2012年8月

第2955号 2012年8月8日号


清風コミュニティ
 巣鴨高岩寺住職・医師 来馬明規


 今年五月、豊島区はWHO・世界保健機関によるセーフコミュニティの認証を取得した。慶事だ。区のホームページも「区の安全・安心の取り組みが世界基準に照らして確認されることになり、イメージアップにもつながります。」と誇らしげだ。

 さて、WHOの中心的事業は世界の健康増進であり、禁煙推進・脱タバコも重要課題のひとつである。その根幹となる「タバコ規制枠組条約(FCTC)」は、WHO主導で進められた国際条約。「タバコ消費と受動喫煙が健康・社会・環境・経済に及ぼす破壊的影響から人々を保護する」(第三条)ことを目的としている。我が国も二〇〇四年にFCTCを批准しており、日本国憲法に従って誠実に実行することが求められている。

 「FCTCを骨抜きにする、タバコ会社の卑劣な行為に断乎として立ち向かおう!」
 これは昨年九月、マーガレット・チャンWHO事務局長がニューヨーク国連本部で各国首脳に呼びかけた言葉である。今年のWHOのテーマは「たばこ産業の干渉を阻止しよう」であり、タバコ会社を「WHOの敵」と定義している。というのも「敵」はFCTCの無力化に血道をあげ、ニコチンの依存性や喫煙による健康被害を巧妙に隠し、タバコ製品を売り続けて毎年五百万人以上の罪なき人を殺害しているからだ。六十万人の受動喫煙死もその中に含まれる。

 そのようななか、池袋駅東口の指定喫煙所による受動喫煙被害・環境破壊などの苦情に対応するため、豊島区が新規喫煙施設を駅前タクシープールにつくり「分煙」を図るという。地元に了解を取りつけ、タバコ会社にも協力を要請中とのこと。これは言語道断だ。FCTCは、タバコ会社による一切の社会貢献活動・寄付行為を禁止している(第十三条第2項)。いかなる行為もタバコの販売促進に寄与するからだ。また、喫煙所を設置することは「ゆるやかな自殺奨励所」「受動喫煙警戒区域」をつくること。そしてタバコ煙は「除染」不可能で、いわゆる「分煙」では全く受動喫煙防止にならないことはWHOも示している国際的常識だ。公共施設は全面禁煙が世界標準。セーフで費用もかからない。「汚染源なければ憂いなし」である。

 豊島区は区民のために「世界に誇る安全・安心」を実現し、「がん対策」を推進する地方自治体に進化しつつある。諸外国の都市と同じように、公共空間に喫煙所は不要であり、新区庁舎では施設内禁煙、タバコの販売・広告禁止で、環境美化・保健衛生事業など、区の一切の事業にはタバコ産業の介入禁止が当然だ。民間施設を含めた受動喫煙防止条例を制定することが喫緊の課題だが、まずは池袋駅前の指定喫煙所や公会堂、区民センターなどの喫煙所を早期に閉鎖するべきだろう。

 「セーフ」コミュニティはタバコの煙のない「清風(せいふう)」コミュニティ。日本一の高密度都市・豊島区には、受動喫煙の被害なしにタバコを消費できるような公共空間はない。それにもかかわらず、「WHOの敵」に新しい喫煙施設をおねだりすることは、国際条約違反のみならず区民とWHOを裏切ることであり、豊島区のひどいイメージダウンになる。


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