事件でもいろいろな信号が、あれだけ出ているのに、学校側が察知できなかったのかが釈然としません。周りから見たこの案件の苛立ち、不信感はそのあたりにあるのではないでしょうか。やはり教育者や大人がもっと子供の言葉や行動に注目してあげることがいかに重要かということでしょうね」。

 ――大津市教育委員会の対応はすべて中途半端でしたね。

 「こんなことがあっては絶対いけないことです。途中で調査を打ち切るとか、自殺といじめの因果関係をもとめられているわけですから、結論はともかく、どこまで詰めて調査を掛けたのか。調査の限界があって教育委員会や学校だけでは無理であれば、カウンセラーや警察の少年係など関係機関の力を借りるとかいろいろな知恵があるはず。それがほとんどできていないようにおもえますので、残念で仕方ありません。それで更生させられるものがさせられなかったり、最悪の事態になり被害者、加害者が大きな傷を負ったわけです。そういったことが大局的にも考えられる組織であらねばならないと思います」。

 ――校長の対応が批判されましたが。

 「いろいろな声がありますから、一律に言うことはできませんが、私もテレビを見ているひとりとして途中で答弁できなくなった校長の姿を見て、やはり学校の最高責任者として子供の状況を把握できていないということは職責を果たしていないと言わざるをえません。正確な情報を把握して途中経過であるとしても誠意をもって答弁すべきでしょう。現場の学校長の判断、発言は重要です。私どもはそれこそ首をかけてやってるつもりですから、現場の責任者としてとても甘いと思いますね」。

 ――いま実施していることは。

 「教育委員会の指導室が直接的な所管ですが、私が責任者となって教育委員会あげて対応にあたっています。また実態をまめに把握しているスク―ルカウンセラーや指導主事による直接ヒヤリングを実施し、状況把握に努めております。問題があれば即座に対応します」。


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